_D2_0548-伊藤裕一

浄瑠璃作家・近松門左衛門のもとに、竹本座座頭・竹本義太夫の使者がやってきて、竹本座のために、近松に本を書いてほしいと頼む……。
近松と義太夫という2人を軸に、近松が義太夫のために初めて作った「出世景清」、世話物として確立させた「曽根崎心中」、そして心中物の代表作「心中天網島」、この名作三作を新たにアレンジして紡ぎ出す舞台が、『うつろのまこと—近松浄瑠璃久遠道行』。6月3日から10日まで銀座 博品館劇場で上演される。
その舞台で近松門左衛門役に挑む伊藤裕一。自らの劇団お座敷コブラでは、作・演出家もつとめる伊藤に、本作への抱負を語ってもらった「えんぶ8月号」の記事をご紹介する。

西森英行さんも近松と同じく
足で調べて書く作家

──この作品に出演することになっていかがでした?
近松門左衛門という、三大文豪の1人と呼ばれる人を僕が演じるなんて、畏れ多いと思いました。正直僕でいいのかなと。
 
──しかも近松の30代から60代まで演じます。
そうなんです。ただ、近松門左衛門本人をメインにした作品は少ないので、ある程度、自由に役を作れるのではないかと思っています。同じ作・演出家と言うにはあまりにも畏れ多いのですが、演劇人としての情熱とか、天才と言えども苦しんで作品を作っていたことなどは、自分にとっても身近に思えますし、励みにもなります。
 
──今回、劇中に出てくる三作からは、どんな印象を?
どれもまだきちんと観たことがないのですが、有名な作品ですし、とくに世話物の2作、「曽根崎心中」と「心中天網島」は、当時実際にあった事件をすぐに人形浄瑠璃に作ったわけですよね。そういう意味では、近松という人の取材力とかジャーナリスティックな一面を感じます。それは今回の作・演出の西森(英行)さんも同じで、本当に足で調べて書かれる作家で、前回ご一緒した『フェイス』は、精神科医の出てくる作品だったのですが、専門の病院に行かれたり、僕にも「5分でわかる本があるよ」と言って、5冊くらい貸してくださって、それ25分じゃないですか?と言いたかったんですが(笑)。今回も資料はたくさん調べていらっしゃるので、聞けばなんでも教えてくださるんですが、それもちょっと癪じゃないですか(笑)。僕のほうから「西森さん、これ知ってますか?」くらい言えるようになりたいですね。たぶん無理だと思いますけど(笑)。
 
──西森さんは伊藤さんを、「次までに必ずやってくる」と褒めているそうです。
そう言ってくださるのは嬉しいんですけど、そこまで出来る人間ではないですし、逆にプレッシャーになるので、それに関してはハードル下げておいてほしいです(笑)。

近松の三作を日替わりの
組み合わせで楽しむ

──伊藤さんは、「崩壊シリーズ」のようなコメディから、「戦国BASARA」のような2.5次元舞台まで、役者さんとして振り幅が広いですね。
最近、共演者の方から、「崩壊」とか「BASARA」を観たと言われることが多いんです。そして必ず「伊藤さんだと思わなかった」と(笑)。普段とのギャップがありすぎるみたいで、でもそれって色々な役を演じるうえで、ある意味強みでもあるかなと。
 
──素顔は普通のイケメンなのに、お笑い系の役が似合うのが不思議です。
コメディのほうが好きなんです。二枚目は得意じゃないし、自分の劇団もコメディをやりつつ、ファンタジーもやりつつという感じですから。
 
──今回はかなりきちんとした時代劇になりそうですね。
そうなんですよね。なるべく準備をして、西森さんの要求にできるだけ応えられるようにしておこうと。浄瑠璃に関しては、前に市民劇場でアルバイトをしていたとき、公演を袖で観る機会があったので、少しは馴染みはあるのですが。劇中には人形振りも出てくるそうで、そばで観られるのが楽しみです。
 
──最後に意気込みを。
この作品は、近松と義太夫の出会いと、2人の作品作りを描く物語ですが、劇中で「出世景清」と「曽根崎心中」と「心中天網島」という浄瑠璃芝居が、【出世之章】・【名残之章】・【生瓢之章】という形で観られますし、三本が日によって組み合わせが変わるので、色々な楽しみ方ができると思います。僕も近松役を一生懸命つとめますので、ぜひ観にいらしてください。


■プロフィール
いとうゆういち○神奈川県出身。映画・ドラマ・舞台・司会などマルチに活躍、また劇団お座敷コブラの主宰で作・演出家。主な出演作は、映画は『シンゴジラ』、『進撃の巨人』、ドラマは『あいの結婚相談所』(EX)『Doctor-X 外科医・大門未知子』(EX)、舞台は〜崩壊シリーズ〜『九条丸家の殺人事件』・『リメンバーミー』、斬劇『戦国BASARA』シリーズ、『義風堂々』『フェイス』『若様組まいる〜アイスクリン強し〜』など。8月に舞台『黄昏』、9月〜10月に舞台『-初恋2018』、また映画版『ONLY SILVER FISH』の公開を控えている。

〈公演情報〉
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『うつろのまこと―近松浄瑠璃久遠道行』
【出世之章】・【名残之章】・【生瓢之章】
作・演出◇西森英行
音楽・演奏◇かみむら周平
出演◇久保田秀敏 戸谷公人  松井勇歩 大月さゆ 牛水里美 加藤雅美/
今 拓哉  小多田直樹 山口大地 中村龍介 伊藤裕一 ほか
●6/3〜10◎博品館劇場





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