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喜多村緑郎と河合雪之丞コンビにより、昨年6月、江戸川乱歩の妖艶な美の世界を描き出し、大好評を博した新派版『黒蜥蜴』。今回は完全な美を表す『黒蜥蜴 ─全美版─』として、クラシカルな雰囲気も作品にぴったりな三越劇場で再び上演される。(6月2日から23日まで)
本年4月には、喜多村と河合の自主公演として『怪人二十面相〜黒蜥蜴 二の替わり〜』を上演、劇中で解き明かされた謎もあり、新派ならではの乱歩ワールドの広がりに大きな期待が高まっている。
そんな公演に向けて、名探偵・明智小五郎を演じる喜多村緑郎、タイトルロールの黒蜥蜴を演じる河合雪之丞、そしてドラマを運ぶ重要な役割を担う令嬢・早苗を演じる春本由香が、初演で感じた手応えや再演への意気込みを語り合ってくれた「えんぶ6月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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喜多村緑郎・河合雪之丞・春本由香

新派の世界観にベストマッチした
江戸川乱歩の世界

──大好評の舞台の再演ですが、初演の熱気をどう感じていましたか?
 
喜多村 元々、江戸川乱歩の世界は新派に絶対に合うだろうと思っていて、いつかやりたいと温めていた企画でした。上演した三越劇場の雰囲気やレトロな趣は独特で、袖が狭いなど制約はあるのですが、むしろそれを逆手に取って劇場全体を使おうと。また、演出の齋藤雅文先生のアイディアと、僕らの師匠である市川猿翁に叩き込まれたスーパー歌舞伎のノウハウを組み合わせていけば、すごいものができる! と確信していました。そういう全てのタイミングがうまく合った公演でした。
 
河合 『黒蜥蜴』は三島由紀夫さんの脚色の印象が強いと思うのですが、それを原作の乱歩の世界に寄せた新演出の『黒蜥蜴』をご覧頂くことによって、新派の世界観の中で新しいものを創り上げていこうという、お客様へのメッセージ性があったんだな、ということを舞台に立って改めて感じました。
 
春本 私と同年代の若い方にも新派を観て頂きたいという気持ちは常にあったのですが、やはり古典作品は「難しそう」というイメージが先行するのかなという思いがありました。でもこの『黒蜥蜴』は、幅広い世代の方に観に来て頂き易い作品だと感じましたし、日々一生懸命に勤めておりました。

5年、10年と繰り返し再演できる
完成度の高い作品に!

──新派に新たな世界が広がった感動が大きかった初演ですが、再演に当たって「全美版」という副題もつき、ポスタービジュアルも白を基調にした新鮮なものになりました。
 
喜多村 黒蜥蜴が美を追い求める究極の心情は白だなと、そう感じた初演のラストシーンのイメージを引き継いでいます。3月には『黒蜥蜴』に至る物語である『怪人二十面相』も上演させて頂きましたので、更にブラッシュアップして、この先、5年、10年と再演を繰り返せる作品になるようにしていきたいと思っています。
 
河合 特に今回は『怪人二十面相』を経たことによって、何故この女性が女賊・黒蜥蜴になっていったのか、その謎が明らかになっています。でも『二十面相』では、その若い黒蜥蜴を由香が演じたから、お客様の中には6月の「全美版」でも、由香が黒蜥蜴を演じるのかな? と思っている方もいらっしゃるかもしれない(笑)。
 
春本 そうですね(笑)。
 
河合 私がやるけど(笑)。でも憧れの人には似てくるので、『二十面相』で私が演じた美弥子に憧れた若かりし頃の黒蜥蜴の由香が、あんな女性になりたいと頑張って、今回の黒蜥蜴になった、ということでいいかなと。
 
春本 私が雪之丞さんの魅力を見習っていきたいと思っている気持ちと同じですね。
 
河合 由香には折角新派に入ったからには、女方芸のできる女優さんになって欲しいので、そういう意味でもこのつながりを大事にね。
 
春本 はい、私も「全美版」では、また新たな気持ちで早苗役を深めたいです。
 
喜多村 僕の明智小五郎も『二十面相』で若い時からの流れができたので、シリーズ物としても楽しんで頂けると思うし、ここから更に多くの可能性が広がると思っています。そんなふうに僕が大きな未来像を描いているとき、雪之丞はそこへ到達する為には若手にこう指示を出せばいいと細かい部分を埋めてくれる。この人がいなかったらと思うとゾっとするくらい、なくてはならない一心同体の存在で。これからも共に、お客様に楽しんで頂ける、新派の良さを知って頂ける舞台を目指していきたいですね。
 
河合 32年一緒に舞台をやってきて、新派に来て改めて、周りを引っ張っていく喜多村の力を感じています。そこに全員の力を合わせて、前回の『黒蜥蜴』を必ず上回る「全美版」をお届けしますので、是非劇場に足をお運びください。

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喜多村緑郎・河合雪之丞・春本由香
 
きたむらろくろう○新潟県出身。1988年国立劇場第九期歌舞伎俳優研修修了。歌舞伎座『忠臣蔵』で初舞台。市川段四郎門下として市川段治郎を名乗り、後に三代目市川猿之助(現猿翁)の部屋子となりスーパー歌舞伎で主演を勤める等活躍。2011年二代目市川月乃助を名乗る。『日本橋』で新派公演に初参加。16年『糸桜』より劇団新派に入団後、新派の大名跡である喜多村緑郎を二代目として襲名。新派の可能性を広げて躍進中。

かわいゆきのじょう○東京都出身。1988年国立劇場第九期歌舞伎俳優研修修了。歌舞伎座『忠臣蔵』で初舞台。三代目市川猿之助(現猿翁)門下となり二代目市川春猿を名乗り、後に部屋子となる。美貌の女方として活躍し、スーパー歌舞伎II『ワンピース』ではナミ役を勤めた。2010年『滝の白糸』で新派公演に主演として初参加。17年『華岡青洲の妻』より劇団新派に入団、河合雪之丞と名を改め、喜多村との名コンビで更なる活躍を続けている。
 
はるもとゆか〇東京都出身。新派俳優の祖父・春本泰男、歌舞伎役者の父・六世尾上松助、元新派女優の母・河合盛恵、歌舞伎役者の兄・二代目尾上松也という、歌舞伎、新派の役者一家の長女として誕生。その家庭環境から、当然のように女優の道を志し、2016年9月二代目水谷八重子の部屋子として、劇団新派に入団。新橋演舞場「九月新派特別公演」『婦系図』の妙子役でデビュー。次々と大役を務め、劇団新派のホープとして躍進を続けている。

〈公演情報〉
黒蜥蜴PR

六月花形新派公演
『黒蜥蜴─全美版─』
原作◇江戸川乱歩
脚色・演出◇齋藤雅文
出演◇喜多村緑郎 河合雪之丞
春本由香 伊藤みどり 秋山真太郎(劇団EXILE)  今井清隆 ほか
●6/2〜23◎三越劇場
〈料金〉9,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉
チケットホン松竹 0570-000-489(10時〜18時)
三越劇場 0120- 03-9354 (10時〜18時30分)
チケットweb松竹(24時間受付)
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/2018_kurotokage/


【取材・文/橘涼香 撮影/友澤綾乃】

 



『大人のけんかが終わるまで』


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