出口なし横
白井晃、首藤康之、中村恩恵、秋山菜津子

KAAT神奈川芸術劇場では、来年1月〜2月、20世紀を代表するフランスの劇作家で哲学者 J.P.サルトルの戯曲『出口なし』を、 “言葉”と“身体”を切り口に上演する。演出はKAAT神奈川芸術劇場の芸術監督・白井晃、出演者は世界的なバレエダンサー首藤康之、振付家としても活躍する中村恩恵、そして実力派女優・秋山菜津子。“演劇”と“舞踊”の境界を越える作品として創作する。

これまでKAATでは白井晃演出作品には、『Lost Memory Theatre』『夢の劇』では日本を代表するコンテンポラリーダンサー森山開次、『マハゴニー市の興亡』では世界的なダンスコンテストでの優勝歴もあるRuuなど、著名なダンサーたちが振付として参加してきた。「身体」による表現は白井晃作品の中では言葉・音楽とともに重要な要素であり、戯曲の魅力を観客に伝えるために大きな役割を担ってきた。本作『出口なし』では、身体表現の要素を前面に打ち出し、ダンサー首藤康之らとともに、戯曲に描かれた“言葉”と、舞台に存在する“身体”の新たな可能性を探りだす。
 
戯曲『出口なし』は、劇作家サルトルの代表作であり、1944 年の初演以来、様々な形で上演されている。主な登場人物は密室に閉じこめられた素性の知れない3人の男女のみ。窓や鏡はなく、鍵のかかった扉が1つあるだけのその部屋の中では、自身の姿を見ることはできず、相対する他者によってしか自己を認識できない。本作は、哲学者であるサルトルの思想である実存主義(人間は存在が先にあって、その後他者との交わりによって目的や意義を得る)を強く反映した作品でもある。この3人の男女によるスリリングな会話劇『出口なし』を、ダンサーと俳優の混合キャストで上演することで、20世紀を代表する哲学者サルトルが戯曲にこめたメッセージがどのように劇空間に立ち上がるのだろうか。
 
この舞台には3人のパフォーマーが出演する。密室の“男”には、マシュー・ボーン、モーリス・ベジャールなど現代の世界的振付家の作品に多数出演するなど海外でも活躍、近年は俳優としての活動にも力を入れている首藤康之。KAATでは2011年の開館から『DEDICATED』シリーズを継続的に上演し、高い評価を得ている。“女”役には首藤のダンス・パートナーであり、自身も振付家として精力的に活動する中村恩恵。そしてもう1人の“女”には、映像・舞台と幅広く活躍し、野田秀樹、栗山民也、長塚圭史など、名だたる演出家が厚い信頼を寄せる女優・秋山菜津子。白井晃演出作品には『中国の不思議な役人』(2009年)以来9年ぶりの出演となる。
KAATの中スタジオという戯曲の場面設定の「密室」に近いコンパクトな空間で、演劇、舞踊、それぞれのジャンルで傑出したパフォーマー3名が生み出す、新たな『出口なし』に期待が集まる。
 
【コメント】

白井晃/演出
舞台表現において、演劇とダンスの境界線を越えた包括的な形がないかと模索してきた。演劇作品であるサルトルの『出口なし』を、身体性豊かに表現するという大胆な挑戦に、ダンサーの首藤さん、中村さん、女優の秋山さんが挑んでくれる。言葉を身体表現に変容させることと、身体表現を言語化することの振幅運動の中で、今まで見えなかった心理の在り方が浮かび上がって来る。それは、表現の境界線を綱渡りしていくようなスリリングな瞬間でもある。自分の存在は他者の視線によって規定される、というサルトルの思想が色濃く反映されたこの作品は、身体と言葉の関係にも通じるものがある。今回のクリエーションの機会を得て、表現の領域侵犯をより大胆に加速させていきたい。

首藤康之(ダンサー)
僕が最も影響を受けた振付家の一人、モーリス・ベジャールさんが J.P.サルトルの『出口なし』をモチーフに創作した『3人のソナタ』という作品を 20 代の時に観てからこの戯曲をいつか演ってみたいと思っていました。2014年に、僕が続けてきた「DEDICATED」シリーズを白井晃さんに演出をお願いし、ともに創作をしました。その時は“舞踊とは?言葉とは?演劇とは?身体と言葉の融合とは?”などと色んな疑問符を持ちながら作業をしていたのですが、本番が終わった時は新たな領域に一歩足を踏み入れた新鮮な感覚になりました。舞踊家である僕を白井さんが真実を持った言葉の世界へ旅をさせていただいた素晴らしい結果でした。
今回、秋山菜津子さんとご一緒させていただくことになり(以前から大好きな女優さんでご一緒するのが本当に楽しみです!)、中村恩恵さんと共に、白井版『出口なし』という新しい旅に出発できることを今からワクワクしながら待っています!

中村恩恵(ダンサー・振付家)
2014年の白井晃さん演出作品への出演は私にとって初めての演劇体験でした。舞台上で表現をするという点に関しては無言劇であるバレエの出身の私にとって、これまでの活動の延長線上とも言えなくはないのですが。その際、白井晃さんが「ダンサブル」という言葉を頻繁に用いられました。舞踊家の私にしてみれば、舞台に立っている全ての瞬間が「舞踊」だと認識していたので、「舞踊的な表現を」と求められると大いに戸惑いを覚えました。公演後も、何が「舞踊的」で、何が「演劇的」なのだろうとあれこれ考えました。その後、舞踊作品『ハムレット』の創作に白井さんからアドバイスを頂く機会もあり、白井さんの目指す演技、また身体のあり方が自分なりに少し見えてきたように感じています。『出口なし』の上演に当たり、白井晃さんの世界観をより深く体現できるように努めたいと思っています。また、今回初めてご一緒する女優の秋山菜津子さんとの創作も楽しみにしています。

秋山菜津子(女優)
ダンス要素も必要なこの作品に世界的な舞踏家お二人とご一緒させて頂けるとは…幸せだなと思うと同時に“怖いもの知らず過ぎないか!私!”そう心で叫んでます。稽古場で本当に叫びださないよう気を引き締めて頑張ります。演出家の方とも久しぶりにご一緒するのでこちらも気を引き締めて臨みたいと思っています。基本的には演技することも歌うことも踊ることも分け隔てなく好きなので。ドキドキしながら楽しんでそして素敵な舞台を皆様にお届けしたいです。
 
〈公演情報〉
KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース
『出口なし』
原作:J.P.サルトル
演出:白井晃
出演:首藤康之 中村恩恵 秋山菜津子
●2019年 1〜2 月◎KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ 
〈チケット発売〉2018年10 月初旬(予定)
〈お問い合わせ〉チケットかながわ 0570-015-415
http://www.kaat.jp/news_detail?id=1194




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