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「70周年御礼口上」

上方喜劇の灯を守り続けて70年。劇団創立70周年記念公演『松竹新喜劇』が13日、東京・新橋演舞場で開幕した(22日まで)。
昭和23年12月、大阪・中座で旗揚げ公演を行い、不入りの時期を乗り越え、藤山寛美という不世出の喜劇俳優の爆発的な人気もあり、246か月もの連続無休公演という想像を絶する偉業を成し遂げた松竹新喜劇。平成2年、寛美が亡くなった後は、貴重な上方喜劇を守るべく、当代の渋谷天外を中心に平成3年、新たに旗揚げ。平成26年には創立65周年を迎え、その前年には寛美の孫である藤山扇治郎も入団。今年は創立70周年という大きな節目を迎えた。
その記念公演とあって、座長の渋谷天外、若手の藤山扇治郎を中心に、高田次郎、小島慶四郎をはじめとする劇団員オールメンバーが参加。さらに65周年の記念公演で初出演、今や「仲間」「同志」とも呼ばれる久本雅美がゲストとして今回も参加した。演目は狆消歐郡邨猯表十八番の内″と銘打った『人生双六』、「70周年御礼 口上」、爆笑喜劇『峠の茶屋は大騒ぎ‼』の3本立てとなっている。

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『人生双六』 
大阪のとある高架下。職を失い雪の中をさまよっていた宇田信吉は、ホームレスに絡まれているところを同じく失業で悩む浜本啓一に助けられる。浜本は苦しさのあまり拾った財布に手をつけそうになるが、宇田の純粋な人柄にふれ、持ち主に返す決心をする。意気投合した二人はお互いの成功を祈り。五年後にこの場所で再び出会うことを約束するのだった。そして約束の日、二人の人生双六はどうなったか…。
今回は藤山寛美の当たり役を孫の藤山扇治郎がつとめている。失業中の二人が出会い、拾った金を前にそれぞれの想いや生き方を打ち明け合う。人生の崖っぷちで生まれた友情を糧に、それぞれ立ち直ろうとする二人。そして五年後に出会うが、片方は成功者に片方は…。という顛末の中に世の中の不条理を映し込みながら、浪花人情の温かさと可笑しみを織り込んで繰り広げられる名作だ。扇治郎の宇田には愛嬌と色気が、曽我廼家八十吉の浜本は懐の深い男気が、大津嶺子には気品と母性があり、笑いを交えながらもしみじみと観せる。粉雪の散らつく景色が暑気を払ってくれて、爽やかに泣ける舞台だ。

「70周年御礼 口上」
揃いの浴衣も涼しげに劇団員勢揃いで舞台上に登場、1人ずつ松竹新喜劇70年という節目への想いを話す。客演の久本雅美や大津嶺子も紹介され、総勢40名近くが居並ぶ様子は壮観だ。

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『峠の茶屋は大騒ぎ‼』
経師屋の若旦那は、常盤津の師匠の文字菊に入れあげ店の大切な掛け軸を質入れしてしまう。今日中に請け出せなければ掛け軸は質流れ。そうなれば勘当されて死ぬしかないと思い詰める若旦那に、大工の長兵衛はなんとか金を工面すると約束してしまう。しかし長兵衛に金などない。考えあぐねた末に、芝居好きの妹のおかんを相方に、ある計画を企む。一方その頃、文字菊も茶屋を営む父に金の無心をしており…。
大工の長兵衛を渋谷天外が、妹のおかんを久本雅美がつとめ、文字通り舞台の上手から下手へ、さらに花道へと走り回るドタバタ喜劇だ。若旦那のためになんとか金を工面しようとする兄妹が思いついたことは、芝居の名場面をもとにした一芝居。行きずりの男に「間男見つけた」と言いがかりをつけ、金を巻き上げようという魂胆だ。だが、通りかかる老人、子供、さらに女形にまで、相手かまわず芝居を仕掛けるおかんと、そのたびに物陰から飛び出して空振りを繰り返す長兵衛、この兄妹コンビの懲りなさ加減が絶妙の笑いを巻き起こす。兄妹に最後までしつこく追い回される質屋の旦那役、曽我廼家寛太郎ともども、この暑さの中で体を張っての追っかけに場内は大拍手。大御所の小島慶四郎や高田次郎まで、巻き込まれる通行人で登場するなど、松竹新喜劇全員が物語を賑やかに彩り、華を添えている。

【囲み会見】

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初日終演後の囲み会見では、7月9日の誕生日で還暦を迎えた久本雅美にバースデーケーキのサプライズが行われた。
久本は「60歳になってますます面白くなってます。60でもまだまだこんなこともできるんだというお笑いのアイテムが持てるので、これからもますます暴れていきます」と力強く宣言。また「70周年というすごい歴史ある劇団に参加させていただけて光栄です。松竹新喜劇の泣いて笑って爆笑の渦に巻き込んでいく芝居を、毎日勉強させていただいています」と松竹新喜劇へのリスペクトを語った。
『人生双六』で祖父藤山寛美の役を継承した藤山扇治郎は「平成25年から入団しましたが、祖父の当たり役をさせていただけるのは松竹新喜劇に所属しているからこそ。少しでも良くなるように、毎日一生懸命つとめます」と劇団を支えていく意欲を語った。
松竹新喜劇の代表をつとめる渋谷天外は、後輩の扇治郎について、「私の予想をはるかに超えた演技で楽しませてくれたことに感動しました。来年からもう君の劇団でいいよ(笑)」と笑わせ、主役をつとめる『峠の茶屋は大騒ぎ!!』については、「上演は何十年ぶりなので、お客さんに受けるかどうかわからなかったのですが、久本さんの女を捨てた活躍で(笑)、盛り上げていただきました」と沸きに沸いた客席の様子を振り返り、改めて久本に感謝を述べた。
松竹新喜劇の劇団創立70周年記念公演は、7月の新橋演舞場のあと、9月に大阪松竹座、来年1月元旦からは新開場の京都南座で公演を行う。
 
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〈公演情報〉
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新橋演舞場7月公演『劇団創立70周年記念公演 松竹新喜劇』
【昼夜同一演目】(昼の部 午前11時開演/夜の部 午後16時開演)
一、松竹新喜劇裏表十八番の内 人生双六
二、七十周年御礼 口上
三、峠の茶屋は大騒ぎ!!
出演◇渋谷天外 高田次郎 小島慶四郎 藤山扇治郎 井上惠美子 大津嶺子 久本雅美ほか
●7/13〜22◎新橋演舞場
〈料金〉1等席12,000円 2等席8,500円 3階A席4,500円 3階B席3,000円 桟敷席13,000円(税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹(10:00〜18:00)0570-000-489または03-6745-0888
https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/2018_sinkigeki_70_enbujyo/



【取材・文/榊原和子 舞台写真提供/松竹】

 

えんぶ8月号


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