フライヤー

『ロリコンのすべて』は2015年の佐藤佐吉演劇賞2015の6部門受賞作品で、 小学校教師とその女子生徒の“純愛”をメインテーマに、テンポよく、可愛くもドキドキと進むストリーで大好評のうちに幕をとじた、・・・のだが。そのタイトルと劇団名のせいか女性のお客さんに敬遠されがちだったようで・・・。今回は「何か手を打たなければ…」と危機感を持った主宰のイトウシンタロウと看板女優の帯金ゆかりが、本コーナーで現役女子大生を交えての座談会を提案。前回公演を観て“純愛ラブコメ”の傑作と涙した本誌編集長の肝いりで、「どうしたら女性のお客さんに『ロリコンのすべて』を観てもらえるか会議」が実現!

初演は、女性の
お客さんが少なかった


帯金 初演は、女性のお客さんが少なかったんだよね。
イトウ うん。逆に男性のお客さんは、連日大挙して劇場に来てくれて。普段は演劇を観ないような層の方達が。で、何かを期待するような、思い詰めた表情で開演を待ってて…。
帯金 ありがたい話ですけどね(笑)。ただ、お芝居自体は、卑猥なシーンは全然ないし、むしろ純愛モノで、「泣いた」って感想も多かったよね。特に女性のお客さんから。せっかくだから、今度の再演は女性のお客さんにも、ちゃんと観に来てもらいたい。
イトウ そうなんだよ。だけど、やっぱりタイトルがタイトルだから…黙ってたら、たぶん女子は来てくれないと思う。だから、今日は、どうしたら女性のお客さんに「ロリコンのすべて」を観たいと思ってもらえるか、宣伝会議と称して女の子に話を聞いてみよう! …という主旨で、現役女子大生の角井さんをお呼びしました。

名称未設定 1

角井 なるほどです。ただ、どうして私、小学生の格好をさせられてるんですか?
帯金 単にイトウさんの趣味ですよね?
イトウ いやいや。「ロリコンのすべて」を一番敬遠しそうな、ロリ系の女子にこそ、この作品の良さを知ってもらいたい! という作り手としての想いからです。

いやあ…
このフライヤーはちょっと


帯金 え、角井ちゃんは、このチラシで、「ロリコンのすべて」ってタイトルのお芝居だよって言われたら、観に行く?
角井 いやあ…このフライヤーはちょっと。

A「ロリコンのすべて_flyer

帯金 だよね。私も、初演の時このチラシが恥ずかしくて、人に配れなくて。親や親戚に見つかったらマズいって…ブログの更新もしなかった。人生で一番ヒッソリ芝居してたよ(笑)。
角井 それ、チラシ作った意味ないじゃないですか。
イトウ まあ「この絵じゃ載せられない」っていうWEBサイトや雑誌もあったしね。しょうがないから、絵の部分を黒塗りにして載せてもらったり。
角井 戦時中の教科書みたい。

B「ロリコンのすべて_flyer


「ロリータ」って小説を
読んで号泣して


角井_プロフィール
角井 チラシのイラストもなんですけど、やっぱり、タイトルの「ロリコン」て言葉がハードル高いです。なんか、アブノーマルというか、変態、いやらしいってイメージがあるから。
帯金 そもそも、なんでこんな「ロリコン」のお芝居をやろうと思ったんですか?
イトウ ウラジミール・ナボコフって人が書いた「ロリータ」って小説(注1)があって。「ロリコン」の語源になった本なんだけど。学生の時読んで号泣して。
角井 号泣したんだ…。
イトウ この小説が色んな国で規制にあってて、何度も発禁になってるんだよ。で、今の日本でも、イラストとか、マンガとかで、子供が性的に描かれるような作品は規制していこうって流れがあって、結構議論になってるから。そういう創作物は本当に「邪悪」なのか…っていう社会への問いかけとして、その「ロリータ」を下敷きに「ロリコンのすべて」を作ったんです。
角井 はあー、意外と真面目なテーマの演劇なんですね。
帯金 本当かなあ…単にイトウさんの性癖なような。今日だって、なんだかんだ言い訳して、角井ちゃんにランドセル背負わせたかっただけじゃないですか?
角井 え、そうなんですか?
イトウ いや…まあ、あの、なに……。
帯金 何リアルに言い淀んでんすか。

なんでロリコン的な作品て
規制されるの?


帯金 ていうか、なんでロリコン的な作品て規制されるの?
イトウ 作品に影響受けて、事件起こす人がいるからでしょ。
角井 あ、私、実は結構そういう表現の自由的なやつには興味があって。高校の時に公民の授業でやったりしたんですけど。私はそういう「創作」や「表現」は「いい」と思ってる側なんですよ。
帯金 確かに、そういうの全部ダメって言ったら、ミステリーとか刑事ドラマとかもダメになっちゃうしね。毎回、人の殺し方教えてるようなものだし。
イトウ 実は、イトウは逆の意見で…。
角井 え、そうなんですか?
イトウ うん。もちろん、表現の自由は大事なんだけど。「邪悪なもの」を描いた作品自体は、やっぱり「邪悪」だと思うんだよ。だって、それを見た人が「真似してみたい」って全然思えない作品は作品としてダメじゃん?
角井 そっか。

邪な想いを他人に向ける
ことが、悪とは限らない

イトウ_プロフィール
イトウ 例えばさ、イトウが…いや、角井さんに彼氏がいたとして、
帯金 どうして「イトウが」を「彼氏が」に言い換えたんですか。
イトウ その人が実はロリコンで、角井さんの「小っちゃくて子供みたいな体型」が可愛くて好きだよって言ったら、それは嫌?
角井 うーん、嫌ではないです。彼氏が私を好きなら、私のそういう部分を好きって言うこと自体は普通じゃないですか。むしろ嬉しいかなあ。
イトウ そうなんだ。でもさ、本物の女子小学生じゃないって意味では、さっきのイラストやマンガと角井さんて同じじゃん? だったら、そういうのを規制しようって話は、原理的には、角井さんも規制した方がいいって話になるよね。
角井 ああー確かに(笑)。
イトウ だけど、角井さんの事を邪な目で見るの禁止って言われたら、その彼氏さんもちょっと困るっていうか。
角井 ですね。
イトウ 邪な想いを他人に向けることが、必ずしも悪とは限らないっていう。

文部科学省推薦みたいな
お芝居になればいい


帯金_プロフィール
帯金 …みたいな、ことをロリコン側のイトウさんと、ロリ側の角井ちゃんが、握手するような感じで一緒に考えていこうって、作品なんですよね? 「ロリコンのすべて」って。
イトウ そうそう。ロリコンの人と、ロリの人は必ずしも敵対してるわけじゃなくて。可愛いって言われれば嬉しかったりもするわけだし。その両方の人たちが、同じ客席で、同じ問題を考えるお芝居になったらいいなって思うんですよ。
角井 ああーなるほどです。ちょっと興味湧きました。
帯金 え、観たくなった? お芝居。
角井 観たく…なりました!
イトウ じゃあ、これで、少なくともロリ系の女子は、説得成功ってことでいいのかな(笑)。
角井 説得されました。観に行きます!
イトウ よし! こんな調子で、どんどん女性のお客さんの偏見を解いていきたいわけだけど。次は、どんな女子に話聞いてもらえばいいかのかな。
帯金 やっぱ、お母さんとかじゃないですか? 実際に小学生の子供がいる。
イトウ ああーたしかに、そういうお母さん方からお墨付きもらえたら、女性のお客さんも安心して観に来れそう。
帯金 最終的には、文部科学省推薦みたいなお芝居になればいいですよね。
イトウ ハードル高いなあ…。

メインカット
イトウシンタロウ(右)
静岡県出身。ナイスストーカー主宰で作演出。劇作の他、ワークショップのファシリテーターとして高校演劇部への出張講習、ゲームアプリの企画・シナリオ等も。

帯金ゆかり(左)
おびかねゆかり○山梨県出身。女優。ナイスストーカー設立以来全作品に出演する看板俳優。「ロリコンのすべて」初演では"もう一人の主人公"として女子高生役を好演。

角井泰恵(中)
かくいやすえ○香川県出身。慶応大2年の女子大生。WSオーディションを経て2017年末に「ナイスストーカー短編演劇見本市」に出演、女子小学生役を演じる。高校時代は演劇部で全国大会に出場。小さめ女子。※「ロリコンのすべて」には出演しません。


(注1)
ウラジミール・ナボコフ著『ロリータ』(原題:Lolita)
小説「ロリータ」
12歳の少女ロリータと中年大学教授との性的に倒錯した恋愛関係を描き「ロリータ・コンプレックス」の語源となった小説。1955年にフランスで刊行されて以降、欧州各国で何度も発禁となった。

【ロリコンのすべて」とは?】
舞台A355舞台B281

2015年12月に上演されたNICE STALKERの代表作。「それは邪悪か?」というコピーと共に、「温泉に入る全裸の幼女」が描かれたセンセーショナルな宣伝ビジュアルが話題となった。佐藤佐吉演劇賞2015の6部門受賞。正式タイトルは『表現の自由よりも大切なこと、あるいは無害な芸術の話「ロリコンのすべて」』
●あらすじ 遠い未来、考古学者達によって発掘された、ロリコン教師の手記が、二次創作の演劇作品として上演される。担任教師の坂倉に想いを寄せる11歳の少女・白勢。坂倉は、その想いを拒絶し続ける一方で、彼女の裸の写真を隠し持っていた…。

【公演情報】
フライヤー

NICE STALKER(ナイスストーカー)
表現の自由よりも大切なこと、
あるいは無害な芸術の話
『ロリコンのすべて』

作・演出◇イトウシンタロウ
出演◇帯金ゆかり フジタマコト 藤本紗也香 山本光
佛淵和哉・白勢未生 南米仁 善雄善雄 宮武佳央

8/15〜19◎ザ・スズナリ


※ロリコン割引=身長149cm以下の女子は観劇無料、受付にて測定アリ

ナイスストーカー『ロリコンのすべて』


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