DSCF8337
小林大輔  永田涼香  大西弘記

女子サッカー一色の高校3年間を過ごし、今ではTOKYOハンバーグの看板女優に成長した永田涼香と、小学生の頃からサッカーを始め、高校は名門校の三重県立四日市中央工業高校でサッカーに打ち込んだTOKYOハンバーグの主宰で劇作家・演出家、大西弘記がタッグを組んで、初のひとり芝居に挑む。
2人のもう一つの共通項である関西弁で紡ぐ、ある女性の物語。
なぜ、いま、この作品を上演するのか。稽古初日の7月中旬、稽古に入る直前に話を聞いた。

親友に捧げる弔い試合ならぬ、弔い芝居。

——企画書には、「平滑筋肉腫で闘病する男の、その日が来るまでを見守り続けた女の物語」とありますが、なぜこの題材になったのですか。
大西 ぼくには高校3年間、同じクラスでサッカー部でも一緒に過ごした関本恒一という親友がいて。彼は大坂出身だったんですけど、監督からスカウトされて、ぼくの地元の三重県立四日市中央工業高校のサッカー部に来ていて。3年間そこで青春をともにしたんです。高校を卒業して、彼がプロに入って活躍するのが嬉しくて、試合に応援にも行ったし、彼もぼくのお芝居を観に来てくれたりしたんですけど、彼は約1年半の闘病の後、2016年に亡くなってしまい・・・。弔い試合じゃないですけど、いつか彼のことを作品にしたいなと思っていました。
 けど、関本を直接的に書くのは、ちょっと苦しいし、劇作家としてひねりもないなと思って。関本には無念ながらにも、遺していった結婚を約束した相手がいて。その人の視点で関本を書いたらどうなんだろうって思って。同時にうちの永田のひとり芝居をしようと考えていて。最初、何にするかいろいろ案があったんですけど、これがちょっといいんじゃないかと思って。関本と結婚する約束をしていた、祐美子ちゃんにその話をしたら、「ぜひ書いて欲しい」って。関本のお母さんにも「本当にうれしいです」って言っていただけて。今、いろんな人に連絡をして作品にしようとしているところで、ぼくなりの追悼です。
——特に、この作品に向けて、準備をしていることなどはありますか?
永田 題材が、深いとか、単純に重いとかじゃなくて、誰でもありうる、命に関わることだから。それを当ててくださるっていうことは、23年間しか生きてきてないですけど、わたしが経験してきたこと、今まで生まれてから生きてきた力が、命っていうものと、ちゃんとぶつかれるんじゃないかと思ってくださったのかなと感じるので、そこは応えたいです。


ひとり芝居は、必ず成長するんです。

——ひとり芝居をやろうと思ったのはどうしてですか?
大西 (永田)涼香は今、すごく成長している最中で。今年の5月も主役をやったんですけど、この成長期にどんだけしんどいことをさせられるかと考えていて。決して飛び抜けた才能があるとか、本人を前にして言うのもアレですけど、すごい美人とかいうわけでもなく。愛嬌があるのが一番だと思うんだけど。若いうちからそういうことを経験させることによって、今回のひとり芝居がどこまでできるかは分かりませんが、後からついてくる、得るものっていうのはきっとある。
——ひとり芝居は大変かなと想像しますが、いかがですか?
永田 独白はわりと覚えやすいんですけど、会話の部分のセリフがあんまり入ってこなくて。相手がいないと大変だなぁって思っているところです。いつもは相手がいて、相手のために芝居をするのが当たり前ですけど、相手がいないというのは難しいなぁって。
——キャッチボールの相手がいないんですもんね。
永田 相手のことまですごく自分で想像してやらないといけないから。
大西 ちょっと器用だったら、やれちゃいますからね。でも涼香はどっちかと言うと不器用なタイプなんで、相手を探すという作業から入ったのは、単純に言うと嘘っぽくは見えないと思います。上手には見えないけど、嘘っぽくなく本当に見えるように追求していくっていうのが前からの課題ではあって。だいぶできるようになってきているので、楽しみなところです。

DSCF8357

お客さんにどれだけ想像してもらえるか。

——冒頭部分の台本を読ませていただきましたが、いろんな方が登場していて、世界の広がりを感じました。
大西 いつもと違う題材ですし、ひとり芝居を書くのも初めてで。ひとり芝居にもいろいろな手法があるんですけど、今回はオーソドックスに対話をしているセリフと独白で、どこまで涼香が演じる祐美子という役から、実際には登場してこない、ぼくの亡くなった親友が、お客さんに想像してもらえるかなぁって思いながら書いています。
——台本を読んでみて、永田さんはいかがですか?
永田 最初は難しいなぁって思ったんですよ、単純に。どうやっていない人を伝えられるんだろうって。
大西 ひとり芝居って言っても、相手がいて話している言葉ですからね。今、台本を書いていてもひとり芝居を書いている感じもしないですし。やっぱりその、セリフの中では、ただ独り言を言っているわけではなく、誰か、相手の言葉があって、セリフを発しているわけですから。状況を説明し過ぎないのも不親切だと思うので、どこまで書いたら、お客さんに寄り添って行けるかなって。あとは永田涼香がどこまでがんばっていけるかなって。
永田 寄り添うとありましたが、普通、登場人物が複数いたら、誰かに感情移入して観ていくじゃないですか。主人公に限らず、脇役でも、「この人の気持ち分かるなぁ」って思いながら物語を追っていくと思うんです。でもひとり芝居だとわたししかいないから、わたしに感情移入するしかない状況なので、そこはグッと引きつけて行かないといけないなと。
——なるほど。台本が関西弁で書かれていましたが?
永田 今回、運命的だと思ったのは、祐美子さんは三重県の伊賀上野という地域のご出身で、そこは大阪が隣なので言語が関西弁なんだそうです。ひとり芝居の台本は標準語かなぁと思っていたら、大西さんから「関西弁で書いてるよ」って聞いた時、わたし大阪出身だから、すごいうれしくて。それで勝手に親近感も湧きました。
 本当に大西さんと出会ってここまで来て、このタイミングで芝居をやることになって、やるべくしてやることなのかなって。これからたぶん、この作品は始まっていくなと思います。8月5日の千穐楽がゴールではなく、そこからどんどんどんどんこの作品が続いて行くような気がしています。
大西 照明や音響などのスタッフさんはいつもやってくれてるメンバーですし、今回は劇団員の(小林)大輔が舞台監督として稽古場に常駐してくれるので、安心して作品に打ち込める環境は整っています。
小林 自分は役者なんで、今回の作品は特に観てみたいですね。劇団の仲間として、劇場で始まったらお客さんが永田涼香を観る空間になるよう、スタッフとしてがんばります。永田涼香のために。

【プロフィール】

DSCF8382

大西弘記(左)
三重県伊勢市出身。2006年、自らの作品を上演するために、TOKYOハンバーグを立ち上げる。近年、外部公演への脚本提供・演出なども手がけている。

永田涼香(中)
1994年大阪府出身。中学時代に演劇部、高校では女子サッカー部。高校卒業後、桐朋学園芸術短期大学に入学。卒業後はフリーの役者として活動後、2016年、TOKYOハンバーグに入団。

小林大輔(右)
1980年長野県出身。大駱駝艦白馬村野外公演、龍昇企画+温泉ドラゴン合同企画、ハイリンドなど多くの舞台に出演後、2017年、TOKYOハンバーグに入団。趣味はヨガ。

【公演情報】
karatachi-2
TOKYOハンバーグ『枳殻の容』
8/2〜5◎下北沢 小劇場 楽園
作・演出◇大西弘記
出演◇永田涼香


【取材・文・撮影/矢崎亜希子】


『最遊記歌劇伝-異聞-』


『枳殻の容』公演チケットも日時・枚数限定でお得に販売中!shop kick

nikkan engeki