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OSK日本歌劇団の男役スター真麻里都の退団公演『My Dear』が大阪天王寺の近鉄アート館で、本日、幕を開ける(9月2日まで)。

『My Dear〜OSKミー・&マイガール』は、1937年に英国ロンドンで初演された『Me And My Girl』を基に、主演の真麻里都の個性と魅力を主人公に投影させて、麻咲梨乃の脚本・演出・振付、玉麻尚一の作曲でOSKバージョンとして作られたミュージカル。ハックニーの養護施設で育ち、施設に慰問に訪れたダンサーチームのショーステージを観て以来、いつか自分も人々に希望を届けるエンターティナーになりたいとの夢をもって、恋人のジル(千咲えみ)をはじめ、養護施設の仲間たちとナイトクラブで踊っている青年ビリー(真麻里都)が、ロンドン郊外の老舗ホテルの跡継ぎだったことが発覚して起こる、様々な顛末と人間模様が温かな目線で描かれた作品になっている。
 
基本的な人物設定や、人間関係の多くを原作に準拠しつつ、主人公をダンサーにしたことが独自色を出していて、劇団全体としてダンス力に優れたOSK日本歌劇団の中にあっても、更に飛びぬけたダンサー男役として高い人気を博してきた真麻のダンス力がフルに発揮されているのが嬉しい。
特にハックニーのナイトクラブでのダンスシーンには、ヒップホップ系の現代的なシャープな色合い。高級ホテルのショーステージでは社交ダンスにも通じる優雅なダンス。更にそれらが発展していくフィナーレのショーシーンと、芝居と共に「踊る真麻」の素晴らしさが、多彩なダンスシーンによって終始堪能できる仕掛けが心憎く、口で言うより足で語った方が早い…という設定で、ドラマの中でビリーが再三タップを踏む流れも洒落ている。後半になるに従ってノーブルになってくる役柄と、真麻の個性がよくマッチしたのも功を奏して、恋人ジルに向けるまなざしも温かく、どちらかと言えばクールな役柄でヒットを飛ばしてきた真麻の二枚目ぶりが鮮やかだ。

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ジルに扮した千咲えみは、可憐な容姿と娘役としての技術の高さがかねてより注目を集めていたが、ここ1〜2年で立て続けにヒロイン役や、それに準ずる大役を経験してきた蓄積が生き、真っ直ぐにビリーを愛する健気なジル役を繊細な演技力と伸びやかなダンスで好演している。歌声も美しく、誰もが主人公カップルを応援したくなる作品に相応しいヒロインぶりだった。

ホテルの顧問弁護士アーネストの愛瀬光は、眼鏡に渋いスーツ姿が良く似合い、超真面目人間でありつつどこかとぼけてもいる人物の造形が巧み。劇中に登場しない妻の存在をマリッジリングをさりげなく示してアピールする等、小技も効かせた中におおらかさがあるのが愛瀬ならでは。劇中もっと歌って欲しい…と思って観ていたが、この人の歌唱力を温存していた理由が見事に結実するフィナーレも、聴きどころとして注目して欲しい。

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ビリーの従姉妹シンディの白藤麗華は、お金大好き、贅沢大好きなお嬢様の造形に一点の嫌味もないのが、力量と蠱惑的な持ち味の賜物。ビリーに対する関心も、単なる財産目当てだけではなく、カッコイイ男性だなとときめいてもいるのが伺えるのも面白い。そんな好奇心旺盛な女性がちゃんとフィアンセの元に帰る件から、男性目線の古さを払拭した麻咲の脚本にきちんと応えたシンディ像だった。

そのシンディのフィアンセで、ビリーの従兄弟フィリップの翼和希は、ちょっと気弱で子供っぽいお坊ちゃまとしての表現が一貫していて、チャーミングさが抜群。その雰囲気と、OSK日本歌劇団次世代を担うホープであることを的確に示す、男役としての芯の強さが感じられるフィナーレナンバーでのキリッとした二枚目男役像とのギャップが存分に楽しめ、やはり主演経験を重ねた人ならではの成長が如実に現れた存在感だった。

ホテルのバトラーのエマの遥花ここは、ホテルの従業員としてのキャリアをきびきびとした動きで颯爽と表している。それでいてどこかユーモアセンスも醸し出すのが、イギリスらしさと大人の女性像を示して魅力的だった。エマとほぼ相棒の形で登場するコンシェルジュのガストンの登堂結斗は、際立った長身に男役としての押し出しが加わって、急成長中の勢いを感じる。ストーリーテラー的な要素もある役柄をよく務めていて、更に大きく伸びていって欲しい人材だ。

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ビリーのダンスチームのメンバー実花もも、栞さな、由萌ななほ、りつき杏都、依吹圭夏、水葉紗衣は、それぞれチームの中で役柄を個性的に演じていて、ビリーとの連帯感を創り出している。去りゆく真麻から公演を通じて学べるものも大きいだろう。中でも栞にビリーが不在の間にチームをまとめているのは、この青年ハリーだなと、自然に感じさせる存在感が備わっていて頼もしい。このメンバーは全員ホテルの従業員も演じているが、しばらくそうとは気づかせないほど、全員がヘアメイクや立ち居振る舞いに精一杯変化を出しているので、是非一人ひとりも注目して欲しい。

そして、この公演の重石的存在の二人。ビリーの叔母ソフィアの朝香櫻子は、一挙手一投足に凛とした気高さがあり、台詞発声の美しさもこの役柄に打ってつけ。なぜソフィアがホテルからエンターテイメントを頑なに排除しているのか?が、今回のドラマの肝でもあって、彼女の変化がそのまま作品のテーマにも通じる重要な役柄を、朝香ここにあり!の力量で示している。 

更に特別出演の格で登場したホテルの支配人ジョージの楊琳は、寸分の隙もない立ち姿から、イギリス紳士のダンディズムを体現して鉄壁。口ひげもよく似合い、鷹揚でウィットにも富む人物造形で真麻を支えた。同じ近鉄アート館での公演だった楊の主演公演『ロミオ&ジュリエット』では真麻が特別出演して支えていたことを思うと、二人の邂逅には殊更感慨深いものがあり、二人がメインのフィナーレナンバーは涙なくしては見られない。真麻、楊、悠浦あやとの三人が切磋琢磨していたOSK日本歌劇団の美しい時代が、OSKが迎える輝く100周年への礎となることを信じている。

何よりも、男役真麻里都の集大成をスタッフ・キャストが一丸となって飾ろうとしている熱さが伝わる公演で、真麻の男役芸が次代のスターたちに継承されていくことを願う時間となっていた。

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8月29日通し舞台稽古が行われた直後、主演の真麻里都が今の心境を語ってくれた。

【真麻里都インタビュー】

──今、通し舞台稽古を終えられての気持ちを教えて下さい。
ただ嬉しいです。もうお稽古場から本当に楽しくて仕方がなかったのですが、実際に舞台に立ったら更に楽しいなという気持ちでいっぱいになっています。
 
──以前から思い入れのある作品ということで『ミー&マイガール』を挙げていらっしゃいましたが、今回はそのオマージュを含めたOSKバージョンという作品になりましたね。
今回の公演で退団させていただくことになり、麻咲梨乃先生が私自身のことを作品の中に色々盛り込んで創ってくださったことが本当に嬉しかったですし、それによってOSK日本歌劇団ならではの『My Dere』になったなと思っています。
 
──主人公のビリーがダンサーで、観る人に希望を届けるエンターティナーになりたいという夢を持った青年ということでしたから、最後のショーステージなどはビリーと真麻さんが完全に重なって感じられました。
自分でも高まるものがあります。私はこういう等身大の青年という役柄は今まであまりやってこなかったので、そういう意味でも念願が叶いましたし、自分の気持ちもビリーの中にたくさん投影されていると感じます。
 
──この役を男役の集大成と考えていらっしゃるともお聞きしましたが。
そうですね。これから色々なことに挑戦していきたいという気持ちは持っているのですが、男役はこのビリー役が最後というつもりで取り組んでいます。
 
──100周年も近づいてきたOSK日本歌劇団の中で、とても大きな存在だった真麻さんが退団されてしまうのは本当に寂しいのですが、今、改めてOSKへの想いは?
私がOSKに抱いている感謝や想いにも、この『My Dear』のビリーと、ビリーが踊っているダンサーグループの「アンフィニー」にダブるものがあります。ビリーも彼らもどうにかして舞台に立ちたい、ショーを創りたいと思っていますが、私もまさにその想いを持ってOSKに入りました。それをこれからの子たちにも受け継いでいって欲しいと願っています。今、OSKは毎年松竹座や、新橋演舞場といった大きな舞台に立たせて頂いていますが、それは決して当り前のものではないんですね。ですからそのことに常に感謝を持ち、今の舞台が次の舞台を決めるものになるという気持ちを忘れないで、歩んでいって欲しいです。
 
──関西だけの公演ということで、こちらまではいらっしゃれない方も多いかと思いますが、真麻さんをまたOSKを応援していらっしゃる方たちにメッセージをお願いします。
これまで応援してくださった皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。9月2日の千秋楽まで精一杯舞台を務めますので、劇場でお会いできますことを楽しみにしています。また新橋演舞場公演などでお声をかけてくださった、関東等、遠方の多くの皆様にも、OSK日本歌劇団の男役としてはこの公演が最後になりますが、またどこかでお会いできたらなと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。

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〈公演情報〉
『My Dere〜OSKミー&マイガール〜』
脚本・演出・振付◇麻咲梨乃
音楽◇玉麻尚一
出演◇真麻里都 愛瀬光 白藤麗華 遥花ここ 翼和希 千咲えみ 実花もも 栞さな 由萌ななほ りつき杏都
登堂結斗 依吹圭夏 水葉紗衣
 /楊琳(特別出演)/朝香櫻子(特別専科)
●8/30〜9/2◎近鉄アート館(あべのハルカス近鉄本店ウイング館8階)
〈料金〉SS席7,500円 S席6,000円 U-25・S席5,000円 U-25・A席(自由席)4,000円 A席学割(自由席)2,000円(税込)
〈お問い合わせ〉OSK日本歌劇団  06-6251-3091 (平日10時〜18時)
http://www.osk-revue.com/2018/08/01/mydear.html
 


【取材・文/橘涼香 写真提供/OSK日本歌劇団】




『DANCE REPUBLIC form of desire』


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