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女優で演出家の山野海は、作家・竹田新としても活躍中だが、その所属劇団ふくふくやの新作、〜真実なんてクソくらえ〜『ウソのホント』が、9月20日から30日まで下北沢駅前劇場にて上演される。
 
ふくふくやは、1999年春、女優・山野海を中心に設立。毎回多様な客演を迎え、家族、親子、兄弟、夫婦、仲間、恋人の間に渦巻く“情”を、作家・竹田新の独特の感性で描き出してきた。その舞台は笑って泣く人情喜劇ではなく、「笑いながら泣かされる、泣きながら笑わされる」世界で、上演後には「感情のジェットコースターに乗せられた」と比喩されるほど、観る者の心を激しく揺さぶってくる。 
 
そのふくふくやが、今回の『ウソのホント』では、なんと風俗の世界に挑む!  今回の作品の内容について、作家・竹田新でもある女優の山野海、演出の司茂和彦、出演の岩田和浩と浜谷康幸に話してもらった。

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岩田和浩・司茂和彦・山野海・浜谷康幸

竹田新が想像する性風俗はフワッとしている

──今回は風俗をテーマに描くそうですが、それはどんな意図で?
山野 ふくふくやとしては、劇団員もベテランになってきたことで、色々な方向性に挑戦できるようになってきたと思っているんです。そこで、ふくふくやならではの要素は大事にしながら、やったことのないものも手がけてみようと。もともと私自身は下ネタとHネタが苦手で、これまでは踏み込んでこなかったのですが、いい歳にもなったことですし(笑)、大人だからこそ書けるものを書こうと。風俗を取り上げるにしてもふくふくやらしく、人間としての本質に視点を置いて書けるのではないかと思ったんです。そんなときに紹介していただいたのが、風俗カウンセラーで、“性と愛の救世主”として活動されている竹田淳子さんで、彼女は面白く楽しくエロをやっていらして、すべてを笑い飛ばしていく感じがすごく素敵なんです。彼女と出会って、あんなふうに面白くおかしく、みんなが幸せになるように、取り上げてみたいと思ったんです。
──ということは、素材が風俗でも、中身はいつものふくふくやということですね。
山野 そうです。いつも観ていただいているような、涙あり笑いありで、最後はカラッと終わっていくものになります。
──演出の司茂さんや俳優の方々は、その台本を読んでいかがでした?
司茂 これまでやってこなかった題材なんですが、中身はふくふくやらしく、くだらなくて(笑)、笑えるもので、その中で弱者というかそういう部分へも話を広げていく。必死で生きている人たちの話になってます。
岩田 先ほど話に出た竹田淳子さんを取材したときに僕はご一緒できなかったのですが、取材の録音データを聞かせてもらって、彼女の話がすごく面白くて、できればこの作品を観る前に読んでいただきたいと思い、取材記事として劇団のHPに掲載しました。竹田淳子さんには、「風俗」という言葉の中にある負のイメージが一切ないし、取材の録音データを聞いたとき、清々しい感じさえしたんです。そこが台本には生かされていて、すごく面白い本になってると思います。
浜谷 いつもの竹田新が書く台詞の面白さや会話の面白さは、今回もちゃんとあって、プラス竹田新が想像する性風俗というのが、めちゃめちゃフワッとしてるんです(笑)。そのフワッとした想像が台詞になっているので面白くて、何回読んでも笑ってしまう台詞もあったり(笑)。それは知らないで書いているからこその面白さだし、だからこそ逆に核心を突いてる台詞もあったり。そういうところはいつもの台本より新鮮で面白く読みました。

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ビルの屋上にある清掃のおばちゃんの控え室で

──舞台になるのは、風俗店の内部なのですか?
山野 いえ、性風俗のお店ばっかり入っている5階建ての雑居ビルの屋上です。そこはこのビルの清掃員の控え室というか用具入れハウスになっていまして、そこで清掃員のおばちゃん2人が休んでいると、ソープランドの店長が来たり、オッパブの女の子が来たりして、色々な話をしていくんです。私と客演のかんのひとみさんが清掃のおばちゃんになります。
──いわば風俗店のバックステージものという感じでしょうか?
山野 そうです!そうです(笑)。
──その中で皆さんの役どころは?
岩田 僕はソープランドの店長で、業界用語で「色恋営業」という言葉があるんですが、そこで働く女性たちを手なずけて惚れさせるわけです。そうすると女性たちは店長のために一生懸命に働く。そういうことをしています。
山野 悪い男です(笑)。みんなに惚れられる役なので、色気を出してもらわないといけないんです(笑)。
岩田 がんばります(笑)。
浜谷 僕はこのビルにあるバーの店長です。妻子を養うために、ある特殊なバーで働いていて、そのバーについてはあまり詳しくは言えないんですけど(笑)、とにかくこれまでにやったことの役柄に挑んでいます。すごく気に入ってますし、楽しいです。
山野 サラリーマンの方たちとか、そのバーに来て癒されるんです。
浜谷 すごく世のため人のためになってます(笑)。
──そのほかにどんなキャラクターが出てくるのですか?
山野 本当は貧乳なのにオッパブでNO.1の女の子とか(笑)。アダルトグッズを売っている店の店長も出てきます。彼は熱血漢で、アダルトグッズがあればこの世界から戦争はなくなると信じてるんです。あとは人情篤い弁護士さんとか。
岩田 まずいラーメンを作る謎の中国人店長も(笑)。
山野 ビルの1階にそのラーメン屋さんがあるんです。
浜谷 それに、そのビルに初めてやってくる人も。
山野 5階がアダルトビデオの制作会社で、そこに新社長として抜擢されてやってくる青年がいて、関口アナムくんが演じます。
岩田 それからビルのオーナーも出てきます。
──まるで現代日本の縮図のようなビルですね。それぞれの職業は服装などで見せていく感じですか?
司茂 そうですね。それと会話の中で仕事やそれぞれのキャラクターは、うまく説明されています。個性的な人たちばかりなので、かなり楽しめると思います。
──風俗の仕事の話も出てくると思いますが、性的な用語などの表現は難しくありませんでしたか?
山野 でもそんなにエグイ言葉は出てこないです。せいぜいアダルトグッズの名前くらいで。風俗の中にどっぷり漬かっている人たちなので、逆にそういう話を改めてすることは少ないんです。
岩田 僕の役でも仕事柄少しは出てきますが、そういうワードばかりということは全然ないので、女性のお客さんも安心していらしてください(笑)。
司茂 それで引かれてしまうというのは、作っている側としても困りますからね(笑)。
山野 やっぱり女性の私が書いているので、女性のお客様が観たくない舞台は作りたくないので、そこは安心していてください。

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ホントの中にウソがあり、ウソの中に真実がある

──とはいっても人間の裸の部分を描き出す芝居かなと思うのですが、この作品で一番伝えたいところというのは?
山野 結局タイトルの通り「ウソのホント」ということで、ホントの中にウソがあり、ウソの中に真実があるということなんです。小さい頃、ウソはダメよと教えられましたが、大人になるとウソの中に真実があったり、ホントの中にウソが混じっていたり、それが世界を作っているということもわかってくる。それにウソが全部悪いわけではなく、人を傷つけないためのウソもありますよね。それは「ついていいウソ」で、そういうことも含めて、大人になるとウソとホントの境界線が緩やかになるし、時にはひっくり返ったりします。でもそういうことが活力になったり、生きていく糧になったりしていると思うので。
──その「ウソのホント」が一番必要なのが、風俗の世界ということでしょうか?
山野 いや、それは私自身も必要ですし、どの世界でも生きていくうえで必要だと思います。たとえば水商売は、男性に夢を与える仕事ですよね。それは我々もそうで、観る方に夢を与えたい。この作品も少しでもそういう力になればいいなと思っているので。
司茂 やっぱり風俗というのはちょっと特殊な世界でから、イヤだな思ったり、下に見る人がいたりする。でもそういう世界でも「どっこい生きてるんだぜ」と。そういう、人間の生命力とか凄さ、そこを届けられたらいいなと思うんです。
岩田 どんな世界でも同じで、色々なことが日々あるわけで、でも笑って過ごしていたら楽しいよね、というのがふくふくやで、そこを今回も伝えられたらと。
浜谷 切り口は性風俗の話ですが、焦点は人間模様なんですね。ですから女性の方にもぜひ観ていただきたいし、観終わったらいつものふくふくやの、スカッとした気持ちで劇場をあとにしていただけると思っています。
山野 私の持論で「笑ってたらなんとかなる」というのがあって、みんなも今話していたように、同じ生きていくなら笑って生きていったほうがいいよねと。それが今回のテーマの1つでもあるんです。

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いつものふくふくやよりさらに深く面白い作品に

──この作品を観た方の中には、性風俗への見方が変わる人もいるかもしれませんね。
山野 そうなったらとても嬉しいです。性風俗で働く方々も同じ人間ですよということ、そして、商売でやっているとしても、その人の生きる力になっている場合もあると思うので。それに、今回はお客さんの立場の人は登場しませんが、人間同士として交流していたり、そこで救われる人たちもいますので。
──書くためには相当色々なことを調べられたのでしょうね。
山野 イヤというほど色々なものを調べたり見たりしました(笑)。でも調べるとドラマが無限大にあって、どこ引っ張ってきても面白いので。
──今回はその中で厳選したエピソードということですね。
山野 そうです。自信を持って観ていただけます。
──では最後に、観る方へ一言ずついただければ。
司茂 いつものふくふくやです。笑えます。それで少し泣けます。観た方にはきっと「楽しかったね、スカッとしたね」と言っていただけると思います。遊びにきてください。
岩田 風俗って誰でも興味あるジャンルだと思うんです。そこを明るく楽しいエロにして、お届けしたいと思っています。
浜谷 チラシに書かれている「苦しいことなんか、フタしちゃいなさい。真実なんかクソくらえ!ウソのホント」という言葉、観てくださったあと、それが腑に落ちていただけると思ってます。そして、そこから色々なことを考えていただけるかなと。そういう意味では、いつものふくふくやよりさらに深く面白い作品になっていると思います。乞うご期待です。
山野 男性はもちろん女性が来てくださっても絶対に楽しめると思います。人間がどう生きているか、その瞬間を切り取って観ていただきます。自信作です。ぜひ観ていただければ嬉しいです。

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岩田和浩・司茂和彦・山野海・浜谷康幸

やまのうみ○東京、新橋生まれ。女優・劇作・脚本家。劇団ふくふくやを主宰し、竹田新の名義で脚本も手掛ける。1999年劇団ふくふくやを立ち上げ、女優として全公演に出演。また全作品の脚本を執筆。2009年、ドラマ『救命病棟24時』で人気に。2013年、NHK大河ドラマ『八重の桜』へレギュラー出演。2016年、ゴツプロ!第1回公演『最高のおもてなし!』で演出家デビュー、また幻冬社で書籍化、作家としてもデビューを果たす。

しもかずひこ○1999年、劇団ふくふくや結成以降、全作品の演出を手掛ける。ミュージシャン石川よしひろのライブの演出、44 Produce Unit『自由を我らに』、劇団七福人『グズたま』など外部での演出も多数。

いわたかずひろ○茨城県出身。劇団ふくふくやの『すかしっぺ』(2008年)、『おろろん。』(2009年)に客演。以降、劇団員として参加。ドラマ『セーラーゾンビ』(TX)『梅ちゃん先生』(NHK)『新警視庁捜査一課9係#CASE7』(テレビ朝日)『下流の宴』(NHK)土曜プレミアム『これでいいのだ!赤塚不二夫伝説』、『ようこそ、わが家へ』、『民衆の敵』(CX)など映像でも活躍中。最近の舞台は芝居噺『名人長二』。

はまややすゆき○東京都出身。2011年『ずんばらりん。』で劇団ふくふくやに初参加。2015年ふくふくや劇団員として入団。ゴツプロ!創設メンバー。主な出演作品は、映画『哭きの竜』、『HERO 』ドラマは『八重の桜』、『コードブルー THE THIRD SEASON』舞台は『どんどろ』『キャバレーの男たち』『カランのコロン』『守ってあげたい』『日の本一の大悪党』など。『追憶』では演出を手がける。

〈公演情報〉
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ふくふくや第19回公演
〜真実なんてクソくらえ〜『ウソのホント』
脚本◇竹田新
演出◇司茂和彦
出演◇山野海 塚原大助 岩田和浩 かなやす慶行 中村まゆみ 浜谷康幸/
関口アナム 石倉良信 山本啓之 かんのひとみ
●9/20〜30◎下北沢駅前劇場 
〈料金〉前売 4,500円 当日 4,700円/福ふく割り 4,000円(全席指定・税込)
〈一般発売日〉2018年7月20日(金)  11時〜
〈公式HP〉http://fukufukuya.net/home/
〈お問い合わせ〉info@fukufukuya.net
〈公式twitter〉 @fukufukuya_2013ふく



【取材・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】






トム・プロジェクトプロデュース『男の純情』


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