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昨年、紀伊國屋ホールで上演した話題作、芝居噺『名人長二』で、初の企画・脚本・演出・主演という4役を果たし、高い評価を受けた豊原功補。彼が旧知の仲である脚本家の坂元裕二と初めてタッグを組んだ舞台、坂元の書き下ろし新作『またここか』が、DDD青山クロスシアターで、9月28日、開幕した。(10月8日まで)

父親が残したガソリンスタンドを営む青年と突然現れたその異母兄、ガソリンスタンドのバイトと父親が死んだ病院の看護師、男女4人が繰り広げる奇妙で危うい愛の物語。
坂元裕二脚本ならではの濃密な台詞で紡ぐこの作品で、初舞台にして主演をつとめるのは吉村界人。『モリのいる場所』、連続ドラマ『スモーキング』をはじめ、映画・テレビでの活躍がめざましい若手俳優だ。その吉村と、今回は演出に徹するという豊原功補に、本作の内容と役柄、またお互いについて、語り合ってもらった「えんぶ10月号」のインタビューを、公開ゲネでの写真の一部とともにご紹介する。

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 吉村界人・豊原功補

人が覗かないようなところを覗き込むのが坂元作品

──今回、坂元裕二さんに脚本を書いてもらうことになった経緯は?
豊原 坂元さんとはもう20年以上の長い付き合いなんですが、仕事はほとんど一緒にしたことがなかったんです。でも、昨年の『名人長二』のとき、稽古場に来てくれたりパンフレットで対談したりして、そこから一緒にやろうという話が出て、やっと実現したわけです。
──これが初舞台になる吉村界人をキャスティングした決め手は?
豊原 個人的な考えですが、心に何か持っているかいないかは、目を見ればわかるような気がします。それに坂元さんの本は独特というか、いつも人が覗かないようなところから覗いて、そこから掘り下げていく。吉村さんもすでに活躍中ですが、まだまだ皆さんに見えてないところがあるだろうと。イメージが着きすぎてなくていいなと。
──出演の話を聞いたときはどんな気持ちでしたか?
吉村 僕みたいな、まだ未熟な役者に、坂元さんや豊原さんから声をかけて頂けてすごく嬉しかったです。でも「なんでだ!?」みたいな(笑)。
──吉村さんは坂元さんのドラマには出演経験がありますね。作品世界について感じることは?
吉村 幸せを望んでいるけど、それは不幸せがないと成り立たないんだなと、そういうことをよく思いますね。僕はわりと人の弱い部分だったり暗い部分だったりを描いている作品が好きなんですが、なんかそういう暗闇の中の一筋のスポットライトみたいな、そういうイメージがあります。
──坂元作品は会話も独自の面白さがありますね。
豊原 一見ムダそうなダベ話のように聞こえる会話の奥に、それぞれの人生観というか、物語の辿り着く何かが隠されている。それだけに演出となると、ちょっと大変かもしれませんね。人間的にはよく知っているつもりですが、脚本を肉付けしてお客様に渡すためには、彼の世界観へのもっと深い理解が必要なんだろうなと。

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演劇によって露わになる人間の持つ衝動

──吉村さんは、演じる祐太郎役については何か見えてますか?
吉村 今はまだプロットしか頂いていないのですが、坂元さんが思う吉村はこうだというのを書いていただいたそうで、こういう人間に見えているのだなと。ある種の病気というか、ある事をやりたいという衝動があって、やらなければ耐えられなくなるというような、ちょっと変わった人間で(笑)。でもただのサイコパスみたいな感じではやりたくない。やっぱり純粋であるがゆえにそうなるんだと思うし、この4人の中で一番、人に愛があると僕は思っていて、それを心の奥底に置いておきたいなと。
豊原 うん、それで十分だと思います。サイコパス的な衝動は日常の中で多少なりともみんな持っていて、でも口には出さなかったり人には見せなかったり、全人類がそういう葛藤とともに日々生きている。それが例えば演劇のような1つの場所に集められると、露わになってくるわけです。
──そういうものを見せる場が演劇ということですか?
豊原 何も露わにならない何も見えないなら、演劇を観る必要もないわけですからね。映画も同じですが、でも映画の場合、娯楽としてテンションの高いところ、俳優の一番良いところを切り出します。演劇の場合は、もっと心の奥の奥のほうで寄り添って、下の方で繋がる感じで、それが表に出てくるのが演劇で、だから普段気づかないものにお客さんも気づく。さっき吉村くんが言った通り演劇には「愛の見え方」があるんです。

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──俳優の先輩としての豊原さんの印象はいかがですか?
吉村 『名人長二』を観て、凄いなと。よく行く蕎麦屋があるんですけど、そこはいつも落語が流れてるんです。それで落語って面白いもんだなと思っていたので、あの舞台もすっと入れて、風情があるというかカッコいいなと。僕は芝居のうまいへたってあまりわからなくて、自分がへたな言い訳もあるけど、カッコいいのが一番大事だと思っているので。 
──吉村さんはすごく表現欲がありそうですが、俳優をしてなかったら何をしていましたか?
吉村 ピアノを弾くとか、家でペンキでよくわからない絵を描いたりとか。なにかしら「俺は生きてるんだ」みたいな表現をしてると思います。
──豊原さんも俳優だけに留まっていないところは同じですね。
豊原 ほとんどが残らないんですけどね。その一瞬一瞬があるだけで。僕の場合、自分が何時死ぬかわからないという感覚がずっとあって、やっておかないともったいないと。
吉村 僕もあります。死ぬとまでは思わないですが、寝てる時間ももったいない。別に求められてるわけでもないのに何かしないではいられない。
──今は俳優という表現を得て、納得してやれているのでは?
吉村 納得はまだできていないですけど続けていくしかないと。やるしかない。
──苦しいことは?
吉村 全部ですね。褒められるのも貶されるのも俺で。全部です。…苦しいですね(笑)。
豊原 そこは信じられるところですね。なんか苦しそうだから。苦しそうな人少なくなってるでしょ。周囲を信用しないとか自分のへたを肯定するとか、そういうことを言えるほうが芝居を作るには面白い。
 
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自分は役者という職業に就いているんだと

──演出家として2作目が前回とここまで違う作品だと、負荷がかかりそうですが。
豊原 いや、前回はとにかく落語が好きというので突き進んでいったんですが、もともと少しシュールな世界とか、ペーソスを含んだユーモアとか、そういうものが好きなんです。だから今回は、軽く笑えるものするはずだったんですけど、プロットができるたびに、坂元さんならではの世界観が出来上がっていくので、そこは乗っかっていこうと。
──ファンタジー色もありますが、今の社会に突きつける作品になりそうですね。
豊原 坂元さんは常にそうで、世の中の見えづらいところを覗き込んで、出てくる人間も家の裏口から出入りしているような、普段は人の目に触れない人間が持っている感情の機微を、日常会話と笑いで出してくる凄い書き手なので、こんなに幸せなことはないと思っています。
──最後に改めて観る方にアピールを。
吉村 色々なことをちょこちょこしている吉村界人というのは、一体何者なんだと思われているかもしれませんが、今回の仕事で自分は役者という職業に就いているんだというのを凄く感じていて、こういう仕事をやらせて頂ける事、自分なりに意義をもって伝えらればいいなと。あと、稽古場から逃げ出さないようにします。
豊原 前回は自分が逃げ出さないように頑張ってたけど、今回は逃がさないように頑張らないといけないですね(笑)。2作目なので、もう初めてだからという言い訳はできないし、やりたいことをやってきて行き着いてる場所だから、悔いないように全部ぶつけてやりたいです。

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■プロフィール
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とよはらこうすけ○東京都出身。俳優として数々の映画やドラマで活躍。ナレーターとしても活躍、また音楽活動も行っており、99年にはシングル『星空』でバンドデビューを果たした。映画『受験のシンデレラ』で、「モナコ国際映画祭」最優秀主演男優賞を受賞。最近の主な出演作品は、映画『新宿スワン』『種まく旅人 くにうみの郷』『ストレイヤーズ・クロニクル』『たたら侍』、ドラマ『遺産相続弁護士 柿崎真一』『Chef〜三ツ星の給食〜』『愛を乞うひと』『重要参考人探偵』など。舞台は『シダの群れ 第三弾 港の女歌手編』『死と乙女』『シブヤから遠く離れて』、『名人長二』では企画・脚本・演出・主演をつとめた。

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よしむらかいと○東京都出身。2014年、映画「ポルトレ-PORTRAIT-」で主演デビュー。以降、映画やドラマ・広告・ファッションで活躍中。主な出演作に映画『百円の恋』(14/武正晴監督)『ディストラクション・ベイビーズ』(16/真利子哲也監督)『TOO YOUNG TOO DIE!若くして死ぬ』(16/宮藤官九郎監督)『太陽を掴め』(16/中村祐太郎監督)、近作に『獣道』(17/内田英治監督)『劇場版 お前はまだグンマを知らない』(17/水野格監督)『関ヶ原』(17/原田眞人監督)『ビジランテ』(17/入江悠監督)、ドラマ『わにとかげぎす』(17)『僕たちがやりました』(17)『マチ工場の女』(17)など。今年は映画『サラバ静寂』(宇賀那健一監督)、『悪魔』(藤井道人監督)、ドラマ『配信ボーイ 〜ボクがYouTuber になった理由〜』(dTV にて配信中)において立て続けに主演をつとめ、また7月期ではドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』『GIVER』『グッド・ドクター』と3作に出演し注目を集める。

〈公演情報〉
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明後日公演 2018『またここか』
脚本◇坂元裕二
演出◇豊原功補
出演◇吉村界人 岡部たかし 木下あかり 小園茉奈
●9/28〜10/8◎DDD 青山クロスシアター
〈料金〉6,800円   U-22/ 3,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)

【文/宮田華子 撮影(人物・舞台)/友澤綾乃】





『光より前に 〜夜明けの走者たち〜』


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