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魔ものが巣くうと恐れられ、誰も近づかない白鷺城第五重の天守閣──
主・富姫が妹分亀姫に贈った鷹を探しに訪れた、若き鷹匠・姫川図書之助と出会い、恋をしてしまう──。
泉鏡花の名作『天守物語』を原作に、加納幸和が構成・演出を手がける花組芝居『天守物語』が10月3日から、あうるすぽっとで幕を開ける。(8日まで)
今回は小林大介が富姫、丸川敬之が図書之助を演じる《泉組》と、加納が富姫、押田健史が図書之助を演じる《鏡組》の2組に分かれ、さらに新座員の永澤洋が富姫、武市佳久が図書之助を演じる1回だけの公演「新座員顔見世抄」もあり、なんと3バージョンでの豪華な上演となっている。
 
そんな注目の舞台で、《泉組》で図書之助をつとめることになった丸川敬之と、《鏡組》で富姫を演じる作・演出家の加納幸和に、この名作の世界や劇団としての花組芝居について語ってもらった「えんぶ10月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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丸川敬之・加納幸和 
 
刺激的なWキャストの富姫と図書之助

──本公演としては18年ぶりの『天守物語』ですが、演出は変わりそうですか?
加納 ちょっと変えようと思っています。1977年に(坂東)玉三郎さんが増見利清さんの演出でやった日生劇場の公演があったんです。それを観たのが、この世界に本気で入ろうと思った動機の1つでした。劇団を作ってから鏡花もやりはじめたんですが、『天守物語』は日生で観た舞台が強烈すぎて、真似しちゃうからやらないでおこうと。10周年の97年に、やっと真似しなくても作れると思って、ハードロックを入れたりして上演しました。今回は、思いきって王道で行こうと。97年版の良いところも残しつつ、という演出になると思います。
 
──見どころの1つが《泉組》と《鏡組》、富姫と姫川図書之助がWキャストですが、なんと立役の小林大介さんが富姫を。
加納 本人も「どうせ図書だろう」みたいなところがあったんですが(笑)、でも彼が図書だったら、こういう風にするというのが見えてしまうところがあって、本人もそう思ったらしく、「富姫やりたいんですけど」と。最初は冗談だろうと思ってたら(笑)、本気だったんです。
 
──そのWキャストは加納さんにとっても刺激的ですね。
加納 ますます、ちゃんとやらないとまずいなと。こういう動きだけど、こういう感情だから逆にこっちの動きになるとか、自分で作りながら分析して、しかも伝えなきゃいけない。前にやった役ですけど、改めて作っていくことになるので、良い経験です。

──そして図書之助に抜擢された丸川さんは、聞いたときはいかがでした?
丸川 びっくりしました。これまで図書之助は桂(憲一)さんしかやってなかったので。でも最近、桂さんの役をやらせて頂くことが多くて、そのたびに震える思いをしていたのに、まさかこの作品でもやらせてもらえるなんて。
 
──丸川さん抜擢の決め手はどんなところですか?
加納 富姫の小林が背も高いし、ちょっとごついので(笑)、相手役はそれより大きくて、顔もキリッとしてるほうがいいなと。それに大介の女形は初めてで、不確定要素が多いので、ある程度できる丸川なら安心なので。もう1人の図書の押田(健史)も、まだ未知数なところがあるので、そちらは僕の富姫で引っ張っていけばいいと。

花組芝居 本データ6408

劇団が一番緊張するし一番大変な場所

──丸川さんは入団して11年目ですが、花組芝居に入ろうと思ったのは?
丸川 地元で劇団をやってたんですけど、大衆演劇を見る機会があって、面白いなと。見得を切りたいのと、女形をやってみたいという、それだけの理由で上京したら、たまたま花組芝居のスタッフに高校の後輩がいて、募集してるらしいと教えてくれたんです。
加納 面接のとき「女形がしたいんです」と言うから、「難しいかもしれない」って(笑)。
丸川 でも、何回か面白い女形みたいなのをやらせてもらってます(笑)。
 
──外部出演も多いですが、花組でしか得られないというのは?
丸川 一番感じるのは、劇団ならではの阿吽の呼吸というか、一緒にやっていくうちに、先輩たちや同期の感覚がわかってくるので、それはやっぱり大きいですね。その場で作り上げるんじゃなくて、積み重ねてきた良さを感じます。でも劇団に出るときが一番緊張するし一番大変です。
 
──踊りも発声も、特別な技術が必要な舞台ですからね。
加納 彼は音楽をやってるので、耳が良いんです。鏡花に限らず古典の影響を受けている台詞は、音をきちっと変えないと、ただでさえ難しい言葉が、ますますわからなくなるんです。彼はそこは安心なんです。
 
──ほかの鏡花作品や古典でどんどん活躍できそうですね。最後に加納さんからメッセージを。
加納 ようやく僕も17歳の時の衝撃を、客観的に見られるような年になりましたので(笑)、あの時の感動は大事に、同じように初めて見た方が、歌舞伎でもないし現代演劇でもないし、これは何だろうと。こんな見せ方もできるんだ、日本の演劇はこんなに幅が広いんだというものを上演しますので、ぜひ観ていただければ嬉しいです。

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丸川敬之・加納幸和 
 
かのうゆきかず○兵庫県出身。87年、花組芝居を旗揚げ、ほとんどの作品の脚本・演出を手がける。俳優としても映像から舞台まで幅広く活躍中。歌舞伎の豊富な知識を生かし、カルチャースクールの講師も勤める。最近の主な舞台は、『ギルバート・グレイプ』『八百屋のお告げ』『ディーラーズ・チョイス』『鉄瓶』『石川さゆり特別公演』『配達されたい私たち』『龍が如く』音楽劇『悪名』『グリーンマイル』『ドレッサー』など。
 
まるかわたかゆき○広島県出身。06年『ザ・隅田川』より花組芝居に研修生として参加。07年『かぶき座の怪人』より入座。13年愛媛・坊ちゃん劇場で半年に渡りミュージカル『げんない』に出演。15年、NHK木曜時代劇『ぼんくら2』にレギュラー出演。柿喰う客『俺を縛れ!』経済とH『ベゴニアと雪の日』『舞台「黒子のバスケ」IGNITE-ZONE』など外部出演も多数。


〈公演情報〉
花組芝居『天守物語』
天守物語画像
 
原作◇泉鏡花  
構成・演出◇加納幸和 
出演◇加納幸和 原川浩明 山下禎啓 北沢洋 秋葉陽司 松原綾央 磯村智彦 小林大介 谷山知宏 丸川敬之 二瓶拓也 押田健史 永澤洋 与作改メ武市佳久
ゲスト出演◇桂宮治
●10/3〜8◎あうるすぽっと
〈料金
前売5,800円 当日6,200円/U-25前売 2,500円 当日2,900円(全席指定・税込) 
※新座員顔見抄(10/5 19:00)
前売3,000円 当日3,400円 
〈お問い合わせ〉花組芝居 03-3709-9430




【取材・文/宮田華子 撮影/友澤綾乃】



『光より前に 〜夜明けの走者たち〜』


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