誰もいない国トーク4

新国立劇場にて11月公演『誰もいない国』に出演する柄本明、石倉三郎、翻訳を担当した喜志哲雄、そして演出の寺十吾が、一般のオーディエンス向けの公開トークイベントが、10月5日に開催された。その中で、ノーベル文学賞も受賞した劇作家ハロルド・ピンターの作品についてや、今回の出演に対する意気込みを語った。

【物語】
ロンドン北西部にある屋敷の大きな一室。ある夏の夜、屋敷の主人ハーストとスプーナーが酒を飲んでいる。詩人のスプーナーは、酒場で同席した作家ハーストについて家まできたようだ。酒が進むにつれ、べらべらと自らをアピールするスプーナーに対し、寡黙なハースト。スプーナーは、共通の話題を見出そうとハーストに話をふるが、もはやそれが現実なのか虚構の話なのかわからない。そこへ、ハーストの同居人の男たちが現れて・・・。

誰もいない国トーク3

登壇した柄本明は、台本を読んだ感想について聞かれると「ピンターに限らないのですが、よその人が書いたものなんかわからないですよ。自分の言葉じゃないですからね。だからそれを探しに行くんです。作品を探る旅に出るような気持ちです。そういう意味では、(よく難しいと言われる)ピンターはやはり好きな作家ですね。」と答えると、今回舞台では初めて柄本明と共演する石倉三郎は「同じく、さっぱり分からないですね。でも、演じるうえで、分からないからこそ楽しいですよね。柄本さんからお話を頂いて出演を決めたのですが、この歳でこういう作品が来るということは運命かな。そう言ったら、柄本さんが全くその通りですって(笑)。柄本さんとの共演は、単純に楽しみですね。胸を借りるつもりです」と仲の良い二人らしく、初共演の舞台に対する期待を語る。

誰もいない国トーク2

さらに、ピンターの作品について問われると翻訳を担当した喜志哲雄(京都大学名誉教授)は「ピンターの作品はよく分からないとか、難しいとおっしゃる方が多いのですが、近代のリアリズム演劇によくある行動の動機が全て明確な劇というのは、かえってリアルではない気がします。誰かがある行動をとるという場合でも、時によっては、その当事者自身がなぜそれをやったかわからない。むしろこれが普通であるように思います」と語る。
新国立劇場の芸術監督に就任した小川絵梨子たっての希望で本作の演出を担う寺十吾は、「わからないなりですが、少しずつディスカッションで話し合う中でこのカンパニーにおいて方向性が見えてきました。もちろん必ずしも定まった正解というものはないのですが。分からないとおっしゃいつつも、柄本さんが声を発するとやはり心に入ってくるものがある。分かった気かもしれませんが、こういう手ごたえが数日の稽古でも手に入りましたね。」と稽古中の様子を交えて日々完成度が上がる稽古場への期待を語った。

誰もいない国トーク1

今回のトークイベントでは、柄本明をはじめそれぞれ飄々と作品に対する感触や意気込みを語っていたが、お互いの信頼が垣間見える内容で、あらためてハロルド・ピンターの『誰もいない国』に挑むベテラン俳優たちの汗かく姿が楽しみになる内容だった。

〈公演情報〉
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『誰もいない国』 
作:ハロルド・ピンター
翻訳:喜志哲雄
演出:寺十吾
出演: 柄本 明 石倉三郎 有薗芳記 平埜生成
●10/8〜25◎新国立劇場 小劇場
〈料金〉A席6,480円 B席3,240円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999