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結成25周年を迎えた劇団ナイロン100℃の公演として、本年4月に『百年の秘密』を再演、7月には新作『睾丸』上演と、次々にクオリティの高い舞台を発表。まさにとどまるところ知らない作・演出家、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)。その最新作、KERA・MAP#008『修道女たち』が、10月20日〜11月15日、東京・下北沢 本多劇場で上演される。(そののち11月23・24日@兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、12月1・2日@北九州芸術劇場 中劇場で公演)

今回のテーマは、KERAにとって「未知の領域となる宗教」(えんぶ10月号のロングインタビューより)。タイトル通り、信仰に生きる女性たちが登場する物語だ。
 
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キャストは、村の女に鈴木杏、修道女6人は、緒川たまき、伊勢志摩、伊藤梨沙子、松永玲子、犬山イヌコ、高橋ひとみ、そして村の男の鈴木浩介、みのすけ。7人の女優陣と、2人の男優がどんな物語を繰り広げるのか、膨らむ期待を胸に、9月下旬に行われた公開稽古を見学した。

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『修道女たち』の背景は、「時代設定は100年以上前の予定」(えんぶロングインタビューより)で、場所は修道女たちが巡礼にやってくる山の麓の「山荘」となっている。
この「何時ともわからない時代の架空の場所」というシチュエーションは、KERA作品のカテゴリーで言えば、昨年の『ちょっと、まってください』や、今年の『百年の秘密』に連なるKERA的ファンタジーの系列にあって、いわばシュールな展開でも成立させてしまう大きなファクターになっている。そしてこの『修道女たち』も、そんなシュールさを予感させた。

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最初の稽古場面は山荘の内部。外は銀世界、部屋では暖炉が燃えている。その前でテオ(鈴木浩介)が手紙を読んでいる。そこにドアを開けて外からオーネジー(鈴木杏)が帰ってくる。薪置き場に薪を取りに行っていたのだ。

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オーネジーは巡礼にくる修道女たちとの再会に気もそぞろで、テオが話しかけてもほとんど上の空。ただ2人の会話から親しい関係性であることはうかがえる。オーネジーは無邪気なのか冷淡なのか…少女の可愛さと女の残酷さを矛盾なく併せ持つ鈴木杏にぴったりの嵌まり役だ。
山荘へやってくる修道女たちに窓を開けて呼びかけるオーネジー。修道女たちが到着し、オーネジーは迎えに飛び出していく。その直後、ある異変が…物語の展開がますます気にかかる。

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次のシーンまでの合間に、この日に出来上がった台本部分の本読みが行われる。緒川たまき、伊勢志摩、伊藤梨沙子、松永玲子、犬山イヌコ、高橋ひとみ、6人の修道女たちの会話で、初見の台詞だが、すでに役柄が入っているキャストたちは、それぞれの役に乗せて読み上げていく。
演出家KERAは、台詞の意図や言い方のニュアンスなどを細かく指示、その場面の方向を示していく。2回ほどの本読みの中で場面が見えてくるのは、やはり実力派の役者揃いだからだろう。

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次の稽古場面はこの作品のオープニング部分。これからいよいよ巡礼に出かける修道女たち。
修道院長のシスター・マーロウは伊勢志摩が演じていて、実直で慈愛を感じさせるキャラクターだ。しっかりもののシスター・ノイは犬山イヌコ。オーネジーと親しいシスター・ニンニは緒川たまき。ニンニは繊細で優しい女性だが、それだけではないようだ。シスター・アニドーラは松永玲子で、この6人の中では比較的冷静にものごとを捉えているように見える。

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まだ修道院に入ったばかりのシスター・ダルとシスター・ソラーニは母娘の関係で、高橋ひとみと伊藤梨沙子が演じる。二人の関係にも何か一筋縄ではいかない空気が漂う。この6人の修道女たちが、これからどんなふうに絡み合い、物語を動かしていくのか。まだ見えてない顔もありそうな6人だけに、より興味がそそられる。

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修道女たちが出発しようとしているところに登場するのが、みのすけが演じるテンダロ。テンダロとシスター・ニンニの会話からある出来ごとが展開されるが、物語の背後にあるどこか不穏なもの、それが一気に姿を現したようなインパクトある場面となった。

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修道女たちの浮き世離れしたような会話の中に人間くさい欲望や衝動がうかがえたり、素朴な村の風景の中に不穏さが垣間見えるような、『修道女たち』の作品世界。修道女たち、いや宗教というものを通して、またケラリーノ・サンドロヴィッチが未知の領域に踏み込んでいく。それを目撃する確かな予感を感じた稽古場となった。
 
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【KERAのコメント 『修道女たち』フライヤーより】 
宗教とは無縁な私が聖職者の物語を描きたいと欲するのは何故なのだろう。理由はいくつでも挙げられる。
 第一に、禁欲的であらねばならぬというのが魅力的。奔放不覊な人間を描くよりずっと面白い。「やっちゃいけないことばかり」というシチュエーションは、コントにもシットコムにももってこいだ。
 第二に、宗教的モチーフが、シュールレアリズムやマジックリアリズム、或いは不条理劇と非常に相性がよい。不思議なことがいくら起こっても、「なるほど、神様関係のお話だからな」と思ってもらえる。
 時間が無くて二つしか思い浮かばなかったが、かつて神父を登場人物にした舞台をいくつか描いてきた私が、満を持して修道女の世界に挑む。しかも複数だ。修道女の群像劇である。どんなテイストのどんなお話になるかは神のみぞ知る。ご期待ください。

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〈公演情報〉
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KERAMAP #008『修道女たち』
作・演出◇ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演◇鈴木杏 緒川たまき 鈴木浩介 伊勢志摩 伊藤梨沙子 松永玲子/みのすけ 犬山イヌコ 高橋ひとみ
●10/20〜11/15◎下北沢 本多劇場  
〈料金〉7.400円(全席指定・税込) 学生割引券  3.800円チケットぴあ前売のみ取扱・税込) 
〈東京公演チケット一般好評発売中!〉
●11/23〜24◎兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
●1/1〜2◎北九州芸術劇場 中劇場
〈お問い合わせ〉キューブ  03-5485-2252(平日12時〜18時)



【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】


舞台『銀河英雄伝説』


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