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トム・プロジェクトのプロデュースで宇梶剛士・山崎銀之丞・市川猿弥という新鮮な組み合わせで上演する3人芝居『男の純情 The Pure Hearts of Men』が、10月25日から紀伊國屋ホールで上演される。(11月1日まで。そののち全国公演あり)
脚本は、演劇集団「星屑の会」の水谷龍二、演出は、昨年度の読売演劇大賞の優秀演出家賞を受賞した気鋭の小笠原響が手がける3人芝居だ。 

男としてまだまだ花を咲かせたいと思う一方、そろそろ老後の心配でもしようかと思ったり…岐路に立つ年頃の50代の男3人が、ある若い娘「沙紀ちゃん」の部屋で鉢合わせ! だが待ち焦がれる女性は一向に現れない…ついに男たちによる虚々実々の攻防戦が繰り広げられるのか?

長身と個性的な風貌で映像から舞台まで活躍し、自らも劇団PATHOS PACKを率いて活動する宇梶剛士。つかこうへい作品で人気を博し、映像でもドラマ『ウルトラマンR/B』にレギュラー出演中の山崎銀之丞。三代目市川猿之助(現・猿翁)のもとで修業し、スーパー歌舞伎などで活躍、今年1月の舞台『近松心中物語』(いのうえひでのり演出)で改めてその実力を示した市川猿弥。そんな3人が繰り広げる「おじさんの恋」とは?
 

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山崎銀之丞・ 宇梶剛士・市川猿弥
 
冷蔵庫には電源を入れておいてほしい

──まず台本を読んだときの感想はいかがでした?
宇梶 面白くて笑いました。でも3人芝居なので担う部分が多いことに気づいて、また笑いました(笑)。
山崎 僕は自分が劇場で観る側だったらゲラゲラ笑ってるだろうなと。男3人の、ましてや50代の男たちなので、相当滑稽で、しかもリアリティのある話ですからね。でも僕も宇梶さんと同じで、これだけの台詞をどうやって覚えるんだよと(笑)。
猿弥 面白いんだけど、自分がやるとなるとちょっと背筋が凍りますよね。僕はこんなに少ない人数の芝居は初めてですし。
宇梶 僕は3人芝居は一度、トム・プロジェクトの『あとは野となれ山となれ』(2011)でやってます。ただ、今回のほうが掛け合いが圧倒的に多い。
山崎 そう、掛け合いばかりだから、誰かが忘れるとたいへんなことになる。
宇梶 せっかく同じくらいの年齢で、同じようなキャリアの方々とご一緒できるわけだから、その日その日の生の芝居を楽しみたいと思ってるのに、もし台詞を忘れちゃったらどうにもならない(笑)。
猿弥 すべては銀之丞さんにかかってますからね。
山崎 えーっ、俺?
猿弥 幕開きから登場するんですから、その日のお客さんのテンションあげる役割りですよね。
宇梶 そうそう(笑)。
山崎 (笑)。長年の経験からどんな出番の多い芝居でも、「あ、ここで水飲めるな」とか「汗拭けるな」とか、そういう時間を読めるんですけど、この芝居はそれが皆無で(笑)。そのことにまず愕然としましたね。
猿弥 劇中でみんなでビールとか飲むところがあるから、そこで本当に飲むしかない(笑)。
宇梶 セットの冷蔵庫は、ちゃんと電源入れておいてほしいね(笑)。
山崎・猿弥 それそれ!(笑)

 

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それぞれに純情でそれぞれに貢いでる 

──皆さんのキャラクターも面白いですね。山崎さんは女の子の叔父だとウソをついたり。
山崎 一瞬口がすべってとっさについたウソで、それが仇となってずっと苦しいウソを死守しなきゃならなくなるんです。でも意外とあっさりバラされるんですが(笑)。普通のサラリーマンで、妻とは別居中で娘が2人いて、きっと浮気かなんかで家庭が崩壊したのかなと(笑)。それで若い沙紀ちゃんと知り合って、ちょっと希望を見いだしたんでしょうね。ところが沙紀ちゃんは他の中年男とも付き合ってて、しかも2人も。
──その1人が宇梶さんですね。
宇梶 俺の役も最初はちょっと強面を偽ってるんですが、昔バンドをやっていた男で、好きでライダース着てるけど、実はそれほど強面じゃない。ただ、稽古段階では多少「噛ませ犬」的に突っ走るくらいのことをやりながら、この役の本当の部分の見せ方を探り探りしていきたいなと思ってます。でもそこも結局は皆さんとのバランスですよね。
猿弥 僕の役は、わりとそのままというか、妻とは死別して今は若い女性と付き合っている。とくに隠してることもないし、すごく真面目に生きて来た人で、本当に沙紀ちゃんを信じてるんです。ところが2人と鉢合わせして、信じられない現実に直面するわけです。普通に純情な中年男なので、演じやすいといえば演じやすいんですが。
宇梶 俺の役も純情さはあるけど、猿弥さんの役とは違う純情さで。
猿弥 みんな純情なんです。それで沙紀ちゃんにそれぞれ貢いでる。
宇梶 猿弥さんの役は沙紀ちゃんに真っ当な応援の仕方をしていて、だから3万円というのが納得できるんだけど、俺の役はちゃんとした方法がわからないから、とにかくお金出せばいいのかなみたいな(笑)、それで8万円という金額に自分でしているわけで。
山崎 僕の役は5万円なんですけど、「沙紀ちゃんの夢が実現するのが自分の夢でもあるんだ」という、そのバックアップの気持ちが5万円なんでしょうね。でもこの男は「その代わりやることはやらせてもらいます」的なところは一番ある気がしますね。
宇梶・猿弥 (爆笑)。
猿弥 色々なお客さんが観にきてくれると思うけど、似たような関係のカップルがきて微妙な気持ちになったり、ドキドキしたりするかもしれないと思うと、ちょっと楽しいですよね(笑)。
──付き合っている相手3人が鉢合わせというシチュエーションは、そうはないと思いますが、それなのに仲良く語り合ってしまうというのが面白いですね。
山崎 本当にそんなことになったら、普通は修羅場でしょう(笑)。
宇梶 血を見るよね。
猿弥 でも、この3人は一緒に酒飲んで(笑)。
山崎 やがて初老を迎えるであろう男たちが、初老を迎える準備をしなくてはいけない時間なのに、その時間を費やしてこんなにはしゃいでていいのかという(笑)。観ている人たちが、ちょっとヒヤッとするような、「大丈夫なの?この大人たち」という、そういう滑稽さが出たらいいなと思うし、そこを面白がってもらえたら。
宇梶 そうだね。
──恋をしているので、はしゃいでも仕方ない部分もありますね。初老になったらもう恋もできなくなるかもしれないし。
山崎 いや、この人たちはやめないんじゃないですか(笑)。でもそこがチャーミングなところで。
猿弥 チャーミングですよね。1人が帰りそうになるのを「居ろよ」とか止めたり。
──宇梶さんの役はベランダに閉め出されますが、ああいう子どもの悪ふざけみたいなシーンもありますね。
宇梶 作家の水谷(龍二)さんが子どもなんじゃないですか。
山崎・猿弥 (笑)。

 

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初老前の男たちの悪ふざけを一緒に楽しんでもらえたら 

──お互いに共演歴は?
猿弥 僕はお二人とは初めてです。
宇梶 僕と銀之丞さんは映像で共演してますね。
山崎 宇梶さんは劇団3○○などの小劇場を経験されてて、僕もそっちのほうから入った人間で舞台も拝見してましたから、親しみは持っていたんです。映像の共演は京都の時代劇で、その時の印象はいい意味で演劇にスポイルされてない俳優さんだなと。すごく颯爽としていらっしゃる。身体も大きいし、甲冑を着けてたんですけど、めちゃくちゃ似合うんです。僕らが着ると五月人形になりますけど。
宇梶 いやいや(笑)。 
山崎 同じ年齢だし、いつかコテコテの芝居を同じ舞台で出来ればいいなと思っていたんです。それがまさか水谷さんの作品で実現するとは。それから猿弥さんは、歌舞伎の方なので、こういう芝居で猿弥さんとご一緒するなんて想像もしてませんでした。
猿弥 僕自身、現代劇の舞台は初めてですからびっくりしてます。今回、皆さんとご一緒させていただくきっかけになったのは、水谷さんの作品で女性3人の『淑女のロマンス』(2014)というのがあって、そういうのを男で作りたいという話が出たとき、僕を推薦してくれた方がいたんです。初めてだしどうなのかなと思いながらも、でもこれは画期的なことだから思いきってやってみようと。
──猿弥さんは今年初めの『近松心中物語』での演技がたいへん好評で、台詞も歌舞伎調の言い方ではなく自然でリアルでこういう芝居も出来る方なのだと。
猿弥 そうですか? でも今回は、本当にリアルな気持ちで動くしかないんだろうなと。歌舞伎調になったらごめんなさい(笑)。
宇梶 わざと入れたら面白いよね(笑)。
山崎 でも僕らは絶対にそのテンポに乗っていけないね。


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──宇梶さんからみてお二人は?
宇梶 銀之丞さんとは年が同じで、同級生という感覚はなんとも言えない安心感があるし、同じくらい長く芝居をしているから、今回も一緒に芝居できるのを楽しみにしてました。映像で共演したときも、僕は身体が大きいぶん大ざっぱになるところもあるけれど、銀之丞さんは動きにキレがある。甲冑の隙間から才能が溢れているなと。
山崎 甲冑の隙間って(笑)。
宇梶 猿弥さんは誕生日が同じ日で。
猿弥 そうなんですよね。最初にお話ししたのは電話で、そのときもいきなりその話になって、一気に親近感が(笑)。僕はお二人は映像でもよく拝見していて、その方々とこうして共演できるわけですから、とにかく足を引っ張らないように。
宇梶 それはないから。
猿弥 いや、マジで。だって僕は歌舞伎なので。
宇梶 それ自慢みたいだから。
銀之丞 (笑)そう聞こえるよね。
宇梶 歌舞伎だから伝統あるもんねって(笑)。
猿弥 いや、400年前から同じことしかやってないから。
銀之丞 ほら、自慢だね(笑)。
猿弥 (笑)とにかく稽古しながらなんとか先輩たちのレベルに持っていこうと思ってます。一応年下ですから。老けて見えますけど(笑)。
──そのままこの芝居のようなやり取りになってきましたが、このへんでお客様へのアピールをいただければ。
山崎 初老前の男たちが悪ふざけの極みを、結果的にやっている、その愛おしさというか愛らしさが出るように頑張りたいと思います。劇場で観てくださった方が、あの人たち憎めないな、もう1回会いたいなと。そう思ってくださればいいなと。
宇梶 いわゆる密室劇ですから、お客様は結末がどうなってしまうかを踏まえながら観ていくと思いますが、この芝居に関しては結末は考えずに、一緒に呼吸してくれればよくて、笑ったり、怒ったり、うなずいたりしてくれたらいいなと思っています。
猿弥 もう一度観たいなと思ったり、楽しいお芝居だったねと言っていただけたら成功だと思います。トム・プロジェクトさんの色々な作品を観ていらっしゃるお客様や、現代劇の好きなお客様に、「市川猿弥って何?」というところから入っていただいて、最終的にそんなことはどうでもよくなって、「この作品、面白いね」と。そこへ行けば成功だなと思っています。

 

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山崎銀之丞・ 宇梶剛士・市川猿弥

 


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うかじたかし○東京都出身。タレント・錦野旦の付き人を経て芸能界へ。その後は菅原文太、美輪明宏、渡辺えりら実力派俳優のもとでキャリアを重ね、1997年フジテレビ系ドラマ『ひとつ屋根の下2』で注目され、以来、多くの映像や映画にも出演。最近の主な出演作品は、ドラマ『越路吹雪物語』(テレビ朝日)『監査役 野崎修平』(WOWOW)『義母と娘のブルース』(TBS)『サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻』(BSテレ東)『主婦カツ!』(NHK BS)など、映画『ライアの祈り』『本能寺ホテル(2017年)など、舞台は『めんたいぴりり』。劇団PATHOSPACKを主宰し、『デザートパーティ』は脚本も手がける。映画『キングダム』が2019年4月公開予定。

 

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やまざきぎんのじょう○福岡県出身。1986年より地元RKBラジオのパーソナリティーをつとめて人気に。一方、自らの劇団「劇団空想天馬」を旗揚げ。1991年つかこうへいに演技力を認められ上京。現在までに数多くの舞台やドラマに出演。最近の出演作品は、映画『幕末高校生』『サイドライン』、ドラマ『リバース』(TBS)『宇宙戦隊キュウレンジャー』(テレビ朝日)『命売ります』(BSジャパン)など、舞台は『GS近松商店』『引退屋リリー』。7月より『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(テレビ東京)にレギュラー出演中。来年2月に舞台『唐版 風の又三郎』に出演予定。

 

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いちかわえんや○東京都出身。1975年1月歌舞伎座『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」で初舞台。1978年三代目市川猿之助の部屋子となり、二代目市川猿弥の名で『加賀見山再岩藤』の志賀市などをつとめる。1998年7月歌舞伎座『義経千本桜』の弁慶で名題昇進。『當世流小栗判官』『ヤマトタケル』『黒塚』『夏祭浪花鑑』『ワンピース』など歌舞伎、スーパー歌舞伎をはじめ、数々の舞台で活躍中。歌舞伎以外の舞台は『元禄港歌──千年の恋の森──』(蜷川幸雄演出)『近松心中物語』(いのうえひでのり演出)。

 

〈公演情報〉
 男の純情【表面】

トム・プロジェクト プロデュース
『男の純情 The Pure Hearts of Men』
作◇水谷龍二
演出◇小笠原響
出演◇宇梶剛士 山崎銀之丞 市川猿弥
●10/25〜11/1◎紀伊國屋ホール
〈料金〉前売5,000円 当日5,500円 U-25[25歳以下]2,500円 シニア[60歳以上]4,500円(全席指定・税込)  
※ U-25・シニア券はトム・プロジェクトのみで販売。前売当日とも同料金
〈お問い合わせ〉トム・プロジェクト 03-5371-1153(平日10:00〜18:00)
https://www.tomproject.com/peformance/men.html

 

【地方公演 スケジュール】
※地方公演は各地域の主催事業となります。お問合せは各問合せ先へ。
※公演時間等、決まり次第HPで更新。
●11月2日(金) 19:00
埼玉県越谷市 サンシティ越谷市民ホール(TEL:048-985-1112)
●11月4日(日)14:00
福岡県小郡市 小郡市文化会館
●11月5日(月)
福岡県行橋市 コスメイト行橋(TEL:0930-25-2300)
●11月7日(水)
岡山県岡山市 岡山シンフォニーホール
●11月11日(日)15:00
茨城県東海村 東海文化センター (TEL:029-282-8511)
●11月14日(水)19:00
岐阜県高山市 高山市民文化会館 (TEL:0577-34-6550)
●11月16日(金)18:30
東京都葛飾区 かめありリリオホール (TEL:03-5680-2222)
●11月18日(日)14:00(予定)
千葉県袖ヶ浦市 袖ヶ浦市民会館 (TEL:0438-62-3139)
●11月23日(金)18:00
山梨県笛吹市 笛吹市スコレーセンター (TEL:055-263-7959)
●11月24日(土)15:00
山梨県北杜市 北杜市須玉ふれあい館 (TEL:0551-42-1373)

 

 

 【取材・文/榊原和子 撮影/山崎伸康】
 

 


舞台『銀河英雄伝説』


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