15_0029

渡辺えり&キムラ緑子コンビによる「有頂天」シリーズは、『喜劇 有頂天旅館』、続いて『喜劇 有頂天一座』と上演、好評を博してきたが、いよいよ第3弾『喜劇 有頂天団地』が、12月1日〜22日に東京・新橋演舞場、来年1月12日〜27日は京都・南座で上演される。
今回の舞台は小幡欣治のオリジナル喜劇『隣人戦争』をもとに、作・演出家で俳優のマギーが初めて松竹で演出を手がける。
 
【あらすじ】
昭和50年代の初め。郊外の住宅街の一角に、昨今の、いわゆるミニ開発と呼ばれる小規模の建売住宅建設が進んでいた。そのせまい敷地に突然、赤や緑や茶色の屋根の賑やかな家がしんこ細工の様に6棟、軒を接して建て込んできたので、近所ではかなり目立つ存在になっていた。
新入居者達にとっては、幾多の艱難辛苦に耐えローンを組み、やっと手に入れた住宅である。そうであれば傍目にはどう映ろうともわが城。マントルピースあり、シャンデリアあり、大型カラーテレビも鎮座している。
その一軒が隅田家。秀子夫人と娘の杏子、それに舅の大造が住んでいる。主人は外国航路の船員としてサンフランシスコに行っている…事になっている。
この隅田家の裏隣りが徳永家。同価格の同規格なのでまるで双子のように隅田家と似ている。徳永家はくに子夫人。主人の伸一郎と姑の富江と同居している。伸一郎は帝国ホテルに勤めている…事になっている。
ある日、隅田家で6棟の新入居者と長年この土地で暮らしている高見沢勝子達との寄り合いが行われた。議題は「風紀粛正」、と言っても下着の干し方、ゴミの出し方、と言った話題であった。更に、この住宅の裏にもう2軒住宅が建つことになり、隣人たちは色々な思惑に苛まれて行く…。 
 
渡辺えりが演じる隅田家の秀子夫人と、キムラ緑子演じる徳永家のくに子夫人が、それぞれ見栄を張り合うのだが、徐々にお互いの真実の姿が明らかになっていって…というちょっと懐かしい“昭和”と出会えそうな舞台だ。
この公演にを前に、渡辺えり&キムラ緑子の人気コンビに語ってもらった「えんぶ12月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。 

渡辺キムラ

デフォルメすることで
問題を提起する

──原作を読んだときの印象から聞かせてください。
キムラ すごく懐かしいなと。昔、社宅みたいなところに住んだことがありましたから。今は隣の人と喋るどころか、隣に誰が住んでいるかもわからない時代で、この中に出てくるような近所付き合いは面倒くさいと思うかもしれませんが、だからこそ人間らしくていいなと思っていただければ。
渡辺 コミュニケーションの楽しさとか情の濃さとか、そういう良い部分が伝わればいいですね。今の時代とは違う、ある意味時代劇としてデフォルメすることで、逆に今の社会に対する問題提起になると思います。それにこの時代の日本人って、意外とつまらない見栄を張ってて、芝居の中でも、夫は外国航路の船長ですとか、帝国ホテルに勤めてますとか(笑)。今から思うとバカバカしいけど、そこが笑えるんじゃないかと。
キムラ 狭い範囲でへんな競い合いをしてるのがおかしいんですよね。
渡辺 いわゆる普通の人たちの日常で、演じる側の力量が問われる芝居ですね。
キムラ 共演に笹野(高史)さんをはじめ個性的な方たちが揃ってますから、絶対に面白くなると思います。

するっと出来ない
不器用な2人

──今までの2作で発見したお互いの魅力を語っていただけますか。
キムラ えりさんは唯一無二でどこにもいない役者さんです。えりさんが出てきたら空気が変わるし、愛さずにいられない、みんなが好きになっちゃう。絶対にウソがない人で、お客様もそういうのって本能でわかるんです。そこはご一緒してていつも感じています。
渡辺 緑子ちゃんは私と同じで大の芝居好き。だからいつも役に入り込んで一生懸命。美人ですが、良い意味でクセがなくて普通の顔をしているのが凄い!人柄の良い主婦も殺人犯も、どんな役でも演じられる。
キムラ お互いに不器用ですよね。するっと出来る2人じゃないんですが、それが楽しいなと思うんです。先輩のえりさんが一生懸命にやってると思うと、私も一生懸命やるしかない。「昨日も寝ないで考えてた」とか言うから、「寝て下さい!」って(笑)。本番中も、「あそこをこうしたい」とか前へ前へ行くことしか考えてない。すごいです。
渡辺 そういう緑子ちゃんこそ、公演中に怪我してても周りに気づかせない。すごいと思った。
キムラ え? そんなことありました?
渡辺 『有頂天一座』のとき腰を傷めて。
キムラ ああ、剣戟をやってましたからね。でも、しょっちゅうあちこち傷めてますから(笑)。
 
──今回は普通の主婦ですから、そういう心配はなさそうですね。
渡辺 いや、あるんじゃないかな。デフォルメするから、いきなり投げ飛ばすとか(笑)。
キムラ ケンカのシーンがありますよね。
渡辺 そこが楽しみで。私は今回おっとりと「ああ、そうですか」ばかり言ってて発散できない役ですけど、唯一、2人がケンカするところがあるので、そこでいきなり逆上しようかなと(笑)。マギーさんに却下されるかもしれないけど(笑)。
 
──そんな第3弾『喜劇 有頂天団地』を改めて観に来る方にアピールしていただければ。
渡辺 昭和の濃さと人情深さを面白おかしく出せればと思っています。この素敵な個性的なメンバーのお芝居を観ながら、年末年始、笑って泣いて、新年を迎えていただきたいです。
キムラ これまでの2作を観てくださった方が、また絶対に観に行きますとおっしゃって楽しみにしていてくださるのを聞いて、「あ、みんな笑いたいんだ」と。ちゃんと笑っていただけるように、真面目にお芝居したいと思います。

15_0013
渡辺えり・キムラ緑子

わたなべえり○山形県出身。1978年に劇団2○○(その後劇団3○○に改名)を結成。20年間主宰。作・演出・出演の三役を担い、1883年『ゲゲゲのゲ』で岸田國士戯曲賞を受賞。1987年『瞼の母』で紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。日本劇作家協会会長。最近の舞台は「有頂天」シリーズ、おふぃす3○○40周年記念公演『肉の海』(作・演出・出演)、ミュージカル『狸御殿』(出演)、『三婆』(出演)など。

きむらみどりこ○兵庫県淡路島出身。1984年に劇団M.O.P.の旗揚げに参加、2010年の解散まで看板女優として活動。1997年『秋の歌』で第32回紀伊國屋演劇賞個人賞、2005年『偶然の男』『ヒトノカケラ』で読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。最近の出演作品は、NHK朝ドラ『半分、青い、』(NHK)、舞台「有頂天」シリーズ、『フェードル』ミュージカル『にんじん』『三婆』など。

〈公演情報〉
有頂天団地画像

『喜劇 有頂天団地』
作◇小幡欣治『隣人戦争』より
演出◇マギー
出演◇渡辺えり キムラ緑子/笹野高史 広岡由里子 鷲尾真知子/
西尾まり 久世星佳 明星真由美 田中美央 一色采子 ほか
●2018/12/1〜22◎新橋演舞場
2019/1/12〜27◎京都四条 南座
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489(10時〜18時) 



【構成・文◇宮田華子 撮影◇田中亜紀】


『帰郷』


kick shop nikkan engeki