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東京・江東区のティアラこうとうで、錦織一清が演出を務める坊ちゃん劇場のミュージカル『よろこびのうた』東京公演が11月28日、開幕した。
この作品は「第九」をテーマに、第一次世界大戦時の徳島県を舞台に、ドイツ兵捕虜と日本人の娘の許されぬ恋を描く作品描くミュージカル。同作は、愛媛県東温市にあるミュージカルの常設劇場、坊っちゃん劇場が今年1月から来年1月までロングラン中で、今回はその東京公演として11月28日、29日に上演されている。

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第一次世界大戦中、徳島県鳴門市には青島で日本軍の捕虜となったドイツ兵の俘虜収容所があり、約1000名の捕虜が収容されていた。この収容所は、福島県会津若松市出身の松江豊寿が所長で「武士の情け」を基本にした、極めて人道的かつ寛大な運営をしたことで知られ、地元の人々はドイツ兵捕虜を「ドイツさん」と呼び、スポーツや芸術、農作業など様々な分野で温かい交流が行われた。
その板東俘虜収容所のドイツ兵が、1918年6月1日、日本(アジア)で初めて「第九」を全曲演奏したという史実は過去に小説やドラマ、映画化もされているが、日本では意外と知られていない。戦禍の中、異国の地で捕らわれの身となったドイツ兵たちが、故郷への思いと共に平和をという願いを込めて響かせた「歓喜の歌」。その精神は地元の合唱団員たちで今でも歌い継がれている。
今回はこのエピソードを、四国の遍路宿の一人娘と若いドイツ兵捕虜との許されない恋を軸に、板東の人々とドイツ人との美しい交流を描き、人類愛と世界平和のメッセージをミュージカルとして作りあげた。 

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脚本は映画『パッチギ!』『フラガール』、NHK連続テレビ小説『マッサン』などで知られる羽原大介、演出は俳優のみならず演出家として『熱海殺人事件』『グレイト・ギャツビー』などで活躍する錦織一清、音楽はシンガーソングライターで俳優としても活躍、『グレイト・ギャツビー』の音楽も手がけた岸田敏志という強力なスタッフが揃った。
またキャストはドイツ兵ミハエル役には、『ポストマン』をはじめさまざまなミュージカルで活躍する小林遼介、老舗の遍路旅館の箱入り娘明子には、邦楽ミュージカル『夏花火♡恋名残』などに出演した名取えりかが扮している。

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【初日会見】
その会見と初日が11月28日に開かれ、坊ちゃん劇場の代表取締役・越智陽一、駐日ドイツ連邦共和国大使館文化課長ダーヴィッド・メラー、愛媛県東京事務所長・小坂泰起、脚本の錦織一清、演出の錦織一清、音楽監督・作曲の岸田敏志が出席、この公演への期待をそれぞれ述べた。

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越智陽一代表取締役によると公演は1月の初日以来60,000人が来場、「これまでになく男性のお客様が涙を流される姿が多かった」。また「作品の舞台となっている徳島公演では4,000人を越える方々が足を運んでくれた」と感謝とともに報告、今回の東京公演に期待を込めた。またダーヴィッド・メラー文化課長は「ドイツ人俘虜への人道的な待遇の話は日独友好の土台になっていると思います。第九の記念すべき日本初演100周年として、このような素晴らしい作品が上演されることはとても嬉しく思っています。日本以外で第九がこれほど盛大に取り上げられることはあまりないと思います。第九の精神である多くの人たちを結びつけること、それを次の世代へと伝えていく機会になればと思っています」と語った。愛媛県東京事務所の小坂泰起は「坊ちゃん劇場は誕生以来素晴らしい作品を上演している奇跡の劇場です。これまでも心を揺さぶる作品ばかりでしたが、とくにこの『よろこびの歌』は称賛の声を多く聞いています。芸術作品を地方で作り東京に持ってくるのは並大抵ではないと思いますが、昨年に続き今年も東京公演ということで、その実力を感じています。この東京公演をご覧になったお客様は、ぜひ徳島や愛媛はじめ四国に遊びにいらしていただければ幸いです」と結んだ。

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羽原大介(脚本)
瀬戸内を舞台という中で、徳島の板東俘虜収容所での物語を知り、これを舞台にしたいと思いました。私は外国人と日本人のラブストーリーとして、映画『パッチギ!』とNHKのドラマ『マッサン』に続いて、私の国際恋愛ラブストーリー3部作の集大成のつもりで書きました。出演者の人数なども限られている中、信頼する錦織さんと岸田さんのよって素晴らしい作品になりました。今回東京公演で、この大きい劇場でどう進化するか楽しみです。

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 錦織一清(演出)
この話をいただいたのは『グレイト・ギャツビー』でご一緒した羽原さん経由で、羽原さんとはぜひまたご一緒にと思っていたので二つ返事で引き受けました。ちょうど1年くらい前に稽古をはじめ、愛媛でこんなに演劇を真剣に取り組んでいる方が沢山いらっしゃるのだと思いましたし、何度か足を運ぶ中で、演劇の原点的なものを感じました。また観るたびに作品がブラッシュアップされているのを感じました。個人的な話ですが、今年の正月に親戚が集まったとき、母方の祖父が愛媛の出身だと知りまして、愛媛の血が流れているのを知り嬉しく思ったりしました。またここは江東区ですが生まれて育ったのは江戸川区なので近くですし、色々な縁があるのを感じます。今日はまた新鮮な気持ちで作品を観たいと思っています。
 
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岸田敏志(音楽監督・作曲)
『グレイト・ギャツビー』の羽原さんと錦織さんなので「ぜひ、やらせていただきたい」と思いました。羽原さんはミュージカルは初めてということでまかせていただき、錦織さんもこういう曲がほしい、ここではこういう設定だからときちんと言ってくれて、あとはまかせてくださる。そういうお二人なので、演者が歌いやすい曲作りに専念できました。出来上がってからなんどか舞台を観に行くたびに、僕も涙が出てくるような素晴らしい作品に仕上がってます。東京公演も楽しみに観ようと思っています。

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 【舞台フォトレビュー】
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〈公演情報〉
坊っちゃん劇場第13作「第九」アジア初演100周年記念作品
ミュージカル『よろこびのうた』東京公演
脚本◇羽原大介
演出◇錦織一清
音楽監督・作曲◇岸田敏志
出演◇小林遼介、名取えりか、村上幸央、中山城治、中村元紀、脇山尚美、梶 雅人、渡辺輝世美、小野佑子、瀧田和彦、松村桜李、松尾奈実、山下奈央子 
●2018年11月28日・29日◎ティアラこうとう 大ホール
〈料金〉S席7,500円 A席6,500円(全席指定・税込)
https://www.kcf.or.jp/tiara/event/detail/?id=1863



【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】
 

『新春浅草歌舞伎』


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