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J-WAVE開局30周年プロジェクトとして、10周年を迎える松居大悟率いる劇団ゴジゲンとコラボレート、ラジオと舞台のJUMP OVER(越境)を目指す新作舞台が2月から東京、福岡、大阪で上演される。
作・演出は、劇団ゴジゲンの作・演出・主宰をつとめている松居大悟。映画『君が君で君だ』や、ドラマ『バイプレイヤーズ』シリーズのメイン監督であり、ミュージックビデオ制作など数多くの作品を世に送り出している。その松居がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組「JUMP OVER」では、“稽古場ラジオ”と題して、創作の様子をリスナーに発信し、リスナーの声を創作に反映させる取り組みが行われている。舞台作品のロゴマーク選定からオーディション、稽古まで、普段は参加することのできない舞台制作の過程を公開し、リスナーと一丸となって本多劇場のステージを目指すという企画だ。
そして同番組のオリジナルテーマ曲も担当した石崎ひゅーいも、今回のコラボで舞台の音楽監督に初挑戦する。さらに映像のみならず、昨年は妄想歌謡劇団『上を下へのジレッタ』など舞台でも活躍する本仮屋ユイカの主演も決定した。
 
リスナーキャストの募集では約1カ月で800名以上が応募。演技経験などは問わないため、11歳から上は80歳まで応募が集まり、プロの「俳優」はもちろん、「看護師」「助産師」「占い師」「鉄工所の従業員」などキャストの職業も幅広い層から集まった。
そんな異色でスケール大きな公演について、作り手たちに話してもらう取材会が行われ、松居大悟、石崎ひゅーい、本仮屋ユイカが出席した。

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松居大悟、本仮屋ユイカ、石崎ひゅーい

リスナーと一緒に
「境界」を超えたい

──まず今回の『みみばしる』を、こういう形で作ろうと思ったコンセプトから聞かせてください。 
松居 J-WAVEと初めて舞台に取り組むのなら、ありきたりの宣伝みたいなことではなく、例えば舞台の本番のちょっと前から、制作の進捗状況などを話しながら一緒に作っていきたいと。ラジオの番組そのものを稽古場で作るとか、そういうラジオでしかできないことをやってみたいと話したんです。そしたら1年間番組をやらせていただけることになって、生放送で舞台作りを伝えられることになりました。今はリスナーからキャッチコピーなども色々送ってもらったり、台本の中身も伝えたりしているところですが、これからまさに稽古場の様子そのものを、ラジオで伝える番組になると思います。
──800人以上のリスナーの方々がオーディションに応募したそうですが、選んだ基準は?
松居 まずラジオを好きで聞いていること。もう1つは「境界」を超えるということをそれぞれ自分でどう考えているかで、自分の人生を一歩踏み出したいというような方を選びたいと思いました。 
──一緒に作るクリエーターとして、本仮屋ユイカと石崎さんにオファーした理由は?
松居 まだ具体的に何も決まってない中で、ともかく一緒に走れる人がいいなと。ひゅーいには映画に出てもらったり、楽曲に僕が映像をつけることなどはあったけど、作品を一緒に作ったことはなかったのんです。でも、頼んだらすぐ「いいよ」と言ってくれて。それからキャストは、同世代でラジオを好きな人でと探したら本仮屋さんがいて、無理かなと思いつつ思いきって聞いたら、面白そうだと言ってくれたので、マジかと(笑)。
本仮屋 私は何も内容がわかってなかったし、本当にやるのかもわからないまま打ち合わせに行ったら松居さんが居て、これは本当なんだと(笑)。
──石崎さんと本仮屋さんは今回のオファーを受けて期待したところは?
石崎 ふだんは1人で曲を作っているんですけど、一番影響されるのは人なんです。人からもらったものが音楽に出てくる。松居くんの映画に出たり、PVを撮ってもらったり、一緒に作品作りすると、そのあとで自分の中で曲がワーッと零れてくるので。
松居 おー(笑)。
石崎 だから一緒にやった時間は、僕のものにもなるので(笑)。今回もゼロから冒険するということなので、ぜひやらせてもらいたいと。最終的には自分のものにしてやろうと(笑)。
本仮屋 女優っていつも最後に作品に入るんですけど、これはその過程を全部みられるなと思ったので。でも本当にたいへんそうです(笑)。松居さんとの出会いはショートショート・フィルム・フェスティバルでしたが、監督がそれぞれ自分の作品を紹介するんです。松居さんはすごく楽しそうにそれをやってて、ふにゃふにゃとへらへらとしたその佇まいが素敵で(笑)、私もこんなふうにやってみたいなと。そして何よりも私はラジオが好きなので、ラジオと舞台の両方ができるのが一番の魅力でした。

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聞くしかない「耳」が
衝動的に「みみばしる」

──出演者がリスナーだからこそ良いという部分は?
松居 僕はラジオと演劇は近いような気がしていて、日常を過ごす中で自分から出会おうと思わないと出会えないもので、そこで発信されているものはちょっと危険で不健康なものもある。それに両方とも、人と人が直接関わり合う1対1のものですよね。だから親和性はすごくあるなと。きっとラジオのリスナーは舞台が好きだと思います。
石崎 僕はラジオと演劇は流れていくものだなと思っていて。僕は2002年にデビューしたんですが、自分の曲がラジオから流れてくるのを聞いたとき、不思議でけっこう嬉しい気持ちになったんです。小さい頃からずっと聞いていたのに、なにかちょっと違った感覚でした。なんか儚いというか、残らないんです。演劇もラジオもその時だけで残らない儚さがある。そういうところがラジオは魅力的だなと。
本仮屋 リスナーが出演することについては、もちろん役者が演じることでも熱量は出せますけど、「もともとラジオを聞いてる人の熱量には勝てないんじゃないか」と。これは松居さんがおっしゃってました。確かにオーディションのとき、これはたいへんだ、カオスだなと(笑)。出演するのがプロの俳優ばかりですと最短でゴールに行けるのですが、そうじゃない人たちばかりだと、ゴールがどこになるかもわからない。ということはどこにでも行けるわけで。そういう未知数が一緒に組むことの面白さだと思います。
──『みみばしる』というこのタイトルですが、どんなところから?
松居 主人公がリスナーで、リスナーが発信者になっていくような話だと考えたときに、「耳」って口とか手と違って情報を出すことはできない、聞くしかないわけです。そんな「耳」が衝動的に「耳走ってしまう」ような劇だと。そういう劇にしようと。それで漢字を入れるかどうするか3時間くらい考えて(笑)、結局全部ひらがなになりました。
本仮屋 すごく素敵ですよね。
石崎 そういうの松居さんうまいですよね。『くれなずめ』とか(笑)。

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絶対に会わないような人たちが
板の上で出会う

──石崎さんは音楽をもう作りはじめているそうですね?
石崎 そうですね。松居くんからなんとなくこういうプロットだと聞いて、じゃこんなメロディはどう?みたいに、会話するように作っていってます。キャッチボールが始まったばかりです。
松居 「こういう音楽だと思うんだよな」と、ひゅーいが作ってくれた音楽で、次の場面のイメージが浮かんだり、今までになかった作り方になってます。こちらが固め過ぎると、ひゅーいに発注するだけになってしまうので、そうじゃなく、ひゅーいの作った音楽で話も出来上がってくるというのが面白いし、ワクワクします。
──本仮屋さんからのクリエイトのヒントはいかがですか?
松居 沢山あります。先ほども話に出た「女優は一番最後だから一から作ることに憧れる」という話を聞いて、それいいなと思ったので台本に取り込んでます。
本仮屋 やったー!(笑)でも私のプライベートな話してるときにメモしたりしてるんですよ。ストーリーに関係ない話してるんだけど?みたいな(笑)。私の弱い部分を色々集めているのかなとビビってます(笑)。
──すごく気の合う3人という感じですね。
松居 ユイカさんもひゅーいも気を遣わなくていいし、年も近いので共通言語も多いし、でも本職がそれぞれ違うので、持っている言葉がすごく刺激になりますね。この3人を中心にスタッフがいて、さらにリスナーがいてという、そういう大きな円が出来上がっていく過程は、演劇を作っている感じともまた違うし、音楽を作ってる感じでもない。すごく特殊な命のかたまりみたいなもの、という気がします。

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──そこにオーディション組の様々な人たちが入るわけですね。
松居 普通のオーディションなら落ちるような人もいて、ほんとに声が出ない子とか。その子のラジオ愛がすごくて、聞こえないような声で、「こんな僕でも仲間に入れてもらえるからラジオが好きなんです」って言うんです。この子が舞台立ったら全部もってっちゃうなと。もちろんプロの役者もいるし、たぶん普通に生きていたらお互いに絶対に会わないような人たちなんですよね。でもこの企画があるから一緒に1か月を過ごすことになる。その彼らが同じ板の上で生きる地図を僕らが作るわけです。すごく演出家冥利に尽きると思っています。
本仮屋 私も今までの自分のやり方、意識してなくても持っていたやり方、それを全部壊されてしまう現場になるだろうなと。これ終わったらきっとOSがリニューアルした感じの、アップデートされちゃうんじゃないでしょうか(笑)。ふだんは保育士さんやってるとか、金融系なんだとか、色々な人がいて、そういう人たちと話すだけじゃなくて、舞台って心も開いてキャッチボールするわけですから。いわば命綱つけてて相手が落ちたら自分も落ちていくわけで。そういう舞台というところで、こんなに色々なバックグランドを持った人たちと会えたことは、人生の中で宝になっていくんじゃないかなと、とても楽しみです。

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【追加情報】
来年2月の舞台『みみばしる』の前に放送される年の瀬ドラマ『平成ばしる』(テレビ朝日 12月28日 0:20〜1:20放送予定 ※関東ローカル)が発表された。またその監督も務めることになった松居大悟が、雑誌AERA誌上の人物ノンフィクション「現代の肖像」密着取材を受け、12月10日号発売のAERAに登場している。

〈公演情報〉
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舞台『みみばしる』
作・演出◇松居大悟
音楽監督◇石崎ひゅーい
出演◇本仮屋ユイカ(以下50音順)
市川しんぺー俳優/劇団「猫のホテル、祷キララ俳優・大学生、工藤真唯保育士、小松有彩会社員、鈴木翔太郎大学生、鈴政ゲン俳優、タカハシマイミュージシャン/Czecho No Republic 、玉置玲央俳優/劇団「柿喰う客」、仲山賢高校生、奈良原大泰アルバイト、日高ボブ美俳優/劇団「ロ字ック」、藤井克彦楽器屋店員・ブロック塀研究家、前田航基俳優・大学生、三浦俊輔俳優・大工、宮平安春庭師、村上航俳優/劇団「猫のホテル」、目次立樹俳優/劇団「ゴジゲン」、本折最強さとし俳優/劇団「ゴジゲン」、ゆうたろうモデル・俳優・ショップ店員
歌・演奏◇ワタナベシンゴ (THE BOYS&GIRLS

●2019/2/7〜17◎東京・下北沢 本多劇場
〈料金〉6,800円 プレビュー公演 6,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉ゴーチ・ブラザーズ 03-6809-7125(平日10:00-18:00) 
●2019/2/23〜24◎福岡・久留米座
〈料金〉6,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉ピクニックチケットセンター 050-3539-8330(平日11:00-17:00) 
●2019/3/1〜3/3◎大阪・近鉄アート館 
〈料金〉6,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日10:00-18:00) 
〈公演HP〉https://mimibashiru.com




【取材・文・撮影/榊原和子】



方南ぐみ企画公演『伊賀の花嫁』


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