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野田秀樹の『フィガロの結婚』などで、我が国のオペラ上演史上センセーショナルな記憶を残した全国共同制作プロジェクト。今回はモーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』を上演する。総監督・指揮は井上道義、井上からの熱い支持でダンサー・演出家として進境著しい森山開次が演出・振付を手がける。
公演は来年1月26・27日に東京芸術劇場 コンサートホール、また1月20日に富山のオーバード・ホール、2月3日に熊本県立劇場 演劇ホールでも上演される。 
 
この公演の制作発表が、11月に東京芸術劇場で開催され、井上道義、森山開次に加えて、出演者のヴィタリ・ユシュマノフ、三戸大久、高橋絵理、デニス・ビシュニャ、鷲尾麻衣、金山京介、小林沙羅、藤井玲南、近藤圭らソリスト。またダンサーの浅沼圭、碓井菜央、梶田留以、庄野早冴子、中村里彩、引間文佳、水谷彩乃、南帆乃佳、山本晴美、脇坂優海香が出席した。


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10人の女性ダンサーたちと井上道義・森山開次

【挨拶】

井上道義(総監督・指揮)
野田秀樹との『フィガロの結婚』の後に何をしようかと。僕の年も考えて、思い切り若い人とやりたいなと。この国はなかなか若い人が思い切り冒険するチャンスというのは、意外とメジャーな仕事ではないことが多い。最近それが少しずつ破られてきているけれど、その点で、森山(開次)君はものすごく素晴らしい才能だし、これから色んな面で色んな分野で活躍できる人です。ここにいる歌手もみんなオーディションして決めた人たちで、今回は大いに冒険をします。その冒険は我々のためじゃなくて、オペラというものに対してお客さんが本当に良い意味で気楽に、良い意味で合点がいくようなやり方でやりたい。アジアの顔をした人間が『ドン・ジョヴァンニ』をやるということも、基本に返って、それは『フィガロの結婚』も同じでしたけど、世界的に意味のあることができるようにとやっています。こういう方法がこれから大いに受け継がれる事を希望しています。

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森山開次(演出・振付)
このような素晴らしい大きなチャレンジに声をかけて頂きましたこと、非常に嬉しく思っております。僕の名前を挙げて頂いたことは勇気のいることで、その皆さんのお気持ちを最大限に生かすためにも、萎縮することなく思い切って挑戦することが僕には大事だと思っています。ダンスの畑にいる人間ですから、もちろんここにいる出演者の方々から比べればオペラに関してはまだまだ及ばない、知識も浅いです。その中で僕が何ができるかですが、知らないでいる強みもあります。色々と無茶ぶりをするかもしれないです。今はダンスが入るオペラも珍しくはないですが、改めて「身体(しんたい)」ということを見つめ直した時に、ダンサーがオペラの方達とどういう関係性が築けるか。また、オペラの人達が「身体」ということを考えた時に、歌いながらという状況はありますが、その中でより身体性を追求していく時間になればよいなと思っております。一生懸命勉強をしてやっていきたいなと思ってますが、どこか無知でいたいと思ってます。楽しいクリエーションができればいいなと思っております。

ヴィタリ・ユシュマノフ(ドン・ジョヴァンニ) 
私は、ジョヴァンニ役がバリトンのレパートリーの中で一番好きな役ですし、私とジョヴァンニは不思議な関係があります。初めて歌った時は、ドイツ語で、2回目は英語でしたけど、3回目は日本語になります。私はなぜこの歌が毎回違う言葉で…そう、4回目はロシア語になるかもしれないですね(笑)。でも今回、もちろん私は日本人ではないですがわかりやすく、私にとってそれは大きいチャレンジですが、日本語はとても綺麗な言葉ですし、日本語は大好きで、それも頑張りたいと思いますし、素晴らしい皆さんとご一緒に演奏させて頂いて、ありがとうございます。

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三戸大久(レポレッロ)
 
僕は42歳ですが、気がついたらカンパニーの中で一番年上になってまして、恐ろしいと思っております(笑)。42歳で、僕が大学に入ったのは1996年なんですが、新国立劇場ができたのが確か95年で それまでというのは、二期会だったりが原語ではなく日本語で『フィガロの結婚』だったり、モーツァルトをやってた時代があります。僕たちは新国立劇場ができてから原語でやる世代で、この20年間ずっと原語でやってきたんですね。なので日本語でやるという事に対して、先生たちはやってたのは何となく覚えてるんですが、自分たちがやるというのは今回初めてでして、まぁ最初は戸惑いが。今は本当にみんなとクリエーションしながらやってますが、20年後にこの若い世代で、新しい言葉でやっていけるということに、すごく興奮とか期待とか感じています。カンパニーも年代が一緒ですし、開次さんも一緒の年代ですし、マエストロがその中ですごくイニシアティブをとられていらして、僕たちも頑張ってやっていきたいなと思っております。とても素敵なカンパニーになるんじゃないかなと思います。

盒恭理(ドンナ・アンナ) 
こちらのカンパニーに参加するのは今回が初めてで、オーディションで選んで頂いてとても光栄に思っていますし、身の引き締まる思いでいっぱいです。アンナは10年以上前にイタリア語で歌ったことがあるのですが、日本語で歌うのはもちろん初めてですし、今回の日本語のものをすごく緻密に作って頂いてるなという事を感じながら、今、音楽稽古に励んでおります。アンサンブルのときは一番トップのラインを歌うので、女性としては一番言葉が聞きにくいと言われることが多いのですが、そこにこだわって、日本語でせっかくやっておりますから、きちんと皆さんに届けられるように歌えたらなと思っております。

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デニス・ビシュニャ(騎士長)
この素晴らしいプロダクションで初めてで、とても嬉しいです。日本語のオペラは日本で3回目です。『ラ・ボエーム』と『魔笛』もやっています。日本語のメロディとかイントネーションとか難しいです(笑)。今回はマエストロのトランスレーションで、とてもジャストの言葉と、綺麗な日本語を作って、歌いやすいです。オーディションの時は、森山さんは、少しダンスしてくださいと言って、少しびっくりしましたが、舞台でもダンスするかな?(笑)、とても楽しみです。

鷲尾麻衣(ドンナ・エルヴィーラ)  
『ドン・ジョヴァンニ』では、私は最初はイギリスでツェルリーナ役を、日本の新国立劇場でツェルリーナ役をやったので、今回も、自分の声は割と軽いと思っていたので、ツェルリーナ役を志望してオーディションを受けました。しかしマエストロからエルヴィーラ役もあるんだよと伺って歌わせて頂き、今回エルヴィーラ役を歌わせて頂くことになりました。『ドン・ジョヴァンニ』には、ドンナ・アンナ、ツェルリーナ、エルヴィーラと出てきますが、私は一番女性が持っている特徴を持っているのは、エルヴィーラ役かと思います。ちょっとヒステリックなくらい自分の感情を押し殺さず、大好きな人に無我夢中で、大好きな人を追いかけていく。女性はみんな少なからずヒステリックな部分を持っている。そういう部分を舞台上でぶちまけられるのは、私にとっても喜びです(笑)。そして、森山開次さん、とても静かに見えるんですが、内なるエネルギーをひしひしと感じていて、今回初めてご一緒させて頂けるのがとても楽しみにしています。

金山京介(オッターヴィオ)
先ほど三戸さんが42歳だと、僕は32で一番下だと思うんですけども、オペラのプロダクションで、上から下まで10歳前後というのはあまりない若いプロダクションだと感じております。そしてオッターヴィオはオペラの中でも唯一のテノールということで、テノールらしさを出せればいいかなと。このマエストロのプロダクションに加えて頂いて、本当に嬉しく思っております。精一杯頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

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小林沙羅(ツェルリーナ/1月26日出演)
個人的なことですが、クラシック・バレエを5歳から17歳までやっていて、中学時代は本気でバレリーナになりたいなと思っていたり、本当に踊ることが昔から大好きなので、今回森山さんが演出をされると聞いて、これは絶対舞台に立たせて頂きたいと思ってオーディションを受けました。オーディションの時に「くるくる3回回って椅子に座ってください」というのがあったのですが、絶対歌いたい!と思う気持ちが強くて、4回くるくる回ってしまって、「ごめんなさい、4回回ってしまいました」と(笑)。今回ツェルリーナ役をさせて頂くのを本当に楽しみにしています。さっき、ツェルリーナは可愛いという話がありましたが、可愛らしさもですが、それだけじゃないツェルリーナを出したいなと思っております。

藤井玲南(ツェルリーナ/1月27日出演)
私もオーディションを受けて、マエストロと森山さんに選んで頂いて本当に光栄に思っております。まさか、こんなすごいプロダクションでツェルリーナを歌えるなんて、私にとって大きな挑戦で、ドキドキもしておりますが楽しみのほうが大きく、幸せです。『ドン・ジョヴァンニ』は、大学院の頃にドイツのとある歌劇場に研修生として所属した際にツェルリーナ役を、ヴィタリさんと同じくドイツ語で勉強させて頂きました。舞台上をバイクが走り回ったり、ドン・オッターヴィオが最後に自殺したりする度肝を抜かれる演出だったのですが、思い入れのある思い出深い作品です。今回も森山さんの演出で、沙羅さんも仰ってたように、3回回って椅子に座ってというようなオーディションでしたし、自分の全てをさらけ出していかないとついていけないくらい、エネルギーに満ち溢れた、誰も観たことが無いような舞台になっていくんじゃないかと思っています。日本語ということで、難しいかもしれませんが、字幕を見なくても理解できるというくらい自然な感じで、レチタティーボもアリアもアンサンブルも歌えるように、皆さんと頑張って一緒に練習して参りますので、楽しみに待っていてください。

近藤圭(マゼット)
農民として、愛するツェルリーナをドン・ジョヴァンニにとられそうになり、ジェラシーメラメラでやってまいります(笑)。個人的なことなんですが、さっき、小林さんがバレエをやられてたと仰ってましたが、実は僕も母がバレエ教師で、姉も海外のバレエダンサーとして踊っているのですが、僕もやれと言われましたが白タイツを履くのがどうしてもいやでやらなかったので、すごく後悔しています(笑)でもバレエを観るのが本当に大好きで、オペラ畑にいるのですが、バレエの舞台のほうが観ているかもしれません。海外に留学している時もバレエの舞台もすごく観ましたし、コンテンポラリーも大好きです。踊る自信は無いのですが、今回は森山さんの演出ということで、どんな化学反応が生まれるかすごく楽しみです。

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【質疑応答】

──日本語の監修はマエストロとなっていますが、日本語の歌詞はどんなふうに?
井上 歌詞は大昔からあるんですが、古くてダメなんです。だから、本当にたくさん変えてます。無駄な努力かもしれない、やっぱりダメだ、原曲でやれってことになるかもしれないけれど、それでもやってみたい。それは、演出のためでもあるので。
──舞台美術と衣裳はどうなりますか?
森山 舞台美術と舞台衣裳に関しては、最初にこの話を頂いた時に、今回は、女性をしっかりと描いていきたい。ドン・ジョヴァンニの話ではありますが、そういう意味では男性もしっかり描きますが、実は女性3人のキャラクターがそれぞれ三者三様で、ドン・ジョヴァンニを取り囲んでいる女性の姿がとても印象に残る舞台だと思っています。いわばドン・ジョヴァンニ自体がまるで女性の身体の子宮の中で、暴れ回っているようなイメージ。自分の中で初めにそれを持ったものですから、置き換えをするという演出ではないですが、何となく、裏にそういった女性達を描いていこうと。今回そういう美術と衣裳で今クリエイションを進めているところです。また、今回ダンサー10人の方、女性のダンサーの方、最初は男性も入れていく予定ではあったのですが、オーディションをしていく中で、色々な、もしかしたら女性達で取り囲むダンスをしたほうがいいのではないかということになってきて、女性だけにしました。特に男性ダンサーが悪かったというわけではないです(笑)。そういう女性を際立たせていこうという演出をしながら、その事で男性陣が生きていく、ドン・ジョヴァンニがさらに生きてくる。ドン・ジョヴァンニがただ暴れているというだけでなく、生きてくる切り口が見えるんじゃないかなと思います。

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──これまであった日本語の歌詞はダメだと仰いましたが、今作ではどのような日本語を紡いでいきたいのでしょうか。
井上 この演目、『ドン・ジョヴァンニ』じゃなく『ドン・キホーテ』なんじゃないかという感じです。もう、風車に向かってワーワー言ってるみたいで答えがない。結局、それに対してどこまで近づけるか、どこまで理想に対して向かっていけるか。ドン・キホーテじじい?そういう気持ちが強い。やればやるほど地獄に近い。日本語でやるということ自体がとても大変です。ただ、我々はやっぱり日本語で喋っているわけだし、彼(ヴィタリ)なんか、普通のドン・ジョヴァンニの体じゃないじゃないでしょ。普通のドン・ジョヴァンニの体は、だいたい三戸(大久)くらいみんな胸厚でデカい。例えば女性も胸がすごく大きかったり、そういう身体をもった人がオペラやってきてる。でも、考えてもみて。モーツァルトの頃はそんなんじゃなかった。ヴィタリくらいの体でやってたかもしれない。まだイタリアオペラとかそういう時代じゃないわけですから。ヴェルディいない、プッチーニいない、デカい人いないし大きな劇場もない、小さな劇場でやってたわけだから。だからこっちがうまくやれば、モーツァルトにもっと肉薄できるんじゃないかな。モーツァルトに喜んでもらえるんじゃないかなと思う。今のところ、こういう方法でいかないと追いつかないんじゃないかなと、勝手な思い込みという意味で、ドン・キホーテということです。

〈公演情報〉
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2018年度全国共同制作プロジェクト
モーツァルト 歌劇
『ドン・ジョヴァンニ』全2幕
(新演出・英字字幕付・日本語上演)
総監督・指揮◇井上道義
演出・振付◇森山開次
出演◇
ドン・ジョヴァンニ:ヴィタリ・ユシュマノフ
レポレッロ:三戸大久
ドンナ・アンナ:盒恭理
騎士長:デニス・ビシュニャ
ドンナ・エルヴィーラ:鷲尾麻衣
オッターヴィオ:金山京介
ツェルリーナ:小林沙羅(1月26日出演)、藤井玲南(1月27日出演)
マゼット:近藤圭
ダンサー:
浅沼圭 碓井菜央 梶田留以 庄野早冴子 中村里彩 引間文佳 水谷彩乃
南帆乃佳 山本晴美 脇坂優海香
管弦楽◇読売日本交響楽団
合唱◇東響コーラス
●2019/1/26・27◎東京芸術劇場コンサートホール
〈料金〉S席10,000円 A席8,000円 B席6,000円 C席4,000円 D席3,000円 E席1,500円【1月26日・27日とも完売】 SS席12,000円【1月26日・27日とも完売】 高校生以下1,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京芸術劇場ボックスオフィス 0570-010-296 (休館日を除く10:00-19:00)

●2019/1/20◎富山 オーバード・ホール
https://www.aubade.or.jp
●2019/2/3◎熊本県立劇場 演劇ホール
http://www.kengeki.or.jp





【取材・文・撮影/榊原和子】





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