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記者発表ルポ

波乃久里子、浅野ゆう子の出演で涙と笑いの名作喜劇2本立て「七月名作喜劇公演」製作発表レポート

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新橋演舞場7月公演は、「七月名作喜劇公演」と銘打ち、『お江戸みやげ』と『紺屋と高尾』の喜劇2作品を上演する。

『お江戸みやげ』は、故・川口松太郎の名作喜劇。初演は1961年12月の明治座で、17世中村勘三郎がお辻を演じた。物語は、梅が咲く「湯島天神」境内にやってきた行商人のお辻(波乃久里子)とおゆう(市村萬次郎)。芝居見物をした2人だが、お辻は人気役者の阪東栄紫(喜多村緑郎)に心を奪われてしまい…。

『紺屋と高尾』は講談で有名な「紺屋高尾」の物語をアレンジした人情喜劇。松竹新喜劇で1968年に初演、藤山寛美が紺屋の職人久蔵を演じて人気を博した。物語は、大坂から江戸へ出てきた紺屋の職人久蔵(喜多村緑郎)が吉原最高位の遊女、高尾太夫(浅野ゆう子)に一目惚れ。一年間懸命に働いて、貯めた五十両を持ちいざ吉原へ…。

本来なら『お江戸みやげ』のお辻、『紺屋と高尾』の高尾太夫は、藤山直美が務める予定だったが、病気により降板。『お江戸みやげ』は、17世勘三郎の長女・波乃久里子が、父の当たり役でもあったお辻に挑む。お辻の相方のおゆうは歌舞伎から市村萬次郎。坂東栄紫は喜多村緑郎が演じる。お紺にはテレビ、舞台でも活躍する小林綾子、常盤津文字辰には歌手として女優としても活動している仁支川峰子が扮する。

もう1作の『紺屋と高尾』の高尾太夫は、テレビ、舞台などで話題作に出演、新橋演舞場は初出演となる浅野ゆう子。紺屋の久蔵には喜多村緑郎。またNHK朝のドラマ『べっぴんさん』にも出演し話題になった曽我廼家文童。様々な舞台で存在感を放つ大津嶺子が出演、舞台から病床の藤山直美を支える意気込みで臨む。

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今回、上演に先立って製作発表会が行われ、松竹株式会社の取締役副社長である安孫子正、『お江戸みやげ』の演出を手掛ける大場正昭、『紺屋と高尾』の演出の浅香哲哉、波乃久里子、浅野ゆう子、市村萬次郎、喜多村緑郎が登壇した。

【登壇者挨拶】
 
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安孫子正
今日はお忙しいなか、お集まりいただきありがとうございます。新橋演舞場の7月公演ですが、当初、藤山直美さんの公演を考えておりましたが、病を得まして、休演となりました。そのため、新しく座を作り直しての公演でございます。今回、直美さんのお芝居で、大阪二大物語と、『お江戸みやげ』の2本を上演する予定でございましたが、今日ここにお集まりいただきました方、また新たに参加していただく方を含めて、新しい公演を行うことにしました。
『お江戸みやげ』でございますが、川口先生の作品で、今回は初めて女優の波乃久里子さんが挑戦されます。これは17代目の中村勘三郎さんが演じるお辻という当たり役の作品です。お辻とおゆうの2人の主人公がいますが、今回、市村萬次郎さんにおゆうでご出演をお願いしておりましたので、ご共演の経験もある波乃久里子さんにお願いをし、快くご出演いただくことができました。この公演には、仁支川峰子さん、小林綾子さんにも出演していただきます。
また、『紺屋と高尾』は大阪二大物語ですけれども、直美さんならではの作品でございまして、いろいろ熟考したすえ、今回は浅野ゆう子さんにご出演いただくことになりました。浅野さんは、京都の南座、大阪の松竹座でご出演いただいていて、大きい俳優でございますから、いずれ東京の新橋演舞場でとかねがねお話しており、図らずもこのようなご縁をいただきました。浅野さんには、スケジュールを調整していただき、ご出演していただくことに感謝しております。これを機会に、商業演劇という場で、もっともっと活躍していただきたいと思っております。
それでなぜ、『紺屋と高尾』を選んだかといいますと、曾我廼家文童さん、大津嶺子さん、喜多村緑郎さんがいらっしゃるので、やはり浅野さんには美しい高尾太夫をやっていただこうと決まったわけでございます。このような狂言は、脇を固めてくださる方が、きちんとしていらっしゃるのが大切で、この2つの狂言を選ばせていただきました。
こういうお芝居は、東京の劇場でもかかりにくい状況になっております。ただ、何があっても、この22つは名作で、面白いお芝居でございますし、脇の方達も、腕の達者な方にご出演していただくことになりましたので、どうぞお楽しみいただきたいと思います。ぜひ、この公演が無事に初日から千穐楽までさせていただけるよう、皆様のお力をいただきたいと思います。

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大場正昭
私が『お江戸みやげ』という作品に出会いましたのは、新派の文芸部に在籍いたしまして、亡くなられた坂東三津五郎さんから、15年ほど前にやってくれないかと言われて喜んで引き受けた時です。
三津五郎さんと上演しましたのは、東日本大震災の2011年の4月でした。いろいろな思いのなかで、この作品を作ったのを覚えています。あるとき、京都で三津五郎さんに歌舞伎でこういうお芝居は大丈夫ですかと聞いたら、「いいんだ」と言われて、三津五郎さんが大変喜んでくださった。「祇園の芸者さんの評判が一番良かったよ」と言ってくれたのを覚えています。そのあと、新劇系の雑誌『悲劇喜劇』という雑誌で作家の曽野綾子さんが、お書きくださった巻頭エッセイを拝見してひどく感激いたしました。「甘くはないが、夢はある」というタイトルです。「この作品には恐ろしいほどの人生の深みが捉えられている。まったく、甘くはないが、夢はあるのだ。これは現代ではあちこちで失いかけている大人の情感の世界を描いて成功した数少ない名作であろう」というような文章が書いてある。
それから初演された17世守田勘弥のお芝居をご覧になっていた18世勘三郎さんが、勘九郎時代に朝日新聞社から出版した『勘九郎芝居ばなし』で、上演したい作品への想いをお書きになられています。その中でも、この作品を取り上げております。芝翫さんがおやりになった頃の文章ですが、栄紫をおやりになって、役者が役者の役をやるのは難しくてね、というようなことをお書きになっております。私にとってのいろんな思いのある作品ですので、藤山直美さんの無念を含めまして、劇団の大先輩である波乃久里子さん、喜多村緑郎さん、そのほかみなさんと一緒に、とにかくおもしろい作品にしていこうと思っています。よろしくお願いいたします。

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浅香哲哉
普段であれば、松竹新喜劇の場合は、時代物と時代物ではない公演になります。今回は、時代物2本ですが、下座も使わせていただけるということなので、古風な芝居の演出ができればと思っています。所作指導に尾上墨雪先生をお招きして、浅野さんの古風で美しい姿をぜひ見ていただきたい。2008年に五木ひろしさんがおやりになられた時からお付き合いさせていただいています。その間に、直美さんが、舞台を吉原から島原に変えて、江戸と東京を逆転させて、前川清さんと出演された「博多座四月特別公演」(2011年)もやらしていただいたのですが、その時は下座を使えなかったので、今回は喜劇ではありますけれども、テンポは失わず古風にやりたいと思っています。

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浅野ゆう子
先ほど、安孫子副社長様から素晴らしい言葉をいただき、とても嬉しく思っております。突然のお話でしたが、普段から大変お世話になっております副社長から新橋演舞場の舞台に立ってみないかというお声をいただき、ご恩返しができると思い、力は及ばないかもしれませんが、出演させていただく決意をしました。大先輩の波野さんも高尾太夫を演じていらっしゃるので、ご指導をいただきながら演じたいと思います。緑郎さんは新派に移られた時に公演を拝見させていただいて、いつかご一緒させていただければと思っておりました。現代っ子としてやってきました私が、初めての花魁役で古風な芝居ができるか不安ではありますが、7月は喜劇でお楽しみいただけたらと思います。みなさま足をお運びになってくださるようお願いいたします。

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波乃久里子
今日はすごく緊張しています。直美さんは日本に1人しかいない方ですから。『お江戸みやげ』は、私が16歳の時に、父の17世勘三郎と勘弥さんの2人の素晴らしい演技をみた時に、これは女優では無理だと思っていました。それから直美さんが挑戦なさると聞いた時に、とても楽しみにしておりました。直美さんには大船に乗ったつもりでと言いたいところですが、小舟にしかならないかもしれません。でも、一生懸命やらせていただきます。直美さんがいらっしゃらない公演だけでも寂しいでしょうから、どうか宣伝はしっかりしてくださいね(笑)。『紺屋と高尾』で素晴らしい花魁を私がやらせていただいた時は、私は不器用ですから花魁道中はやめてくれと申しましたら、寛美先生が「久里子さんを世界一きれいにしてみせます」と言って、5時間かけて、照明を直して舞台稽古をやってくださいまして、あんなに綺麗になったのは最初で最後。浅野さんは、照明がなくてもきれいな方ですから、文句なく美しくなられます。どうか、7月の公演が盛大にできるようにご配慮願えればと思います。直美さんを喜ばせて安心させてください。

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喜多村緑郎
『お江戸みやげ』では阪東栄紫、そして『紺屋と高尾』では紺屋職人の久蔵を務めさせていただきます。かたや一心に惚れられ、もう一方は一心に惚れ抜くという、2つの大役をいただきました。特に紺屋の久蔵役は尊敬して止まない藤山寛美先生の当たり役。手も足も出ないことは、よくわかっているのですが、真っ向から当たって砕けろの精神で精一杯務めて参りたいと思います。

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市村萬次郎
今日はみなさんお集まりいただき誠にありがとうございます。色々な分野の方とお芝居をさせていただくことは、本当に楽しみで、7月の舞台を心待ちにしております。人は人が好きになることはいいことだと思いますが、好きになられることも素晴らしいこと。この作品の中で、人が好きになったり、好きになられたり、人の心の機微を側で見ている役も面白いのではないかと思っています。息子の市村竹松も参加させていただきますが、みなさんと1つになって、舞台を作り上げられたらと思っております。

藤山直美(手紙の代読)
この度は病気と云うプライベートな事柄で7月の新橋演舞場公演を降板させて頂く事となりまして、誠に申し訳ございません。松竹演劇部の皆様、共演予定でした役者さん方にも本当に多大なるご迷惑をおかけすることとなり、お詫び申し上げます。しかしながら、こうして「七月名作喜劇公演」が、無事上演される運びとなり、心から御礼申し上げます。市村萬次郎さん、波乃久里子さん、喜多村緑郎さん、そして浅野ゆう子さんと、お客様を喜ばせるプロフェッショナルの方々がご出演されるので素晴らしい舞台に成ると思います。このお顔ぶれの舞台企画は病気療養中の私にもパワーを頂く事が出来ます。私も治療に専念いたしまして、万全の体調でまた、皆様にお会い出来ます様に頑張りたいと思っております。病気の私が云うのも何ですが、皆様も呉々もお身体ご自愛ください。
平成29年 春 藤山直美

【質疑応答】
 
──お辻は、波乃久里子さんのお父様がされた役でありますが、その時のエピソードはありますか。また、浅野ゆう子さんに衣装合わせや台本など高尾太夫を演じようとする上で大変なことがあれば教えてください。
波乃 初めて『お江戸みやげ』を見たときは、笑って笑って笑い抜いて、泣いて泣いて泣き抜いて、これは歌舞伎役者の女形ではないと出来ないと思ってしまったんです。私はどうやっていいのか、まだわかりませんけれども、父の17世勘三郎の写真集があるんです。その中には、お辻が荷物を持っている絵のような写真があるんです。ここから人生が見えて悲しさもあって、それを背負ったお辻が立っているんですね。父がよく、これは『末摘花』に匹敵すると言ってるんですよ。確かにダブってくるものがあるような気がして、写真を取り寄せて同じようにしたくて、メイキャップも父と同じようにして頂きました。ただ、顔は似せましたが、芸が伴うかわかりません。私がやれそうもない役をやらせて頂くことを、直美さんには申し訳ないけども、ありがたいと思います。しかも、弟の18世勘三郎がやりたかった役でございます。昨日は父の祥月命日で、お墓に行って、弟に謝りました。ごめんなさいって。ですから、この役をやらせていただく以上、成功させたいと思います。
 
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浅野 花魁の役は、随分前から、機会があればやらせていただきたいと思っておりました。この度、お声をかけていただいて、お写真を撮るので扮装させていただいた時に、びっくりしました。まだ時間がございますので、7月までに首と腰を鍛えようと思ったほど衣装が重いんです。カツラが約5キロだそうです。前の帯、打掛、お着物で、20キロだそうで、全身25キロの衣装を着て高い下駄に乗ると、とても1人では乗れませんでした。下駄に乗せてもらい、照明を直してもらっているのを待っている間に、鉄のバーにつかまって立っていたほどです。本番ではもっと軽くしますよとおっしゃられたんですが、メイクさん曰く、「そう軽くはなりませんよ」と言われて、鍛え甲斐があるなと思っております。以前、テレビドラマの『大奥』(2003年)という作品に出演させていただきましたが、お話にならないと思いました。花魁は体力勝負で、重さに勝てるだけの芝居ができるのか不安ですが、着せていただいてとてもいい気分です(笑)。

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──波乃さんと萬次郎さんは『お江戸みやげ』ではどういう役を作って、掛け合いをしていこうと思いますか。また、萬次郎さんは三津五郎さんの時に出演されていらっしゃいますがその時のエピソードを。
市村 どういう風に役を作るかはお稽古に入って決めたいですね。私はお酒が好きで、おゆうもお酒が好きなので、喜劇ですから、明るく自然なおかしみが出ればいいなと思います。お酒を飲むとお辻の方がおゆうよりも度胸が座ってしまうので、その辺の逆転を無理におかしく作るのではなくて、自然と笑いが出るようなおかしみを出せるようにしたいと思います。三津五郎さんとは、衣装を直して少し違うことをしたら怒られた記憶がございますね(笑)。
波乃 大場先生に身を任せて、先生の通りにやらせていただこうと思います。だから、10代の時から仲が良い萬次郎さんとやらせていただくのは嬉しいですね。2人の間には演技がなくてもできると思うんです。お辻になろうというわけではなく、お辻なんだと思って、来月からお辻になりきって、萬次郎さんと一緒にやっていきたいと思います。喜多村さんには普段から惚れていますので大丈夫です(笑)。チームワークとしては素晴らしいと思います。
 
【囲みインタビュー】

登壇者の挨拶、質疑応答のあと、波乃久里子、浅野ゆう子、市村萬次郎、喜多村緑郎の囲み取材が行われた。
 
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──意気込みを。
喜多村 僕は本当にとにかく寛美先生のすごい姿しか焼き付いていないので、どうなるのか…とにかく喜劇ですけど、きっちりと芝居をして、その結果、お笑いを誘えるようになればと思っています。
波乃 父がやってくださった役を直美さんがやってくださるのが楽しみだったのが、残念ではあります。ただ、みなさんをがっかりさせないように尽力を尽くしたいと思っております。
浅野 力不足ではありますが、とてもお世話になっている松竹さんのお声がけで、頑張ろうという気持ちになって受けさせていただきました。関西人ですので、子供の頃からテレビで、藤山寛美先生の作品はテレビにかじりついて観ていました。寛美十八番の『紺屋と高尾』だと聞いた時、とても嬉しく思いました。私は江戸の太夫で、出身とは逆の役所になりますが、喜劇なので楽しんでいただける作品になればと思います。
市村 普段は、歌舞伎しか出ないので、今回いろんな分野の方と一緒にできるのが楽しみです。その中で、みなさんと仲良く明るく、お酒を飲んだつもりで頑張りたいと思います(笑)。

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──直美さんとはお話はしましたでしょうか。
波乃 直美ちゃんはすごい無理して明るくするからかえって会いに行くのを差し控えていますけど、早く元気になって欲しいですね。
市村 聞いたときはびっくりしましたけれど、電話では非常に明るくて安心しました。体が第一ですし、まだいくらでも機会があるわけですから、次の舞台を楽しみにしております。
──浅野さんの花魁姿をご覧になって。
喜多村 W浅野(浅野ゆう子・浅野温子)の頃から大ファンだったので、先月は、名取裕子さんと初めて舞台をさせてもらったので、今度はWゆうこだと思って嬉しいですね(笑)。浅野さんは美しいですね。ただその一言です。

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─浅野さんはみなさんと共演が初めてになります。
浅野 はい。緑郎さんは新派の時に拝見させていただいて、一緒にいつかと思っていましたし、波野さんとは歳はあまり変わらないですけど(笑)。
波乃 よくおっしゃる!
浅野 萬次郎さんは相見えることはなかったので楽しみです。
──稽古は楽しみですね。
波乃 小屋は1つですが、作品が違いますから、稽古はご一緒できないんですよ。ただ、この間は甥と舞台をやられているのを拝見させていただきましたね。テレビでもよく拝見させていただきます。小屋に入って楽屋でお話ししたいですね。
──楽屋ではどんなお話をされますか。
浅野 波乃さんは高尾太夫を演じていらっしゃいますので、その辺りを……。
波乃 20代の時よ。100年ぐらい前(笑)。
浅野 (笑)。細かい所作を教えていただければと思います。
 ──つい先だっては七緒八さんが桃太郎をやられたりと歴史を感じます。
波乃 ええ。弟がやっていた桃太郎、勘九郎がやっていた桃太郎、七緒八が勘太郎になって演じた桃太郎。同じ狂言が脈々と3代も続いて、歌舞伎の歴史は面白いですね。

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──お辻は歌舞伎役者しか演じられないとおっしゃられたお気持ちは。
波乃 女形しかできないという気にしかならなかった。しかも、川口先生が女形に書いたものでしょ。長谷川伸先生に、「どうしてあの演目で女優さんがなさらないでしょう」とお伝えしたら、長谷川先生が「女形に書いたからだよ」とおっしゃられた。だから、女優さんがやるのは違うのかもしれませんね。だから、直美ちゃんがやられると聞いたときは偉いなと思ったんです。私は女優じゃないので役者ですから、同じかもしれないけれど、女形ってエネルギーが違うもの。萬次郎さんも女形でしょ。
市村 でも女性にはなれないから(笑)。
──最後にファンにメッセージを。
波乃 どうぞお1人でも多くのお客様が来てくださったら、直美さんも安心なさると思います。どうぞ7月は応援してください。

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〈公演情報〉
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『七月名作喜劇公演』
一、お江戸みやげ(おえどみやげ)
作◇川口松太郎
演出◇大場正昭
二、紺屋と高尾(こんやとたかお)
口演◇一竜斎貞丈
脚本◇平戸敬二
演出◇浅香哲哉
出演◇波乃久里子、浅野ゆう子、市村萬次郎、喜多村緑郎、曽我廼家文童、大津嶺子、仁支川峰子、小林綾子 他
●7/3〜25◎新橋演舞場
〈料金〉一等席13,000円、二等席8,500円、三等A席4,500円、三等B席3,000円、桟敷席14,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489(10時〜18時)



【取材・文・撮影/竹下力】


『明治座 五月花形歌舞伎』 




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ノンバーバル劇場「オルタナティブシアター」こけら落とし公演『アラタ〜ALATA〜』製作発表記者会見レポート

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2016年3月に東京・新宿のスタジオアルタが閉鎖、それに前後して多くの劇場が閉鎖・改装にある寂しい状況の中で、日本の新しいエンターテインメントを海外に発信する目的の劇場が、東京・有楽町センタービル(有楽町マリオン)に、この夏オープンする。
劇場名は「オルタナティブシアター」。海外から日本までどんな人が観ても楽しんでもらえるように、ノンバーバルと謳い、さらに上演時間も約70分とし、セリフによる芝居ではなく、ダンス、殺陣、イリュージョンなど、言葉だけにとらわれない表現で勝負する劇場だ。

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今回はそのこけら落とし公演である『アラタ〜ALATA〜』の製作発表会が行われた。
脚本はスーパ歌舞伎から、国内の様々な大作の戯曲に挑み続ける横内謙介。演出はつか作品や、アイドル、ミュージシャン、宝塚までプロデュースを手がける岡村俊一。ダンスクリエイターとして、女優だけでなく、2015年にニューヨークに留学、その後コレオグラファーとしても活躍するElina。チャンバラスペシャリストとして、殺陣においては右に出るものなしの早乙女友貴。そして、オーディションにて新たな才能を発掘。今回は若干18歳の吉田美佳子が初舞台を踏む。また、音楽は素性を一切明かさない謎の集団でありながら、今までにリリースしたCDは、すべてオリコンインディーズチャート1位に輝くMiliが手がける。イリュージョンのアドバイザーとして、ラスベガスで活躍をしているAi and YuKiも参加する予定だ。公演はすべてロングランを予定しており、千穐楽は設けず、様々な客層がなんども足を運べる東京のナイトライフを楽しむことのできるスポットを目指す。そして7月のこけら落としとして、日本のトップクリエイターが集結した、かつてないほどダイナミックで、エンターテインメント性に溢れた舞台『アラタ〜ALATA〜』が誕生する。

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ストーリーは、2020年人口1千万を越える巨大都市トーキョにサムライが現れるところから始まる。その名は「アラタ」。15XX年の戦国時代から、魔術を使われ、タイムスリップしてしまった勇ましい武将だ。アラタは夜の銀座で、現代を生る女性「こころ」に出会う。現代の常識を全く知らない「アラタ」と、古くさいことを嫌う「こころ」の東京珍道中。タイムスリップチャンバラパフォーマンスだ。

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今回は、上演に先立ち製作発表会が行われ、スタジオアルタ代表取締役社長である田沼和俊、また横内謙介、岡村俊一、Elina、早乙女友貴、吉田美佳子が登壇。登壇者の紹介では、Elinaによるダンスパフォーマンス、早乙女友貴による殺陣が披露され、その後、登壇者の挨拶、質疑応答が行われた。
 
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【登壇者挨拶】
 
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田沼和俊
スタジオアルタが2016年3月に閉鎖しました。私どもとしては、新しい事業として、2017年の7月に有楽町センタービル、通称有楽町マリオンで専用劇場「オルタナティブシアター」を開業いたします。「オルタナティブシアター」のオルタナティブは、既存に問わられないという意味で、アルタの社名の語源でございます。そこから、日本のクリエイターの皆さんとともに、共存マーケティングという形で、世界に向けて上質なコンテンツを輸出していきたいと思っております。
今年の7月に開業いたしまして、17年度は500公演、18年度は800公演を目指しております。訪日外国人客を中心に70%、日本人の方が30%ほどを見込み、来年の3月末までに約14万人の動員を考えております。入場料収入の他、12億円の収入規模になる予定です。今回投資いたしましたのは12億円、投資の回収は約4年を想定しております。この専用劇場から、国境、言葉の壁を超えた新しいエンターテインメントを日本の1つの文化として立ち上げて、花開かせていきたいと思っております。
初年度のこけら落としの『ALATA』でございますが、ロングラン公演を目指しております。我々は、東京の銀座有楽町から、ノンバーバル・パフォーマンスを成功させるとともに、最終的には、ラスベガスにコンテンツを輸出していきたいと願っております。その仲間たちが日本を代表するトップクリエエイターの皆さんであり、私と同年代の横内さん、構成・演出家の岡村さん、ダンスパフォーマンスを指導していただきますElinaさん、チャンバラという殺陣を指導していただきます早乙女友貴さんでございます。若手のクリエイターと我々の世代が、コラボレーションをして世界に向けて素晴らしい作品を発信してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

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横内謙介
ノンバーバルですから、外国の方に観ていただくことが大きな目的ですが、かねがね、自分達が美味しいと思わないものを、海外の人が食べても美味しいと思わないだろうと私は考えております。7割のお客様が海外の観光客になるかもしれませんが、私の友人や演劇仲間が観ても、これは面白いものだと、リピーターになってもらうような演目をしっかり作って、海外の方達にも美味しく楽しんでいただければと思います。脚本は細かい指定まで出来上がっています。
あらすじを説明いたしますと、「こころ」に彼氏がいるのですが、頼りない彼氏に欲求不満気味です。ある日、有楽町にいる彼女の目の前に「アラタ」という武士が現れる。アラタは、1500年代のとある国と姫を守るために戦っているので、その戦いに戻らなければならないのですが、ある魔力で時代を超えて吹き飛ばされてしまった。だらしない彼氏に辟易している「こころ」には、男の中の男の日本男子がやってくるわけですから、たちまち恋に落ち、なんとか元の時代に戻してあげないといけないと奔走する。この話では「アラタ」の殺陣が重要になります。有楽町付近での大立回り、そして、戦国時代に戻っての悪霊との大立回りといったストーリーになっております。現代人も出てまいりますので、現代へのメッセージも含んでおります。セリフはほぼないのですが、しっかりとしたストーリー性のあるものにして、楽しく刺激的でありながら、感動できるものにするのが私の責任だと思っております。この舞台でトップクリエイターの仲間入りをする志でございます(笑)。よろしくお願いいたします。

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岡村俊一
横内さんより大作の台本をいただいて、身がすくむ思いです。テーマを申しますと、「コトとモノ」という考えがございます。田沼社長から、お仕事の依頼をされた時に考えました。人間は今「モノ」に頼って生きています。カメラマンの方はカメラで戦っている。パソコンを打っている方はパソコンで戦う。そして、愛の表現をする時に指輪をする。「モノ」に対して感情を託して、「コト」を利用している時代です。ただ、戦国時代では、愛しているのなら、愛していると口八丁で言うだけでよかった。腕っ節があれば、指輪をしなくても、指切りで人と愛しあえた時代がありました。そのことを現代人が古代人と会って、今を生きるために、心の中に何が必要なのか考える材料にするために、Elinaのスーパーダンスや、早乙女友貴の殺陣を並べていきたいと思います。新規の劇場ですから、フライングシステムや照明などいろいろなものを発注しました。特殊装置もふんだんに使用している劇場ができる予定です。イリュージョンもラスベガスで活躍するAi and YuKiさんですから、視覚的な部分で、この話はわかるな、昔の人はこう考えていたんだな、と理解できる劇にしたいと思います。

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Elina
3年ぶりに芝居の入った舞台に帰ってくるわけですが、ニューヨークにダンサーとして留学し、活動を再開していろいろなことを学んできました。それをまた岡村さんとともに表現できることを嬉しく思っております。

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早乙女友貴
本日はお集まりいただきありがとうございます。先ほど横内さんがおっしゃったように、演劇仲間にも、日本の方にも、外国の方にも楽しんでもらえるような作品にするために、頑張っていきたいと思います。

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吉田美佳子
一昨日、大学の入学式が終わって、なりたてのほやほやの大学生です。私はまだ経験も未熟で浅いので、何事にも挑戦して頑張りたいと思います。

【質疑応答】
 
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──Elinaさんはどのような表現をしていきたいですか。
Elina ノンバーバルである以上、ダンスの可能性を知っていただきたいですね。ダンスにしかできない情感や、雰囲気、空気感、さらに繊細で緻密な部分を表現していけたらと思っております。
──ニューヨークに留学して変わったことはありますか。
Elina ニューヨークの方は日本人よりずっとオープンで、感情もすごくわかりやすく表現される方が多いですね。逆に、日本人はシャイですが、技術に対してストイックで、その両方の良さを感じて帰ってきた1年だったので、そのどちらも全力で表現できたらな。
──早乙女さんはどのようなパフォーマンスを見てもらいたいですか。
早乙女 今まで言葉のあるお芝居に立たせてもらって、その中で、殺陣をさせてもらいました。ただ、今回は言葉がなく、物語のシーンによって、お芝居が入った殺陣や、天狗のように舞っている殺陣を盛り込んでいけたらと思っているので、そこを見てもらいたいです。
──先ほどの殺陣もお見事でしたが、ご自分で振りをつけていらっしゃるんですね。
早乙女 はい。振りをつけています。
──一番大切にしていることは。
早乙女 自分の絵を客観視することを大切にしていますね。
──Elinaさんと早乙女さんは初めてお会いになられましたが、先ほどのお互いのパフォーマンスをご覧になって。
Elina すごいの一言です。ダンスを踊っている時に様々なことを考えているのですが、殺陣も同様で、私とはまったく違うことを考えていると想像を馳せていました。
早乙女 すごいの一言です(笑)。キレが良くてしなやかで、クールな感情を体で表現しているのが感じられて本当に素晴らしいと思います。

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──吉田さんは、キャストオーディションを勝ち抜きました。勝ち抜いた時のお気持ちは。
吉田 本当に嬉しくて全力で頑張ろうと思いました。
──この作品を通してどのような女優になっていきたいですか。
吉田 みんなから愛される、魅力的で、世界にも通用するような女優になりたいです。
──タイトルの『ALATA』に込められた想いはありますか。
岡村 別に文字ったわけではないのですが、「ALTA」、アルタの文字を使って新たなチャレンジの気持ちを表そうとしたら「ALATA」となりました(笑)。
横内 主人公の名前ですね。
 
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──セリフは全くないのですか。
横内 今の段階では、俳優さんに多少の気持ちをわかってもらうために残していますが、最終的にはもっと言葉を減らします。せっかく外国の方がいらっしゃっているので、「おのれ」「無念じゃ」というわかりやすい言葉を流行らせたい。無理に黙っているのもおかしいので、立ち廻りの時に「やー」といった声は自然と出るんじゃないかな。「おのれ」「無念」など覚えて帰ってねと言う決め台詞があったほうがいいと思うので、日本語を覚えてもらえるぐらいの気持ちで臨んでいきたいです。
──70分に収まる作品で、台本で苦労されたことはありますか。
横内 普通の芝居だと、500年前と現代を行ったりきたりするのがとても大変ですけれど、今回の場合は、映像でスペクタクルを説明できると思うので、芝居の説明は言葉でやったほうがいいですが、専用劇場なのでストーリーもわかりやすくなるのではないかと期待しております。それはこれからのすり合わせで決めていきます。ちょっとしたレビューショーというより、しっかりストーリーのあるものを感じてもらえればと思います。
──岡村さんは70分をどのように演出していこうと思いますか。
岡村 いただいた脚本に沿っていきます。基本は、怒りや喜びといった基礎感情が出た時に、音楽や、踊りや殺陣にしていきます。セリフは、できるだけ残すものは残していきますが、擬音に近い感情的な「え?」「うおー」などセリフではない部分は、セーフだと思っています。ものすごいものに出会った時の驚きから端を発して踊ったり、「貴様」と怒った時のエネルギーで殺陣に変わる。「アラタ」がトイレのウォシュレットに座って、「ぎゃー」とびっくりして大丈夫? といった台本を書いていただいていますが、擬音を使いながら、基礎感情に沿った広がりを劇化してダンスや歌や殺陣で繋いでいけたらと思います。さらに、ある時はフライングやイリュージョンを使いながら、感情を表現していく70分にしたいと思います。

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──訪日観光客を意識されているということですが、3年後の東京五輪の意識はお持ちですか。
横内 オリンピックがあるからこのようなチャンスが生まれたのではと思います。僕たちの今までためていたエネルギーを一気に噴出できるチャンスですね。というのも、劇場が減っていくこの何年間でしたので、オリンピックだから新たな劇場が生まれるチャンスを与えてもらった。海外の五輪ではスポーツの祭典の時に、文化的イベントをするそうですが、今回もそれを見習うといっているものの、なかなか文化的な盛り上がりが足りないと思いますので、僕たちが頑張らなくちゃいけない。ラスベガスのショーを観た時に、その出来のすごさに圧倒されたと同時に、とても嫉妬をして、こんなことができないかと数年前から思っていたので、チャンスを待っていました。そのチャンスを逃してはいけないようにしたいですね。僕も岡村くんも小劇場出身ですから、20年前の小劇場大ブームは、タイムスリップや魔術やファンタジーが劇場に溢れていたので、今になってそれをぶつけられるので、素晴らしい巡り合わせだと思っています。

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岡村
 オリンピックはあまり考えないようにしているのですが、外国人の方に聞くと、ちょうどいい具合に楽しめる観光スポットが少ないそうです。例えば東京の夜に、「じゃあどこに行こうか」となると、歌舞伎町の「ロボットレストラン」に行くと聞いたんです。それだけじゃなくて、2020年に向けて、世界から多くの人が集まってくるなら、日本には、日本の心の芯の強さ、ただの金儲けの国ではないということが伝わる出し物を作っていきたいですね。
Elina 今でも東京に多くの人が集まっているのに、それ以上に人が集まるので、想像がつかないんです。ただ、ニューヨークにいた時に、殺陣をやっている方が間違った認識をされてもいたので、2020年とは関係ないかもしれないですが、早乙女さんの素晴らしい殺陣に触れて、新しい発見をしてもらいたいな。
早乙女 俳優で殺陣をずっとしてきたので、海外のお客様に日本の武士の魂や日本刀について知ってもらえたらいいですね。そして、いつの日か海外で殺陣を披露できるステップとしていい機会だと思います。
吉田 2020年に20歳になるので、節目の年に、素晴らしい舞台に出させてもらって、いろいろな国の方に観ていただけるので感謝しています。
田沼 僕は2020年には定年の年だと思います(笑)。東京五輪は意識しましたが、それ以上に2016年問題がありました。テレビスタジオが閉鎖するとともに、専用劇場をもうけたいと探していたところ、劇場の改装・閉鎖がたくさんあった。それから、岡村さんもおっしゃったように、訪日されるみなさんのナイトライフを探すのが大変だったという事実もありました。この大都会で、新しいナイトライフとして東京の新しいエンターテインメントを提供していきたいですね。

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〈公演情報〉
「オルタナティブシアター」こけら落とし公演
『アラタ〜ALATA〜』
脚本◇横内謙介
演出◇岡村俊一
音楽◇Mili
ダンスクリエイター◇Elina
チャンバラスペシャリスト◇早乙女友貴
出演◇早乙女友貴、Elina、吉田美佳子 他
●7/7〜ロングラン公演◎オルタナティブシアター
〈料金〉8,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉オルタナティブシアター開業準備室 03-3350-4151(平日 11:00〜17:00)


【取材・文・撮影/竹下力】




『明治座 五月花形歌舞伎』 




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片岡愛之助が『月形半平太』『南総里見八犬伝』に挑む!「明治座 五月花形歌舞伎」製作発表レポート

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明治座で2011年に花形歌舞伎が復活して以来7年。いまや恒例となった「明治座花形歌舞伎」。今回は、座頭にミュージカル、テレビなどでも活躍する片岡愛之助を招き、フレッシュな若手歌舞伎俳優が多く出演、5月3日から27日の千穐楽まで、明治座を新緑に染める。

昼の部は『月形半平太』と『三人連獅子』の2本立て。愛之助にとって『月形半平太』は初役、舞踊の『三人連獅子』は楳茂都流としての東京公演は初めてとなる。夜の部はこちらも初役の通し狂言『南総里見八犬伝』と、バラエティ豊かな豪華3本立てで『明治座 五月花形歌舞伎』が上演される。

『月形半平太』は、「春雨じゃ。濡れてまいろう」の名台詞でおなじみの長州藩士・月形半平太の活躍を描いた作品で、『国定忠治』と並ぶ新国劇の代表作のひとつ。1919年に、京都明治座で初演されたのちに、テレビ、映画、演劇など様々な場所で取り上げられたが、歌舞伎では長らく上演されなかった。この度、若手と片岡愛之助の手によって新しく蘇る。
『三人連獅子』は、「楳茂都連獅子」と呼ばれ、上方舞の楳茂都流の家元、二世楳茂都流扇性の振付によって1908年に作られた。楳茂都流の『三人連獅子』は、親獅子、子獅子だけではなく、母獅子が登場するのが特徴。大道具も松羽目ではなく、清涼山を背景に牡丹の花が咲き乱れる舞台装置になっており、一味違う『連獅子』が観られるだろう。
夜の部の『南総里見八犬伝』は、曲亭馬琴が1814年から30年近い歳月をかけて書き上げた98巻・106冊の江戸を代表する大作である。今回は、通し狂言と銘打ち、八犬士の誕生から、芳流閣の大屋根での大立廻り、円塚山の場のだんまりといった「八犬伝」ならではの名場面も網羅し、八犬士が勢揃いして仇の扇谷定正を追い詰める大詰めまでを上演。まさに歌舞伎の醍醐味に満ちたエンターテイメント作品になる。

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上演に先立ち、製作発表会が行われ、明治座の代表取締役社長である三田芳裕、松竹株式会社の取締役副社長である安孫子正、そして片岡愛之助が登壇。登壇者の挨拶のあと、質疑応答、そして片岡愛之助の囲み取材が行われた。

【登壇者挨拶】
 
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三田芳裕
ご多忙の折、お集まりいただきありがとうございます。5月の公演は、松竹さんに、花形歌舞伎をお願いいたしました。明治座での花形歌舞伎は、しばらく絶えて、2011年に復活し、今年が7年目でございます。早いもので7年。明治座での歌舞伎公演は、明治座の地元の日本橋の方々はじめ歌舞伎のファンの方々まで大勢の方にお集まりいただいております。今年もご期待の言葉をいただいており、私どもも5月を楽しみに迎えようと思っております。5月の3日が初日、そして27日が千穐楽、つつがなく公演が成功裡に終わりますように、みなさま、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

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安孫子正
今日はお忙しいなか、誠にありがとうございます。本年は、明治座さんから若手の歌舞伎ということで呼んでいただきました。花形歌舞伎も7回目でございますけども、その間に歌舞伎の風が明治座さんと共に舞い上がり、その一員である片岡愛之助さんを中心に公演をさせていただくことになりました。『月形半平太』と片岡さんの家元である楳茂都流に伝わる『三人連獅子』という狂言を昼の部で上演させていただきます。そして、夜の部には通し狂言で『南総里見八犬伝』を上演させていただきます。
愛之助さんは、朝から出ずっぱりの奮闘公演になりますけれども、今回は若手を中心に愛之助さんを支える方が頑張って出演してくれることになりました。お正月には浅草で若手の歌舞伎がございますけれども、歌舞伎の世界では、チャンスを得て上演する場所が少ない。今回は期待の若手、中村萬太郎さん、坂東新悟さん、中村米吉さん、中村隼人さん、中村壱太郎さん、中村種之助さん、昨年から襲名いたしました中村橋之助さん、中村福之助さんという8人が顔を揃えるということになりました。この8人の若手は浅草でも揃うことはないので、愛之助さんを中心に、若い人たちのエネルギー、そして彼らが熱演する舞台をお楽しみください。
今回は久しぶりに『月形半平太』というお芝居を上演させていただきます。過去には名優が演じた作品ですけれども、今の時代に半平太を誰にしようかと考えた時に、なかなか実らなかった。今回は明治座さんと相談させていただいて、改めて上演させていただくことにしました。久しぶりの上演でございますので、これも多くの方にお楽しみにしていただけるものと思います。朝から晩まで、愛之助さんを中心に若手がフル回転をいたしますので、どうぞ皆様方にお力添えをいただき、ご後援いただければと思います。

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片岡愛之助
みなさまさお忙しいなか、お集まりいただき、誠にありがとうございます。そして5月、明治座さんで花形歌舞伎をやらせていただきます。久しぶりに帰ってまいりました。明治座での公演は大好きでございます。と申しますのは、こけら落としの時に出演させていただきまして、そこからのご縁。明治座についているお客様もたくさんいらっしゃるので、どうしてもお客様がお好きな歌舞伎は何かなと相談してまいりましたら、副社長が『月形半平太』はどうかとおっしゃられて、「これしかない」と思いました。やはり、私は上方の人間でございますから、ただただ殺伐としているのではなく、少しはんなりとした部分も大立廻りもあり、いろいろ楽しんでいただける要素があるお芝居でございます。その月形半平太役を務めさせていただきます。そしてみんなで楽しく作っていこうと思います。
『三人連獅子』ですが、楳茂都流の家元を務めさせていただいて、先代の家元が亡くなっても、歌舞伎舞踊はたくさん作ってまいりましたけれども、上演される機会が非常に少なくなっておりました。私が家元を継がせてもらった以上は、私の使命として、今までかかっていた歌舞伎の舞踊をいろんなところでできる限り上演して、みなさまに知っていただきたいという思いもあり、みなさまのおかげで念願が叶いました。東京で『三人連獅子』ということで、いつもの「連獅子」とは違います。だいたいお父さんと子供が出てきますが、『三人連獅子』は、お父さんとお母さん、そして子供が出てくる。そして、千尋の谷から子獅子が這い上がってくるのを待つ場面ではなく、石橋が上がったり下がったりするんです。親子の情愛がわかりやすく描かれております。舞踊は、「わかるかな」と心配になられる方でも非常にわかりやすいです。お昼の部は歌舞伎を初めてご覧になられる方にうってつけの2本立てでございます。
そして夜の部は、『南総里見八犬伝』で、いつも私が出演しますのは、『新八犬伝』でございますけども、今回は古典の通し狂言で、犬山道節を初めて務めさせていただきます。これも通し狂言ですから、最初から最後まで、初めてご覧になられる方には、うってつけの作品でございます。普段、歌舞伎をご覧になられる方にも楽しんでいただけるような作品でございます。私たち全員汗まみれになって、頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
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【質疑応答】

──『月形半平太』と『南総里見八犬伝』は初役ですが、それぞれの役の魅力は。
片岡 『月形半平太』は、行友李風の原作ですから、そちらを書き直して行くわけでございます。やはり、私のイメージとしては、作品の資料を拝見させていただくと、本当に二枚目の大先輩しかやっておられないので、頑張って二枚目に作り込んで、務めていきたいと思います。色気のある部分や、そして強さと忠義の心を持ち合わせている役です。昨日ですが、里見浩太朗さんが、『コメディ・トゥナイト!』を観にきてくださった。「観に来ましたよ」とおっしゃられて「ありがとうございます」というやりとりをしているうちに、「そうだ、里見さんもやっていらっしゃる」と思い出して、「月形半平太やらしていただきます。何か教えてください」とお伝えしたんです。そして、楽屋の前で教えてくださったのは、「春雨じゃ。濡れてまいろう」という有名なセリフを七三で言うとクスクス笑われたんだ、と。里見さんは、「先輩に伺ったら、歌いなさいと言われて、僕には歌う意味がわからなかったけれど、愛之助くんは歌舞伎をやっているから、セリフを歌うという意味わかる?」と聞かれました。「はい、わかりました」とお答えすると、「歌わせてもらったら、その日から拍手喝采だった」と里見さんにアドバイスをいただきました。聞いてみるもんだなって(笑)。それから、みなさまからいろんな知恵を拝借いたして、作り上げていこうと思います。通し狂言の『南総里見八犬伝』は、犬山道節という役なので、みんなで作り上げて行く八犬士の1人で、しかも今回は普段出ないような場面も出ておりますので、みんなで見つめ直しながら、また新しい「八犬伝」ができればいいなと思います。

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──今回は座頭ということで、若手を束ねて行く立場になりました。どういう心境で迎えられていますか。
片岡 私はいつまでも若手と思っているんです(笑)。歌舞伎の中では40歳、50歳は、鼻垂れ小僧と言われていますから、やっと45歳になって、鼻垂れ小僧に慣れて来たなというところなんです。確かにおっしゃる通り、今まで下だ下だと思っていたのに、今回のチラシを初めて見た時に、若手がこんなにたくさんいると思ってびっくりしました。ただ、鴈治郎兄さんや、亀蔵さんが出てくださっていますから、安心して舞台に出られます。やはり自分が経験してきたことを踏まえれば、やることは同じだと思うんです。先輩方もおっしゃっていましたけれど、昔はこうするだろうということを自分たちもしてしまうので、自分の経験でわかる範囲で、いろいろ話し合っていきながら、実際に彼らから学ぶこともあるかもしれませんし、先輩、後輩と関係なく、いい舞台を作っていけたらと思っております。
──若い方が多いと稽古の雰囲気は変わりますか。
片岡 どちらかというと、それぞれの役を楽しんで、膨らまして欲しいと思うんです。初ミュージカルのチャンスをいただき、歌舞伎以外のお仕事をしたことがとても勉強になりました。もちろん、みんな1日1日頑張っているけれど、歌舞伎だと役が決まっていますよね。それ以外のお芝居の重要な役は、決まっていない場合があったり、流動的な場合があったりするんです。そうすると演出家は、みんなを見て役をつけるようになる。だから、若手の稽古を見る眼差しが半端なく鋭いんです。例えば、仕事でどうしてもこの日はいけない、お稽古をキャンセルします、となる。すると、代役入ってくださいと言ったら、誰でもパッと入っていける。しかも脚本を離して代役をしてくれるんです。それぐらい真剣に一挙手一投足を観ているんですね。そういう真摯なお稽古場に、弟子たちも連れていっているんです。「そういうところを学びなさい」と、そうして人は頑張って行くものですね。このチャンスをいただいた時に、若手の彼らに、ああしなさい、と上から全部ダメ出しをして、統制をとることは簡単です。でもそれをやりすぎると「僕一色」になりすぎてしまって、彼らのアイデアが出てこなかったりするので、いい意味で役を膨らませて行く、彼らのスペースを作ってあげることにしています。枠からはみ出し過ぎたら、それはおかしいかなと注意することに留めています。そうすると彼らも楽しみながら役を膨らませて行くことができる。お芝居の中でも役を楽しんで演じることはお客様に伝わると思うんです。みんなのびのびとお芝居をしていることが明日につながって行くと思うので、座頭の責任はそういうものだと勉強させていただきました。

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【囲み取材】

片岡愛之助 
久しぶりの明治座ということもあり、しかも『月形半平太』は、新国劇から始まり、いろんな方がやっていらっしゃったお芝居ですから、これを歌舞伎に書き換えるのは非常に難しく、しかも花形歌舞伎ということなので、最初は、和の音で立廻りもツケだけでと思って台本を読みました。それでもやはり、作品が新国劇からきたものですから、音も、ジャッジャーンとわかりやすいものを入れた方がワクワクすると思って、一昨日ぐらいに「ごめん、入れなおしてくれ」とすべて変えてもらっている最中です。いわゆる、歌舞伎の『男の花道』のような作品に仕上げたいと思います。
今は、ミュージカルをやっていますが、頭の切り替えはやってみないとわからないですね。ミュージカルは大阪公演もあって、そこからですから、1週間ぐらいしか空いてなくて、しかも2日間は別のところで踊りを踊っていますので、実質4日ぐらいしかないですが、大丈夫だと思います。体調は元気いっぱいですね! ミュージカルの初日はやつれたって言ったように、ど頭から死ぬほど喋り、死ぬほど歌っていますので5キロぐらい痩せましたね。歌舞伎も出ずっぱりですから、どんどん細くなって大丈夫かという(笑)。なので頑張って食べます。
歌舞伎役者だけで『三人連獅子』をするのは初めてですけれど、これは上方でもマイナーな作品になってしまいました。先代が生きていらっしゃった時には、本当に頻繁にかかっていた歌舞伎舞踊だったのですが、そういうご縁がなくなってしまったので、楳茂都流を継いだ以上は、みなさんに知っていただこうと思います。これからも昔よかった舞踊をどんどん出して行こうと思っているので嬉しいですね。
『明治座 五月花形歌舞伎』、初めてご覧になられる方にも非常にわかりやすい1本目の『月形半平太』、ぜひ観ていただいきたい作品ですし、『三人連獅子』もいつもと違う楳茂都流の連獅子だと思います。新しいものと古典を観る。一粒で2度美味しい昼の部でございます。夜の部も通し狂言ですから、これも初めてご覧になられる方でもわかる『南総里見八犬伝』でございます。私だけではなく、みんな出ずっぱりだと思うので、千穐楽までにぜひ1度、足を運びくださいませ。

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〈公演情報〉
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『明治座 五月花形歌舞伎』
【昼の部】
一、月形半平太(つきがたはんぺいた)
二、三人連獅子(さんにんれんじし)
【夜の部】
通し狂言「南総里見八犬伝」(なんそうさとみはっけんでん)
出演◇片岡愛之助、中村萬太郎、坂東新悟、中村米吉、中村隼人、中村壱太郎、中村種之助、中村橋之助、中村福之助 他
●5/3〜27◎明治座
〈料金〉一等席13,000円、二等席6,500円、三等A席5,000円、三等B席3,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10時〜17時)




【取材・文・撮影/竹下力】



えんぶ4月号 




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ミュージカル『ミス・サイゴン』泉見洋平・上原理生 トークイベントレポート

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泉見洋平・上原理生

世界中で愛され続ける傑作ミュージカル『ミス・サイゴン』。2014年9月、ロンドンのプリンス・エドワード・シアターで上演された25周年記念公演を最新の映像技術で撮影、映画化。映画『ミス・サイゴン 25周年記念公演 in ロンドン』と題し、2017年3月10日(金)よりTOHOシネマズ 日劇他にて公開される。

この映画の公開を記念しトークイベントが開催され、04年、08年、12年、14年とトゥイ役を演じた泉見洋平、そして12年から17年1月までジョン役を演じた上原理生が登壇! 『ミス・サイゴン』が25年以上も愛される理由について語った。
 
トークイベントは2月27日、東宝東和試写室にて行われた映画『ミス・サイゴン 25周年記念公演 in ロンドン』試写会後。会場には白熱の本編を見終えた来場者の熱気が漂う中、MCの呼びかけと共に泉見洋平と上原理生が登場。来場者の中にはミュージカルファンも多く、ミュージカル界を代表する2人に盛り上がる!

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MCから『ミス・サイゴン』の魅力について聞かれた泉見は「先ずは、音楽ですよね」とコメント。「ふとイントロの音楽を聴くたびに、身体が反応する。音楽の力はあらためてすごいなと思いました。」と、長年ミス・サイゴンで演じていたからこそ感じる魅力をしみじみと語る。続いてMCから音楽以外の魅力を尋ねられた上原さんは、「音楽以外ですか(笑)」と笑いながらも、「扱っているものがベトナム戦争という、身近にあった戦争を題材にしていて、人類の長い歴史の中でいっぱい戦争が起こって、その中で何か学んだはずなのに、でも起こってしまう。それってなんでだろうと思うし、その中で巻き込まれた人の苦しみと悲しみ、でもその中で生まれた愛や、それでも生きてやるんだという強さとかが描かれていて、そういうものが見ている人たちを引き付けてやまないのかなと、あらためて見て思いました」とコメント。戦争という状況下で描かれる愛の物語と音楽が、本作の魅力であると語った。

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またMCから舞台で演じていた当時のことを尋ねられた泉見は、「355回出演させていただいたんですけど、演じるたびに、舞台上でしか感じられない新たな感情が生まれるというか。間違えないように演じるというのを超えた、演じている役を生きなければ、この物語を皆さんに伝えられないというのがありまして、本当に死んでも良いというような覚悟があった。色々なことをミス・サイゴンで学びました」と、心の底から役に入り込んで演じていたことを明かす。そして泉見と共演した上原は、「泉見さんが演じたトゥイの亡霊がとても怖かった」と今ならではの告白!  泉見は「あれはトゥイ自身ではないんですよ。あれはトゥイに対してキムが抱いている罪悪感であったり、後悔の念であったりするんですけど、演じる時は120%の力で呪ってやろうと思って演じました!(笑)」と、役に対する解釈を語りながらも、会場に笑いを誘った。

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そしてMCから、映画として公開される本作ならではの魅力を尋ねられた二人。泉見は、「『ミス・サイゴン』を離れてもうしばらく経つんですけど、先ずは音楽だけでキュンキュンしてしまう。舞台映像をただ撮っただけではなく、様々な映像がインサートされていて、カット割りなんかもライブ映像を超えたまさにミス・サイゴンの映画版という感じで、僕が(トゥイ役を)やっていたという感覚は勿論あるんですけど、全く新しいものを見たという感じもありました」と、長年演じた作品であっても新鮮に感じる発見があったと語る。また上原は、「カメラが入ったことで役者の細かい表情もすごく見えて、役者もとてもリアルな芝居をしているから映像になっても全く違和感がなかった。演出がものすごくよい形で生かされていて、また舞台で観るのとは全然違う印象を持つことができたことが、興味深かったですね。1本の映画作品として観ることができたのもすごく楽しかった」とコメント。作品の出来栄えにも申し分ないと太鼓判を押す!

また、本作に収められている25周年を記念し歴代の新旧キャストが登壇したスペシャルフィナーレについて、泉見は「感動以外の何物でもない」と、しみじみと語り、上原も「出演者として、サイゴンファミリーの一員になれたことの嬉しさをあらためて感じた」と喜びを語り、「また世代を超えて新旧キャストが共に演じられる音楽の素晴らしさを感じましたし、『ミス・サイゴン』が伝えようとしているメッセージを改めて多く感じることができました」とコメント。世界中で25年も愛されてきた『ミス・サイゴン』のファンは勿論のこと、『ミス・サイゴン』を知らない人でもその魅力が十分に伝わる作品になっていることを最後にアピールした。

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来場者に見守られながら終始和やかな雰囲気で行われた本イベント。日本で『ミス・サイゴン』を演じ、引っ張ってきた泉見と上原だけに、『ミス・サイゴン』の魅力、そして映画として生まれ変わった本作の魅力を語り尽くした充実のイベントとなった。最後は会場いっぱいのミュージカルファンに見守られながら、2人は会場を後にした。

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〈映画情報〉
製作◇キャメロン・マッキントッシュ「レ・ミゼラブル」「オペラ座の怪人」「キャッツ」
作◇アラン・ブーブリル/クロード=ミッシェル・シェーンベルク 
音楽◇クロード=ミッシェル・シェーンベルク
キャスト◇エンジニア=ジョン・ジョン・ブリオネス/キム=エバ・ノブルザダ/クリス=アリスター・ブラマー/エレン=タムシン・キャロル/ジョン=ヒュー・メイナード/トゥイ=ホン・グァンホ/ジジ=レイチェル・アン・ゴー
スペシャル・ゲスト◇ ジョナサン・プライス/レア・サロンガ/サイモン・ボウマン 
上映時間:時間7分 ※休憩2回含む

(C)2016 CML 


 




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山田洋次脚本・演出×今井翼主演で魂に響く人情喜劇の傑作!音楽劇『マリウス』製作発表記者会見レポート

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フランス、マルセーユの港町を舞台に、そこで暮らすおおらかな人々と、そこに生まれた若者の苦悩を描いたフランスの国民的喜劇の傑作が、山田洋次脚本・演出、今井翼主演の音楽劇『マリウス』として、3月6日から日比谷の日生劇場で上演される(27日まで)

フランスの人気作家マルセル・パニョルによる戯曲、『マリウス』『ファニー』『セザール』は、マルセーユ三部作と呼ばれる、フランスの国民的な古典喜劇。マルセーユ独特の陽気でのんびりと生きている市井の人々と、若者の恋と苦悩を港町の風情の中コメディタッチで描いた作品は、かつてコメディフランセーズでの上演が大ヒットとなり、長くロングランが続けら、映画化もされ今なお愛され続けている。
 
このフランスの古典喜劇を創作の源と呼ぶのは山田洋次監督。『男はつらいよ』シリーズ、『幸福の黄色いハンカチ』『息子』『学校』『たそがれ清兵衛』『隠し剣 鬼の爪』『武士の一分』『母べえ』『小さいおうち』など、数限りない傑作を世に送り出してきた名監督である。彼にとってこの戯曲は、舞台を日本に移した映画『愛の讃歌』(1967年・倍賞千恵子主演)や、『男はつらいよ』寅さんシリーズの原点となるなど、その創作活動に影響を与え続けてきた。
 
そんな作品が、満を持して山田洋次脚本・演出、今井翼主演の音楽劇『マリウス』として、日生劇場の舞台に登場することとなった。その製作発表記者会見が1月に行われ、山田洋次監督、安孫子正松竹株式会社副社長・演劇本部長、出演者を代表して主演の今井翼、瀧本美織、柄本明、林家正蔵が登壇。公演への抱負を語った。

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【登壇者挨拶】

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安孫子正
 今日はお寒い中ありがとうございます。日生劇場で3月に音楽劇『マリウス』という芝居を上演させて頂くことになりました。『マリウス』には演出の山田監督に大変な思い入れがおありと聞いておりますので、それは後程監督からお話頂くとしまして、『マリウス』の上演に際してはここにいらっしゃる素敵な俳優さんたちに出演して頂くことになりました。主演のマリウスの今井翼さんの多方面での大活躍は皆さんご存知のことと思いますが、私共松竹の芝居にも数多く出て頂いておりまして、その中でも山田監督の演出作品では『さらば八月の大地』で、新橋演舞場に出演して頂いております。また相手役のファニーには瀧本美織さんにご出演頂きますが、彼女も昨年演舞場の『狸御殿』に出て頂いて、本当に明るく素晴らしい舞台を見せて頂き、私共の身内のような感じでございます。更に柄本明さんは亡くなった勘三郎さんとの『浅草パラダイス』をはじめ、数多くの素晴らしい作品を一緒に作ってきて、戦友のような気持ちでおります。林家正蔵さんは、松竹の舞台はおそらく初めてでございますが、山田監督の映画にはなくてはならない常連の方と言うことで、これから上映される『家族はつらいよ』にもご出演頂いている、本当に素晴らしい俳優さんによって、フランスのマルセーユの港町で暮らす人々の物語『マリウス』を日生劇場でどのように作り上げて頂けるか、私も非常に興味を持っているところでございます。是非この公演が素晴らしい成果をあげますように、皆様にもお力添え頂きたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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山田洋次 皆さん今日はよくいらしてくださいました。昔の話になりますが、僕らが映画を志ざした頃はリアリズムの時代で、社会主義的なリアリズムが世界中を席巻していて、僕たち映画人もリアリズムに憧れていました。でもそんな時代にあってもずっと僕の中に脈々と流れていたのは、学生時代に読んだマルセル・バニョルのマルセーユ三部作だったんです。この楽しい陽気な世界が故郷のように僕の中にずっとあって、渥美清さんを主役にしてこのドラマを作りたいという提案をして、はじめはテレビドラマのシリーズとして、僕が脚本を書いたのですが、その時に僕は渥美清さんだったらセザールだなと思いました。そして可愛い妹がファニーで、その恋人がマリウス、それがさくらと博になり、そこを核としてドラマを作っていけばいいのではないか?ということから「寅さんシリーズ」がスタートした訳なんです。そういう意味で僕にとってはとても忘れられない、奥の深い、深い鉱脈のような世界が、このマルセーユ三部作なんです。それから長い間僕は「マルセーユ三部作が芝居になれば良いんだが」と提案し、話してきて、それがこういう形で実現することになって、セザール、マリウス、ファニーそれぞれに素晴らしい俳優さんを得て、正蔵さんの役もこのトライアングルの4番目になるようなとても大事な役で、寅さんで言えばタコ社長のような役です、絶対にいなければならない役です。そういう人たちでこの芝居がやれるというのは、50数年前にワクワクしながら読んでいた世界を日本で上演できる、僕は今夢を見ているような気持ちです。「寅さん」では結局さくらと博は結ばれる訳で、それに寅さんも納得してホッとするんだけれども、マリウスとファニーは結ばれないので、セザールとしては悲しい結果で終わる。そういう意味でこの芝居は寅さんよりも、もっと苦い味わいがある。その苦みをどうやって明るい笑いで包むか、というところが勝負ではないかと思います。楽しくて笑い転げながらこの苦い味わいも感じて劇場を後にできるような芝居になったらいいなと思います。どうぞよろしくお願いします。

今井翼 皆様本日はお集りくださりありがとうございます。マリウスを演じます今井翼です。まずはじめにこうして再び山田監督のもとで芝居ができることを心より感謝しております。ありがとうございます。監督もおっしゃっていたように、監督が様々な作品を創作して来た中で故郷と言い表すこの作品を、今こうして自分が演じられることにただただ感謝しております。僕にとって監督というのは芝居の根幹から、僕の人生においてもとっても重要なことを教えてくださる、勝手ながらに僕は監督のことを恩師だと思っています。その恩師から『さらば八月の大地』の際に、芝居の楽しさ、更にその楽しさの向こうにある自分自身が具体的に向き合い、乗り越えるべき課題を教えて頂きまして、まさに今回の時間もそうなのですが、僕にとっては目の覚めるような時間を頂きました。芝居の魅力を改めて教えてくださったのが山田監督です。これほど素敵で素晴らしい役者の方々に囲まれて、また素晴らしいスタッフの方々のバックアップを頂ける、僕自身これまでジャニーズ事務所に入って色々な経験をさせて頂きましたけれども、改めてこれほど恵まれた環境で仕事が出来ることに心より感謝しています。松竹さんからはこの話すタイミングで、思いの丈を話してくださいと言われましたので、悔いなく話したいので(笑)もう少し思いをお話させて頂きます。今回は作品から派生した歌と踊りもあり、もちろん芝居というところが核になってくるのですが、(歌や踊りの)そういった部分ではこれまで自分が培ってきたものを活かし、芝居という部分では自分自身はまだまだ未熟だと思っていますので、だからこそこの作品としっかりと向き合って、この作品が持つ切なくも温かな人情喜劇というものを皆様には客席でお楽しみ頂き、尚且つ後に余韻としても味わって頂けるような作品にして行きたいと思っています。もうちょっと話したいので(笑)、すみません何度も言うようですけれども、僕はまだまだ役者として未熟でこうやって真ん中に立たせて頂くというのが、僕自身こそ信じられないありがたい話です。自分自身を客観視すれば、芝居をする上で真ん中に立つような肌ではないと思っておりましたが、ありがたいことに監督からこういった最高のチャンスを頂きましたので、僕は皆さんの胸をお借りして自分の新たな道のスタートとしてまずは一皮剥けられるように、覚悟して一生懸命挑みたいと思っております。それが僕の思いの丈です!皆様どうもありがとうございました。

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瀧本美織 
皆様こんにちは。今日はこんなにたくさんの方にお集り頂きまして本当に嬉しく思っています。ありがとうございます。こんなに素晴らしいお話を頂いたことに恐縮しています。本当に今ここにいることが信じられないです。素晴らしい監督、キャストの方々、このような環境に身を置くことができて本当に光栄だと思っています。台本を読んですごく切なくてもどかしい、大人でさえも可愛らしく見えてくる登場人物、その愛くるしさですとか、思い通りにならない切なさの中で愛ある決断をしていったりですとか、マリウスとファニーの愛ももちろんなのですが、親子の愛情だったりなど、色々な愛の形を楽しんで頂ける作品になるんじゃないかなと思っています。本当に120%、200%の力を出して、情熱をぶつけていきたいと思います。思いの丈でした(会場笑い)。

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柄本明
 セザールをやらせて頂きます柄本です。思いの丈ということなのですが、思いの丈ということは?と今ずっと考えていたのですが(笑)、山田監督とは映画をいくつかさせて頂いておりまして、また山田門下生になって頑張りたいと思います。稽古の過程で思いの丈を膨らませて、なんとか劇場で思いの丈を発散できればなと思っております。どうぞよろしくお願い致します。

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林家正蔵
 パニス役の林家正蔵です。どうぞよろしくお願い致します。思いの丈を話させて頂きます(笑)。監督の映画に出させて頂いて、その休憩時間に『マリウス』の話は、本当にたくさん山のように伺いました。作品に対する監督の思いの深さ、監督が求めている美しいもの、楽しいもの、面白いものがすべてこの作品に詰まっていると言われました。ですから本当にこの舞台に出られるのが夢のようでございます。5月に公開される『家族はつらいよ2』に出演している橋爪功さんはじめ皆さんにお会いした時に、この舞台に出ることを申し上げましたら、橋爪さんが「羨ましいな!役者として監督の演出で『マリウス』に出ることは大変な名誉だと正蔵君、わかった方がいいんじゃないか」と言われて「あぁそうなんだ」と思いました。そして「他に誰が出るの?」と訊かれましたので「柄本さんが」と言いましたら「柄本さんには気をつけろ」と(笑)、こういう風に言われました。一昨日夏川結衣さんからも電話がかかってきました。夏川さんからは「監督が本当に大切にしている作品なんだから、正蔵さん『家族はつらいよ』から出るのはあなただけなんだから、命がけでパリスという役をやってくださいね」という言葉を頂きました。そして妻夫木聡君からも「頑張ってください、応援しています!」という熱いメッセージを頂きました。ただ蒼井優ちゃんだけ「頑張ってね!」とケラケラ笑っていました(爆笑)。そんなことで、よろしいでしょうか(笑)。本当に一生懸命やります。台詞もたくさんあります。今から大変です。大役なので柄本さんどうぞよろしくお願い致します。


【質疑応答】

──山田監督、主要キャストの皆様の配役をどのようにして決められたのでしょうか?
山田 キャスティングという仕事は監督、演出家の仕事の中でもかなり大事な仕事で、3分の1以上のエネルギーと才能が費やされるのではないかと思います。逆に言えば良い脚本があって、良いキャスティングができればその作品の成功はほぼ約束されていると言っても過言ではないような気がします。そういう意味でとっても考えながら、苦労しながら、準備しながら選び抜いた人たちで、皆さん相当に芸達者な人たちでありますから、この人たちを生かすアンサンブルはきっと素晴らしい、美しいものになるに違いないと確信しています。役のイメージと俳優さんのイメージ、もちろん俳優さんのスケジュールもありますから、そんなことの中で選び取っていった考えられる限りの1番良い俳優さんを選べたと思っております。

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──山田監督、この作品には学生時代に出会い、寅さんシリーズが生まれるきっかけにもなったとのこと
ですが、今回改めて音楽劇として挑戦されようと思ったきっかけは? 
山田 長い間、何十年も僕の中では故郷のように帰っていく作品であり続けた訳ですから、日本でも戦後何度も舞台化されていて、僕はそれは観ておりませんが、この作品を舞台にするのだったらこういう方法が良いのではないか?というようなことはずっと思っていた訳です。僕は映画監督でしたからなかなかそんな機会はありませんでしたけれども、僕の中ではずっといつか舞台にできたらいいなと思っていました。それが2013年に『さらば八月の大地』で、僕は初めてと言ってもいい、大きな劇場での舞台の演出をやって、映画の演出も舞台の演出も1番芯のところではあまり変わらないんだなと思ったりしたこともあったので、またこんな仕事があったら、と思っていた時に、この『マリウス』に至った訳です。何かドラマチックなきっかけがあって、ということではなかったのですが、プロデューサーの人たちにも演劇部の人たちにも、『マリウス』の話はしていたものですから、それがだんだん盛り上がっていって、やろうじゃないかということになったということです。
──今井さん、恩師である山田監督にこの場をお借りしてお伺いしておきたいことはありますか?
今井 それはこれから本稽古に入る訳ですから、そこで自分が抱く疑問、それ以上に監督から教われることと言うのをこれから楽しみにしています。前回勘九郎君とご一緒した『さらば八月の大地』で、稽古の前、こういった会見の場に挑む前に、監督から演じる上で、どう考え、なぜ動くか、といったとってもシンプルなようで非常に奥の深い指導を頂けたことが、僕はすごくありがたいと思っていますので、またこれから自分が覚悟をもって挑ませて頂く稽古の中で、色々と教わることができたらと思っています。
──今の時点で演じられる役の人物像と、大切にしたいところを教えてください。
今井 繰り返すようなのですが、これは現場に入らないとわからない点があると思います。その中で自分の準備として、それは準備にしか過ぎないという考えもあるのですが、僕はせっかくこれだけの機会を頂いたものですから、昨年末に1人でマルセーユに行って来まして、日本を発つ前に監督とコンパクトな打ち合わせを行った際に頂いたお言葉を持って、パリからマルセーユに向かっていく列車の中で考えたことと、それからマルセーユでマリウスという気持ちを重ね合わせて過ごした時間から、今度はマルセーユを背にパリに戻る時というのは、何か不思議な、その地に行かなければ抱けなかった思いが抱けたような気がしたんです。それとこれも1つの勉強として、当時のフランス映画『マリウス』もそうですし、監督がこの作品を山口県に移して描かれた映画『愛の讃歌』も観ておりまして、そういったところからこの作品の持つテーマ、とてもピュアな中にもじわっとくる温かさとかを、自分の中で解釈して、でも1番はやっぱり現場に入って、監督から具体的に頂く言葉と、皆さんとご一緒するところで見つけることができればと思っています。

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瀧本
 やっぱりこれから動きの中で変わっていく、感情が変化していくところもとてもあると思うのですが、ファニーはとても快活でマリウスとのやりとりの中で、マリウスより年下なのですけれども、ちょっと上と言いますか、やはり女性の方が精神年齢って上に見られたりしますでしょう?そういう感じがすごく出ていて、マリウスをからかったりするところが可愛らしいなと思ったり、そうした微笑ましいシーンから、愛する人と離れて行く覚悟をするというのは並大抵のことではないと思うので、そういう覚悟をもって演じられたらいいなと思うのと、芯の強さをいつもブレないように持っていられたらいいなと思っています。
柄本 本を読んで感じたことはもちろんあるのですが、稽古を始まってやはりわからないというところがあるのが1番大切と言いますか、台詞を言ってわからないところが監督の演出のもとでどうなっていくのか。きっとそこから生まれるものがあると思っています。
林家 わからないところだらけでございまして、本当に本を読んでどういう役なんだろうと日々考えているのですが、ただ今日監督から早速ヒントを頂きまして「タコ社長のような」という。タコ社長、タコ社長、と思って臨んでいきたいなと思います。タコ社長(笑)。

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──今回音楽劇ということで、ミュージカルナンバーが何曲くらいあって、どういう傾向の歌なのかと、振付がフラメンコの方ですが、そのあたりどのようになるのかを教えてください。
山田 フラメンコは、僕は翼君のフラメンコを見せて頂いてびっくりしたんです。素晴らしいんですよね。なんでこんなにフラメンコが上手いんだろうと思いましたら、彼がフラメンコという芸術に憧れてスペインに単身留学して、スペイン語を学んでフラメンコを学んだ。そういう一途な情熱というのがあるので、彼にとってフラメンコは特別なんだなと感じた訳です。その翼君を主演にするということで、フラメンコをちょっとでも活かしたいなと思って、フランス、マルセーユの物語で、スペインは近い訳だし、同じ地中海沿岸の国ですから、当然マルセーユにも、特に1930年代のお話なのでジプシーもいるでしょう。街のあちこちにいて踊りを踊って観客からお金を得たこともあったと考えられるし、1930年代の映画を観ると、そういう人たちが登場しているので、ジプシーの踊りに魅せられてマリウスが自分でも先生について踊っている、という設定を考えた訳です。その次に、マリウスが踊るということがあるとすれば、歌うということもあるのではないか、翼君は歌もきちっと歌える訳です。その時に瀧本美織という、やはり歌を的確に歌える人が得られたので、芝居が歌に変わっていくということができれば非常に楽しくなるのではないかと。そんな風なところで、もちろん台本にもここから歌になると書いてありますし、作曲家にもお願いして曲を書いてもらったりもしていますが、これは稽古をする中でまた変えていくことが色々あるのではないかなと思っています。ここからを歌ったみたらどうなるだろうか、ではどんな曲がいいのか、を作曲家にも立ち会ってもらって、一緒になって歌や踊りを創り上げていくことができたら楽しいのではないかなと思いました。そんな訳なので、全編に渡って歌があるものではないので、ミュージカルではないですが、音楽劇というところがちょうど良いのではないかと思って、そういう舞台にしたいと思っています。

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※えんぶ4月号(3/9発売)では、「今井翼・瀧本美織 対談」を掲載します。お楽しみに!


〈公演データ〉
音楽劇『マリウス』
脚本・演出◇山田洋次
原作◇マルセル・バニョル
音楽監督◇長谷川雅大
出演◇今井翼、瀧本美織、綾田俊樹、林家正蔵、柄本明 他
●3/6〜27◎日生劇場
〈料金〉S席12,500円、A席7,500円、B席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489(10時〜18時)
松竹ホームページ http://www.shochiku.co.jp



【取材・文・撮影/橘涼香】





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