稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

観劇予報は2019年2月20日に引っ越しました。
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記者発表ルポ

シネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃』中村米吉、中村児太郎 舞台挨拶リポート

:中村米吉/左:中村児太郎)-1

映画館で歌舞伎を楽しむシネマ歌舞伎。その最新作として『沓手鳥孤城落月/楊貴妃(ほととぎすこじょうのらくげつ/ようきひ)』が 1月12日より全国公開した。その公開を記念して、舞台挨拶が開催され、本作に出演した中村米吉、中村児太郎の2人が登壇した。

1月14日舞台挨拶(右:中村米吉/左:中村児太郎)2
中村児太郎 中村米吉

本作は主演の坂東玉三郎が編集・監修も務めており、シネマ歌舞伎として映像作品になったものを観た感想を聞かれると、米吉は「舞台だと幕を閉めたり、舞台を回したりして場面を変えますが、映像だとすぐ次の場面に変わる。しかもカット割りが平面的ではなく、臨場感あふれるカットになっていましたので、本当のお芝居を観ている時よりも人物像がより深くわかるのではと思いました」と話した。
また、児太郎は「映像になるとまた違っていて、玉三郎のおじさまはこんなふうに描きたかったんだと、同じ舞台を(上演当時に舞台袖などで)観ていても新たな発見がありました」とコメント。

1月14日舞台挨拶_中村米吉

2019年の抱負について聞かれると、米吉は「日々を大切に、少しでも去年より前進できるように、一昨年から去年、去年から今年の方がその幅を広げられるように頑張りたいです」と語り、児太郎は「2018年はとても大きい年だった。父(中村福助)が復帰しましたし、(「金閣寺)の)雪姫や阿古屋といった憧れのお役を勤めさせていただきました。今年も猪突猛進で頑張っていきたいです」と答えた。

1月14日舞台挨拶_中村児太郎

最後に児太郎は、「本日、海老蔵兄さんの團十郎襲名の記者会見がありましたように、歌舞伎界はこれから新しいことや明るいニュースがたくさんあると思います。そんな時に私たちも歌舞伎界の戦力になれるように、与えられたお役や、いつかやってみたいお役のために稽古に励み、芸道に精進することが今できることだと思います」と挨拶。米吉も「これからご覧になられる作品を、舞台とは違う臨場感や感じ方で楽しんでいただいて、その後に、今度は歌舞伎座など、特に今月はいろんな劇場で歌舞伎の公演がやっておりますので、生の舞台にも足をお運びいただけたらと思います」と挨拶をし、大盛況のうちに終了となった。

シネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃』ポスターS

シネマ歌舞伎『沓手鳥孤城落月/楊貴妃』
東劇ほか全国公開中(全国56館)

「沓手鳥孤城落月」収録公演:2017年10月歌舞伎座公演
作:坪内逍遙
補綴・演出◇石川耕士
出演◇坂東玉三郎、中村七之助、尾上松也、中村梅枝、中村米吉、中村児太郎、坂東亀蔵、坂東彦三郎、市村萬次郎
「楊貴妃」収録公演:2017年12月歌舞伎座公演
作◇夢枕獏
出演◇坂東玉三郎、市川中車

https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/39/




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森山開次の演出・振付 モーツァルト歌劇『ドン・ジョヴァンニ』東京芸術劇場で上演! 制作発表レポート  

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野田秀樹の『フィガロの結婚』などで、我が国のオペラ上演史上センセーショナルな記憶を残した全国共同制作プロジェクト。今回はモーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』を上演する。総監督・指揮は井上道義、井上からの熱い支持でダンサー・演出家として進境著しい森山開次が演出・振付を手がける。
公演は来年1月26・27日に東京芸術劇場 コンサートホール、また1月20日に富山のオーバード・ホール、2月3日に熊本県立劇場 演劇ホールでも上演される。 
 
この公演の制作発表が、11月に東京芸術劇場で開催され、井上道義、森山開次に加えて、出演者のヴィタリ・ユシュマノフ、三戸大久、高橋絵理、デニス・ビシュニャ、鷲尾麻衣、金山京介、小林沙羅、藤井玲南、近藤圭らソリスト。またダンサーの浅沼圭、碓井菜央、梶田留以、庄野早冴子、中村里彩、引間文佳、水谷彩乃、南帆乃佳、山本晴美、脇坂優海香が出席した。


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10人の女性ダンサーたちと井上道義・森山開次

【挨拶】

井上道義(総監督・指揮)
野田秀樹との『フィガロの結婚』の後に何をしようかと。僕の年も考えて、思い切り若い人とやりたいなと。この国はなかなか若い人が思い切り冒険するチャンスというのは、意外とメジャーな仕事ではないことが多い。最近それが少しずつ破られてきているけれど、その点で、森山(開次)君はものすごく素晴らしい才能だし、これから色んな面で色んな分野で活躍できる人です。ここにいる歌手もみんなオーディションして決めた人たちで、今回は大いに冒険をします。その冒険は我々のためじゃなくて、オペラというものに対してお客さんが本当に良い意味で気楽に、良い意味で合点がいくようなやり方でやりたい。アジアの顔をした人間が『ドン・ジョヴァンニ』をやるということも、基本に返って、それは『フィガロの結婚』も同じでしたけど、世界的に意味のあることができるようにとやっています。こういう方法がこれから大いに受け継がれる事を希望しています。

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森山開次(演出・振付)
このような素晴らしい大きなチャレンジに声をかけて頂きましたこと、非常に嬉しく思っております。僕の名前を挙げて頂いたことは勇気のいることで、その皆さんのお気持ちを最大限に生かすためにも、萎縮することなく思い切って挑戦することが僕には大事だと思っています。ダンスの畑にいる人間ですから、もちろんここにいる出演者の方々から比べればオペラに関してはまだまだ及ばない、知識も浅いです。その中で僕が何ができるかですが、知らないでいる強みもあります。色々と無茶ぶりをするかもしれないです。今はダンスが入るオペラも珍しくはないですが、改めて「身体(しんたい)」ということを見つめ直した時に、ダンサーがオペラの方達とどういう関係性が築けるか。また、オペラの人達が「身体」ということを考えた時に、歌いながらという状況はありますが、その中でより身体性を追求していく時間になればよいなと思っております。一生懸命勉強をしてやっていきたいなと思ってますが、どこか無知でいたいと思ってます。楽しいクリエーションができればいいなと思っております。

ヴィタリ・ユシュマノフ(ドン・ジョヴァンニ) 
私は、ジョヴァンニ役がバリトンのレパートリーの中で一番好きな役ですし、私とジョヴァンニは不思議な関係があります。初めて歌った時は、ドイツ語で、2回目は英語でしたけど、3回目は日本語になります。私はなぜこの歌が毎回違う言葉で…そう、4回目はロシア語になるかもしれないですね(笑)。でも今回、もちろん私は日本人ではないですがわかりやすく、私にとってそれは大きいチャレンジですが、日本語はとても綺麗な言葉ですし、日本語は大好きで、それも頑張りたいと思いますし、素晴らしい皆さんとご一緒に演奏させて頂いて、ありがとうございます。

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三戸大久(レポレッロ)
 
僕は42歳ですが、気がついたらカンパニーの中で一番年上になってまして、恐ろしいと思っております(笑)。42歳で、僕が大学に入ったのは1996年なんですが、新国立劇場ができたのが確か95年で それまでというのは、二期会だったりが原語ではなく日本語で『フィガロの結婚』だったり、モーツァルトをやってた時代があります。僕たちは新国立劇場ができてから原語でやる世代で、この20年間ずっと原語でやってきたんですね。なので日本語でやるという事に対して、先生たちはやってたのは何となく覚えてるんですが、自分たちがやるというのは今回初めてでして、まぁ最初は戸惑いが。今は本当にみんなとクリエーションしながらやってますが、20年後にこの若い世代で、新しい言葉でやっていけるということに、すごく興奮とか期待とか感じています。カンパニーも年代が一緒ですし、開次さんも一緒の年代ですし、マエストロがその中ですごくイニシアティブをとられていらして、僕たちも頑張ってやっていきたいなと思っております。とても素敵なカンパニーになるんじゃないかなと思います。

盒恭理(ドンナ・アンナ) 
こちらのカンパニーに参加するのは今回が初めてで、オーディションで選んで頂いてとても光栄に思っていますし、身の引き締まる思いでいっぱいです。アンナは10年以上前にイタリア語で歌ったことがあるのですが、日本語で歌うのはもちろん初めてですし、今回の日本語のものをすごく緻密に作って頂いてるなという事を感じながら、今、音楽稽古に励んでおります。アンサンブルのときは一番トップのラインを歌うので、女性としては一番言葉が聞きにくいと言われることが多いのですが、そこにこだわって、日本語でせっかくやっておりますから、きちんと皆さんに届けられるように歌えたらなと思っております。

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デニス・ビシュニャ(騎士長)
この素晴らしいプロダクションで初めてで、とても嬉しいです。日本語のオペラは日本で3回目です。『ラ・ボエーム』と『魔笛』もやっています。日本語のメロディとかイントネーションとか難しいです(笑)。今回はマエストロのトランスレーションで、とてもジャストの言葉と、綺麗な日本語を作って、歌いやすいです。オーディションの時は、森山さんは、少しダンスしてくださいと言って、少しびっくりしましたが、舞台でもダンスするかな?(笑)、とても楽しみです。

鷲尾麻衣(ドンナ・エルヴィーラ)  
『ドン・ジョヴァンニ』では、私は最初はイギリスでツェルリーナ役を、日本の新国立劇場でツェルリーナ役をやったので、今回も、自分の声は割と軽いと思っていたので、ツェルリーナ役を志望してオーディションを受けました。しかしマエストロからエルヴィーラ役もあるんだよと伺って歌わせて頂き、今回エルヴィーラ役を歌わせて頂くことになりました。『ドン・ジョヴァンニ』には、ドンナ・アンナ、ツェルリーナ、エルヴィーラと出てきますが、私は一番女性が持っている特徴を持っているのは、エルヴィーラ役かと思います。ちょっとヒステリックなくらい自分の感情を押し殺さず、大好きな人に無我夢中で、大好きな人を追いかけていく。女性はみんな少なからずヒステリックな部分を持っている。そういう部分を舞台上でぶちまけられるのは、私にとっても喜びです(笑)。そして、森山開次さん、とても静かに見えるんですが、内なるエネルギーをひしひしと感じていて、今回初めてご一緒させて頂けるのがとても楽しみにしています。

金山京介(オッターヴィオ)
先ほど三戸さんが42歳だと、僕は32で一番下だと思うんですけども、オペラのプロダクションで、上から下まで10歳前後というのはあまりない若いプロダクションだと感じております。そしてオッターヴィオはオペラの中でも唯一のテノールということで、テノールらしさを出せればいいかなと。このマエストロのプロダクションに加えて頂いて、本当に嬉しく思っております。精一杯頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

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小林沙羅(ツェルリーナ/1月26日出演)
個人的なことですが、クラシック・バレエを5歳から17歳までやっていて、中学時代は本気でバレリーナになりたいなと思っていたり、本当に踊ることが昔から大好きなので、今回森山さんが演出をされると聞いて、これは絶対舞台に立たせて頂きたいと思ってオーディションを受けました。オーディションの時に「くるくる3回回って椅子に座ってください」というのがあったのですが、絶対歌いたい!と思う気持ちが強くて、4回くるくる回ってしまって、「ごめんなさい、4回回ってしまいました」と(笑)。今回ツェルリーナ役をさせて頂くのを本当に楽しみにしています。さっき、ツェルリーナは可愛いという話がありましたが、可愛らしさもですが、それだけじゃないツェルリーナを出したいなと思っております。

藤井玲南(ツェルリーナ/1月27日出演)
私もオーディションを受けて、マエストロと森山さんに選んで頂いて本当に光栄に思っております。まさか、こんなすごいプロダクションでツェルリーナを歌えるなんて、私にとって大きな挑戦で、ドキドキもしておりますが楽しみのほうが大きく、幸せです。『ドン・ジョヴァンニ』は、大学院の頃にドイツのとある歌劇場に研修生として所属した際にツェルリーナ役を、ヴィタリさんと同じくドイツ語で勉強させて頂きました。舞台上をバイクが走り回ったり、ドン・オッターヴィオが最後に自殺したりする度肝を抜かれる演出だったのですが、思い入れのある思い出深い作品です。今回も森山さんの演出で、沙羅さんも仰ってたように、3回回って椅子に座ってというようなオーディションでしたし、自分の全てをさらけ出していかないとついていけないくらい、エネルギーに満ち溢れた、誰も観たことが無いような舞台になっていくんじゃないかと思っています。日本語ということで、難しいかもしれませんが、字幕を見なくても理解できるというくらい自然な感じで、レチタティーボもアリアもアンサンブルも歌えるように、皆さんと頑張って一緒に練習して参りますので、楽しみに待っていてください。

近藤圭(マゼット)
農民として、愛するツェルリーナをドン・ジョヴァンニにとられそうになり、ジェラシーメラメラでやってまいります(笑)。個人的なことなんですが、さっき、小林さんがバレエをやられてたと仰ってましたが、実は僕も母がバレエ教師で、姉も海外のバレエダンサーとして踊っているのですが、僕もやれと言われましたが白タイツを履くのがどうしてもいやでやらなかったので、すごく後悔しています(笑)でもバレエを観るのが本当に大好きで、オペラ畑にいるのですが、バレエの舞台のほうが観ているかもしれません。海外に留学している時もバレエの舞台もすごく観ましたし、コンテンポラリーも大好きです。踊る自信は無いのですが、今回は森山さんの演出ということで、どんな化学反応が生まれるかすごく楽しみです。

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【質疑応答】

──日本語の監修はマエストロとなっていますが、日本語の歌詞はどんなふうに?
井上 歌詞は大昔からあるんですが、古くてダメなんです。だから、本当にたくさん変えてます。無駄な努力かもしれない、やっぱりダメだ、原曲でやれってことになるかもしれないけれど、それでもやってみたい。それは、演出のためでもあるので。
──舞台美術と衣裳はどうなりますか?
森山 舞台美術と舞台衣裳に関しては、最初にこの話を頂いた時に、今回は、女性をしっかりと描いていきたい。ドン・ジョヴァンニの話ではありますが、そういう意味では男性もしっかり描きますが、実は女性3人のキャラクターがそれぞれ三者三様で、ドン・ジョヴァンニを取り囲んでいる女性の姿がとても印象に残る舞台だと思っています。いわばドン・ジョヴァンニ自体がまるで女性の身体の子宮の中で、暴れ回っているようなイメージ。自分の中で初めにそれを持ったものですから、置き換えをするという演出ではないですが、何となく、裏にそういった女性達を描いていこうと。今回そういう美術と衣裳で今クリエイションを進めているところです。また、今回ダンサー10人の方、女性のダンサーの方、最初は男性も入れていく予定ではあったのですが、オーディションをしていく中で、色々な、もしかしたら女性達で取り囲むダンスをしたほうがいいのではないかということになってきて、女性だけにしました。特に男性ダンサーが悪かったというわけではないです(笑)。そういう女性を際立たせていこうという演出をしながら、その事で男性陣が生きていく、ドン・ジョヴァンニがさらに生きてくる。ドン・ジョヴァンニがただ暴れているというだけでなく、生きてくる切り口が見えるんじゃないかなと思います。

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──これまであった日本語の歌詞はダメだと仰いましたが、今作ではどのような日本語を紡いでいきたいのでしょうか。
井上 この演目、『ドン・ジョヴァンニ』じゃなく『ドン・キホーテ』なんじゃないかという感じです。もう、風車に向かってワーワー言ってるみたいで答えがない。結局、それに対してどこまで近づけるか、どこまで理想に対して向かっていけるか。ドン・キホーテじじい?そういう気持ちが強い。やればやるほど地獄に近い。日本語でやるということ自体がとても大変です。ただ、我々はやっぱり日本語で喋っているわけだし、彼(ヴィタリ)なんか、普通のドン・ジョヴァンニの体じゃないじゃないでしょ。普通のドン・ジョヴァンニの体は、だいたい三戸(大久)くらいみんな胸厚でデカい。例えば女性も胸がすごく大きかったり、そういう身体をもった人がオペラやってきてる。でも、考えてもみて。モーツァルトの頃はそんなんじゃなかった。ヴィタリくらいの体でやってたかもしれない。まだイタリアオペラとかそういう時代じゃないわけですから。ヴェルディいない、プッチーニいない、デカい人いないし大きな劇場もない、小さな劇場でやってたわけだから。だからこっちがうまくやれば、モーツァルトにもっと肉薄できるんじゃないかな。モーツァルトに喜んでもらえるんじゃないかなと思う。今のところ、こういう方法でいかないと追いつかないんじゃないかなと、勝手な思い込みという意味で、ドン・キホーテということです。

〈公演情報〉
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2018年度全国共同制作プロジェクト
モーツァルト 歌劇
『ドン・ジョヴァンニ』全2幕
(新演出・英字字幕付・日本語上演)
総監督・指揮◇井上道義
演出・振付◇森山開次
出演◇
ドン・ジョヴァンニ:ヴィタリ・ユシュマノフ
レポレッロ:三戸大久
ドンナ・アンナ:盒恭理
騎士長:デニス・ビシュニャ
ドンナ・エルヴィーラ:鷲尾麻衣
オッターヴィオ:金山京介
ツェルリーナ:小林沙羅(1月26日出演)、藤井玲南(1月27日出演)
マゼット:近藤圭
ダンサー:
浅沼圭 碓井菜央 梶田留以 庄野早冴子 中村里彩 引間文佳 水谷彩乃
南帆乃佳 山本晴美 脇坂優海香
管弦楽◇読売日本交響楽団
合唱◇東響コーラス
●2019/1/26・27◎東京芸術劇場コンサートホール
〈料金〉S席10,000円 A席8,000円 B席6,000円 C席4,000円 D席3,000円 E席1,500円【1月26日・27日とも完売】 SS席12,000円【1月26日・27日とも完売】 高校生以下1,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京芸術劇場ボックスオフィス 0570-010-296 (休館日を除く10:00-19:00)

●2019/1/20◎富山 オーバード・ホール
https://www.aubade.or.jp
●2019/2/3◎熊本県立劇場 演劇ホール
http://www.kengeki.or.jp





【取材・文・撮影/榊原和子】





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泉鏡花の名作『日本橋』で初春を飾る! 劇団新派・三越劇場公演 取材会レポート

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劇団新派の初春花形公演『日本橋』が、1月2日より25日まで日本橋・三越劇場で上演される。
 
泉鏡花の『日本橋』は、新派を代表する名作の1つ。
医学士・葛木晋三と日本橋の二人の名妓、稲葉家お孝と瀧の家清葉の恋と、それを取り巻く登場人物たちの織りなす人間模様が、古き良き日本橋界隈の情緒とともに、泉鏡花の美しい台詞で綴られている。大正4年に鏡花自らの手で戯曲化され初演されて以来、劇団新派のレパートリーとして名だたる名優たちにより上演が重ねられてきた。
今回は葛木晋三役に喜多村緑郎、お孝役に河合雪之丞という劇団新派の人気コンビに加えて、清葉役は三度目という高橋惠子が参加。また勝野洋も初役の笠原巡査で客演する。さらに女方の出世役と言われるお千世に河合宥希、お孝に執着する五十嵐伝吾に田口守と新派劇団員の活躍も期待される舞台だ。
その取材会が11月に行われ、演出の齋藤雅文、出演者の喜多村緑郎、河合雪之丞、河合宥季、田口守、勝野洋、高橋惠子が登壇した。

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河合宥季、田口守、河合雪之丞、喜多村緑郎、高橋惠子、勝野洋、齋藤雅文

【挨拶と質疑応答】

齋藤 新派文芸部の齋藤雅文でございます。『日本橋』は、泉鏡花畢生の大作で、劇団新派にとっても大切な作品であると同時に、日本の近代演劇にとって、こんなに美しい台詞でロマンティックな、しかも商業演劇として成立するものというのは無いのではないかと思っています。歌舞伎以外でこういう伝統的な、100年近く前の作品を商業演劇として上演できるのはとても幸せだと思いますし、続けていかなければいけないと思っています。ともかく美しい物語で、あんなに美しい台詞の日本の現代戯曲を僕は知りません。さらに磨き上げて美しい物語にしたいと思っています。物語そのものも、時代か世話かといったら世話な物語ですが、内容は非常にロマンティックで、どちらかというと神話的な感じさえする、抽象的な、寓話的な物語なので、いつの時代にも、これから何年先にも通用する大変深い作品で関われることを喜びに思っております。今回は、三越劇場という、日本文化の粋を集めたような、西洋演劇を導入してからの中では宝物のような美しい劇場なので、それを有効に使いたいと思っています。ウエストエンドなどと同じように、台詞劇としては一番良い空間で、この作品には非常に合っていると思います。題名のように橋の話なので、橋を作るかとスタッフで話していて(笑)、三越劇場というのは元々西洋演劇の様式をとっているので、花道がありませんで、真ん中に橋を作っちゃおうと。客席を多用して、舞台の真ん中でお孝が物狂いをすることもあるでしょうし、葛木や清葉もそこで笛を吹いたり出会ったりすることになるのではないかと思っています。美しい物語を作りたいです。
 
緑郎 前回は2011年の1月ですので、8年ぶりの『日本橋』の出演です。当時はまだ歌舞伎の俳優でしたので、新派俳優になりまして初めての『日本橋』となります。そして、(河合)雪之丞もそうですが、私も襲名で『婦系図』の早瀬主税をやらせて頂きまして、以来2年、一度も新派の古典というものに出ていません。そしてまた2018年は、新派創設130周年ではございましたが、1月の山田洋次監督の『家族はつらいよ』に始まって、11月の新派130周年の締めが『犬神家の一族』で、一度も古典ができませんでした(笑)。ですが、新派131年目からのスタートは、先ほど齋藤さんが仰っていましたが、これぞ「The 新派」と僕の中では思っている『日本橋』を上演できますことは、本当に嬉しく思いますし、喜多村緑郎として初めて葛木晋三にまた挑ませて頂けるということは、原点に立ち返ってもう一度新派というものを、喜多村緑郎という名前を継いだ自分に対して、もう一度ゼロから見つめ直そうという気持ちでしっかりと取り組んでいきたいと思っております。
 
雪之丞 新派に入団させて頂いて初めての古典演目で、この『日本橋』のお孝を勤めさせて頂けるというのは本当にありがたいことで。私は、歌舞伎と同時に新派も大好きで、子どもの頃から色んなお芝居を観ておりましたが、本当に新派って素晴らしいなと思ったきっかけが、昭和62年2月に、新橋演舞場の玉三郎さんの『日本橋』を客席から拝見した時に、こんな素晴らしい作品を観られて本当に幸せだなと心から思った記憶がございます。その時はまだ17歳でしたので、この役をやってみたいと思っていたわけでもありませんでしたが、歌舞伎の中におりましても、何となく稲葉家のお孝の台詞をお風呂場で口ずさんでみたりとか、そのくらいこの『日本橋』というお芝居にはとても思い入れがありました。そのうちリサイタルでも自主公演でもいいから、いずれはどこかでやりたい、挑戦してみたいと思っていたお役なので、今回その念願叶いまして、こういう舞台に立たせて頂けるというのは本当にありがたい限りですし、そういう思いで、今までにない気合いでこの『日本橋』という舞台に挑みたいと思っております。心強いのは、長年ご一緒してきた喜多村が葛木(役)で出演しているということと、3回目になる高橋惠子さんが清葉姉さんをやって頂けて、本当にお姉さんのように胸をかりて、一生懸命勤めさせて頂きます。

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田口 五十嵐伝吾は2度目です。新派に入って、昭和53年の時から観ていて、鳶をやって五十嵐伝吾を追っかけたこともありますが、今度は追っかけられる五十嵐伝吾をやらなきゃいけない(笑)。ただ、『日本橋』という作品はこれだけ長くやり続けられている作品で、大先輩方が築き上げたものですので、それを壊さないように、恥じないように、そこを気をつけてやるしかない。いつも身が締まる思いです。それにも増して、先ほど齋藤先生が、今回は特に美しい物語をと言われたので気が引けてるんですが、美しくなるように頑張ります(笑)。
 
宥希 このたび、大役お千世を勤めさせて頂きます。初春からこのような大役ができますこと、まことに嬉しくまた身の引き締まる思いでいっぱいですが、師匠と一緒に女方としてお千世を勤めさせて頂けるということも、大変嬉しく思っております。未熟者ですが、一生懸命勤めさせて頂きたいと思っています。
 
高橋 今回3回目にこうして声を掛けていただいて、本当にありがたく思っております。私も大好きな作品で、最初に演出をされた戌井(市郎)先生が「私は『日本橋』が大好きだ」と仰って稽古場で1時間ほどずっとお話されたのを思い出します。この作品は日本語の美しさ、日本人ならではのものがふんだんに織り込まれてますし、難しい役です。今まで2度演じさせて頂いても、まだまだ「できた」というところまでいっておりません。(喜多村とは)久しぶりで、「葛木さん」と言うと顔が思い浮かぶ方だったので、今回またご一緒できることが嬉しく思っております。こうして男性に囲まれるのが何年ぶりという感じですが(笑)、お二人(河合雪之丞、宥希)は女方さんですから、今までにない『日本橋』ができあがるんじゃないかと思います。私も全身全霊をかけて挑みたいと思っております。

勝野 笠原信八郎という巡査をやります。ちょっとぶっきらぼうな役で、私とは全然違うなと(笑)。今もお話を聞いていると、すごいところにきたなというか。演出家の齋藤先生の美しいお話という言葉なり、日本の原形の中に私が合うのかなと一瞬不安を持ったりしました。僕は劇団新派との最初の出会いは、昔、戌井先生の『鹿鳴館』、そのあと『華岡青洲の妻』で全国を回らせて頂きました。自分の人生に縁のない貴重な方々、先輩の方々にお会いして。また2015年には、三越劇場で『寒菊寒牡丹』を、水谷(八重子)さん、波乃(久里子)さんと一緒にやらせて頂きまして。その時、喜多村さんとも初めてお会いしたんですけれども、雪之丞さんとは今回初めてで、また私も初心のつもりでやります。2015年にもう一つ『明日の幸福』というので、高橋惠子さんと全国を回らせて頂きました。今も、自分の人生で避けて通れない、勿体ない部分を引き寄せていただいてありがとうございますという気持ちでここにおります。

【質疑応答】
 
──2011年に最初に演じたとき、どんな風に葛木晋三を捉えていましたか。
緑郎 新派に出てみないかというお話をいただいた当時は、先代(三代目)市川猿之助の座員でもありましたし部屋子でもありましたし、新派というと、どちらかというと春猿(雪之丞)のほうが非常に憧れをもっていて、僕はどちらかというと新国劇のほうが好きで。まさか自分が新派に出るとは夢にも思っていない時のお話でした。お稽古に臨んだ時に、戌井先生に初めてお声をかけて頂いて、その時に「段治郎(当時)君に色々やってもらいたいものがあるんだよ」と。また三代目猿之助の座付きに石川耕士さんがいらっしゃって、石川さんも文学座で、彼を通じて戌井先生がこう仰ってる、『歌行燈』とかやったらいいんじゃないかとか、そういう話を伺っていたところに、初めて戌井先生のお口から直にそういうお言葉を頂いて、『日本橋』の葛木も非常にあなたには合ってるからと。そのお稽古中に戌井先生が急にお亡くなりになって、齋藤先生がメインの演出になったんです。その前まで私は、師匠の猿翁の元でアンダースタディなどもやらせて頂いて、演出の勉強というのではないのですが、師匠の横で常に打ち合わせの場にいさせてもらったり、師匠の芝居の作り方が非常に好きで、また舞台に立った時のお客様の反応などに喜びを感じていました。それが、ご存じの通り師匠は2003年の11月に脳梗塞で倒れて以来、なかなか表舞台に演出として立つ機会がなくなって、それから数年たって、僕も歌舞伎の中で他の座組みにも出演させてもらったり、歌舞伎の座組の新作の作り方というものを見ていたのですが、僕なりにちょっとこの作り方は甘いんじゃないかなと、あくまで僕の意見ですけれども、そういうモヤモヤしたものがある中で2011年の『日本橋』に出演させてもらったわけです。その公演で戌井先生がお亡くなりになった後の齋藤さんの演出が、もちろんそれまでの戌井先生の演出も知っていましたが、その美に対する精神というものを、齋藤さんが全く新しく、それも奇をてらったものでなく温故知新じゃないですが、これは歌舞伎もそうですが、そういう演出に旦那が倒れてから、初めてめぐり会えたというのが、僕にとっては大変衝撃でした。あの2011年の11月、12月がなければ、もしかしたら僕はあのまま、これは斎藤さんにもお話したんですが、あれがなかったら多分僕は今でも歌舞伎界に残っていたでしょうし、本当に自分の人生の中でターニングポイントになった『日本橋』だったんです。ということで、ものすごく思い入れがある作品です。
──葛木という役に関しては。
緑郎 葛木は僕の憧れている松嶋屋の旦那(片岡仁左衛門)もおやりになってますし、どちらかというと僕のニンに合う、これは戌井先生に仰って頂いてましたし、個人的には二枚目も多いですし、すごく好きなお役でもあります。歌舞伎同様、(台詞を)謳える場面もありますし、芝居のしどころも多くて、本当にこれぞ新派だなと。葛木晋三も、お孝、清葉も、他のお役も皆さんそうですが、しどころのたくさんある良い役だなと思います。
──どの年代にも通じる作品ということで、特に現代の若い人がこの物語を観た時に共感するようなところは。
齋藤 先ほど“神話的”という言い方をしましたが、意外な感じかもしれませんが、『日本橋』って、実際にはいないくらいピュアな魂の持ち主ばかり登場するんです。五十嵐伝吾も、さっき田口さんが「美しくないかもしれない」と仰っていたり、笠原信八郎さんも武骨ですが、非常に純粋な魂の持ち主ばかりなんです。現実には多分いないですね。そういう人達が、『日本橋』というタイトルにあるように、橋の上で出会い、別れることによって、様々に転落していったり成功したり、最後には狂気に陥る人と殺人を犯してしまう人と、それを背負って生き残る人と、様々な人生のバリエーションを見せてくれる。これは多分、少年少女が観たらそれなりに、わからないなりに面白い“大人の童話”みたいな受け方をするのではないかと思う。また花柳界物なので難しい日本語が出てきてわかりにくいといっても、でもそれは、僕らが日常の中でもわからない言葉って飛び交ってますし、若者が使う横文字の言葉もいっぱい理解できないことがあっても会話は成立するわけで、わからないなりにきっと面白いと思っております。 

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──真ん中に橋を、花道を作ったり、思い切ったことをするということで、どれぐらいの規模の花道になるのでしょうか。
齋藤 橋だけでなく、色んな空間として、“第3の舞台”みたいな感じで使ってみたいと思います。三越劇場は大きさの制限があるので。間口は六間ですが、奥行きがないので、もっと観客の中にいっそ張り出してしまってはどうか。『黒蜥蜴』をやった時に、客席を非常に多用して、劇場そのものを舞台にしてしまえばいいんだというのをやって楽しかったので、それをもうちょっと上品にやろうかなと。中央が、真ん中の通路を挟んで3列3列くらいかな、潰して、そこに舞台を張り出していくということになると思います。橋だけじゃなく、別のアイディアも出そうな気がしています。
──雪之丞さんはお孝の台詞を口にしていたそうですが、どこに惹かれましたか?
河合 当時はこの役を将来絶対やりたいとか大それた思いはなくて、耳触りが良いなと思ってふと口にしているというような状態でした。逆に言えばそのくらい、『日本橋』の台詞、脚本というのは、心の中にずーっと入ってくる。先ほどから齋藤さんが仰っているような、日本語の美しさ、また美しい日本語を美しい形で書き上げていて、言葉の一つひとつだけでなく、言葉の置き方が泉鏡花ならではの、日本語を10倍美しくできる文章というか。それがすっと心に入ってくるような、稀有な作品だと思います。そういう意味で、私が何気なくお風呂場で口ずさんでしまうほど、素敵な日本語、素敵な文章なんだなと。今改めてそう思いました。ただ、いくら良い形で良い文章でも、美しい日本語として役者はお客様にお届けしないといけない。お届けした時にもその素晴らしさをお伝えできるかというのが、私達のお仕事だと思っております。
──勝野さんの巡査役ですが、齋藤先生が、武骨だが純粋な魂の持ち主というところで、人間的な部分は作りやすくなったと思いますが、新派2度目の挑戦はいかがですか。
勝野 今、齋藤先生が言われた純粋な魂のぶつかり合いという言葉でかなり感じた部分がありまして。これって凄い言葉だなと思って。演ずるんじゃなくて、魂のぶつかり合いということ。さすがだなと横で感動していました。登場人物がみな純粋で、それがゆえに傷ついたり罪を犯したりという、まさに人生というか、これぞ『日本橋』ですね巡査役はドラマでも多いので、やりやすいと言えばやりやすいし、笠原巡査は方言まじりなので安心しています。僕は熊本出身なので懐かしいというか、熊本、九州の人間じゃないと出せない部分というのは、立っているだけで大丈夫だと思います(笑)。デビューした時、ずっと熊本弁で話してて、(石原)裕次郎さんや皆さんにいっぱい迷惑をかけて、「お前、訛るな」「訛りって何ですか?」(笑)そこから始まったので。色んな良い勉強をさせて頂いて、これから先も楽しいんじゃないかと思います。
──高橋さん、田口さん、河合宥希さんにも、役への取り組みを伺いたいのですが。
高橋 清葉は現代女性とはずいぶん違うといいますか。原作にありましたが、夏の暑い日に路地を歩いていて、清葉は向こうから来る人が、軒下を、涼しいところを歩けるように自分がよけるみたいな。そこまでさらりと相手を思いやる女性なんです。お孝さんとは一見張り合ってる感じはありますが、清葉にとっては、きっと本当は自分もあんな風にしてみたいけどできずに、自分自身を抑えているというか、表と裏の様な感じもあって。後半、お孝さんとのやり取りの中で、わかり合える部分、同じ芸者という職種もそうですし、表に見えてくる部分は対照的ですが、どこかで誰よりもわかりあえているような感じで思っています。気がおかしくなってしまうお孝さんに接する時というのは、演じていてももう一人の自分、どこか他人事ではない感じでいる感じもあります。本当に清葉は難しいですが、相手の人にどう反応していくかというところで、役を作っていきたいなとは思っています。
田口 五十嵐伝吾という役は、簡単に言えばストーカーですね(笑)。よく三面記事に出てくる、好きになった女性を街角からそっと眺めている、それが昂じてだんだん懐に入っていく。そして最後には、愛する女性を傷つけてしまうという、そこまで行きつく男なんですが。先ほど齋藤先生が仰ったように、これも男の一番純粋な魂なんじゃないかなと思ってます。ですから、情念というか、純粋に一人の女を、家族を捨ててまで追いかけてしまった可哀想な男を、情熱的に演じたいと思っております。
宥希 私はお千世の大役をやらせて頂けると聞いた時に、本当に驚きしかなかったのですが、ただ、色々資料を見せて頂いたり、自分で資料を探して研究しておりますと、やっぱり花柳章太郎先生の独特な、ふわあっとした可憐な風情を出していければいいかなと思っております。また、本当に弟子として嬉しいのですが、師匠の雪之丞と二人で幕を切る場面もあったりして、嬉しさ半分、『日本橋』という新派の古典を勉強させて頂ける緊張というか怖さもありますが、お千世をやられた方は皆さん素敵な方ばかりなので、それに恥じないようにつとめたいと思っております。また、花柳先生や大矢英雄先生のされた役を、女方としては実に68年ぶりの復活ということで、しっかりつとめていかなければいけないと思っております。

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〈公演情報〉
日本橋画像
 
初春花形新派公演『日本橋』
原作◇泉鏡花
演出◇齋藤雅文
出演◇喜多村緑郎 河合雪之丞/
河合宥季 田口守/勝野洋 
高橋惠子 ほか
●2019/1/2〜25◎三越劇場
〈料金〉9,000円円(全席指定・税込)  
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489(10時〜18時) 
三越劇場 0120-03-9354 (10時30分〜18時30分)




【取材・文・撮影/榊原和子】



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2019年も若いエネルギーで華やかに賑やかに!『新春浅草歌舞伎』取材会レポート

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来年2019年1月に上演する『新春浅草歌舞伎』の出演者、尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村隼人、中村橋之助という人気若手俳優たちの取材会が行われ、それぞれに抱負を語った。

過去には市川猿之助、片岡愛之助、中村獅童、中村勘九郎、中村七之助など、今や大劇場で活躍する面々も切磋琢磨した「新春浅草歌舞伎」。若手歌舞伎俳優の登竜門として、毎年1月に浅草で開催され、次代を担う花形俳優たちが古典から新作まで多彩な演目で主要な役を勤めるほか、出演俳優たちが日替わりでユーモア溢れるトークを繰り広げる「お年玉(年始ご挨拶)」など、歌舞伎を身近に感じられる公演として好評を博している。
 
2019年は尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村隼人、中村橋之助というパワーみなぎる若い7人が集結。また上置きとして今回も中村錦之助が出演、舞台を引き締める。
今回の演目は、第1部(11:00開演)は「戻駕色相肩」「源平布引滝 義賢最期」「芋掘長者」、第2部(15:00開演)は「寿曽我対面」「番町皿屋敷」「乗合船惠方萬歳」というラインナップになっている。

【演目解説】
●「戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)」
京都・紫野に、浪花の次郎作と吾妻の与四郎が駕籠を担いでやって来る。やがて二人は上方と江戸のお国自慢を始め、そのうち二人の懐から連判状と香炉が落ちて……。最後は次郎作が石川五右衛門、与四郎が真柴久吉だったことがわかり、意外な展開が楽しい浄瑠璃節の舞踊の名作。
●「源平布引滝 義賢最期(よしかたさいご)」
平家全盛の時代。源義朝が敗死したあと、平家に味方して病で引き籠もっていた弟の木曽義賢。源氏再興の志があることを下部折平(実は源氏の多田蔵人)に明かす。そこに平清盛の使者が白旗詮議に現れ……。仏倒しなど悽愴な迫力と立廻りが見どころの義太夫狂言の名作。
●「芋掘長者(いもほりちょうじゃ)」
松ヶ枝家の息女緑御前に恋い焦がれた芋掘藤五郎は、婿選びの舞の会に乗り込むが、踊れないので舞上手の友人・治六郎が面を着けて見事な踊りを披露する。すると緑御前から面を取って舞うように所望され……。「身替座禅」「棒しばり」の作者・岡村柿紅の舞踊劇で、平成17年に十世坂東三津五郎が新たに振りを付け、45年ぶりに復活させた面白味あふれるおとぎ話。
●「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」
工藤左衛門祐経の館に、父の敵と祐経を狙う曽我十郎と五郎の兄弟が現れる。だが祐経は、まずは紛失した重宝友切丸を見つけよと諭す。家臣の鬼王新左衛門が駆けつけると祐経は、兄弟と狩場での再会を約束して別れる……。歌舞伎の様式美と格式美に満ちた一幕。
●「番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)」
町奴との喧嘩に明け暮れる旗本・青山播磨に、縁談が持ちかけられるが、腰元のお菊と恋仲の播磨にはその気はない。だが播磨の本心が気になるお菊は、家宝の皿をわざと割ってしまう……。皿屋敷伝説を踏まえつつも、近代の恋愛物語として新たに作られた岡本綺堂の新歌舞伎。
●「乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)」
新年を迎えた隅田川のほとり。大勢を乗せた渡し船がやって来る。そこで萬歳と才造を皮切りに順番に踊り始め、それぞれ芸達者ぶりが披露される……。江戸・正月の風物詩、三河萬歳を取り入れたご祝儀舞踊。

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中村橋之助、中村種之助、坂東新悟、中村隼人
坂東巳之助、尾上松也、中村歌昇 
 
【出演者コメント】

尾上松也
『新春浅草歌舞伎』の中心を勤めるようになって5年目、毎年みごとなリーダーシップを発揮している尾上松也。今回は「義賢最期」の義賢、「芋掘長者」魁兵馬「対面」曽我五郎時政、「乗合船」通人と4役を勤める。
松也コメント
「義賢最期」では念願だった義賢役ということで大変ありがたく思っております。また「寿曽我対面」の曽我五郎は2度目なので成長をお見せできれば。「芋掘長者」は御園座で三津五郎のおじさまが演じれた時に腰元を勤めました。今回は(息子の)みっくん(巳之助)と一緒ということで嬉しいです。「乗合船」は、全員が一緒に出られる演目をやりたいと話し合って決めました。今回は全員がフル稼働して、いつも以上に全員野球という感じです。お客様に楽しんで帰っていただけるよう全員で勤めます。

中村歌昇
昨年に続いての出演で、今回が5回目となる。播磨屋一門で古典の基礎を固めながら、弟の種之助との勉強会「双蝶の会」もすでに4回目、勉強熱心で知られている。今回は、「戻駕色相肩」次郎作、「寿曽我対面」曽我十郎祐成、「芋掘長者」菟原左内、「乗合船」若旦那を勤める。
歌昇コメント
「戻駕」は今年の5月、大阪松竹座で勘九郎のおにいさんと演じました。そのときは与四郎で、今回は浪花の次郎作を勤めます。勘九郎のおにいさんの次郎作がとても素敵でしたので、今回させていただけるのはすごくワクワクしています。隣りで感じたあの魅力が少しでも出せればと。「対面」の曽我十郎は、ああいう柔らかい立役をやる機会が今まであまりなかったので、今回勉強させていただけるなと思っています。

坂東巳之助
6年連続8回目の出演。父・十代目三津五郎が演じた古典や舞踊に次々に取り組んで、大きな成果をあげている。今回は「芋掘長者」芋掘藤五郎、「寿曽我対面」小林朝比奈、「乗合船」萬歳鶴太夫を演じる。
巳之助コメント
「芋掘長者」は父と中村芝翫のおじさまが復活させた演目で、その息子同士である橋之助さんとやらせていただけることをたいへん嬉しく思います。明るく楽しい舞踊劇なので、新春初笑いをしていただければ。「対面」の小林朝比奈は初役で、非常に歌舞伎らしい演目で、その中でも歌舞伎以外ではお目にかかれないキャラクターなので、歌舞伎ならではの面白さを感じてもらえればと。「乗合船」は松也のおにいさんのおっしゃったように全員が揃うというのは非常に嬉しいです。

坂東新悟
昨年に続き6回目。女方を中心に時代物、世話物の古典、新作まで幅広い作品に真摯に取り組んでいる。今回は「義賢最期」小万、「芋掘長者」息女緑御前、「寿曽我対面」大磯の虎、「乗合船」白酒売を勤める。
新悟コメント
「義賢最期」は前に待宵姫を演じましたが、そのときから小万という、義賢の最期を見届ける切ない役をいつかやってみたいと思っていました。松也おにいさんの演じる義賢の情の深い演技をしっかりと受け止められるように勤めたいです。「芋掘長者」は腰元で二度出ています。今回は巳之助のおにいさんの芋掘に緑御前でご一緒できて嬉しいです。「寿曽我対面」の大磯の虎は、立女方の貫禄が必要な役で、一朝一夕でできるものではないのですが、そういうものを勉強できるのも浅草ならではだと思います。

中村種之助
昨年に続いて6回目の出演になる。若手ながら舞踊の名手で、兄の歌昇との「双蝶の会」でも熱心に勉強している。「戻駕色相肩」吾妻の与四郎、「義賢最期」矢走兵内、「番町皿屋敷」腰元お菊、「乗合船」才造と色合いの違った4役を演じる。 
種之助コメント
4役どれもまったく違う役ですが、“なんでもやる“と“なんでもできる”は違うと思いますので、お客様に、あれは良かったけどこちらは、と言われないように、それぞれに良かったと言っていただけるようにがんばります。浅草では色々踊らせていただいているのですが、常磐津は初めて、「戻駕」も「乗合船」もその風情がだせればと思います。お菊の役は細かな心理描写が必要になってくるので、先輩の教えを守りながら、生きる女性として見られるように勤めたいです。

中村隼人
「新春浅草歌舞伎」には8年連続8回目とキャリア十分、すらっとした二枚目の立役スターだ。今回は「義賢最期」下部折平、「番町皿屋敷」青山播磨、「寿曽我対面」鬼王新左衛門、「乗合船」大工と4役に取り組む。
隼人コメント
「義賢最期」の下部折平は義賢と語り合う場面がありますが、浅草で時代物で松也にいさんとこんなに絡む役というのは初めて。胸を借りて稽古したいと思います。「番町皿屋敷」の播磨は初めて勤めます。父(二代目中村錦之助)も何度も勤めた役です。播磨の心理描写が難しいのですが、お菊への真っ直ぐな思い、そしてプライドを傷付けられたあとの心理を表現したいと思います。最後の「乗合船」は全員揃ってお正月らしく華やかにと思っています。

中村橋之助
前回出演の2016年以来3年ぶり。橋之助を襲名してからは初参加となる。今回は「義賢最期」進野次郎宗政、「芋掘長者」友人の治六郎、「番町皿屋敷」放駒四郎兵衛、「乗合船」女船頭の4役を勤める。
橋之助コメント
僕は浅草には国生として二度出演していますが、今回は橋之助を襲名して初めてです。3年前、松也のおにいさんが打ち上げで、橋之助になってまた帰ってきてね、と言ってくださって、今回、橋之助として初めて呼んでいただけたのがとても嬉しいです! 「芋掘長者」は父と三津五郎のおじさまが踊った演目で、巳之助のおにいさんの胸を借りて、息を合わせて踊りたいです。夜の部の「乗合船」では小学生以来初めての女方。目指すのは父のような立役ですが、女方にもすごく興味があって、女船頭をさせていただきますので、皆さんに教えていただきながら、自分に惚れるくらいの気持ちで女方を楽しみたいです。

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2019年の『新春浅草歌舞伎』は、義太夫狂言あり、華やかな舞踊やコミカルな舞踊あり、歌舞伎のいろいろな魅力、楽しさを感じられる演目が揃っている。新しいグッズ販売や、メンバーが企画に関わったお弁当も販売されるという。若いパワーあふれる「新春浅草歌舞伎」が、浅草の初春をより一層賑やかに飾ってくれそうだ!

〈公演情報〉
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『新春浅草歌舞伎』
第1部 
 お年玉(年始ご挨拶) 
 一、「戻駕色相肩」(もどりかごいろにあいかた)」
 二、「源平布引滝 義賢最期」(よしかたさいご)
 三、「芋掘長者」(いもほりちょうじゃ)
第2部
 
お年玉(年始ご挨拶)  
 一、「寿曽我対面」(ことぶきそがのたいめん)
 二、「番町皿屋敷」(ばんちょうさらやしき)
 三、「乗合船惠方萬歳」(のりあいぶねえほうまんざい)
 
出演◇尾上松也 中村歌昇 坂東巳之助 坂東新悟  中村種之助  中村隼人 中村橋之助
/中村錦之助 ほか
●2019/1/2〜26◎浅草公会堂
〈料金〉1等席9,000円 2等席6,000円 3等席3,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹0570-000-489 (10:00〜18:00)または03-6745-0888 



【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】


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劇団スタジオライフ『なのはな』製作発表会見レポート

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先日、来年、2月27日〜3月10日東京芸術劇場シアターウエスト、4月12日〜13日大阪・ABCホールにて行われる劇団スタジオライフの次回公演『なのはな』の製作発表記者会見が都内で行われた。そのオフィシャルレポートが到着した。

『なのはな』は漫画家・萩尾望都が、2011年の東日本大震災および福島の原発事故を題材として同年に発表した短編作品。生まれた家を離れ避難先で暮らす福島の小学6年生・ナホは、津波で行方不明になったままの祖母と夢の中で再会。祖母のもとへ導いてくれたのは、人形を手にした西洋人の女の子で……。過酷な現実と幻想的なイメージがない交ぜになる日々の中、ナホが希望の糸口を見出していくまでが描かれる。

今回の製作発表では、原作者の萩尾と、劇作・演出を担当するスタジオライフの倉田淳、客演を務める作曲家・明石隼汰の3人による特別鼎談が開催された。

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倉田が『なのはな』誕生までの経緯を尋ねると、萩尾は7年前の春の心情を丁寧に述懐。「テレビで震災や原発事故のニュースを見て、血の気が引くとともに作品を描く気力がザーッと引いてしまいました。『気持ちを明るくしなきゃ!』ということで親しい人たちと公園へお花見に行ったんですが、そこで『チェルノブイリでは汚染地域に菜の花を植えた』という話を聞きまして(※チェルノブイリ原発事故で汚染された農地では、放射性物質をよく吸収する菜の花によって土壌を再生しようという試みがある)。そこで初めて希望が見えた気がして、自分にとっての“お祓い”をするような気持ちで勢いのままに描きました。ただ、災害の渦中にいたら絶対描けなかった。私はちょっと離れていたから描けたんだと思います」(萩尾)。

一方、独自の作曲メソッドで数多くの有名CMソングを手掛けている明石は、子供の頃から萩尾作品の熱烈なファン。縁あって20年来“パソコンの師匠”という立場で萩尾と交流を重ねてきた。奇しくも福島県出身であり、この作品に対する思いもひとしおだ。そんな彼が今回、劇中に登場する『アララソング』の作曲を含めた劇伴をスタジオライフから依頼されたが、「この曲を歌う音寿という役を俺以上に演じられる人はないんじゃないか」との思いが募り、自ら出演を希望したのだという。実は昔、文芸座で俳優経験があることを彼が照れ臭そうに明かすと、萩尾も倉田も「初めて知りました」とびっくり。「ずっと長いことその進化を見つめてきたスタジオライフの舞台に、まさか自分が参加させていただくとは思いませんでした。まだ稽古も始まっていないので不安の方が大きいですけども、スタジオライフの世界を壊さないよう、自分の役割を果たせればと思っております」(明石)と屈託ない笑顔。

倉田は「スローガンのようにして声高に何かを叫ぶわけではないですが、ひしひしと、痛みや切なさが胸に迫ってくる作品。ページ数にすればたった24ページですが“たった”と言えない、ものすごい分量が詰め込まれています。これをどう芝居に起こすかと考えると頭が痛いんですけども(笑)、余計なことを足さず、シンプルにやりたいと思っています」と抱負を述べた。

スタジオライフの演劇に対し「それは違うな〜と思ったことがない」と、萩尾も太鼓判。長年にわたり多くの作品を原作として提供しているのは、そうした信頼があるからだ。「倉田さんの演出には、原作の本質をきちんと捉え、骨格を損ねないという特長があります。それは漫画をそのままコピーしたぬるい演出とも違う。細部にまで深い意味があり、時々、お能の舞台を観ているような感覚に陥る時さえあります。今回はどんな世界を見せていただけるのか期待しています」(萩尾)と励ましの言葉を寄せた。
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鼎談に続いてはキャストが登壇。Wキャストでナホを演じる松本慎也(左)と関戸博一(右)は、「大切な人を失い、ふるさとを失い、それでも少女が見出す未来への希望というものをみずみずしく演じたいと思います。演劇という表現を通して今一度福島へ思いを馳せ、そしてこの星に生きている一人の当事者として、未来に祈りと希望を届けられるような作品を作っていければ」(松本)、「キャスト表の一番上にある名前はナホですが、家族の物語であり全員が主役の物語だと思っています。『なのはな』は心の中の菜の花。広げて言うと観客席にいる全員が主役になれるよう、心に届けたい。今まで以上の覚悟を持って臨みます」(関戸)と、それぞれに意気込みを。西洋を舞台にした作品の多いスタジオライフだけに、髪を真っ黒に染めた二人が粛然と並んで立つ姿が、清新に感じられた。

倉田も改めて挨拶。発表当時『なのはな』を読んで以来、強く惹かれつつも、自分がこれを手掛けていいんだろうかという思いがずっとあった――と振り返る。「でも時が流れ、このままではいけないなと思うようになりました。(3・11のことが)日に日に忘れられ、どんどん置き去りにされていってしまう現状を感じ……東北ではまだいろんなことが片付いていないということを忘れないでいるために、今、自分にできることをやりたいなと決意した次第です」。また「ナホちゃん、ばーちゃん、じーちゃん、お父さんもお母さんもお兄ちゃんも音寿さんもみんな、それぞれの思いがある。一つ一つの思いを大切に大切に、表現に結び付けていきたいなと思います」と熱く語った。

(文:上甲薫、写真提供:劇団スタジオライフ)

〈公演情報〉
スタジオライフ『なのはな』
原作:萩尾望都『なのはな』(小学館FCS『萩尾望都作品集 なのはな』より(小学館刊)) 
脚本・演出:倉田淳
[東京公演] 2019年2月27日(土)〜3月10日(日) 東京芸術劇場シアターウエスト
[大阪公演] 2019年4月12日(金)〜4月13日(土) ABCホール


『Happy Families』


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