稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『真夜中の弥次さん喜多さん』三重

記者発表ルポ

新国立劇場3月公演『赤道の下のマクベス』スペシャルトークイベントで鄭義信・池内博之・平田満が語る!

新国立劇場「赤道の下のマクベス」トークイベント
鄭義信・池内博之・平田満

新国立劇場にて来年3月に公演される『赤道の下のマクベス』の公開トークイベントが、12月18日に行われた。作・演出の鄭義信を迎えて今までの制作過程を振り返りつつ、この最新作に出演する池内博之、平田満も交えて上演に対する意気込みを語った。

 
『赤道の下のマクベス』
1947年、シンガポール、チャンギ刑務所で、第二次世界大戦のBC級戦犯として収容されていた日本人と元日本人だった朝鮮人の物語。捕虜への暴力や住民の殺害などの残虐行為の命令者・実行者がBC級戦犯の対象となり、そこには日本人だけではなく、朝鮮や台湾の捕虜監視員もいて……。

作・演出の鄭義信は『焼肉ドラゴン』『たとえば野に咲く花のように』『パーマ屋スミレ』の「鄭義信三部作」など、今まで新国立劇場で数々の名作を上演してきた。
今回の公演で主演を務める池内博之と平田満、この作品の印象を聞かれると、池内は「まず台本を頂いて最初にカフェで読んでいたらすごく泣いてしまって、最後まで読めなかったんです。この作品はBC級戦犯の話を描いているのですが、自分にもこういった知識があまりなく、勉強不足を反省しました。ぜひ若い人にも見て欲しい作品です。」と語り、平田は「鄭さんの作品はいつも優しさを感じています。この作品もそうだと思いました。戦争とか、正義とか、そういったものを声高に叫ぶのではなく人間にフォーカスを当てた作品です。個人的に、この年齢で一兵卒の役を演じるのにとても面白味を感じているので、今から稽古が楽しみです。」と答えた。
また、鄭義信は作品について「死刑を待つBC級戦犯の収容所という極限の状態を舞台にしているのでいつもより笑いが少なくなっちゃったかもね(笑)。でも、絶望感より小さくても希望のようなものが最後に残るということを描きたい。」と意気込みを語った。
また、稽古が“しつこい”ことで有名な鄭義信に対しては、池内が「大変な稽古になると思いますが、この作品を上演することはとても意義があると感じています。精一杯演じたい。鄭さんについていきます!」そして平田が「心して稽古に入りたいです。大変な稽古になるとは思いますが、今の時期にやるべき劇として上演できれば嬉しいですね。」と気合を入れる中、「(稽古が長いと言われるが)最近はそうでもないんだよ」と鄭が笑う場面も。「池内さんと平田さんが言葉を交わすシーンが多く、親子みたいに見えればいいですね。」と演出に対する意気込みも話し、和気藹々とした雰囲気でトークを終えた。
 
〈公演情報〉
『赤道の下のマクベス』 
作・演出◇鄭義信
出演◇池内博之 浅野雅博 尾上寛之 丸山厚人 平田満
木津誠之 チョウ ヨンホ 岩男海史 中西良介
●2018/3/6〜25◎新国立劇場 小劇場
一般発売/ 2018年1月20日(土)10:00〜 



【資料提供/新国立劇場】


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新世代スタート時のメンバーも復帰! 『新春浅草歌舞伎』製作発表レポート

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2018年も、新年の浅草で若手花形俳優たちの熱気あふれる舞台が繰り広げられる!
江戸随一の芝居町であった浅草。80年の第1回公演以来、すっかりお正月の浅草を代表するイベントともなっている「新春浅草歌舞伎」が、2018年も1月2日から浅草公会堂で幕を開ける(26日まで)。

出演者は、尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人、中村梅丸といった、近年メキメキと力をつけてきている若手花形歌舞伎俳優の面々。そこに、今回も中村錦之助らが加わり、ベテランの存在感で舞台をぐっと引き締める。

歌舞伎の将来を担う若手花形たちが、芝居、舞踊を問わず大役に果敢に挑み、諸先輩の芸を受け継いでいこうとする新春浅草歌舞伎。おのずとそれぞれが初役に取り組むことが多くなるが、今回も初役尽くしとなる。
第1部は、兄・頼朝と不和となった義経が流転の旅を続ける「義経千本桜」の中から、愛妾・静御前と別れて義経が、忠信に静御前を託して京を発つ「鳥居前」。赤穂浪士たちの処遇を巡り、次期将軍と目される綱豊と、浪士の一人・富森助右衛の緊迫した応酬が見ものの「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」。第2部は、糸操りの人形が三番叟を踊る趣向の「操り三番叟」。家族の義理と情愛を描いた「双蝶々曲輪日記 引窓」。名匠・左甚五郎と人形の精の逢瀬を描いた、ファンタジックな舞踊「京人形」。古典、新歌舞伎、舞踊とバラエティに富んだラインナップである。

もちろん、新春浅草歌舞伎の楽しみの一つである、開幕前のお年玉<年始ご挨拶>(日替わり)も行われる。1月20日の第2部では、着物姿の来場客に記念品が贈られる「着物で歌舞伎」や、1月12日の第2部では地元の芸者衆がお客様をお出迎えする「浅草総見」も開催。舞台以外でも、お正月らしい賑わいムードの公演となりそうだ。

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後列 中村梅丸、中村米吉、坂東新悟、中村種之助、中村隼人 
前列 坂東巳之助、中村歌昇、尾上松也、中村錦之助

12月4日、都内でこの製作発表記者会見が行われた。出席者は、尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人、中村梅丸、中村錦之助、安孫子正松竹株式会社専務取締役。それぞれから挨拶の後、質疑応答に移った。


[挨拶]

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尾上松也 
私どもの世代に受け継がせていただき、4年目です。今僕たちがこうして新春浅草歌舞伎をさせていただいているのは、先輩方のご苦労の賜物だと実感しました。ありがたいということに尽きます。この浅草歌舞伎は、浅草の皆さんと共に成長してきましたし、浅草歌舞伎というのは、私どもの一つの大きな目標、大きな糧となってきている気がします。初年度の時は本当にがむしゃらに突き進み、嵐のように一か月が過ぎていった感じがします。4年目となり、この世代に受け継がせていただいた初年度の時に一緒だったメンバーもまた戻ってきてくれて、舞台も非常に華やかなのではと期待しています。まだまだ未熟ですが、錦之助のお兄さんのお力もお借りして、良い舞台を勤められればいいなと思っております。

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中村歌昇
 
自分自身3年ぶりに浅草歌舞伎に帰ってこれたことを凄く喜んでおります。その間、出ていたメンバーの松也兄さんをはじめ、その方々が土台を作ってくれました。今回はその土台に久しぶりに復帰して、乗っからせていただく形ですが、みんなで頑張って良い舞台を作っていけたらいいなと思います。またこの浅草歌舞伎は、浅草の皆様のお力添えで成り立っております。そういう方々とも協力しながら、浅草という土地で盛り上がっていけたらと思っております。

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坂東巳之助 
松也の兄さん、隼人君、梅丸君、毎年一緒にやってきたメンバーに加えて、最初の年に一緒にやっていたみんなが戻ってきてくれまして、みんなでまた浅草歌舞伎をやっていくことができる事、本当に嬉しく、楽しく思っています。舞台の上ではもちろん仲良しこよしだけではなく、互いに切磋琢磨し合いつつ、みんなで折角なので、新年の浅草の街は賑やかですので、楽しむような時間もあったらいいのかなと思っております。

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坂東新悟 
私も2年ぶりに浅草(歌舞伎)に出演させていただきます。先輩方が本当に大切にされてきた公演です。その先輩方の思いを無駄にしないように、一生懸命勤めさせていただきたいと思っております。また、歌昇さんも仰いましたが、浅草の街の方々の協力が非常に大きい公演ですので、その期待を裏切らないように、しっかりと僕たちはお芝居で街に還元していけるように、街全体を盛り上げるつもりで、一生懸命お芝居に精を出したいと思います。

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中村種之助 
久々に浅草公会堂、浅草歌舞伎に出させていただきますこと、そしてこの皆さんと一緒に舞台に出させていただきますこと、本当にありがたく思っております。前回出させていただいたのは、ちょうど世代交代の時で、みんなで切磋琢磨して一緒に頑張っていこうという気持ちで勤めていましたが、今回は、僕らが出ていなかった間に浅草歌舞伎を守ったというか、自分たちのものにした皆さんの中に戻るということですので、新たにその時とは違う、挑戦するという気持ちで勤めたいと思っております。

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中村米吉 
私も新悟のお兄様と同じく、2年ぶりに浅草(歌舞伎)に出させていただきます。まずはそれが本当に嬉しく思っております。浅草歌舞伎ですので、我々みんな大きなお役に挑戦させていただきます。先輩方の教えを大切に勤める事はもちろんですが、この機会を楽しみながらひと月を終えられたらなとも思っております。
 
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中村隼人 
本当に錚々たる先輩方が立ってきた浅草の舞台で、毎年舞台を勤められる事を本当に幸せに思っております。また、浅草という街は、新年はより活気づいて熱い街になります。その熱さに負けないように、我々、若手歌舞伎俳優一丸となって、一致団結して舞台を勤めていきたいと思っております。

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中村梅丸 
私は来年で6年連続、この新春浅草歌舞伎に出させていただきまして、今回からこのポスターにも参加させていただいたり、お年玉ご挨拶にも出させていただいたり、色々勉強させていただいています。この歴史ある公演に出させていただき本当にありがたく思いますし、私がさせていただく三つのお役はすべてここにいる先輩方が何かしらなさっていますので、ひと月の間にぜひその先輩方から教わりながら、少しでも成長できる、実りあるひと月にしたいと思っております。

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中村錦之助
 
今回も3年連続、上置きという立場で参加させていただきますが、私もまだ20代というつもりで勤めたいと思っております。また、お正月は歌舞伎座では高麗屋のお兄様(松本幸四郎)たちの三代襲名(披露興行)、国立劇場ではいつもの菊五郎劇団での復活公演、新橋演舞場では(市川)海老蔵さんがまた色々な趣向のお芝居を作っております。それに負けないくらい、浅草も活気がある若手たちで芝居を作っていただきたいと思っております。今回の演目はみなこの若手たちが、将来自分の本役となるようなものばかり。教えてくださる先輩方は、自分たちが先人から教わった歌舞伎の芸を後進に伝えるため、多分命がけでご指導してくださいます。このみんなも、ここでその技術を得て、将来歌舞伎のために、次は自分たちが芸を後進に伝えられるように精進して、将来的には、お正月は一人一人が座頭となれるよう、修業していってもらいたい。それに少しでも力添えができるよう、私もめいっぱい頑張るつもりです。

[質疑応答]
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──若手中心の歌舞伎ですが、他の舞台に比べて楽しみな事、大変な事などは。
松也 若手の公演は、それだけではいけないのですが、必死に無我夢中に芸に対して向かっていくという姿勢。若いうち、しかも初役であればそれは当然ですが、逆に言えば、その時にしか見られないものがあると思います。浅草歌舞伎は、出てくる大役を勤める人のほとんどが初役で、それは浅草歌舞伎でしか観られないのではないかと思います。まだまだ修業の身ですので、させていただくお役に対して、とにかく必死に、また先輩方が教えてくださった事を具現化するというのが一番大変。また、自分たちの責任公演という所ですね。多くの公演が、まだまだ先輩方に支えていただいて、場を頂戴してさせていただいている事が多いですが、(浅草歌舞伎は)おのおのが責任をもって勤めなければいけない場面が多く、お客様にお金を払って観ていただくありがたさも、より実感できます。芸というものとは違う部分で非常に勉強になる所でもありますし、一番の怖さでした。初演の時に一緒に出ていた皆さんはおわかりですが、本当に幕が開くまで誰一人客席にいないんじゃないかという不安に駆られていたので、幕が開いて満員のお客様に迎えられた時は、本当に何とも言えない、僕たちはそれが当たり前のように、先輩方のおかげでそうしてきましたが、お客様に来ていただく事がどれだけありがたいかを実感しました。涙を流すメンバーもいました。その気持ちは今でも忘れないようにしようという風にしています。

──それぞれ、主な初役の魅力と意気込みをお願いします。
松也 私は昼の部(第1部)では「御浜御殿綱豊卿」、夜の部(第2部)では「引窓」の濡髪をさせていただきます。二役とも初めてです。「御浜御殿」は、「忠臣蔵」という日本人にとってかけがえのない物語が軸となっています。その中で、綱豊卿が、次期将軍な訳ですが、浅野家の再興、でも本心としては義士たちに仇討をさせてやりたいという思いがある。勘解由との奥深い台詞のやり取り、助右衛門との探り合いが眼目になると思います。そこで、どれだけ自分の持っている力を存分に出して、勘解由は錦之助さんの胸をお借りして、助右衛門の巳之助君とは真っ向勝負でぶつかり合えるような所までもっていけたらいいと思います。長いですが、気持ちの浮き沈みの流れをお客様にくっきりお見せして、その思いが伝わるように勤めたいです。綱豊卿は(片岡)仁左衛門のお兄さんにご指導いただくので、しっかり勉強して勤めたいです。「引窓」は、自主公演で南方十次兵衛を、今年1月は錦之助のお兄さんと「角力場」をさせていただいて、1年越しにその後の話をするという事で、感慨深いです。今年錦之助のお兄さんが勤められた濡髪をさせていただく訳ですが、歌昇君の十次兵衛も非常に嬉しいし、(中村)吉右衛門のお兄さんにこういった大役を初めてご指導いただくので、それも光栄に思います。「引窓」は義理と人情の物語でもあり、母子の愛の物語。当時は義理と人情を第一に考えるわけですが、実の子という所もある、人間らしい心情というものを繊細に描いた作品ですので、濡髪ももちろん、十次兵衛しかり、それぞれの登場人物がしっかり表現することが大事だと思います。ご指導のお兄さんの話をしっかり聞いて勤めたいと思います。

歌昇 「引窓」の南方十次兵衛を初めて勤めさせていただきますが、播磨屋の家にとってとても大切な作品の一つだと思います。松也のお兄さんが仰った通り、人情と義理と親子の情愛を優しく繊細に描いた作品。ご観劇の後、どこか心がホッとするような所もあり、涙していただく所もあり、切ないお話ですが温かいお話だと思います。南方十次兵衛は、一商人から、お殿様の命を受け、亡き父親の跡を継いで七ヶ村の支配をする庄屋代官の務めをしますが、武士からお侍になる喜びもありますし、長五郎という人物が現れてからどんどん心理が変わっていく所がとても魅力的だと思います。僕自身は十次兵衛を吉右衛門のお兄さんから教えていただきますが、毎回お世話になっていますが、一つ一つ教わった事を出せるように勤めていければいいなと思います。

巳之助 私たちの代で新春浅草歌舞伎をさせていただくようになってから2年の間、あまりちゃんと共演をした事が無いですねと松也の兄さんと話していたら、今年「棒しばり」(舞踊)をさせていただきました。来年は「御浜御殿」で、松也兄さんの綱豊卿、私が助右衛門をさせていただきます。これは打って変わって会話劇ですので、お客様を退屈させないようにしなければいけない。非常に動きの少ない演目なので、お兄さんとお互い芝居をぶつけ合って、気持ちをぶつけ合って、会話劇の中で感情が動いていく面白さというものを、きちんと自分の中で理解した上で勤めないと難しいと思いますので、感じるままではなく理解した上で、お兄さんとお芝居を作り込んで、お客様に楽しんでいただける舞台になればと思います。「京人形」は父(十代目坂東三津五郎)もたびたび勤めていた舞踊の演目です。第2部には種之助君の「操り三番叟」があるので、人形に始まり人形で終わります(笑)。こちらの人形は、新悟君が勤めてくれます。楽しい踊りなので、こういった舞踊をさせていただく時は毎度言っていますが、こちらはお客様が何も考えずに楽しんでいただけるように勤められればと思います。お正月らしく華やかな気持ちで浅草の街に繰り出していただき、街を楽しんでおかえりいただける気持ちになれる作品にと思います。大役ということではこの二つですが、あとの二役も今回初役です。隼人君の「鳥居前」で(逸見)藤太、歌昇君の「引窓」で二人侍(平岡丹平)をさせていただきます。こういったお役もきちんと勤め、仲間たちの支えや力になれてこその浅草歌舞伎ですので、初役四役すべて合わせて、自分の力を出し切れるようにと思っております。

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新悟 私は昼の部(第1部)では「御浜御殿」の江島、第2部で京人形の精を勤めさせていただきます。江島は、米吉さん演じるお喜世の上司のような所で、仕事ができるだけでなく情も人間味もあり、それでいて少しお茶目な所もある、非常に難しい役どころです。時蔵のおじ様に教えていただき、しっかり舞台を締められるように、私のような若輩に勤められる役ではありませんが、精一杯舞台で存在感を出していきたいです。「京人形」は、お客様に明るい気持ちで帰っていただけるように、種之助さんの「操り三番叟」の人形とは趣向が違いますので、別物と思って見ていただいて。人形に心が宿るという趣向ですので、女性らしい動きと、最初のうちは甚五郎(巳之助)との少し男っぽい動きもあるので、その変化を楽しんでいただければと思います。

種之助 私は序幕に「鳥居前」の義経を。日本人なら誰でも知っている人物で、歌舞伎にとっても大切な役柄だと思っております。「義経千本桜」というくらいですから、義経を取り巻く人々の話で、「鳥居前」では、そのお芝居の心を表す役柄だと思います。そういう所を大事に勤めたいです。「京人形」は魂の宿る人形、僕の操り三番叟は、上から糸で操られる人形という趣向を感じていただけるよう、日本舞踊の大らかさと一緒に、お正月らしく華やかに勤めたいと思います。「京人形」のおとくは、歌舞伎界の中でも一、二を争うほどの心の大きい女性です(笑)。

米吉 私は第1部で「御浜御殿」のお喜世という大きなお役を勤めさせていただきます。真山青果の書いた新歌舞伎といわれるジャンルのお芝居ですので、いわゆる古典の歌舞伎とは違った台詞等が出てきますので、まずそれを一生懸命勉強させていただくのと、松也兄さんの側室ですので、兄さんに愛されるお喜世を勤められたらと思っております。「引窓」ではお早というまた大きなお役です。私ども播磨屋一門にとって大切なお芝居です。本当に素敵なお芝居で、これも歌昇兄さんの奥さんです。遊女であった色気を忘れないように、兄さんを、おこがましいですが、支えられるような奥さんをできたらなと思います。

隼人 私は第1部「鳥居前」の佐藤忠信実は源九郎狐を勤めさせていただきます。「義経千本桜」は歌舞伎の中でも本当に由緒があり、三大狂言にも数えられる大作です。義経に種之助君が出てくださり、僕自身も初役で荒事の大役を勤めさせていただきます。江戸歌舞伎を代表する荒事というのは、大らかさ、勢い、太さ、丸さが必要な役どころで、人生で初めて憧れていた荒事という役を(尾上)松緑兄さんに教わって勤めさせていただきますので、自分の新しい境地だと思うので、挑戦する気持ち、作品へのリスペクトを忘れずに勤めたいと思います。主な役はこちらですが、第2部でも種之助君の「操り三番叟」で千歳、「引窓」では巳之助兄さんと二人侍として三原伝造を勤めさせていただきます。自分も第2部は皆さんが主演の舞台に少しでも華を添えられるよう、舞台を締められるよう、しっかり勤めたいと思います。

梅丸 私は第1部で「鳥居前」の静御前、第2部で「操り三番叟」の後見、「京人形」の井筒姫(逃げていくお姫様)を勤めさせていただきます。三役とも初役ですが、代表して静御前の事を申しますと、古典味あふれる歌舞伎の大作で、通し狂言で上演される際に序幕で出てくるのがこの「鳥居前」です。静御前は、その後も通し狂言の間、出てきますが、「鳥居前」の静御前は難しいと先輩方も仰る場面です。私は(中村)魁春旦那に教えていただき、しっかり勤めたいと思っております。第2部の二役も先輩方に教わって頑張って勤めたいと思います。


〈公演情報〉
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『新春浅草歌舞伎』
〈第1部〉
お年玉<年始ご挨拶>
一、「義経千本桜 鳥居前」
二、「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」
〈第2部〉
お年玉<年始ご挨拶>
一、「操り三番叟」
二、「双蝶々曲輪日記 引窓」
三、「銘作左小刀 京人形」
出演◇尾上松也 中村歌昇 坂東巳之助 坂東新悟 中村種之助 中村米吉 中村隼人 中村梅丸 中村錦之助 ほか
●2018/1/2〜26◎浅草公会堂
〈料金〉1等席9,000円 2等席6,000円 3等席3,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489または03-6745-0888
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/545




【取材・文・撮影/内河 文】





『ストリップ学園』
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歌謡倶楽部『艶漢』第二幕、来年4月に上演! 櫻井圭登・末原拓馬・三上俊が制作発表イベントに登場!

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三上俊・櫻井圭登・末原拓馬

尚月地原作、ウィングス(新書館)に連載中の「艶漢」は、ノーフンがちで柳腰の美少年・傘職人の吉原詩郎と、熱血正義感の巡査殿・山田光路郎、そして志郎の兄貴分で無敵な色気を放つ吉原安里の物語を軸にした、エログロナンセンスな昭和郷愁的アンダーグラウンド事件簿。
この作品を浪漫活劇譚『艶漢』として2016年3月に上演、原作の世界観を立体化した舞台は観客の熱い支持を受けた。また同年8 月には原作本編とは別に、スピンオフ的な歌謡エンターテインメントショーとして歌謡俱楽部『艶漢』を上演。通常の芝居に加えて、ジャグリングや詩吟など本物のパフォーマーも参加し、キャッチ―な完全オリジナル楽曲やPOPや演歌を歌い踊るステージで、観客を楽しませた。
そして今回、12 月13日に初日を開ける浪漫活劇譚『艶漢』第二夜に続いて、エンターテインメントショー歌謡倶楽部『艶漢』第二幕が、2018年4月11日〜15日、東京キネマ倶楽部にて上演される。

その制作発表が、11月23日、東京・アニメイトAKIBAガールズステーションにて開催され、プレスとオーディエンスが吉原詩郎役の櫻井圭登、山田光路郎役の末原拓馬、吉原安里役の三上俊が登場。役名と簡単な挨拶のあと、質疑応答を行った。

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 【質疑応答】

──歌謡倶楽部『艶漢』新作と聞いて率直な感想を。
櫻井 そうですね。またあの「歌謡倶楽部」が帰ってきたと思うとドキドキしますね。次はどうなるんだろうという、ドキドキ感が。結構トリッキーな作品なので、次はどういうアプローチで、この「歌謡倶楽部」を作るのか、楽しみです。
末原 「歌謡倶楽部」は「活劇譚」に比べると打ち上げ花火感がすごくて、僕らは最初から、お祭りのようにしましょうというのを、掲げていたんですけども、なにしろ打ち上げ花火なので、飛んだら消えていくものだと思ってたんですが、まさかまた帰ってきたんだなと思います。どちらかというと『艶漢』という作品自体が、すごく暗い陰の部分と陽の部分とあって、「活劇譚」のほうは暗いほうに、より、添いながら。そっちに振っているぶん反動なのか、「歌謡倶楽部」はひたすら明るく、日常から、たぶんろくでもない日常を送っている皆さんが、休みの日などに遊びにきていただいたら、ぱーっと開けていくということで、僕らが世の中の希望になればいいなと考えてやってます。というのが率直な感想です。
三上 率直な感想は、いつまで食べ物を我慢すればいいか、みたいな(笑)。また来たなっていう感じなんですが。それは置いといて、「浪漫活劇譚」が本筋だとしたら、巻末漫画のようなイメージでやらせていただいて、真摯に「浪漫活劇譚」を芝居で作り上げようと思ってやってるんですけど、「歌謡倶楽部」は真摯に遊ぼうというところを楽しんでいただけたらと思っています。

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──今回、個人的に挑戦してみたいことは?
櫻井 僕、やりたいことあって。これ夢ですけど…よくあるでしょ、下からボーン!!みたいに出たい(笑)。めっちゃやってみたくて! それが無理な劇場もあるとは思いますけど。
三上 もう、俺の手でやってやる。
末原 俺らががんばる(笑)。
櫻井 それとエアリアルやれたらなと、布とか使って。光路郎さんと安里さんと一緒にやれたらいいなと思ってます。
末原 僕は技とかではなく、さっきも流れていた曲あるじゃないですか。それがあのお祭りのときだけじゃなく、外の世界でもっと触れてもらえるといいなと。芝居って集まったところでしかできないけど、音楽はどこへでも飛んでいくことが出来るじゃないですか。これもまた音楽とかできると思うんですけど、普段聴いててもいいような歌を、このチームで作れたらいいなと思っております。それと僕もアクロバット的なものを、キネマ倶楽部という雰囲気がある非日常的な場所で、我々は身体表現をする身なので、そこで別の世界の人しかできないだろうなという見せ方を、転がってみたり飛んでみたりという、そういうことができればいいなと。
三上 そうですね。僕もエアリアルとかワイアーアクションとか、空中戦とか派手に表現できたらいいなと思うんですけど。キネマ倶楽部ということで、今度こそストリップをやりたいなと思ってます(笑)。
末原 邪魔されたんですよね、詩郎に。
三上 そう(笑)。今度は最後までやらせていただきたいなと思ってます(笑)。ポールダンスもいいなと。キネマ倶楽部はもとキャバレーだったところなので、雰囲気を生かした何かができたらいいなと。

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──本編から「歌謡倶楽部」まで拡がる「艶漢」の魅力を語っていただければ。
櫻井 詩郎の光路郎さんへの愛情と安里への愛情って全然違ってて、それは人間ならではで。そういうさまざまな愛があるんだなあというのを『艶漢』を通して知ったので、これからもたくさんの愛を『艶漢』とともに知っていきたいと思います。
末原 見た目の美しさが『艶漢』ならではとよく言われますが、僕は人間の描かれかただなと思っていて、本編は人の生き死にが関わっていたりするので、非常に登場人物が多感というか感情の振れ幅が大きいんです。小さな恨みごとも大きく表現する。それは作者の先生の思いかたなんだと思いますが、そのへんを「おはなし」という中で表現できるのが、魅力だと思っています。
三上 フィクションでファンタジーなんですけど、本当に色々な人間が存在するし、生きているなと。オムニバス形式で1話1話、人間の醜さとか愚かさが描かれているんですが、そこに美しさがあるなと感じています。人間の本質を考えさせられる作品だなと思います。
──前回の「歌謡倶楽部」で印象に残っているのは?
櫻井 やっぱりオープニングじゃないですか(笑)。1回幕が開いて、また閉まるという。全裸で。
末原 あのときね(笑)。
櫻井 スタンバイするために階段の一番上に行くと○に禁と書かれた札が立ってて、そこにちゃんといなくてはいけなくて。
末原 そうそう(笑)。
櫻井 みんなも周りでスタンバイしてるんだけど、あのスタンバイは自分の中でも、もう一生忘れられないなと。印象的でした。
末原 僕らもそのとき緞帳の裏に隠れてるわけで、原作に忠実な世界観の続編としてやってるのに、感覚としては劇中劇感覚というか、『艶漢』の登場人物たちのスピンオフというか、メタ演劇という感じになってて。最初怖かった。幕が開いたとき、お客さんから「おいおい」となったらどうしようと。で、幕が上がって、そのあとワーッと拍手きて、目を合わせて「いけるね」と。
櫻井 そう。
末原 『艶漢』って世界観強いから、絶対ここから先は出ちゃいけないというところがあると思ってるんだけど、登場人物として物語から出て、その状態で生身のお客さんと繋がるという、そこは不思議でしたね。なんか物語と現実がマーブル状に混ざっていく、ああこれは面白いなと思ってました。
三上 お客さんに同じ振りをしてもらう瞬間とかあって、その、境界線を取っ払っちゃうことが気持ち良くて、常々、作品はお客さんと一緒に作るものだと思っているので、今回もまたそれができればいいなと思っています。

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──最後に櫻井さんから公演情報を。
櫻井 歌謡倶楽部『艶漢』第二幕、2018年4月11日から15日まで、東京キネマ俱楽部で上演します。歌ありダンスありで楽しい公演です。ぜひ劇場にお越し下さい。
全員 よろしくお願いします。


【歌謡倶楽部『艶漢』第二幕 初演のキービジュアル】
吉原詩郎役_櫻井圭登
吉原詩郎/櫻井圭登
山田光路郎役_末原拓馬(おぼんろ)
山田光路郎/末原拓馬
吉原安里役_三上 俊
 吉原安里/三上俊

〈公演情報〉 
歌謡倶楽部『艶漢』第二幕
原作◇尚月地『艶漢』/「ウィングス」連載中(株式会社 新書館)
脚本・演出◇伊勢直弘 
振付◇當間里美 
楽曲制作◇大石憲一郎 
●2018 /4/11〜15◎東京・キネマ俱楽部
出演:吉原詩郎役:櫻井圭登、山田光路郎役:末原拓馬(おぼんろ)、吉原安里役:三上 俊/六口役:田上真里奈 ほか
★追加キャストやチケット情報など、公式サイトにて随時更新! 

Ⓒ尚 月地/新書館 Ⓒ尚 月地/幻灯署活劇支部



【取材・文・撮影/榊原和子】



『夢一夜』
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ヤン ジョンウンの演出で浦井健治がイプセンの名作に挑む!日韓文化交流企画『ペール・ギュント』制作発表会レポート

『ペール・ギュント』制作発表会フォトセッション_パターン3_S
 ヤン ジョンウン・浦井健治

ノルウェーが誇る劇作家イプセンによる『ペール・ギュント』は、真の自分をどこまでも追い求める、150年経った今も古びない壮大な「自分探し」の物語。その戯曲が、今年開場20周年の世田谷パブリックシアターで12月に上演される。演出は平昌冬季オリンピックの開・閉会式の総合演出を務めるヤン ジョンウン。主演には浦井健治、そのほか日韓20名のキャストが演じる舞台だ。
 
この『ペール・ギュント』は、シェイクスピアに次いで世界で2番目に多く上演されているノルウェーの偉大な劇作家・詩人ヘンリック・イプセンが、150年前の1867年に書いた「劇詩」。エドヴァルド・グリーグによってかの有名な劇音楽が作曲され、1876 年に初演。通常の戯曲形態をとらない異色の本作は、無限の表現が考えられることから、あまたのアーティストの想像力を刺激し、今日まで上演され続けてきた。真の自分をどこまでも追い求める男の一生を描いて、執筆から150年簁った今も古びない壮大な「自分探し」の物語で、ヤン ジョンウン演出は、音楽やダンス、日本語と韓国語が飛び交う、エネルギッシュな舞台となる。

『ペール・ギュント』制作発表会(撮影:宮川舞子)

この作品の制作発表会が、昨日、10月24日、世田谷パブリックシアターにて行われた。
登壇者は、上演台本・演出のヤン ジョンウン、タイトルロールのペール・ギュントを演じる浦井健治、ペールの恋人ソールヴェイの趣里、ペールの母親オーセほかを演じるマルシア、ソールヴェイの父役の浅野雅博、見知らぬ乗客役のキム デジン、緑衣の女役のダギョンという顔ぶれで、稽古中の本作への手ごたえなどを語ってくれた。

【コメント】

 ヤン ジョンウンさん(撮影:宮川舞子)
ヤン ジョンウン(上演台本・演出)
稽古が始まって1週間が経ちましたが、すでに日韓の役者とスタッフが演劇という文化を通してボーダーレスな関係を築き上げていて、「人間はみんな似ている」という普遍的な同質性を強く感じています。これからどういう旅路になるのか期待でいっぱいです。(韓国で自身が芸術監督を務める「劇団旅行者(ヨヘンジャ)」にならい命名した)我々「劇団ペール・ギュント」が「人生の中で生きていくこと、死んでいくこと」への問いかけを提示できたらと思っています。この作品はペールが自分を探し出す物語ですが、この作品に関わっている人それぞれの自分探しの物語、また現代人が混乱のなかで自分を見失うところから自分を発見する物語にもなりうるでしょう。イプセンの哲学的なテーマ、そして私の自分探し、旅路というテーマなど、この作品に込められた多義的なテーマがお客様にもオーバーラップして伝わっていけば幸いです。
 
『ペール・ギュント』制作発表会 浦井健治さん(撮影:宮川舞子)
浦井健治(ペール・ギュント役)
笑顔とエネルギーに満ちている家族のような現場です。稽古というよりは“play”、遊びのようであり、またある意味修行のようでもある濃密な時間を稽古場で過ごしています。この“劇団ペール・ギュント”の船旅が新大陸なのか、理想郷なのか、そういったどこかに着く頃には、日本も韓国も国なんか飛び越えて、イプセンが描いた人間、自分探しにおける一番大事なことに辿りつけたらと思います。さまざまなメッセージが込められている作品ですので、お客様の一人ひとりに十人十色の感想を持ち帰っていただきたいです。このエネルギーが皆さんに伝わると良いなと思っています。ぜひ、クリスマスも大晦日も一緒に旅に出かけましょう。
 
『ペール・ギュント』制作発表会 趣里さん(撮影:宮川舞子)
趣里(ソールヴェイ役 ほか)
昨年夏のワークショップでヤンさんや韓国のキャストの方々とお会いし、自分自身と向き合い、相手を見つめ、共有するという貴重な体験をしました。ぜひこの作品に参加したいと思っていたので、今日この日をみなさんと迎えることができて嬉しい気持ちでいっぱいです。稽古が始まって1週間ですが、濃密な時間が過ごせている気がします。言葉の違いも感じないようなエネルギーは、絶対お客様にも伝わるはずだと思っています。観ていただくお客様が『ペール・ギュント』という自分探しの旅にみなさんにも参加していただけるような舞台になればいいなと思っています。
 
 浅野雅博さん(撮影:宮川舞子)
浅野雅博(ソールヴェイの父役 ほか)
言葉の壁が心配でしたが、韓国のみなさんが「なんでこんなに愛が溢れているのか」と思うほど愛情深く、そんな心配は杞憂に終わりました。まだ稽古が始まり一週間ですが、言葉や国境の壁を芸術は簡単に超えてしまうものだということを目の当たりにしています。またこんなにニコニコされているヤンさんですが、心の中にとても熱いマグマがふつふつと燃えているような方です。今回のカンパニーは韓国、日本関係なく一個人として集められて、まずはヤンさんの鍋でぐつぐつ煮えて、それから形づけられていくのだろうと思います。若い座組ですがみんなで楽しさと苦しさを分かちあいながら、最後にみんなで万歳をして終われたらと思います。
 
 キム デジンさん(撮影:宮川舞子)
キム デジン(見知らぬ乗客役 ほか)
今回日本の俳優の方と舞台で初めて共演しますので、昨年のワークショップからとても楽しみにしていました。『ペール・ギュント』に出演するのは今回で4回目です。一度演じたものを再び演じるのは大変なことですが、以前とは違う新しいものをつくりたいというのが役者の心理です。この挑戦には期待感もあり、同時に怖さもありまして、稽古は楽しいのですが、集中力とエネルギーをすごく使います。宿舎に帰るとぐったりです。けれども、このような素晴らしい環境で、素敵な仲間と出会えることはそうそうありません。個人的な抱負は、千秋楽のその日まで、この場にこの仲間と“ここ”に存在していたい。そう強く思っています。
 
 ユン ダギョンさん(撮影:宮川舞子)
ユン ダギョン(緑衣の女役 ほか)
日本は私にとってとても大きな影響を与えてくれた国で、いつか日本の俳優の方々と一緒に仕事がしてみたいと夢見ていました。それが今回叶って、ここにいることがとても幸せです。稽古を通して、言葉が通じなくてもお互い心で感じ合えることはこれほどまでに自分を豊かにしてくれるんだ、私はこれに出会うために芸術活動をしてきたのではないかという思いでいます。言語も、年齢も、性別も、国境も越えて、人生で感じたことや、幸せ、痛みを見せ合い、お互いに感じ合い、涙したり笑ったり踊ったりしています。今まで生きてきて、これほど他人の話に耳を傾けたことがあったろうか。今までこれほど、胸の内を人に伝えたことがあったろうかと思うほど、稽古場の一瞬一瞬が魔法にかけられているようです。今のままの自分でいい、今のままの自分でもみんなと一緒にいられる、そういうなぐさめと、お互いの人生に対する祝福、そういうことを分かち合える作品になることを心より願っています。
 
『ペール・ギュント』制作発表会 マルシアさん(撮影:宮川舞子)
マルシア(ペールの母オーセ役 ほか)
国境を越え、言葉を超え、すべてを超えた舞台がすでに始まっています。稽古では、魂から生きる、子どもになる、あらゆる自分に化ける、自分の中にある自分をさらけ出すという作業を繰り返し、毎日筋肉痛で、自分が生きていることを実感しています。ペール・ギュントは「旅」をしますが、私自身も毎日「旅」をして、自分と戦って生きていますし、みなさんもそうだと思いますので、共感して観ていただけると嬉しいです。きっと皆さんの想像を超える舞台になると思います。素晴らしい旅を、ぜひとも、遊園地に行った気分でご覧ください。ありがとう、カムサハムニダ、ムイトオブリガーダ、サンキュー、愛してる!

『ペール・ギュント』制作発表会フォトセッション_パターン1_S

〈公演情報〉
日韓文化交流企画『ペール・ギュント』
世田谷パブリックシアター+兵庫県立芸術文化センター
世田谷パブリックシアター開場 20 周年記念公演
『ペール・ギュント』
原作◇ヘンリック・イプセン
上演台本・演出◇ヤン ジョンウン
出演◇浦井健治/趣里 万里紗 莉奈 梅村綾子 辻田 暁  岡崎さつき/浅野雅博 石橋徹郎 碓井将大 古河耕史 いわいのふ健 今津雅晴 チョウ ヨンホ/キム デジン イ ファジョン キム ボムジン ソ ドンオ/ユン ダギョン マルシア
演奏◇国広和毅  関根真理
●12/8〜24◎世田谷パブリックシアター
  12/6プレビュー公演
〈料金〉一般S席(1・2階)8,800円 A席(3階)5,400円/プレビュー公演一般S席(1・2階)7,300円 A席(3階)4,400円/高校生以下・U24 は一般料金の半額、ほか各種割引あり(全席指定・税込)
〈一般発売開始〉2017年9月24日(日) 10:00〜
〈お問い合わせ〉世田谷パブリックシアターチケットセンター  03-5432-1515
●12/30〜30◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール



【撮影/宮川舞子 資料提供/世田谷パブリックシアター】




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河鹹照の初演出で名作オペラ『トスカ』を上演!稽古場レポート&囲みインタビュー

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新潟、東京、金沢、魚津、沖縄5都市による全国共同制作プロジェクトとして、10月15日のりゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館を皮切りに、12月7日の沖縄コンベンションセンターまで、プッチーニの歌劇『トスカ』が、映画監督・河鹹照の演出による《新演出》作品として上演される。

全国共同制作プロジェクトとは、日本のオペラの振興を目的とした平成21年度から開始されたプロジェクト。近年では野田秀樹演出でモーツァルト『フィガロの結婚』(平成27年度/全国10都市 計13公演)、笈田ヨシ演出でプッチーニ『蝶々夫人』(平成28年度/全国4都市 計5公演)等を開催し、好評を博している。
 
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今回の大きな話題は、映画監督の河鹹照が演出を手がけることで、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞し、最新作『光』も、第70回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されるなど、その才能を高く評価される河鶸篤弔、初めてオペラと取り組み、どのような『トスカ』を作り上げるのか、大きな期待が寄せられている。
さらに注目は、映像と舞台美術の融合で、河鵑龍い希望で舞台美術をデザインするのは、ニューヨーク在住の気鋭の建築家・重松象平。河麥┐い訐こ最高峰の映像スタッフと、世界をまたにかけて活躍する建築家とのコラボは、この作品に新たな息吹を吹き込むことだろう。

また歌手陣は、ヨーロッパ最高峰の歌劇場で活躍する名歌手、ルイザ・アルブレヒトヴァ(ソプラノ)とアレクサンドル・バディア(テノール)を招聘するとともに、三戸大久(バリトン)や森雅史(バス)三浦克次(バス・バリトン)など世界水準の歌手陣が競演する。
指揮は、新潟・魚津・沖縄を大勝秀也、東京・金沢は広上淳一がつとめる。

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原作の舞台は、ナポレオン時代(1800年代)のローマ。恋人同士の画家カヴァラドッシと歌姫トスカ。そこへ警視総監のスカルピアに追われた友人アンジェロッティが逃げ込み、彼をかばったことによりカヴァラドッシは処刑され、最後にはトスカも身を投げてしまう。
河鹹照による新演出『トスカ』の舞台は、古代日本の雰囲気が漂う「牢魔」という名のとある集落。そこで起きるスリルに満ちた陰謀、壮絶な愛と死を、「祝祭の1日に起きた悲劇」として描き出し、その悲劇性の中から一筋の光を見出し、死と生をテーマに未来へ向けた希望を描き出す。
役名もトス香〈トスカ〉、須賀ルピオ〈スカルピア〉、カバラ導師・万里生〈マリオ・カヴァラドッシ〉、アンジェロッ太〈アンジェロッティ〉、堂森〈堂守〉、スポレッ太〈スポレッタ〉というかたちで日本名に変えて、まったく新しい『トスカ』像を作り出す公演となる。その開幕を間近に控えた稽古場で、場面の一部をプレス用に公開、また囲み取材が行われた。

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【稽古場レポート】
どこかリラックスした趣の稽古場で、トス香〈トスカ〉のルイザ・アルブレヒトヴァと須賀ルピオ〈スカルピア〉の三戸大久に、河鹹照が丁寧に演出をつけている。時折り凛とした表情も見せる河鵑らは、今作にかける並々ならぬ決意が読み取れる。演出プランはすでに整っているようだ。
場面は食卓を囲んでいるシーン。三戸が演じる須賀ルピオが、トス香をどのように誘惑していくかについて河鵑汎念に話している。河鵑六宛佑留薺擦鮓ながら、トス香にどのように接していくのが良いのか詳細にアドバイスする。

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トス香役のルイザ・アルブレヒトヴァも、通訳を通しながらも真剣に聞いている。彼ら3人のやり取りから新しい『トスカ』を作り出すための情熱がうかがわれる。新しいものを貪欲に吸収しようとする三戸の真摯な表情と、それを受け止め、トス香の演技を膨らませようとする熱心なルイザ。オペラ通ならずともその名を知っている名作オペラ『トスカ』に、どのような新しい光を差し込ませるか、河鵑稜い想いや、燃え盛る情熱が胸に刺さってくるような稽古風景だ。

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いよいよその場面が始まる。トス香の運命を握っている須賀ルピオの三戸の迫力あるバリトンの歌声は圧倒的で、聴く者を引き込んでいく。
ルイザもそこでトス香の有名なアリアを披露するのだが、その深い悲劇性に満ちたソプラノは絶望を感じさせ、涙を誘う。

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最後に倒れた須賀ルピオに燭台を置き、彼の体の上に赤い羽をゆっくりと置くトス香。愛のために生きようとするトス香の激しくも美しい生き方が、河瀬監督の美意識あふれる演出によって、より鮮明に伝わってくる。

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この日は1場面だけだったが、作品の全体像が観られる開幕への期待がさらに高まる稽古風景だった。

【囲みインタビュー】
 
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プッチーニの歌劇『トスカ』の稽古場見学の後に、囲み取材が行われ、河鹹照、広上淳一、大勝秀也、ルイザ・アルブレヒトヴァ、アレクサンドル・バディア、三戸大久、森雅史、三浦克次、与儀巧らが登壇した。
 
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河鹹照(演出)
オペラは、すでに脚本があり、セリフも変えることができず、音楽も劇伴のように後からつけるわけではないので、映画とはまったく違います。そこから、どれほどオリジナリティを出せるのか考えています。『トスカ』というと誰しも知っているストーリーですし、結末もみなさんわかっているのですが、お客様に新しい風を吹き込むことができたらと思っています。『トスカ』を読んで、カヴァラドッシは女たらしだと思っていましたが、演じるアレクサンドルさんも女たらし度が高いんです(笑)。ルイザのトス香は敬虔なクリスチャンというピュアな役で、2人の絡み合う関係性が全面に浮き出たらいいですね。私が先ほどまで稽古場で演出をつけていた須賀ルピオの三戸大久さんは、とても優しい人なのに怖い人を演じなくてはいけない。そのバランスをどう作っていくか考えています。というのも、私は、原作のスカルピアをかっこいいじゃないかと思ってしまったんです。これは『トスカ』を知っている人にはびっくりする感覚かもしれないですね。スカルピアの愛情や独裁的な色彩がつよい性格は、男性の本質的なものじゃないですか。そういったことを色々考えながらとても楽しく稽古をしています。

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広上淳一(指揮/東京・金沢)
一番嬉しいことは、畑の違う監督が新鮮な感覚で僕らにいろんなアイデアを提供してくれることです。それはみなさんの想像したことのないような形になって進行しています。大勝先生とは、34年ぶりに再会し、一年先輩だったので威張っていたんです。ですが、34年間に各国のシアターで国際的なオペラの修行を積んできた成果が現れて、僕は先輩として頭が上がらなくなってきました(笑)。英語やドイツ語やイタリア語も自由自在に操りながら稽古場を勇敢に大胆に仕切っている姿は、全く別人ですね。彼がタクトを振るう新潟と魚津と沖縄もぜひ来て下さい。東京だけでは、河鵑気鵑療舛┐燭い海箸、100%伝わらないかもしれませんよ。ゲストのルイザさんとアレクサンドルさんは素晴らしい歌手ですが、性格も素敵な方達なので現場で助かっています。僕たちの意図を上手に理解されて、歌の実力もさることながら、我々の現場の中に偏見もなく溶け込んでいただけています。三戸大久さんをはじめ、ここにいらっしゃる歌手たちは、これから10年後の日本のオペラ界を背負って立つ人たちです。全力で舞台に取り組んでいるので、その姿もぜひ楽しみにしていただきたいと思います。明るい稽古場なので成功すること間違いなしですね。

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大勝秀也(指揮/新潟・魚津・沖縄)
今回のプロダクションに関していえば、河鵑気鵑涼經稘世録形です。僕たちは楽譜を読んで、歌い手と一緒に作り上げていくのですが、河鵑気鵑魯疋薀泙卜れる音楽から裏側に隠された真実を見ようとされる。僕らは30年以上やっていると『トスカ』に対する先入観があって、ルーティーンになっていた部分もありました。そこに新しい風が吹いているのを全員が感じています。奇をてらっているというわけではなく、テキストから誰もが持っているエゴや欲望を本当によく表現されていて、今の世の中だったら、こんなことあるよねと納得してくださると思います。オペラは普遍性を感じさせる芸術ですし、それを捉えて離さず再現することが河鵑気鵑療刑妖なところですね。僕たちマエストロは、歌手たちとプッチーニとをつなげる役割をしながら、舞台からお客さんへの橋渡しが仕事ですからそこに集中できますね。ゲストは、こんなにいい人はいない、こんなにいい声の人はいない人たちです。若い歌手たちも勉強になっていますが、演技もとてもナチュラルです。歌も演技も日本にはないパッションが出ているんですね。若い人たちも刺激になっているだろうと思いますし、その影響を受けて音楽もパッショナリズムになってケミストリーが生まれている現場だと思います。

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ルイザ・アルブレヒトヴァ(トス香)
私にとって大切なのは、一面的ではない何層にも積み重なったような役を、いかに、希望や絶望、嫉妬や笑いで、みなさんを納得させる説得力の持てる演技と歌にするかです。できれば、最後に涙を誘うことができれば嬉しいですね。例えば、この作品は、殺人や自殺と行ったネガティブなことがクローズアップされますが、それだけではなく、人々の人生は常に続くんだという生きることの喜びに誘っていけるように、太陽が毎日登るように希望を感じてもらえたら。そのために私は演じるのではなく、歌うのではなく、役そのものを生きたいと思っています。

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アレクサンドル・バディア(カバラ導師・万里生)
日本に来ることが決まった時に、仕事仲間や友人に、日本に来て仕事をすることはセラピーを受ける感じだよねと話しました。とてもリラックスしています。英語があまり得意ではないので、オペラについて書かれた素敵な文章を少し読みます。これは愛、名誉、そして殺人の物語。そして悲しいけれど感動せずにはいられない恋愛の物語、それも、トスカとカヴァラドッシの恋の物語。同時に、アンジェロッティとの友情の物語でもある。それがスカルピアによって犠牲になってしまう。そして美しきトスカが悪魔の生まれ変わりを殺すわけです。『トスカ』の初演で歌ったのがハリクレア・ダルクレーですが、彼女は当代を代表するソプラノ歌手でした。彼女の出身地は私と同じルーマニアです。そして生まれた場所はブレイラ、つまりの私の妻が生まれた所でもあります。今回のお仕事で、素敵な方達とご一緒させていただけることを心から嬉しく感謝しております。忘れてはならないは河鵑気鵑如∋笋燭舛録靴靴だこΔ鮓せていただいています。これは一つのチャレンジですね。彼女の見せてくれる美的世界の地平線の向こうに見える新たな世界を楽しんでいただきたいと思います。

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三戸大久(須賀ルピオ)
スカルピアは初役ですが、バリトンの人は絶対やりたいという役を41歳にしてやらせていただき幸せです。僕らがいつも考えているスカルピア像を最初の立ち稽古で河鵑気鵑呂屬漸したんですね。僕らがステレオタイプに思っていたスカルピアを全く違うところからアプローチしていただいて、戸惑いながらも全力で演じ切りたいです。歌は、大勝先生、広上先生の音楽に助けていただいて切磋琢磨して歌わせていただいています。ゲストもお世辞抜きでいいやつなので現場も楽しいですね。同じ世代の森くんと話し合ったり、先輩の三浦さんからご指導いただいているのもいい経験です。ひとすじの希望の光をどのように見せられるか、探っていきたいと思います。ぜひいらしていただければと思います。

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森雅史(アンジェロッ太)
オペラの幕開きに最初にお話しをさせていただく役ですが、一幕でいなくなってしまう。けれど、河鵑気鵑蓮∪犬房甲紊靴織▲鵐献Д蹈誕世鮑遒辰討い蕕辰靴磴辰拭深い人間味を出せるのか、三浦さんやアレクサンドルにアドバイスをもらいながら演じていきたいです。とても刺激的で観たことのない『トスカ』になると思います。故郷の富山でも歌わせていただくので、『トスカ』の導入はもちろんですが、オペラという芸術でみなさんを感動させられるような公演に携われて幸せです。

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三浦克次(堂森)
スカルピアとアンジェロッティは演じたことがあるのですが、堂守の役は初めてです。大変な役所で、この役をやることになって音楽的にも演劇的にもとても苦労しています(笑)。みんな死んでしまう悲劇的なオペラの中で、一筋の光のように、少しホッとできる役ですから。スカルピアはスカルピアで、その時に一番いいと思ったことをやった結果が悲劇につながって、いい人、悪い人、面白い人、面白くない人の区別はないとお客様がトータルで感じていただければと稽古に励んでいます。『トスカ』を含め、オペラは30年以上も演じていますが、先入観で頭が固くなっているところを、毎日の稽古で河鵑気鵑縫汽献Д好船腑鵑鬚い燭世と、『トスカ』に対する固定観念が壊れていくんです。こんな稽古場は初めてです。そして、河鵑気鵑留撚茲離侫.鵑諒がオペラをご覧になられる。オペラのファンの方が河鵑気鵑留撚茲鬚翰になられる。そんな相乗効果が2倍だけではなくて4倍になってくれたら嬉しいですね。さらには、オペラと映画、クロスオーヴァーしてお客様が加わっていただき、どちらの業界の垣根がなくなるきっかけになればいいと思います。

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与儀巧(スポレッ太)
1つのプロダクションに2人の指揮者がいるということにまず驚きました。主役はスーパースターで、世界で活躍されているお2人。本当に勉強できるなと思っています。個人的にはアレクサンドルさんとは2回目で、彼の仕草を盗みたいと思っています。僕の演じる役は、ほとんど触れられることのない小さな役なんです。ですが、河鵑気鵑、一言一言、鋭い質問を投げかけてくるんです。ですので、こんなに重要な役なんだ、こんなに重要な言葉を発しているんだというのを再認識しています。彼のテクニックを盗む前に自分の演技に飲み込まれているぐらいです。早く河鵑気鵑貿柴世靴討い燭世韻覬薺擦鬚靴董彼のテクニックを盗もうと思っています。僕の出身は沖縄なので、沖縄代表として言わせていただくと、北から南まで、風土も気候も違います。マエストロも変わりますし、オーケストラも変わります。それぞれの劇場、それぞれの地域で、まったく違った素晴らしい演奏が見られると思いますので、全国の皆さん、メンソーレ・ウチナーンチュ。

【質疑応答】
──日本のどこかの集落と思われる舞台ですが、その意図はどこにありますでしょうか。また、ほとんどの登場人物が死んでしまう絶望のドラマですが、そこからどのような希望を紡ごうとしますか。
 とある日本の集落ですが、いつの時代かはっきり明記しておらず、いつかのどこかの集落、という設定にしています。そうした方が人間の普遍的な感情を感じてもらえると思ったからです。例えば、日本で、ローマの教会を出せば異国の物語を見ているような感覚になってしまうんですが、少し時代と場所をアバウトにすることで、人間そのものが際立って見えてくるかなというのが最初のアイデアでした。ですから、小道具さんが悩んでいて、これは何時代の何ですかと問われることもあります。私の映画も初期の若い時は、美術部さんに「あの屋根の色は何色にすればいいんですか」と言われて、「私が撮影している場所の半径何キロぐらいのところを見てきてください。その中でよかった色に塗ってください」と言うと、この監督は思想がないと思われたこともありました(笑)。美術や道具にだけリアリティーを持たせるのではなくて、むしろ人間の内面や人間そのものの普遍性を持たせるところから始めようと考えています。このお仕事をいただいたときに、どうして私ですかと聴いた時に、河鵑気鵑覆蕁∪篷召寮茲砲すかに希望を見いだせると感じたので依頼されたそうです。確かに、人間は悪いやつだし、世界もそんなに良くないと思っているので、だからこそ、どの時代も宗教やルールの中で人間は人間を殺しちゃいけない、悪いことしちゃいけないと学んでいくと思うんです。それでも、動物ですから、そこに刃を向けるのは本質で、そこに過剰に反応していくと国家や民族間で争いになっていく。世界の戦争からなくなったことがないとはいえ、芸術で一筋の光を見出すことが、戦争がなくなるきっかけになるのではないかと信じています。今回の『トスカ』でも、須賀ルピオが悪いのではなくて、その時代のその瞬間の人間関係がこの悲劇を産んだと描きたいです。

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──チラシやポスターの『トスカ』の題字を担当されていますね。
 私は自分の作品のタイトルはすべて自分で書いているんです。『トスカ』も新潟の方がデザインをされるということで、私の奈良の事務所に来ていただいて、たくさんのみなさんに囲まれ、打ち合わせをしているところに、題字も書いていただけたらということで、筆ペンを持って書きました。トス香は鷹みたいな女性だと思っていて、激しさの中の情熱を表現しました。
――ご自身で製作された映像はどの程度の比重があるのですか。
 オペラは音楽と歌とそこで体現している役者たちが前に立っていないとダメだと思っています。それを邪魔しないように映画監督として作る映像を取り入れて、舞台をうまく作用させられたらと思っています。ですので、決して映像が前に出ることはないと思います。スクリーンが、出入り口にもなる舞台を作っているので、そこから役者が出たり入ったりします。今はどんな映像になるのかわかってなくて、自分だけがイメージできている状態で、言葉で説明しながら稽古をしています。実際に映像ができて、みなさんが立って動いてやっと初めて新しい何かが生まれてくると思います。
──トスカは、40代をすぎて声が成熟して歌えるという意見もあると思いますが、ルイザさんは、トスカは初役でしょうか。
ルイザ 今回で3回目です。確かに、女性・男性関わらず、レパートリーは幾つになったら歌うのがふさわしいということは昔から言われてきました。歌劇場に属し、じっくりと小さい役から始め、指揮者の方や、ソプラノの方から役をいただいて階段を登っていくのですが、目まぐるしく変わる現代の歌劇場ではステージディレクターからこの役を歌ってくれないかと申し出を受けます。ですから、どんな役もいただけるのであれば嬉しいですね。それから、ソプラノ歌手の過去の偉大な方を見ていると25歳ぐらいで大きな役を歌っているので違和感はありません。そういったチャンスに巡り会えたということを嬉しいと思うとともに、このまま続けていけたら素敵だなと心に秘めながら歌わせていただいています。
 
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──河鵑気鵑音楽にもたらしてくれる新しい視点はありますでしょうか。
大勝 公演をご覧になっていただければわかりますよ(笑)。私たちはプッチーニのスコアはしっかりと再現しているんです。その上で、演出家は演出をどのようにやるのか指揮者は見るのですが、空間の間ということに関しては、音楽をやっている人ではない感性とインスピレーションを感じます。目をつぶって耳をそばだてれば、プッチーニの『トスカ』ですが、河鵑気鵑留藹个靴振間を目の当たりにするとまったく新しい『トスカ』になっている。プッチーニのスコアをリスペクトしてくれていますので、今まで味わったことない音楽になっていますね。
広上 僕らが抱くのとは違う視点を持っていらっしゃいます。気がつかなかったことを発見させてくれる嬉しさがありますね。例えば、スポレッタはあまり台本に書かれていない、ただ動作しか書かれていないのに、河鵑気鵑論┐泙犬だ弧燭鮨瓩込むことがお上手です。さらに、音楽を尊重してくれ、それぞれの歌手の良さを引き出しながら、最終的には、何を伝えたいのだろうというコンセプトや理想があるので、それがお客様に伝わるようにすることが我々の使命ですね。大先輩の武満徹先生は、映画館が唯一の癒しの場だったそうです。1000曲以上の映画音楽を書いていらっしゃいます。若い頃の彼の出す作品は、日本の批評家に叩かれて、泣く場所は夜中の深夜の映画館だったそうです。そして新しい曲を書いて、世界で認められるようになって、感謝の気持ちを込めて映画の曲を書いたという逸話があります。まさに視点の違う才能を受け入れて舞台を作る喜びに僕らは浸っているところなんです。
 
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〈公演情報〉
logo_red_題字:河瀬直美

全国共同制作プロジェクト
プッチーニ 歌劇『トスカ 』《新演出》 
全3幕・イタリア語上演 日本語字幕付
演出◇河鹹照
指揮◇大勝秀也 広上淳一
出演◇トス香〈トスカ〉:ルイザ・アルブレヒトヴァ(ソプラノ)
カバラ導師・万里生〈マリオ・カヴァラドッシ〉:アレクサンドル・バディア(テノール)
須賀ルピオ〈スカルピア〉:三戸大久(バリトン)
アンジェロッ太〈アンジェロッティ〉:森雅史(バス)
堂森〈堂守〉:三浦克次(バス・バリトン)
スポレッ太〈スポレッタ〉:与儀巧(テノール)
シャル郎〈シャルローネ〉:高橋洋介(バリトン)
看守:原田勇雅(バリトン)
ほか
●10/15 14:00◎りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館(新潟県新潟市)
●10/27 18:30◎東京芸術劇場 コンサートホール(東京都豊島区)
●10/29 14:00◎東京芸術劇場 コンサートホール(東京都豊島区)
●11/8  19:00◎金沢歌劇座(石川県金沢市)
●11/12  14:00◎新川文化ホール 大ホール(富山県魚津市)
●12/7   19:00◎沖縄コンベンションセンター(沖縄県宜野湾市)
 

【取材・文・撮影/竹下力】


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