観劇予報

えんぶ4月号

記者発表ルポ

シアターコクーン公演『世界』初日前会見レポートと3公演中止のお知らせ

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渋谷のBunkamuraシアターコクーンで、1月11日に開幕する予定だった舞台『世界』が、出演者の鈴木砂羽にインフルエンザの陽性反応が出たため、初日となる本日11日と12日、13日の3公演を中止することに10日夜決まった。
初日前日の10日は、16時から初日前会見を、その後、公開舞台稽古が行われる予定だったが、公開舞台稽古は中止。会見は、演出で出演者の赤堀雅秋、主演の風間杜夫をはじめ、大倉孝二、早乙女太一、広瀬アリス、青木さやか、和田正人、福田転球、梅沢昌代の9人で行われた。

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赤堀雅秋、和田正人、梅沢昌代、青木さやか、福田転球
広瀬アリス、早乙女太一、風間杜夫、大倉孝二

【あらすじ】
千葉県船橋市、郊外のうら寂れた一角のとある家族を中心とした物語。
足立家の人々。誰彼かまわず噛みつく父・義男(風間杜夫)は工場を経営しているが、実質は息子の健二(大倉孝二)にまかせている。愚痴や噂話を喋り続けるばかりの義男の妻・節子(梅沢昌代)は、ある日突然に離婚を切り出し、家を出る準備を進めている。健二は8年前に妻・美紀(青木さやか)と結婚したが、スナックのママ宏子(鈴木砂羽)と浮気中。
自宅に隣接する工場では、義男が知人の親に頼まれ、預かった引きこもり青年・辺見(早乙女太一)と、工場同様くたびれた風情の従業員の服部(福田転球)が働いている。
彼らが仕事終わりにたむろするのは宏子と夫・坂崎(赤堀雅秋)が営むスナックである。
一方、美紀のパート先であるスーパーの店員・諸星(和田正人)は、風俗嬢のあずみ(広瀬アリス)に片思いをしている。
親子の確執、夫婦の問題、浮気、離婚、嘘など様々な波紋が広がっていく中、逃れられない小さな人間関係の機微、生々しい日常は、細い糸で結び合い絡まって……。


映画『葛城事件』の監督としても注目されている赤堀雅秋が、『殺風景』『大逆走』に続いてシアターコクーンで取り組む第3弾で、地方都市で町工場を営む家族を軸に、多彩なキャストとともに描きす"世界"のはじっこ。人生は喜劇である。

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【会見】
──まず赤堀さんに伺います。今回、ご自分の原点に戻って市井の人々を描くということですが、現時点の手応えを。
赤堀 作者からあまり手応えがあるというのもあれですが、面白いか面白くないかは、観た方に委ねるとして、作者にとってはとても愛おしい作品になったという予感はしています。見どころはいっぱいありますが、こういうコクーンのような商業演劇の大きな劇場で、今までありそうでなかったような作品というか、一見なんでもないような日常の積み重ねなんですけど、それで観終わったあとに観客の皆様に、今まで味わったことのないような感情が湧き起こるような、そういう作品になればいいなと思っています。あと、魅力はこのキャストの皆さんで、作品同様、見たことがあるようでない風間さんだったり大倉さんだったり、早乙女さんはまったく見たことないような、そういう役者さんを目撃していただければと思っています。

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──風間さんは今回、赤堀作品に初参加ですが、その感想と、また演じる義男という役が「ゲスの極み」と言われていますが。
風間 (笑)赤堀さんのコクーンでの2作品は残念ながら拝見できていないので、まったく白紙の状態で挑みました。市井の人々というか、日常を生きている庶民の姿が実に丁寧にデッサンされていまして、出てくる人みんな、良い人は出てきません。腹に一物というかクセのある人物たちですが、自分の生活を見回してみても、近しいというかリアルなお芝居です。僕はこの作品、とっても大好きで、早く皆さんに観ていただきたいという気持ちでいっぱいです。役どころは「ゲスの極み」といわれてますが(笑)、ダメ男です。奥さんの梅沢昌代さんが僕と離婚したいというので、そこから僕はバランスを崩してます。自分を大きく見せようとする人間で、やたらうんちくを言ったり、訳知り顔で人と接したり、よくいる人間で、小さい見栄っ張りな人間です。そんなジジイが万引きをしてしまいまして、それをきっかけに、この男もダメだというのがわかるという、そういうお芝居です。
──大倉さんはそんな風間さんの息子役ですが、過去の赤堀さんの2作品にも出演していますね。
大倉 僕の役は過去の2作品では、持ち味というかはっちゃけた役だったんですけど、今回はそれをすべて封じ込められて、なんでもない人間を生きれるよう稽古で作ってきました。本番が始まったらひたすら稽古で積み上げたものを誠実にやっていこうと思っています。(新しい大倉さんが観られる?)そうですね、そうであってほしいです。

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──早乙女さんは引きこもり青年で町工場で働くことになった青年役です。こういう日常劇は初めてではないかと。また辺見という役は言葉遣いなどもダメで、今の青年の象徴だそうですが。
早乙女 こういう役をやらせていただくのは初めてで、学生から社会を知らずに働きに出て、学校のノリのままで仕事場に来ているような、中身もない一番自分が毛嫌いしていたような人間を自分がやるというので、それは楽しかったです。でも、言葉遣いが自然にしゃべれなくて、そこをなんとかナチュラルにしゃべれるようにがんばりました。赤堀さんとの作品作りは、これまでやってきた舞台と全然違っていて、普段のような白塗りもできないし(笑)、刀も持ってないので、裸のままの自分を見せているような感覚です。稽古場でも毎日、すごく繊細なお芝居なので、緊張感しながらやってました。
──広瀬アリスさんは初舞台ということですが、デリヘル嬢の役です。
広瀬 以前、稽古に入る少し前なんですが、赤堀さんにお会いして、他愛もない世間話をしたんです。20分〜30分したら「もう、大丈夫です」とおっしゃって。その時に私の中の何かを見て人物像を描くのかなと勝手に思っていたのですが、それがデリヘル嬢だったので、なんか「うーん」という気持ちになりました(笑)。初舞台なので、わからないことだらけで、正面からぶつかっていこうという気持ちで毎日やってきました。(手応えは)まだ、緊張の方が勝ってしまっているので、まだ毎回、舞台に立つと手が震えてしまいますね。頑張ります。 

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──大倉さんの健二の妻、美紀役の青木さやかさんは、赤堀作品にファンだったそうですね。
青木 私は赤堀さんの作品が大好きで、映画の『葛城事件』など何回も見ているんです。赤堀さんの演出を受けられること、風間さんはじめ皆さんと一緒にお稽古場に居られることも、なんて幸せだろうと思っております。他の方々のお稽古を見ていると、本当に可笑しくて、なんか自分の中に蓋をしていた感情がばーっと出てくるような気がしていて、それが「生きててよかったな」と感じるような瞬間があって、友だちにも「絶対観にきてね」と言ってます。舞台を観るというのは、そういう気持ちになれる瞬間がいいので、ぜひ皆さまに見に来ていただきたいと思っています。美紀という役は、とても不器用な私には難しいなと思いながらやってます。でも、稽古場で見ているときに出てきた感情が、やってても出てくるときがあって、そういうなるといいなあと思っています。
──デリヘル嬢あずみの常連客で、俳優を目指しながらスーパーに勤めている諸星役の和田正人さん。オファーのとき、赤堀作品は出演するのが怖かったと言っていたそうですが。
和田 言ってましたか?(笑)たぶん生きてる限り役者としての仕事を続けていけたらと思っているのですが、壁にぶつかったり途中で挫折したり色々あると思うんです。それを乗り越えていくためにも1回壊したいなと。壊されて壊されて何かが生まれてくると、そう思ったときに、赤堀さんとご一緒させていただくことに期待感があって、怖かったんだと思います。実際、稽古では「死んだほうがラクになるんじゃないか」と思ったことが何度かありました。昔、陸上やってたときでもそう思ったことはなかったんですが。でも無事に本番を迎えられてよかったんです。

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──町工場に勤める服部役は福田転球さん、第一弾『殺風景』には出演されていましたが、今回はいかがですか?
福田 『殺風景』はかなりハードな作品で、かなり非日常的な作品でしたが、今回は、それこそ日常的で、でも少し非日常的です。皆さん、「こんなことあるな」「私もこんなことあるわ」という作品になってるんじゃないかと思っております。ダメな人が非常に多い作品なので、「そんなとこ行ったらあかんやないか」とか「なぜそこに行ってるんや」とか、いっぱい突っ込めるところがあるという感じで、すごく楽しめると思います。
──風間さんの義男の妻、節子役の梅沢昌代さん。夫婦役は2回目だそうですが。
梅沢 私の父も同じヨシオで、大正生まれで、味噌汁がちょっとしょっぱいとお膳をひっくり返しているような人だったので、全然違和感はないのですが(笑)。昔の女の方はそれを我慢していたのですが、今の女の人は違いますからね。あとの20年は自由に生きたいという役なので、観ている女性の方々は「うんうん」と頷いてくださると思います。私は稽古場が大好きで、赤堀さんと共演はしたことがあるのですが、演出は初めてでしたから、出番がなくてもずっと稽古場にいて観ていました。しごかれている方が(笑)変わっていくのを見ながら、すごく素敵な現場で、大事な時間をいただきました。

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〈公演情報〉
シアターコクーン・オンレパートリー2017
『世界』
作・演出・出演◇赤堀雅秋
出演◇風間杜夫、大倉孝二、早乙女太一、広瀬アリス、青木さやか、和田正人、福田転球、梅沢昌代、鈴木砂羽
●1/11〜28◎Bunkamuraシアターコクーン
〈料金〉 S席10,000円 A席8,000円 コクーンシート5,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉Bunkamuraチケットセンター 03-3477-9999
●2/4、5◎森ノ宮ピロティホール
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00〜18:00) 


【1月11日、12日、13日休演のお知らせとチケット払い戻し方法】





【取材・文・撮影/榊原和子】

 


えんぶ3号発売!えんぶチャート投票ハガキついてます。




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尾上松也、坂東巳之助らで賑やかに初日鏡開き!「新春浅草歌舞伎」

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若手俳優の登竜門として、勢いのある若手たちがそれぞれ大役に全力で挑戦、歌舞伎名作を華やかに上演する「新春浅草歌舞伎」。今年の第一部(11時〜)は、年始挨拶の「お年玉」にはじまり、夫婦の情愛を描く『傾城反魂香』と「義経千本桜」から舞踊劇『吉野山』が上演される。また第二部(15時〜)も「お年玉」にはじまり、「双蝶々曲輪日記」から『角力場』、白井権八と幡随院長兵衛の『御存鈴ヶ森』、そして最後は滑稽な舞踊の『棒しばり』と、一部二部とも歌舞伎の面白さをいっぱいに詰め込んだ公演となっている。

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その初日を祝う鏡開きが1月2日の朝、会場の浅草公会堂前で行われ、服部征夫台東区長、松竹の我孫子正副社長、出演者の尾上松也、坂東巳之助、中村壱太郎、中村隼人、中村梅丸、そして中村錦之助が登場した。

【出演者挨拶】
 
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尾上松也
皆さんあけましておめでとうございます。朝早くからお集まりいただきありがとうございます。私はこの「新春浅草歌舞伎」に出演させていただき、3年目を迎えまして、より向上していければと思っております。今年は、例年と比べますとちょっと少ない人数になりますが、このメンバーならではの団結でつとめられればと思っています。このお正月は、二座で襲名興行が行われ、おめでたい空気に包まれております。私たちもそのめでたさに乗りまして、この浅草の町で華やかにつとめたいと思っております。私は昼の部は『吉野山』、夜の部では『角力場』、そして『棒しばり』を演じさせていただきます。どの演目も非常に楽しい演目でございますので、毎日毎日精進の気持ちを忘れずに頑張りたいと思っております。また区長のお話にもありましたように、浅草芸能大賞の新人賞を頂戴いたしましたので、その賞にも恥じないようにつとめていきたいと思いますので、皆様1ヵ月間、ご声援のほどよろしくお願いいたします。

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坂東巳之助
皆さんあけましておめでとうございます。坂東巳之助でございます。3年目を迎えることができました。個人的なお話になりますが、浅草という町は、毎年年末に坂東流の「歳末チャリティー舞踊会」を行わせていただき、年越しは浅草寺の鐘つきに参加させていただいておりますので、3年前、「新春浅草歌舞伎」を松也さんをはじめとした我々の世代でを上演することになったとき、本当に嬉しく思いました。そして3年目、こうしてここから1年を始めることができるのも、本当に応援してくださる沢山の皆様のおかげだと思っております。ありがとうございます。今年もその喜びと、この浅草という町の活気を取り込んで、2017年、最高のスタートを切れるように頑張ってまいりますので、応援なにとぞよろしくお願いいたします、
 
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中村壱太郎
皆様、あけましておめでとうございます。 中村壱太郎でございます。3年ぶりに浅草の地に戻ってくることができました。本当に嬉しく思っております。またこの地で、浅草公会堂で歌舞伎ができるという喜びに、今、満ちあふれております。残念ながら私は第1部だけの出演でございます。(全員から「えー?」という突っ込み)2部も出ましょうか?乞うご期待です(笑)。とりあえずお年玉には出させていただきますのでぜひ(笑)。歌舞伎は初日から千穐楽まで舞台が変わっていきますので、一度二度といわず、三度四度五度と観ていただければと思います。私は女方をつとめさせていただきますが、女方として舞台を支え、盛り上げていけますよう頑張っていきますので、どうぞ千穐楽までよろしくお願いいたします。ありがとうございました!

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 中村隼人
あけましておめでとうございます。 中村隼人でございます。私も3年連続、この舞台に立たせていただくのですが、今年は昼の部1役、夜の部3役と合計4役もつとめさせていただきます。いつもは僕が一番年下というお話をさせていただいてましたが、今年は、見てください、僕よりもフレッシュな梅丸くんがいますので!(笑)といってももともと彼は沢山出演しているのですが。一番年下ではないので、気持ちをしっかり引き締めて臨みたいです。また、新年からこれだけ大きなお役を4役もやらせていただくというのは、本当にありがたいことですので、丁寧に、役に命を吹き込んでいきたいと思います。皆様、ご観劇のほどよろしくお願いいたします。

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中村梅丸
皆様、新年あけましておめでとうございます。 中村梅丸でございます。5年連続でこの「新春浅草歌舞伎」に出演ということで、今年もこの浅草の地でお正月を迎えられることを、とても嬉しく思っています。この「新春浅草歌舞伎」は、僕たちが大役に挑ませていただくのですが、今、ご覧いただけますように、浅草の各お店から僕たちの幟を出していただいたりと、地域密着型のお芝居として浅草の方々が盛り上げてくださる温かい公演です。今、隼人さんが言ってくださいましたように一番年下で、相変わらずの弟ポジションではございますが(笑)、お兄さんたちの熱意に負けないように、千穐楽まで一生懸命つとめたいと思いますので、どうか応援のほどよろしくお願いいたします。
 
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中村錦之助
皆様、あけましておめでとうございます。 若手の中村錦之助です(笑)。でも、この座組の中では私は中間くらいで、まだまだ若手でございます。また今年は、第二部だけの出演ですので、まだ切符をお求めでない方、すでにお求めの方も、ぜひ二度三度とご見物くださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
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その後、全員で「ヨイショ」の掛け声も賑やかに酒樽が開かれ、行列した観客に升酒が振る舞われた。

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〈公演情報〉
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「新春浅草歌舞伎」
第1部 
 お年玉〈年始ご挨拶〉
 一、近松門左衛門 作
 傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
 土佐将監閑居の場
 二、義経千本桜
 吉野山(よしのやま)

第2部
 お年玉〈年始ご挨拶〉
 一、双蝶々曲輪日記
 角力場(すもうば)
 二、四世鶴屋南北 作
 御存 鈴ヶ森(ごぞんじすずがもり)
 三、岡村柿紅 作
 一、近松門左衛門 作棒しばり(ぼうしばり)

●1/2〜26◎浅草公会堂
出演◇尾上松也、坂東巳之助、中村壱太郎、中村隼人、中村梅丸/中村錦之助
〈料金〉1等席9,000円 2等席6,000円 3等席3,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489

【取材・文・撮影◇榊原和子】







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レプロエンタテインメントの新プロジェクト「浅草九劇」とは何か?製作発表と現場レポート

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青山円形劇場やパルコ劇場などが、近年、次々とその姿を消している。演劇ファンにとって「聖地」のような存在だった場所がなくなっていく寂寥感を打ち消すかのように、新たな劇場が浅草に誕生する。その名も、「浅草九劇」。
 
芸能プロダクションのレプロエンタテインメントが、創立25周年プロジェクトの一環として立ち上げた。2017年3月3日、浅草九劇はベッド&メイキングスによるこけら落とし第一弾公演『あたらしいエクスプロージョン』でオープンする。

【こけら落とし公演】 
 
劇作家・演出家の福原充則と俳優の富岡晃一郎が立ち上げた「ベッド&メイキングス」、『墓場、女子高生』などの話題作を上演する彼らの新作に川島海荷が出演。こけら落とし公演は続き、マイムを駆使した身体表現で人気を集める小野寺修二の「カンパニーデラシネラ」、内田理央が女子プロレスの世界に挑む予定の「劇団子供鉅人」の新作、劇作家・演出家の田村孝裕と客演する羽田美智子によって幕を開ける「ONEOR8」の新作と注目作品がズラリと並ぶ。

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小野寺修二、富岡晃一郎、福原充則、川島海荷、羽田美智子、田村孝裕、内田理央、益山貴司

福原充則(ベッド&メイキングス)
こけら落とし公演第一弾の責任を感じていました。作品は邦画界初のキスシーンをモチーフとしたもの。でも新しい場所が生まれることで期待することのほうが多いです。

小野寺修二(カンパニーデラシネラ)
参加させていただきうれしく思っています。不穏な空気も漂うエンタテインメントの街・浅草。海外からのお客様も多い街ですから、そんな方々にも楽しんでいただける作品にしたい。

田村孝裕(ONEOR8)
僕らは最後のこけら落としなので、まだ作品の内容は具体的に決まっていません。これから生まれていく劇場空間にふさわしい芝居を、羽田さんと一緒につくっていきたいです。
 
益山貴司(劇団子供鉅人)
大阪から東京に拠点を移した我々子供鉅人にとって『こけら落とし』は最高の獲物ですね。新しい劇場をどんどん汚すくらいの気持ちで、汗をかき前に出る芝居で仕留めに行きます!

さらに、レプロエンタテインメント所属の若手女性タレント「ローファーズハイ!!」の公演が、浅草九劇にて定期的に行われることも発表された。構成・演出は子供鉅人の益山貴司が担当する 。

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ローファーズハイ!!

【浅草九倶楽部と浅草九劇】

浅草九劇は、劇場とホテルと飲食店の複合施設「浅草九倶楽部(アサクサココノクラブ)」の2階にオープンする。演じる人、創る人、観る人。暮らす人、通過する人、留まる人等、三者三様九重の個性が出会い生まれるエンタテインメントを浅草から発信するという試み。劇場、飲食、ホテル機能がひとつとなることで、才能と人々の出会いをつなぐ新たな磁場が生まれるはずだ。

外観イメージ
「浅草九倶楽部」外観イメージ

編集部は建設中の浅草九劇を見学する機会を得た。浅草の繁華街のど真ん中、近隣にはインバウンド向けの宿泊施設があり、地元民から外国人観光客までが集うカフェなども多数。かつて民宿だった場所に「浅草九倶楽部」が立ち上がるというのも、何か運命めいたものを感じてしまう……。

建設中劇場
建設中の劇場「浅草九劇」(11月末現在)

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【銀座九劇アカデミア】 

劇場という場所が作品や観客を育てる場所だとしたら、たとえば稽古場が、パフォーマーを育てる場所と言えるかもしれない。
浅草九劇とともに人材育成の場としてオープンするのが「銀座九劇アカデミア」。銀座一丁目にあるその建物は、かつて歌舞練場にも使われていた。1929年に建てられたという石造りの建築物の一部をリノベーション。2階と中3階部分がスタジオに生まれ変わった。
コンセプトは「“プロフェッショナルの、プロフェッショナルによる、プロフェッショナルのための”学習プログラムを提供する場所」。
この学び舎で扱うのは舞台のみならず、映像や音楽、ファッション、広告や出版業界と守備範囲が広い。前出の福原充則や富岡晃一郎、益山貴司らも講師陣として名を連ねる。ワークショップや銀座九劇アカデミアの施設を使った創作物の発表も今後展開されるという。

銀座九劇アカデミア
「銀座九劇アカデミア」

渥美清やコント55号、ビートたけしを生み出したエンタテインメントの聖地・浅草で展開される刺激的な試み。世界有数の大都市で、歌舞伎から画廊まであらゆるカルチャーを取り込んだ銀座での実験。伝統の場に新たな血が混ざり合うことで、これからどんな化学反応が起きるのだろうか。

〈公演情報〉
ベッド&メイキングス第5回公演『あたらしいエクスプロージョン』
作・演出◇福原充則
出演◇八嶋智人、川島海荷、町田マリー、大鶴佐助、富岡晃一郎、山本亨
●2017/3/3〜21◎浅草九劇
〈料金〉前売¥5,000 当日¥5.200 学生割引¥3,500 高校生以下¥1,000(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00) 

カンパニーデラシネラ『白い劇場シリーズ 小品集』
演出◇小野寺修二
出演◇王下貴司、大庭裕介、斉藤悠、遠山悠介、野坂弘、崎山莉奈、辻田暁、仁科幸、増井友紀子
●2017/3/24〜31◎浅草九劇
〈料金〉プレビュー公演(3/24)¥3,000 前売¥3,500 当日¥4,000 小中高校生¥2,000 
(全席自由・日時指定・税込)
※浅草九劇最速先行早割:¥3,000(受付期間:2/3〜23、各回枚数限定)
プレビュー公演チケット、小中高校生チケットはデラシネラHPのみ取り扱い
一般発売:2017年2月24日(金)〜
〈お問い合わせ〉カンパニーデラシネラ 080-4434-1814 derashinera@gmail.com
 
劇団子供鉅人 「新作公演(仮)」
作・演出家◇益山貴司
出演◇内田里央 ほか
●2017/11/1〜30◎浅草九劇

ONEOR8「新作公演(仮)」
作・演出家◇田村孝裕
出演◇羽田美智子 ほか
●2017/12/1〜31◎浅草九劇

〈浅草九劇 公演HP〉
https://asakusa-kokono.com/list/
〈浅草九倶楽部//浅草九劇HP〉 https://asakusa-kokono.com/
〈銀座九劇アカデミアHP〉https://asakusa-kokono.com/academia/



【取材・文・撮影/田中大介】





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博多座3月公演『熱血!ブラバン少女。』記者取材会レポート

作・演出:G2 博多華丸 吹奏楽部:櫻内教昭顧問

吹奏楽に取り組む教師と生徒たちの姿が、笑いと感動の物語になった舞台『熱血!ブラバン少女。』。全国トップレベルの実力を誇る福岡の精華女子高等学校吹奏楽部の大ヒットCDをモチーフに、博多座オリジナルの脚本で舞台化した作品で、博多華丸演じる熱血コーチのもとで、全国大会を目指す女子高校吹奏楽部の姿が活き活きと描かれる舞台だ。

12月5日、その記者取材会が精華女子高等学校(福岡)にて行われ、主演を務める博多華丸、作・演出を手掛けるG2が登壇した。また、同公演に出演する斉藤優(パラシュート部隊)が司会を務め、特別レポーターとしてHKT48の上野遥も参加し、地元出身のキャストたちが会見を盛り上げた。

【あらすじ】
十二年前、武勝為成(博多華丸)が顧問を勤めていた西北学園吹奏楽部は、コンクールの全国大会に出場するほどの名門校だった。しかし、とある理由で武勝は学園を去ってしまう。以来、吹奏楽部も鳴かず飛ばずの状態に。
吹奏楽部のOGで、今は学園の臨時職員を勤める生島聡美(星野真里)は武勝に吹奏楽部のコーチとして戻ってきてほしいと懇願する。武勝は学園を去ってからというもの、音楽からは遠のいていた。だが、思いがけない出会いが重なり、武勝は再び学園へ戻ってくることを決意する。武勝の独特な熱血指導により、まとまり始めた吹奏楽部はみるみる力をつけ、世間の注目を集めていく。そこへ、密着していた新聞記者が武勝の秘密を嗅ぎ付けてしまう。その秘密とは…。

華丸指揮画像

会見では、精華女子高校吹奏楽部による生演奏も披露。博多華丸が実際の指揮に初挑戦し、総勢150人の現役“ブラバン少女”たちと共に、公演のモチーフとなったCDに収録の楽曲「Cheerio」(公演のCMソングとしても起用)をパフォーマンスした。YOUTUBEで精華女子高校吹奏楽部の動画を繰り返し見て予習してきたという華丸だったが、演奏開始のきっかけが分からないという痛恨のミスがあり、その場で顧問の先生に教えてもらうという一幕も。しかし曲の間奏ではオーディエンスに手拍子を求めるなどアドリブまで完コピし、余裕?の指揮者ぶりを見せつけ、会場からは大きな拍手が起こった。
「きっと僕がいなくても演奏ができる皆さんなので僕に合わせてくれたんだと思います。生徒の皆さんは途中から僕の方をあまり見なくなっていた(笑)」と、華丸が初指揮の感想を語ると、司会の斉藤からは「見限られましたね(笑)」とのツッコミが入り、会場の笑いを誘った。
精華女子高校吹奏楽部は舞台へのゲスト出演も決定し、毎公演生演奏を披露する。博多華丸と“ブラバン少女。”たちとの豪華共演に、3月の博多座が笑いと涙のハーモニーで包まれること間違いなしだ。

作・演出:G2 博多華丸 櫻内教昭顧問
吹奏楽部メンバーとともに、G2、博多華丸、吹奏楽部・櫻内教昭顧問


【インタビュー】

博多華丸(主演)
──2度目の舞台挑戦について
昨年3月の『めんたいぴりり』では、初めてということで大目に見ていただいた部分もあると思うが、今回は2回目ということでその進化を問われる。プロ野球でも、だいたい2年目で肘を壊すとかそういうジンクスもあるので(笑)どうしても力は入ります。
──吹奏楽を題材にした舞台ですが音楽経験は?
青春時代はナガブチ(長淵剛)一本で、吹奏楽には無縁だった僕ですが、皆さんに喜んでいただける舞台にしたいという気持ちは強くあります!でも、今その証拠を見せろと言われても手持ちはありません(笑)心意気だけはあります!
──熱血教師(コーチ)役を演じることについて
博多弁で先生というと、どうしても金八先生が頭に浮かびますが、いい意味でああはならないようにしようと(笑)。尊敬する素晴らしい先輩のイメージも参考にしつつ、僕なりの女子高の先生を演じられればいいなと。ちょうど高2の娘がいるので、そこで練習しようかなと思ってるんですがそんなに口もきいてくれないので自主トレもうまくいってないのですが(笑)。試行錯誤しつつ、3月には女子高のよい先生になれればいいなと思います。

G2(作・演出) 
──台本執筆にあたって苦労した点は?
年間でいろんな作品をやらせていただくのですが、この作品は“難産”でした。オリジナルストーリーですので、フィクションではあるのですが、精華女子高吹奏楽部の皆さんが現実にやってらっしゃることに負けないようなものを作らなければという思いがありました。
──題材になっている吹奏楽の魅力は?
スマホやいろんな機器で簡単に人と人がつながったり、いろんな事ができてしまうような時代において、人間の息が作る音楽や、その音楽が作る関係性に、現代人が忘れている大切なことが埋まっているような気がします。一本一本の楽器を聞いているよりもそれが掛け合わせた時の方が奇跡的な響きが生まれることも、人間関係の全てが凝縮されているようで素敵だと思っています。


また、同日に舞台のCM撮影が音楽室で行われ吹奏楽部選抜メンバーと撮影に臨んだ。完成CMは来年1月末より福岡ローカル局で放送される。

〈公演情報〉
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『熱血!ブラバン少女。』 
作・演出◇G2
出演◇博多華丸、星野真里、金子 昇、田中美里、宇梶剛士、森田順平、鳳 蘭
宮香蓮、入来茉里、神田朝香、上野 遥/武内由紀子、斉藤 優、是近敦之、松永玲子
ゲスト出演◇精華女子高等学校吹奏楽部
●2017/3/4〜26◎博多座 
〈料金〉A席12,000円 特B席9,000円 B席7,000円 C席4,000円(全席指定・税込)
チケット発売日:2017年1月14日(土)午前10時より 電話予約・インターネット発売開始
チケット問合せ:博多座電話予約センター 092−263−5555(10:00〜18:00)※日・祝日も受付
インターネット販売:http://www.hakataza.co.jp/

 


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笈田ヨシが日本でのオペラ初演出! プッチーニ歌劇『蝶々夫人』記者会見レポート

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毎年、文化庁の支援を受け、全国の劇場施設が共同で作り上げる”全国共同制作プロジェクト”。平成28年度はプッチーニの傑作オペラ『蝶々夫人』に挑戦、来年1月22日の金沢歌劇座を皮切りに、大阪、群馬、東京の4都市で行う。
 
その記者会見が12月12日、東京芸術劇場で行われ、演出の笈田ヨシ、指揮のミヒャエル・バルケ、出演者の中嶋彰子、小川里美、鳥木弥生、サラ・マクドナルド、ロレンツォ・デカーロ、晴雅彦、そして総合プロデューサーの山田正幸が出席した。

冒頭、2009年の1回目からプロジェクトに携わっている山田正幸より、今回の主旨や目的、その想いが語られた。その後、出演者、スタッフから『蝶々夫人』への意気込みを熱く話した。 また、全員で「蝶々夫人」と書かれた達磨に成功を祈願の片目を入れるなどのパフォーマンスもあり、会見は盛り上がった。 

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中嶋彰子、ミヒャエル・バルケ、ロレンツォ・デカーロ、サラ・マクドナルド、小川里美、鳥木弥生、晴雅彦、(手前右)笈田ヨシ

【会見】
 
山田正幸(総合プロデューサー)
東京芸術劇場シアターオペラシリーズは、2009年の『トゥーランドット』から始まり、『フィガロの結婚〜庭師は見た!』(2015年)では東北から九州まで続きました。全国共同制作は、複数の国の芸術家を集めて都心や地方の意欲的なホールで上演するという条件を満たし、文化庁の支援によって成立しています。
2年前にある歌手から「笈田ヨシさんは、日本でオペラの演出をしてないけれど面白いよ」と推薦がありました。実際、今年の2月にスウェーデン・ヨーテボリ歌劇場で笈田ヨシさんが演出した『蝶々夫人』を観たのですが、満席の大盛況で、しかも感動的な作品でしたので、今回は日本でのオリジナル演出にこだわった『蝶々夫人』を作るにあたり、笈田ヨシさんにお願いをしました。ヨーロッパで演出することの多い笈田ヨシさんからは、気心の触れた仲間とやりたいということで、美術はトム・シェンク、衣裳はアントワーヌ・クルック、照明はルッツ・デップという各国から選りすぐりの人たちが集まることになりました。そして、さまざまなホールを見て回り、金沢の金沢歌劇座、群馬の音楽センター、大阪のフェスティバルホールで上演することを決め、それぞれのオーケストラを決めたことで、今年も文化庁の支援を得ることができたわけです。これからもオペラの活性化を目指して共同制作を続けていきたいと思っております。

ミヒャエル・バルケ(指揮)
今回が2度目の来日となります。東京芸術劇場シアターオペラVol.8の『メリー・ウィドウ』(2015年)で東京と金沢の公演を行いました。その時、日本という国、そして人々、彼らのおもてなしの心、とても強いプロ意識、そういったものに感嘆して、日本が大好きになりました。歌手のチームも素晴らしいものだった。この日本に再び帰って来たことは大きな喜びです。異なる地域でオペラを上演することはヨーロッパですでに行われています。私は『ラ・ボエーム』の21回の公演を、デンマークの5つの異なる都市で行いました。ひとつのオーケストラから、次のオーケストラへと、異なる地域を移りながらの公演。指揮者は大変ですが、それでも大きな成功を収めました。ですから、このような作品は、日本でも成功すると思います。そして『蝶々夫人』を日本で行うことに大きな意味があるのではないでしょうか。
『蝶々夫人』はオペラの中でもトップ10に入るほど非常に愛されている作品です。しかも音楽的には5つほどバージョンがあります。出版されているのは、スカラ座で行われたミラノ初演版(1904年)です。ですが今回は3番目、4番目に書かれたブレシア版を採用しているので楽しみです。つまり、これはケイトの役をクローズアップした珍しい台本だからです。このオペラは、プッチーニによって、日本の芸者の生活、女性の人生、さらにアメリカ文化のリサーチが行われ、アメリカでは第1幕、第2幕を日本で上演しようという話も出たほどの研究熱心な彼の視点によって書かれています。さらには、11にも及ぶ日本独自の旋律がスコアに盛り込まれています。最後の旋律は、ピンカートンの所属する海軍の歌です。それはやがてアメリカの国歌になりましたね。しかし、作曲様式は、あくまでイタリア的なもの。そんな複雑な背景を考えた時に、これが本番でどのようになっていくのか。さらに、最高のスタッフと仕事ができることを心より楽しみにしています。

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笈田ヨシ(演出)
ミヒャエルさんは若いジェネレーションの中で有望な指揮者ですし、しかも、ドイツ出身の彼がイタリアの音楽をどう指揮していくのか考えると楽しみです。出演者のみなさんも、国際的に活躍している方ばかり。蝶々夫人は、原爆の落ちた長崎でアメリカ軍の将校であるピンカートンを信じて操を立て続けるも裏切られるという悲劇で、それを日本でやるのは、興味のあることだと思っています。もちろん、アメリカの将校が悪いのではなくて、ピンカートンが思っていることと、蝶々さんの思っている思い込みの違いであって、どちらがいい、どちらが悪いという問題ではないです。人間ひとりひとりに思い込みがあって、それが相手とうまくいかないのが人生なんです。人間の人生の一端を、音楽を通じて、お客さんの前で語り合うというのが私の考えです。それから、恥ずかしいけど僕はいつもオペラを観ると寝ちゃうんです(笑)。なので、音楽にあまり興味のない人でも楽しめる、どうやったらお客さんが寝ないですむか考えながら、有望な歌い手から装置、美術、衣装などみんなには100%の力を出していただいて、退屈しない面白いものをお見せしたい。
プッチーニがオペラを作った時に、重要な要素はエキゾチシズム、つまり、ヨーロッパで日本の風俗を見せることが魅力だったけれども、日本で上演しても、エキゾチックにはならないので、プッチーニの望んだ異国情緒は表現できない。その代わりに、舞台上で起こったことが絵空事ではなくて、本当に日本で起こったと感じることができるように、外側の風俗というよりも、人間の真実、日本人の心持ち、アメリカ人の心持ち、そのすれ違いを表現します。

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蝶々夫人役の中嶋彰子(ソプラノ、金沢、高崎、大阪、東京2/19公演)
初めて笈田ヨシさんと共演させていただくので、心から光栄に思って感謝しています。彼の素晴らしさは、演出家だけではなくて、映画や舞台俳優でもあるという圧倒的な存在感。ちょっとしたシーンでも丁寧に演出してくださるのですが、彼が動くと言葉はいらず、なるほどと思う説得力があります。
ミヒャエルさんは、ドイツ語のアクセントはゼロで、ドイツ人的なクセがない国際的な指揮者だから、ヨシさんと同じように圧倒されているところです。歌手にとっては、指揮者は仲間になるのか、敵になるのか、命を指揮者に渡すか戦うかどちらかなんですよね。とても難しい人間関係になるんですけど、レッスンを受けてみると、楽譜の解釈の仕方やプッチーニのベルカントを大変よく研究なさっていて、毎日勉強させられています。
最初に出演したプッチーニのソプラノは、指揮者レナード・スラットキンの『フィガロの結婚』(1994年)のスザンナ役をオーストリアのチロル歌劇場で歌いました。その頃は、ウバルド・ガルディーニという先生に歌を教えてもらっていたけれど、「『蝶々夫人』はただのスピリットだけではダメなんだ」と言われました。刀を持っているから、それなりの家系の娘であるという日本人の誇りを表現できるような女優でなくてはならないと学ばされました。2008年に『蝶々夫人』の蝶々さん役で、オーストリアのシュタイヤー音楽祭のLamberg城濠跡で歌ったのですが、私の息子が、蝶々さんの息子ドローレを演じました。息子はハーフということもあって役どころに合いますし、とても波長が合ったんです。でも、今回は各公演ごとにオーディションで選ばれた女の子や男の子がドローレを務めるということでヒヤヒヤしています(笑)。いずれにせよ、素晴らしい指揮者と演出家に必死に食らいついて、自分にしかできない蝶々夫人を演じられたら。練習3日目ですので、まだまだ高い山があります。これから毎日汗をかいて、勉強していきたいと思います。

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小川里美(蝶々夫人役/ソプラノ、東京2/18公演)
東京芸術劇場シアターオペラのシリーズは、『トゥーランドット』から関わっています。マリアナ・ツヴェトコヴァがヒロインの姫を歌って、私はそのカヴァーをさせていただきました。そこから『イリス』(2011年)のイリス役、『カルメン』(2013年)ではミカエラ役、『こうもり』(2014年)ではロザリンデ役などで出演させていただきました。このシリーズはみんなで作っていくオペラで、よりよくするためにはどうするのか考えながら、山田さんたちと作ってきたという強い想いがあります。
今回蝶々さんを歌わせていただくことは非常に光栄なことです。というのも、私はイタリアに暮らし、イタリアで勉強する中で、イタリア・デビューは、2009年のプッチーニ『トゥーランドット』のヴェローナをやらせていただき、最終的にはリュー役で出演したからなんです。プッチーニのお孫さんが聴いている中で、リューを歌わせていただいて、プッチーニを常に考える機会が多いイタリアでの歌人生だったように思います。
プッチーニを歌うときに、彼に対してだけではなく、『蝶々夫人』なら台本のイッリカやジャコーザに対して、どれだけ自分に誠実に歌えるかということを意識しています。この時代に残されている楽譜台本に忠実でありながら、自分のオリジナリティを出せるような舞台になれば。
笈田ヨシさんの演出は2006年の『ナブッコ』で拝見しているんです。その時は、どなたが演出されたのか知らずに、終演後ポスターに載っている名前を見て、日本人の方がイタリアでも活躍されているんだ、すごいなと思っていました。その印象が残っていますから、10年以上経って、ご一緒させていただけるのは感慨深いものがありますね。
ミヒャエル・バルケさんは、ドイツ人ですがイタリアでイタリアの音楽を勉強した人ですから、プッチーニの感覚を共有できています。今回はとても面白いオペラを作ることができると思います。

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鳥木弥生(スズキ役/メゾソプラノ)
国際プロダクションは理想的なプロダクションですし、参加できることはとても光栄です。スズキという役は、オペラの中では多く演じてきたのですが、ほとんどがヨーロッパでの経験で、実は日本で全幕スズキを歌うのは初めてなんです。今回はプッチーニがファンタジーとして描いた日本を使いながらも、リアルな私たちの日本の感覚で、この舞台を作るのが楽しみです。稽古2日目ですが、すでにいろいろと笈田さんにおっしゃっていただいているので、楽しんで体現できたら。プッチーニの『蝶々夫人』はオペラですが、演劇的要素が強いですね。歌手として女優としていいものを書いていただいたプッチーニに感謝です。そして何より言語が大切ですが、ミヒャエルさんがイタリアの言語センスが立派で、スズキ役は何度もやっていたので、自信を持って歌っていたんですけれど、さらにブラッシュ・アップする機会をいただけて嬉しく思っております。

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サラ・マクドナルド(ケイト・ピンカートン役/メゾソプラノ)
私はオペラ・デビューになりますが、オペラの出演は夢にも思ったことがなかったんです。だからこの機会を、この役を託してくださった方には、心から感謝しています。初めてなので、新しいことばかりで、みなさんに支えていただいている毎日です。まだまだ至らない今の現在の位置を感じて、その悔しさと恥ずかしさと共に、さらに、これから多くの感動を感じられるのは嬉しいことです。オペラという新天地を切り開いて私も成長できたらな。そして、みなさんの出演する舞台に私の居場所があるということを証明できるように頑張りたいです。

ロレンツォ・デカーロ(ピンカートン役/テノール)
日本に来ることは素晴らしい経験ですし、特に、ピンカートン役を日本でやることは難しい役割だと感じています。最近『蝶々夫人』で歌ったのは、イタリアのルッカのテアトロジーリョで上演されていたものです。そのような経験があっても、日本で『蝶々夫人』をやることは挑戦ですね。今回は素晴らしい演出家と、プロフェッショナルとしても人間としても素敵な指揮者を迎えてのグループで、仕事ができることを誇りに思います。オペラをやるにあたって一番重要なことは、絆のあるグループを作って、プロフェッショナリティを作り上げるための、グッド・フィーリングと感動を分かち合うことが重要です。それはいつでも実現されることではないけれども、ここには優秀なオーガナイザーがいて、仕事熱心な人を目の当たりして満足していますし、良い舞台にするためにみんなと歌えることを幸せに思っています。

晴雅彦(ゴロー役/バリトン)
全国共同制作に初めて関わらせていただいたのは、『イリス』の京都役からです。その後、『カルメン』のダンカイロ。『メリー・ウィドウ』のラウール・ド・サンブリオシュという役に続いて、今回のゴローという役。ゴローというのは私にとっては特別な役で、オペラデビューの役でした。楽譜にはテノールと書いてありますが、音楽的には歌える音域だったので、デビューのきっかけを演出家に選んでもらって、それから色々なところで歌うことができるようになりました。自分の心になくてはならない役として生きています。私は明日から稽古ですが、強者の指揮者、演出家、キャストの方々と、ご一緒させていただいて、どうなるのか、本当にワクワクとドキドキで身が引き締まっています。この後の衣装合わせから、作品にどっぷり浸かりたいと思っています。

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【質疑応答】
――プッチーニの『蝶々夫人』の普遍性とは?
笈田 蝶々さんは芸妓でピンカートンに身請けされます。あの時代はラシャメンと言われて、異国の人に身請けされることは、軽蔑すべきことだった。でも、蝶々さんは、力強く生きて、アメリカの法律やキリスト教に適応しようとする。そして、アメリカの文化の中でアメリカ人と一緒に生活しようと、家族を捨て、日本古来の伝統を捨て、新しい生き方を模索します。
僕の話で恐縮ですが、終戦当時は13歳で、今まで神国と学校で教えられていたのが、終戦するとすべてアメリカが正しいとなってしまった。日本の識者でさえ、なんでもかんでもアメリカが良いと言っていたんです。けれど、僕は進駐軍にチューインガムを与えられてもプライドが許さなくてもらえなかった。そのまま育った僕と、逆に日本を捨ててアメリカに行く蝶々さんを見ると、やるせない心境になって身にしみるんです。『蝶々夫人』には、日本では特に、アメリカという国を考えなきゃならない心持ちがいつの時代にもあるんです。
それから、日本はアメリカのおかげで豊かになったけれども、現代はお金のことでいろんなものを決めてしまう。そこにある人間関係が気薄になってしまうことが現代生活を大きく占めています。原作では最後に蝶々さんはすべての人間関係に絶望して自殺すると書いてありますけれど、それをどうやって受けい入れるか、現代と照らし合わせて、今の人間関係を改めて考えていただけるきっかけになると思います。
――オペラの絢爛な音楽と芝居の相性について。
笈田 芝居もダンスもオペラも、舞台でやりたいことは、人間の心のたゆたい、苦しみ、悲しみ、摩訶不思議さ、美しさを表現することです。だから、階段は違うけれども行き着く先は一緒なんです。目に見える手段を使って、目に見えない人間の美しさを舞台で表すことが、演出の仕事だと思っています。だから、オペラといって自分の態度を変えることはないです。プッチーニの音楽を通じて、人間の苦しみや悲しみ、美しさや不思議さをお客様に感じていただければいい。シンフォニーをオペラにしようとか、60年間上演されなかったオペラや創作オペラの演出といった、僕らにとって珍しいものは、伝統的なものがないので気合いも入るしアプローチしやすい。けれども、『マダム・バタフライ』はどこでも上演しているし、日本でもやっているから、僕は僕なりの『マダム・バタフライ』をやりたいと考えています。今回はなるべく装置を簡潔にして、音楽がどう出るか、歌と演技がどうしてできるか、どうやれば伝わるかを目的としてやりたいと思っています。オペラの魅力である豪華で華やかで美しいものではなく、人間の中身の美しさをみなさんにお見せできれば、音楽とお芝居の相性は関係ないですよ。 
バルケ 私は今まで30人のオペラの演出家と仕事をしてきました。今回、笈田さんの横に2日だけ座っていただけですが、とても面白いですね。今まで見てきた演出家の中でも最高の演出をなさっています。音楽性が豊かでとても自然体。スコアに書かれていること、歌詞に書かれていることを自然に受け止めて、自然にお芝居が発生してくるような演出をなさっているんです。『蝶々夫人』の場合、演出家の良し悪しを見るときに大切なのは、プッチーニに対する信頼があるのかどうか。彼からはそれを感じます。蝶々さんのお芝居は難しいとは思いません。彼女は歴然たる犠牲者です。彼女がいかに耐え、辛い想いをしているのかが、ありありと描かれています。演じる上で誰が難しいかというとピンカートンです。本当に自分勝手で、エゴイスティックで、高慢でイヤなやつです(笑)。ただ、音楽の点からみると、もっとも美しいメロディを聴くことができるデュエットを、プッチーニはピンカートンに書いている。その点を踏まえたとき、確かにイヤなやつだけれど、ただの悪者ではないというところが、オペラで描かれているわけです。美しい愛のデュエットを聴いて、最後まで観た時に、ピンカートンの持つ2面性を感じて、本当に嫌いなのか好きなのかがわからなくなります。人間の心の多様性に焦点を当てているからこそです。お芝居も音楽も同じですね。だからオペラにおける音楽とお芝居の相性はグッドだと思うんです。

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〈公演情報〉
平成28年度全国共同制作プロジェクト
プッチーニ歌劇『蝶々夫人』〈新演出〉
演出◇笈田ヨシ
指揮◇ミヒャエル・バルケ
舞台美術◇トム・シェンク
衣裳◇アントワーヌ・クルック
照明デザイン◇ルッツ・デップ
出演◇中嶋彰子、小川里美、鳥木弥生、サラ・マクドナルド、ロレンツォ・デカーロ、晴雅彦 他
●2017年1/22◎金沢歌劇座
〈料金〉SS席12,000円、S席10,000円、A席7,500円(指定席・税込)
B席5,000円(自由席・税込)
〈お問い合わせ〉金沢芸術創造財団 076-223-9898(平日 9:00〜17:00)
●1/26◎フェスティバルホール
〈料金〉SS席14,000円、 S席12,000円、A席10,000円、B席8,000円、C席6,000円、BOX席17,000円、バルコニーBOX2席24,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉フェスティバルホール 06-6231-2221(10:00〜18:00)
●2/4◎群馬音楽センター
〈料金〉S席10,000円、A席8,000円、B席6,000円、C席4,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉群馬音楽センター 027-322-4527(8:30〜17:15)
●2/18〜19◎東京芸術劇場コンサートホール
〈料金〉SS席12,000円、S席10,000円、A席8,000円、B席6,000円、C席4,000円、D席3,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京芸術劇場ボックスオフィス 0570-010-296(休館日をのぞく 10:00〜19:00)

【取材・文・撮影:竹下力】

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