観劇予報

おん・すてーじ『弥次さん喜多さん』双

インタビュー

西田シャトナーの名作『破壊ランナー』で主演する池田純矢インタビュー

池田本データ

生身の人間が音速で走るレースを、生身の舞台で演じ切る──。
90􃻥􃻜年代、演劇界の常識を覆した伝説的作品、西田シャトナーの名作『破壊ランナー』が、バージョン・アップして、4月21日〜30日、Zeppブルーシアター六本木で上演される。パワーマイムというスタイルで演劇界に衝撃をもたらした「惑星ピスタチオ」の代表作の1つだ。
今回、この名作の主演をつとめるのは、俳優として、また劇作家・演出家としても活躍する池田純矢。『破壊ランナー』に出演したレジェント俳優・保村大和をはじめとする豪華共演者とともに、身体表現の極致ともいえるシャトナーワールドが展開される。
そんな作品で主役として豹二郎ダイアモンド役に挑戦する池田に、この作品への思い、そして俳優と作・演出家という2つの顔について話してもらった「えんぶ4月号」の記事を、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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強いヒーローに憧れて格闘技を身に付ける

──西田シャトナーさんの作品に出演するの初めてだそうですね。
はい。でも作品は何本も観ています。いつもエネルギーのすごさに圧倒されますし、同時に繊細な絵作りに感動します。
──独特の身体表現であるパワーマイムについては?
初めて観たときは衝撃でした。ある意味、子供時代の遊びの延長を本気でやっている凄さというか。子供の頃は、自分で擬音をつけながらメカニックな動きをして遊んだりしますよね。あれを高度なレベルで表現にしている。自分があれをやる側になったら相当たいへんだなと思いました。
──池田さんは殺陣やアクションはもちろん、新空手、ボクシング、エクストリーム・マーシャルアーツと様々な格闘技も身に付けていますね。
幼稚園児の頃にビデオで黒沢明監督の『七人の侍』を観て夢中になって、将来の夢は三船敏郎か勝新太郎になりたいと(笑)言ってたんです。もちろん戦隊ヒーローも好きでしたし、ジャッキー・チェンも好きで、ああなりたいと思って格闘技をやるようになったんです。
──その身体能力は俳優という仕事に役立ったと思いますが、演じるということを意識したのは?
初めて1つの役と向き合う作業をしたのが映画の『DIVE』(08年)で、そのとき熊澤(尚人)監督にめちゃくちゃ怒られたんです。「まっすぐ立て。ちゃんと立て」と。あとで思い返すと「役としてちゃんとそこにいろ」ということなのですが、当時13か14歳だったので、ただただ怒られてることしかわからなかったんです。でも悔しくて自分なりに頑張って考えて。完成した映画を観たらすごく面白くて、自分ではない自分がいたんです。そこで演じることへの意識が目覚めた気がします。
──強いヒーローになることから、それを演じる側へと意識変換したわけですね。
大人になってもヒーローに憧れているわけにはいきませんからね(笑)。少しずつお芝居をさせてもらう中で、俳優という職業に憧れが移っていったんだと思います。

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役という絶対的なものがあるとすごく安心する

──俳優という仕事が自分に合っていると思うところは?
僕は自分のことはよくわかってなくて、どれが自分なのかとても曖昧なんです。たとえば今話しているのは役者池田純矢ですし、プライベートでも色々な顔を演じている気がするんです。本当の自分は?と考えると答えられないし、むしろ役をやっている時のほうが全力で答えを出そうとするので、今回なら豹二郎はこういう人間だと言えるんですけど、自分のことは怖くなるくらいわからない。だから役という絶対的なものがあることですごく安心するんです。
──最近、作・演出家としても活動していますが、俳優だけでは表現しきれないものがあるのでしょうか? 
もちろん書くことでしか表現できないものがあるからですが、作・演出をすることで俳優としての自分に色々なものが返ってくるんです。僕は演出をするとき、その俳優の体と声を借りて、自分のやりたい芝居を表現しているつもりなのですが、その中で想像してもいなかった声や表情に出会える。自分が演じるならこうなると思って書いた本でも、他の役者さんが演じることで、思いがけない発見があるんです。そういう意味で作・演出という仕事から、役者としての自分にフィードバックするものは大きいです。
──最後に『破壊ランナー』への抱負をぜひ。
この作品は90年代に生まれて、その後の演劇の世界に大きな影響を与えました。この中に出てくるパワーマイムという表現がなかったら、生まれなかった作品が沢山あったと思います。その伝説的な作品を、シャトナーさんは「再演ではなく新しく上演する」とおっしゃっています。それを僕らで可能にしたいし、間違いなく面白いものにする。その覚悟ですので、期待していただきたいです!

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いけだじゅんや○大阪府出身。06年、JUNONスーパーボーイコンテストで史上最年少準グランプリを獲得。以後、映画、ドラマ、舞台で活躍中。主な出演作品に、ドラマ『海賊戦隊・ゴーカイジャー』『牙狼< GARO >〜闇を照らす者〜』『人形佐七捕物帳』、映画『DIVE!!』『ライチ☆光クラブ』、舞台『ミュージカル薄桜鬼 藤堂平助篇』(初主演)少年社中『リチャード3世』(主演)『ベイビーさん〜あるいは笑う曲馬団について〜』(主演)AGAPE store 『七つの秘密』bpm本公演 『アヴェ・マリターレ!』(主演)など。作・演出家としてエン*ゲキ#01『君との距離は100億光年』(15年)エン*ゲキ#02『スター☆ピープルズ!!』(17年)を発表。


〈公演情報〉
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キティエンターテインメント×東映プレゼンツ
SHATNER of WONDER #5
『破壊ランナー』
作・演出◇西田シャトナー 
出演◇池田純矢/河原田巧也  米原幸佑 宮下雄也  平田裕一郎 白又敦  伊万里有/鎌苅健太 兼崎健太郎  村田充 ほか 
●4/21〜30◎Zeppブルーシアター六本木 
〈お問い合わせ〉 東京音協:03-5774-3030 
http://hakai-runner.com




【取材・文/宮田華子 撮影/岩田えり】



『明治座 五月花形歌舞伎』 




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いよいよ開幕! 〜崩壊シリーズ〜『リメンバーミー』 山崎樹範インタビュー

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昨春、劇場を圧倒的な爆笑の渦に巻き込んだ〜崩壊シリーズ〜『九条丸家の殺人事件』。待望のシリーズ第2弾『リメンバーミー』が、4月13日からついに幕を開ける。(30日まで俳優座劇場、のち大阪、名古屋、福岡で公演)
新作オリジナルストーリー描き下ろしで、主演は前回に引き続き、山崎樹範。
おめでたい話題もあって公私ともにいい流れにのっている山崎が「初めて自分の代表作と言えるようなものができた」と笑顔で振り返るこのシリーズ。
第1弾での思い出と、新作に向けての意気込みを語ってもらった「えんぶ4月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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どこにフォーカスを当てて笑いをとっていくか

──第1弾の稽古や本番で印象に残っていることは?
まず、演出のオークラさんが稽古に時間通りに来ない(笑)。それは、毎日台本を書き直しているからで、その台本をもらって稽古して、また台本を直してというのを毎日繰り返して、最終的には最初とはまるっきり違う台本が出来上がりました(笑)。オークラさんの演出は、とにかくジャッジが早いです。演劇は稽古を積み重ねて面白く作り上げていくのが普通ですが、役者をどうこうするのではなく、構造的にガラッと変えてしまうんです。その手法は衝撃的でした。
──通常の演劇の演出との手法とは、全然違いますね。
稽古始めにオークラさんは、「ここの感情は?というような質問は一切しないでください。そこはご自身でお願いします。僕は、何が面白いかを考えるんで」と明言されたんです。そう言ってもらえたことで、とてもやりやすくなりました。僕らが考えるべきは、「どこにフォーカスを当てて笑いをとっていくか」ということで、逆に誰か1人でも役に特化して考えだすと、笑いが崩壊してしまうんですよ。だから稽古は、それぞれが役の生理を我慢するという調整でした。
──栗須健司役ですが、どんなところにやり甲斐が?
前提が爛瀬瓩平有瓩覆里如¬鮑遒蠅鬚靴覆ていいところと、イヤな部分を見せても、芝居という体でごまかせる(笑)。台本にないイヤなツッコミや、言ったらダメだと思われるような発言もどんどんやりました。前作のラストで、僕の告白で上地(春奈)さんが泣くシーンで、涙でマスカラが溶けたりして泣き顔が本当に美しくなくて(笑)、「ブスだなー」って、思ったことがそのまま口に出ちゃったんです。でもお客さんが引くことなく笑ってくれたので、「俺、ココでは何やってもいいんだ!」と思いました。はまり役を見つけたなと思っています。

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猴靴哭瓩良分をどれだけ膨らませて過ごしてきたか

──この崩壊シリーズの魅力はどこだと思いますか?
お客さんに余計なことを考えさせず、ただただ笑って見てもらうというのが、崩壊シリーズの本質なんです。前回は個々の力、集団での力をふんだんに盛り込んで笑わせましたが、去年の楽しかった思い出は一旦忘れて、また新たに取り組みたいと思っています。この1年、僕ら出演者が猴靴哭瓩良分を、どれだけ膨らませて過ごしてきたかを問われることになるでしょうね。今回の内容については、オークラさんからとくになにも聞いていません。今聞いても、どうせまた現場で変わるし(笑)、でもきっと、大丈夫です!
──最後に今回の公演に向けての意気込みを。
年齢から最近、体力が落ちてきているので、ウォーキングを始めました。この間、代々木公園の小さいほうの周回コースを2周したら死にそうになったんで、改めて体力づくりをしないと本番もたないなって思っています。前回は、本番前には必ずVAAMを飲んでいたんですよ。あれを飲むとすっごく汗が出るので、周りに「あんなに汗かいて頑張ってる!」と思われたんですけど、実はVAAMの力で(笑)。基本、努力したくないので、今回も頑張らずに頑張っていることをみせていけたらなと思っています。

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やまざきしげのり○東京都出身。95年より劇団 カムカムミニキーナに参加。ドラマ、バラエティー、映画などで活躍中。最近の主な出演作品は、映画『幸福のアリバイ〜Picture〜』『龍三と七人の子分たち』、ドラマ『しあわせの記憶』(MBS)『HOPE〜期待ゼロの新入社員〜』(CX)、舞台はカムカムミニキーナ『ダイナリィ>』〜崩壊シリーズ〜『九条丸家の殺人事件』『鈴木おさむ劇場 美幸』など。


〈公演情報〉
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〜崩壊シリーズ〜『リメンバーミー』
作・演出◇オークラ
出演◇山崎樹範/松下洸平 味方良介 上地春奈 
大水洋介(ラバーガール) 伊藤裕一/彩吹真央/梶原善
●4/13〜30◎俳優座劇場
●5/3・4◎松下IMPホール
●5/11◎日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
●5/13・14◎都久志会館
〈お問い合わせ〉東京/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
http://www.houkai-st.com/





【取材・文/木下千寿 撮影/安川啓太】 




方南ぐみ 『あたっくNo.1』 




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ミュージカル『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』本日開幕! 村井良大・中川晃教インタビュー

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世界に3億5500万人の読者を持ち、1950年の連載開始から今尚読み継がれているチャールズ・M・シュルツ著の大人気コミック『ピーナッツ』。作品から飛び出した、やはり世界中で愛されているキャラクターたちは、アニメに、映画に、そしてグッズにと、多方面で大活躍を続けている。
その1つであり、キャッチーな音楽に乗って彼らが舞台上を駆けまわるブロードウェイミュージカル、『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』が、本日、4月9日にシアタークリエで開幕した!

たとえ原作コミックを知らなくても、このキャラクターを目にしたことがない人は、日本に1人もいないだろうというほど、世界で最も有名なビーグル犬スヌーピーとその飼い主のチャーリー・ブラウン。 
その役を演じる村井良大と中川晃教が、大人気キャラクターを演じるということ、作品への期待、そしてミュージカルへの思いを語ってくれた「えんぶ4月号」の記事を、別バージョンの写真とともにご紹介する。(※この公演のレビューも近日中にアップ! ご期待ください!)

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可愛いキャラクターの中にある哲学的な言葉

──大人気キャラクターを演じるということになりましたが、原作のシュルツさんの漫画『ピーナッツ』は読んでいましたか?
中川 新聞に連載されていた4コマ漫画だということは、知識として知ってはいたんですが、全然読んでいなかったです。読んでた?
村井 僕も読んでいませんでした。だから純粋に可愛いマスコットキャラクターというイメージでしたね。
中川 そう、全く同じ。あとミュージカルになっているということもなんとなく知ってはいたけれど、調べたことはなかったから。でもこの作品をやらせて頂くというお話が決まった時に、六本木の「スヌーピーミュージアム」に行ったんです。そこでシュルツさんの本のことを知って、アメリカでとても愛された国民的キャラクターなんだなということがわかりました。
──ある意味フラットな状態だったわけですね。その中でこの作品に取り組もうと思ったのは?
村井 まず、面白そうだな! と思ったんです。イメージが強烈なだけに、あのキャラクターたちがどうやってミュージカルになるのか想像できなくて、その想像できないという力に惹かれました。わからないことって面白いじゃないですか。
中川 なるほどね。僕はまず周りに、ものすごくたくさんスヌーピーファンがいたことが1つですね。これほど愛されているキャラクターにと、声をかけて頂けたことが嬉しかったです。それから、このお話をきっかけに、妹がたくさん本を持っていることを知って見せてもらったら、結構内容が哲学的なんですよ。しかも英語で書かれているものを日本人が読んで、拙い語学力でも何気ない言葉の中に力を感じるし、イマジネーションが沸いたんです。だからこそ今、この作品をやることが、新しく感じられました。しかも演出が小林香さん、振付が川崎悦子さん、これまでむしろ大人っぽい世界観を作ってきた人たちが、敢えてこの作品に取り組むのは、ものすごく作品を愛しているからこそで、そこにもとても惹かれました。
 
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6人の出演者で紡ぐエンターテイメント!

──そんな人気キャラクターですが、それぞれ演じる役についてはどんなイメージを?
村井 僕はチャーリー・ブラウンですからね。
中川 タイトルがまず『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』で、「Good Man」だよ。どうですか?「Good Man」ですか?
村井 僕は結構自負してますよ、自分がGood Manだなって(笑)。でも、人から「いい人だね」と言われると反抗心がわきません?
中川 男の子だね!
村井 そうそう(笑)。本当は悪い部分もあるんだぜ! と言いたくなる(笑)。でも周りから「チャーリー・ブラウンをやるんだ? 村井君にピッタリ!」と言われていて、調べてみると、チャーリー・ブラウンって幸せそうな人たちを見ているのが好きと言っていて、僕も周りの人たちが幸せそうにしているのを見ているのがすごく好きなので、あぁそこは一緒だなと。でもまだ解剖中です(笑)。チャーリーがいい人というよりは、彼の周りの子供たちが個性的な子ばかりなんじゃないかとも思うので。スヌーピーの飼い主だけれども、スヌーピーに尊重されているのかというと、?というところもあるし(笑)。
中川 スヌーピーは自由だからね。
村井 自由ですよね。鎖につながれているわけでもなく、屋根の上に寝てて、人間みたいな動きもして(笑)。
中川 うん、だからね、僕はまず犬を演じるというのがすごく面白い。人間の役では天才的な人物、アウトロー、戦隊もの、悪役などなど、色々な人物を演じてきたけれど、犬を演じるってどういうことなんだろうと考えると、とても感覚的なものに思えて。スヌーピーだからこそ発揮できる僕の感性もあるのかなと。それに作品が6人の出演者だけで演じるというとてもコンパクトに凝縮された中に、コメディやエンターテイメントの要素が詰まっているから、そのバランスもいいなと思います。
村井 ただ難しいですよね。そもそも絵柄は2頭身だし(笑)、アニメ版も観ましたけれど、とにかくみんな可愛く動くし。でも等身大の人間が演じた時には、絶対にああいう動きにはならない。キャラクターの可愛さだけを追求するなら、実際に子供が演じた方がいいのでは?ということにもなりますよね。それをなぜ、敢えて大人が演じるのかを考えると、ただ子供らしく演じればいいということではないはずで、アッキー(中川)さんが言った通り、作品の中にある哲学的な言葉は大人が演じてこそ伝わるものだろうから、稽古の中でその辺のバランスをきちんと探っていきたいです。
中川 キャラクターが確立していればいるほど、僕らが演じる意味が重要になるよね。このキャラクターをこの俳優がどう演じるのかが、ハッキリ見えた方が面白いと思う。決して子供風とか、キャラクターっぽい、ということではなくて、村井君のチャーリー・ブラウンを中心に、仲間たちがいて、飼い犬のスヌーピーがいる。芝居の中でそれぞれの役者ならではの個性が投影されていくといいよね。

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チャーリーとスヌーピーとして同じ方向を向いていける

──作品のミュージカルとしての魅力はどうですか?
中川 まず音楽が素晴らしいです。どの曲も色々な意味で聞き入ることができるし、きっと作品を観終わった後に、お客様個々の中に残る曲が必ずあると思います。それほどどの曲もテーマがハッキリしていて、かつオシャレなんです。クラシックの有名なモチーフから展開される曲もあれば、三重唱があったり、スヌーピーの曲などでは「とにかくご飯が食べたい」(笑)と言い続けているものもある。ミュージカルとしてのクオリティがとても高いし、ミュージカルだから、このキャラクターたちの物語が成立しているとも言えます。
村井 音楽が入ることによって、物語が軽快に進みますよね。
中川 村井君はミュージカルよりストレートプレイへの出演の方が多かったの?
村井 そうですね。ミュージカルは『キム・ジョンウク探し』『RENT』『私のダーリン』くらいかな。あまりまだ数はやっていないです。
中川 ミュージカルとストレートプレイとの違いって何だと思う?
村井 もちろんミュージカルには、まず歌があるっていうことですけど、でも「キーがずれてるよ」みたいなことは極く初期の段階の話で、結局は役者の中身の話になってくるから、僕は実はあまり変わらないと思っています。ミュージカルの現場でも「芝居作りと一緒だな」と思うことが多いですね。
中川 うん、そういう感覚なんだよね僕も。村井君っていくつ?
村井 28です。
中川 そうか、20代か。この頃の若い人、20代の人と話してるとミュージカルに対して考え方がフラットなんだよね。今、ミュージカルの世界に芝居という入り口から自然に入ってくる人がすごく増えていて。「声楽家でした、歌手でした」という出自じゃなく「踊りも好きです、歌も好きです、芝居も好きです、映像もやってます、だからミュージカルもやります」っていう感覚。これすごく良いことだと思うし、ちょっとオヤジくさくなるけど(笑)、あぁ、時代は変わったなって思う。人を喜ばせる仕事、それを言葉にするとエンターティナーだと僕は思うけど、そういう人たちがミュージカルというものにも自然に入ってきて、やりこなしていく時代になった。やっぱり日本のミュージカルが世界レベルになっていく為には、まずスタンダードの1つになることが大切だと思うから、これから更に上を目指していくにあたって、とても良い流れ、良い風が吹いていると思う。
村井 僕は今年で芸能界に入って10年目なんですけれど、やっぱりミュージカルっていいなぁとこの数年でどんどん思うようになってきました。やっぱりストーリーと言葉だけじゃなく、音楽が入ってくることによって、感情の振り幅が激しくなるんですよね。音楽の力ってとても大きいじゃないですか。
中川 うん、デカい。
村井 その力で気がついたら泣いていたということがよくあります。演じていても、観ていても。
──そういう大きな力のあるミュージカルで共演するお互いの魅力は?
村井 アッキーさんの舞台は色々観させて頂いてきましたが、とても繊細で、その繊細さの中にある骨格はすごく骨太で、感情に向かって体当たりしている印象が強いです。そんなに力いっぱいぶつかったらハートが壊れちゃうんじゃないか、と心配になるくらい、いつも本気の人だなと思います。
中川 僕は今日話していて更に感じたんだけど、村井君は自分の言語をきちんと持っていて、思ったことを端的に言葉にできる人だなと。それってやっぱり天性のものだし、ずっと自分を見失わずに、かつ様々な経験の中で自分を磨いてきたということだと思うので、そういうポテンシャルの高い村井君とだったら、チャーリー・ブラウンとスヌーピーのある種のツンデレ感、お互いに突き放していても、ちゃんと同じ方向を向いているところは、きちんと作れるだろうからとても楽しみですね。今、こうしていても、すでに飼い主から見られている感覚にスッとなれるから(笑)。村井チャーリーについていきたいと思います。
村井 これだけ愛されているキャラクターを演じるのには、プレッシャーもありますが、僕たちならではのチャーリーであり、スヌーピーをお客様にお見せできるよう、頑張っていきたいです。


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むらいりょうた○東京都出身。07年テレビドラマ『風の小次郎』で初主演。また『仮面ライダーディケイド』などでも活躍。舞台活動にも熱心で『風魔の小次郎』『テニスの王子様』『里見八犬伝』をはじめ、『マホロバ』『カワイク・シアワセでなくちゃいけないリュウ』『殺意の衝動』『真田十勇士』『キム・ジョンウク探し〜あなたの初恋探します』など数々の舞台で活躍。7月には、その温かい存在感で喝采を集めた『RENT』のマークで再び主演に挑む。10月には『アダムスファミリー』への出演も決まっている。 

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なかがわあきのり○宮城県出身。01年自身の作詞作曲による「I WILL GET YOUR KISS」でデビュー。02年日本初演のミュージカル『モーツァルト!』の主役に抜擢され、初舞台にして第57回文化庁芸術祭演劇部門新人賞、第10回読売演劇大賞優秀男優賞、杉村春子賞を受賞。以後音楽活動と共に数々のミュージカル、ストレートプレイに出演。最近の主な舞台作品は『CHESS』『グランドホテル』『フランケンシュタイン』など。昨年の『ジャージー・ボーイズ』で演じたフランキー・ヴァリ役で第24回読売演劇大賞最優秀男優賞、菊田一夫演劇賞などを受賞。7月にはミュージカル『ビューティフル』への出演が控えている。
 

〈公演情報〉

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ブロードウェイミュージカル
『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』
原作◇チャールズ・M・シュルツ著 コミック『ピーナッツ』より
脚本・音楽・詞◇クラーク・ゲスナー 
追加脚本◇マイケル・メイヤー
追加音楽・詞◇アンドリュー・リッパ 
訳詞・演出◇小林香
出演◇村井良大 高垣彩陽 田野優花(AKB48)  古田一紀 東山光明 中川晃教
●4/9〜25◎シアタークリエ
〈お問い合わせ〉東宝テレザーブ 03-3201-7777(9:30〜17:30)
http://www.tohostage.com/charlie/


【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】

 


えんぶ4月号 




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座・高円寺1にて『KUDAN』の上演を控えた劇作家・演出家、大西弘記(TOKYOハンバーグ)インタビュー

人間ぽいっていうところにとても惹かれて。

4年前の公演で、原発事故のなかで発生した被爆牛の殺処分という現実の話題に、“件”という半人半牛の姿をした妖怪をからめて、好評を博したTOKYOハンバーグの舞台が再演される。
とはいっても、取材によるとどうやら当時のモチーフを生かした、新作に近い作品になるという。まさに稽古たけなわ、多忙の劇作家・演出家の大西弘記に話を聞いた。
 
Ohnishi


4年前の自分との闘いです。

──「被爆牛」と「件」というモチーフはどこから?
被爆牛というのは現実に存在している牛です。政府の「殺処分しろ」という命令に抵抗して被爆した牛たちを守っている農家の方がいらして。
その現実のお話、題材と、牛から人間の女性が生まれてきたという設定で、色んなことを考えてみたいと思って。
──今作は再演ですがだいぶ替わりそうですか? まだ脚本を書いている途中とのことですが。
今言った2つのモチーフは変わらないんですけど、後は全部替えています。この作品は4年前に書いたものなので、今のものとして書き直したいなと思って。
──登場人物の数やストーリーそのものが違うのですか?
そうです。ほぼ新作です。登場人物の名前も全部替えています。今、前回の台本を読んでみると、「視点とか着眼点はおもしろかったのに!」という感じがするので。今ならもう少し上手く書けるだろうと。4年前の自分との闘いです。劇作家としての自分とも向き合っています。
4年前と今も変わらないのは、こういう題材で演劇をやってるということです。いろんな演劇があっていいと思うんですけど、自分はこういうことを演劇にして生きていきたいと思っていて。
震災の話なんですが、見た方がいい、見なくてはいけない作品を作っていきたい、という思いがあるので。それを直接的にやるとちょっとしんどいので、牛を擬人化するという目線からあの原発事故を描いています。
原発事故はまだ終わっていないよと。福島はまだ現在進行形ですし。やっぱりみんな嫌なものには目を背けたいですからね。でも考えないといけないなと思いますし。原発というものに対しても。そういうところから、書いてるというのはあります。

有害だから殺すという殺処分は違うんじゃないかって。

──途中まで台本を読ませていただきました。テーマは重いですが、童話みたいなトーンもありすんなり読み進められました。
実際、希望の牧場というのが福島にありまして。吉沢さんという方が300頭以上の被爆牛を6年間、守っているんです。そこへ取材に行かせていただいて。
売れないので家畜としての価値はゼロなわけです。原発事故の起こる前までは、売って生計を立ててたんですけど、それができなくなったので、じゃあ、それを殺すのかと。その時にそういう殺し方はしたくない、人間の都合で殺したくないっていうところに、すごく人間っぽさを感じて。自分の中では不思議で。その人間ぽさにとても惹かれました。
──人間ぽいっていうのは、牛ではない人間のことですよね?
牧場主の方です。だって、牛って、豚も鶏もそうですけど、経済動物じゃないですか。ぼくらはそれを食べて生きていますけど、それができなくなったから殺す、有害だから殺すという殺処分は違うんじゃないかって。
「だって、あなたこれは有害じゃなかったら、出荷して殺してたわけでしょ? 何が違うの?」と言われればそれこそ正論じゃないですか。でもそこで「できない」と答えるところに人間の理性というか、感情というか、そういうものがすごくあって。だから人間っていいなって。
福島には被爆していない牛もいますから、被爆牛がいることで風評被害になりかねないという事実も確かに分かるんです。殺処分を涙をのんで受け入れて、またやり直している方たちもいるわけで、そのせいで自分の牛が売れなかったら嫌ですもん。そういう気持ちは分からなくはないです。だから何が正しいのかなというのは、いろいろな立場や、ケースバイケースによるのかなと。でも人間も牛も生きているっていうことには変わりないでしょってぼくは思って。

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『KUDAN』キャスト・スタッフ

「クラープ」というのは「しずく」「地球の涙」という意味があって。

──牛たち、動物たち名前が変わってますよね?
みんなかっこいい名前でしょ? 全部ウクライナ語です。ウクライナと言えば、チェルノブイリがある場所です。そこからちょっと文字ってみました。
「クラープ」というのは本当は「クラーピアほにゃらら」って長い単語があるんですけど、そこからいただいて。名前にはそれぞれに意味があって。「クラープ」というのは「しずく」という意味なんです。裏付けで言うと、「地球の涙」という意味です。ほかには「父」「母」「木」「葉」「大空」「風」「死」とか。
やっぱり名前って、そういうイメージや裏付けがありますよね。『ドラゴンボール』とかもそうですもんね。やっぱりそういう名前をつけたくなる気持ちがあります。
──カタカナの名前って難しいことが多いですけど、3文字、4文字ですっと入って来やすいですね。
マックスとか馴染みのあるアメリカ人系の名前ではないけど、けっこう素敵な名前がいっぱいできたなと。この中でぼくのお気に入りは「ネジュン」とか「ニジカ」とかあんまりなさそうですし。「モーラン」とかもかっこいいかなと。
──牛は擬人化、人の形で演じられるのですか?
そうですね。 

演劇論を持ってる俳優たちと一緒にやるって、とっても刺激を受けますね。

──ラストは決まっていますか?
今はちょっとどっちにしようか迷っているところです。どっちにするべきか。
──どんな作品になりそうですか。
4年前も今も、ファンタジーを書いてるんですけど、ぼくはファンタジーだとは思っていないんです。そういうふうに感じてもらえればいいなって。
今回も本当にいい俳優が集まってくれました。オーディションに60人も来てくれてびっくりしたんです。その方たちを含めて多くの人が「なぜこの舞台に立ちたいのか」「なぜその作品に携わりたいのか」という、俳優論というか、演劇論を持っています。そんな俳優たちと一緒にやるのは、とっても刺激を受けますね。
ぼく、この座組では中堅なんですよ。本当にいつも思うんですけど、いい先輩や後輩たちに育てられてるなと。
──書きたいことがあって、俳優たちも意識の高い人たちが集まって、いいですね。
楽しいですね。苦しいこともあるんですけど。台本もあとちょっとだからみんなも待ってくれてるんです。ぼくが苦しんでいるっていうのを分かってくれているので、待とうって言ってくれてるみたいです。今まで書いてきているのがおもしろいと思ってくれているから。でもたいがいにしろよといつ言われるか分からないですけどね(笑)。

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TOKYOハンバーグメンバー

俳優を観てもらったら、いろんなことが見えてくると思うんで。

──最後に見所を。
全部観て欲しいんですよね。本当にいい俳優ばっかりなので、俳優を観て欲しいな。俳優を観てもらったら、いろんなことが見えてくると思うんで。ぼくが書いているのは、本なので、それを演劇にしてくれるのは俳優だから。俳優がその世界に生きているというのを観て欲しい。ファンタジーの中に生きてるっていう様子を見て欲しいです。その結果お芝居全体が見えてくるといいですね。

 
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大西弘記
 
おおにしひろき○三重県出身。TOKYOハンバーグ主宰/劇作家/演出家/俳優。1999年に伊藤正次演劇研究所に入所し演劇を始める。2006年に自らの作品を上演するためTOKYOハンバーグを立ち上げ、以降すべてを脚本・演出担当する。


〈公演情報〉
 kudan

TOKYOハンバーグ
『KUDAN』
出演◇山本由奈 永田涼香 三枝悠平 小林大輔(以上TOKYOハンバーグ) 
上田尋 内谷正文(Frank Age Company) 宇鉄菊三tsumazuki no ishi)大内彩加officePORT) 甲津拓平流山児★事務所) 小林英樹 小山貴司 小山友香里テアトル・エコー 阪本篤温泉ドラゴン 白石花子劇団民藝 スニョン劇団俳協 鷹野梨恵子(無名塾 谷沢龍馬スタッフ・ワン 友澤宗秋 鳥越さやかZINGY ZAP Enterprise 中込俊太郎ULPS 中村榮美子少年王者舘 服部有香里 藤原啓児Studio Life) βワハハ本舗 星野真央ALBA) 本多由佳 ムラナカユカ 森田匠トラッシュマスターズ 米田敬トルチュ ※五十音順 他
●4/12〜16◎座・高円寺1
4/22・23◎シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢 大ホール(伊勢市観光文化会館)
〈お問い合わせ〉090-5807- 3966
http://tokyohamburg.com/


【取材・文・撮影/矢崎亜希子】



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☆TOKYOハンバーグ『KUDAN』東京公演チケットも日時・枚数限定でお得に販売中!

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ギリシア悲劇『エレクトラ』で共演! 麿赤兒・白石加代子インタビュー

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父を暗殺した母とその情夫への姉弟の復讐が描かれるギリシア悲劇『エレクトラ』。このドラマティックな作品が、豪華出演者と鵜山仁演出によって、4月14日〜23日の世田谷パブリックシアターを皮切りに、新潟、兵庫、相模原、水戸で上演される。
キャストは、母であるクリュタイメストラに白石加代子、娘のエレクトラに高畑充希、父アガメムノンは麿赤兒、そして弟オレステスには村上虹郎という、まさに新鮮な組み合わせとなっている。

今回、クリュタイメストラを演じる白石加代子はこの役はなんと4度目。一方、ギリシア悲劇にはこれが初出演となる麿赤兒。そんな2人に、作品と役柄のこと、そして演劇界に旋風を巻き起こした状況劇場、早稲田小劇場時代について話してもらった「えんぶ4月号」の記事を、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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世界一怖い女性の役がなぜ何度もくるのか

──麿さんは『エレクトラ』は初出演ということですが。
麿 僕はギリシア悲劇自体が初めてです。アレンジした踊りは作ったことがありますが。
白石 私はクリュタイメストラをこれまで4度演じているんです。なぜこの世界一怖い女性の役が何度も私のところにくるのかしら!(笑)という気持ちです。
──この役の激しい愛憎とか情欲などを演じられる人は、そう簡単にはいないからでしょうね。
白石 そのへんは1人の女としては、私にはないものですが、演じる楽しみはあります。いつもなんとか寄せ集めて、掻き立てながらやってきましたが、でももう出し尽くしたと思っていたのに(笑)、ああ、私はまたこの役をやるのかと。
──女性としては、エレクトラの復讐心のほうが理解できないという声もあります。
白石 確かにそうですね。でも父親を崇拝するあまり母親を憎むというふうに捉えたら、わかる気もします。今回のエレクトラの(高畑)充希ちゃんが若いから、以前『グリークス』(00年)で演じたときのように、血みどろで猛々しい母親という一面だけでなく、もう少し女の弱くて優しい部分も盛り込もうかなと。相手役も、『グリークス』では平(幹二朗)さんでしたが、今回は麿さんですから、また違うものになると思います。
──お二人の共演は?
麿 3度目ですね。『ゴドーを待ちながら』(94年)と『常陸坊海尊』(97年)かな。
白石 麿さんのことは状況劇場の時代から拝見していて、テントにのしのしと出ていらしただけで、どう言えばいのかしら、人間の肉体を超越した彫像のような、まるでギリシア悲劇の原型そのものというか、神のような…そういう存在でした。
麿 自分では全然分かりませんが(笑)。
──今回のアガメムノンについてはどう演じようと?
麿 今は導かれるままにとしか言えないんですが(笑)、他に老人やアポロンやトアス王という役も演じるので、勝手に共通項を見つけたいとは思ってます。
白石 今、おっしゃったことでピンときたのですが、今回の台本は、今までにない台詞が入っているんです。「父親と母親というものがいて、父親を好きな人間と母親を好きな人間がいる」なんて。つまりこの物語は男と女の闘いであり、父性と母性のせめぎ合いのようなものかもしれないなと。そう考えると、クリュタイメストラの解釈もまた変わってくるのかなと思います。

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それぞれの集団で特権的肉体だった2人

──先ほど白石さんから状況劇場の話が出ましたが、麿さんは早稲田小劇場は?
麿 観てますよ。喫茶「モンシェリ」の上にあった劇場にもよく行きました。その時代の早稲田小劇場で、加代子さんは1つの時代を作りましたからね。周り中から「とんでもないのが入ってきたぞ」と(笑)。
白石 早稲小と状況は交流はあったんですよね。早稲小は状況以外の劇団はちょっと無関心で(笑)、でも状況のことは無視できなかったの。
麿 僕らのほうはバカにされてると思って開き直ってましたからね。忠さん(鈴木忠志)を後ろから襲ってやろうかと(笑)、背が高くて背広着てカッコいいから。僕らは馬車馬みたいになって芝居やってるのに(笑)。
白石 いえいえ、めくるめくような方ばかりでした。あの時代って寺山(修司)さんも私たちも、唐(十郎)さんも外国にどんどん公演しに行きましたよね。演劇が文化の先頭切って走っていた時代で、そういう時代が一瞬だけどあったの。
──文化を牽引していましたし、演技スタイルでも革命を起こしました。
麿 加代子さんが入ったことで早稲小のスタイルが変わったんです。忠さんにとって白石加代子は特権的肉体だったわけです。
白石 「特権的肉体」は唐さんの言葉で、状況の皆さんこそ、そのものでした。
麿 ただ、アングラ時代は演技論が確立していたわけではないんです。それこそ早稲小では加代子さんを通じて出来てくる、唐にとっては僕ら役者たちを通じて出来てくる、そのベクトルから生まれた。そして、そういう破天荒と言われるような、傍若無人で実験的なところから、僕自身もぽつぽつ拾ってきたものがあるんでしょうね。

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舞台の上で5分、観客の目に耐えられればいい

──そういうお二人だからこそギリシア劇でもそのままで存在できるわけで、肉体も精神も鍛え方が違うという気がします。
白石 麿さんはその後、舞踏で徹底的に身体を検証していらっしゃって、私なんか足下にも及ばないですけど、こうやって40年、50年経ってから、2人でギリシア悲劇をやらせていただけるというのは、何かエッセンスは残ったんだなと思います。集団でよく演出家に言われたんです。「舞台の上で5分、客の目に耐えられればいいよ」と。5分飽きないで観てくれればすごいことなんだと。麿さんの舞踏は、そういうことを言葉を使わないでやっている。その基本は同じなのかなと。私はあまり色々なものを巧みに演じられるほうではないのですが、全部削いでしまっても1つだけ、せめて5分耐えられればいいかなと。そして内容が充実している本と演出に寄り添っていけば、お客様は最後まで観てくださる。だから基本はそれで、麿さんもそういうことを常に考えながら来られたのかな…。
麿 踊りはそこにいればいいんですが、いるにはどうしたらいいんだというのがある。その空白までお客さんは観てくれるだろうかと。お客さんの想像力というのは裏腹ですからね。そのために言葉や声があるといいのですが、手続きだけに終わるとつまらない。ましてやギリシア劇は、内臓から出てくるような言葉をそのまま吐き出すみたいなもので、それを言語化されているのが加代子さんなんです。
──そんなお二人が、この作品へかける思いを最後にぜひ。
白石 私にとって今回で4度目になるこの『エレクトラ』ですが、ギリシア劇といっても、今回はちょっと室内劇のように空間を狭めたものになりそうで、人間関係が少し細かく繊細に出てくるかなと思っているんです。麿さんとの夫婦関係がどうなるか楽しみですが、あまり会話がないんですよね。
麿 すぐ殺されてしまうから(笑)。アガメムノンは白石さんと高畑さんから抽出するしかないと思っているし、それぞれの違う視線を引き受けるので、ちょっとピカソの絵のように歪んだ姿になるんじゃないかな。
白石 エレクトラが喋るお父さん、私が喋る夫はぎくしゃくしますからね。
麿 いっそ出てこないほうがいいかもしれない(笑)。そんな大層な親父じゃないということで(笑)。

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白石加代子・麿赤兒

まろあかじ○奈良県出身。64年より土方巽に師事、65年、唐十郎の劇団「状況劇場」に参画。唐の「特権的肉体論」を具現化する役者として、演劇界に大きな変革の嵐を起こす。72年、舞踏カンパニー「大駱駝艦」旗揚げ。国内外で新作を上演し続けながら、役者としても映像、舞台で活躍中。近年の主な舞台は『毛皮のマリー』『荒野のリア』『レミング』など。舞踏批評家協会賞、文化庁長官賞表彰、ダンスフォーラム賞・大賞、東京新聞制定「第64回舞踊芸術賞」などを受賞。

しらいしかよこ○東京都出身。67年、劇団早稲田小劇場(現SCOT)に入団。黎明期小劇場演劇の興隆のなか、数々の伝説的名舞台を生んだ。89年、SCOTを退団。以来、映像や舞台で幅広く活躍中。最近の主な舞台は『百物語』『笑った分だけ、怖くなる』『死の舞踏』『漂流劇 ひょっこりひょうたん島』『愛情の内乱』『原作ミヒャエル・エンデより〜オフェリアと影の一座』 など。読売演劇大賞優秀女優賞、芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章、旭日小綬章、菊池寛賞など受賞多数。


〈公演情報〉
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りゅーとぴあプロデュース『エレクトラ』
演出◇鵜山仁
原作◇アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデス(ギリシア悲劇より)
上演台本◇笹部博司
出演◇高畑充希 村上虹郎 中嶋朋子 横田栄司 仁村紗和/
麿赤兒 白石加代子 
4/14〜23◎世田谷パブリックシアター、
4/25・26◎りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場、
4/29・30◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール、
5/2◎相模女子大学グリーンホール 大ホール
5/6・7◎水戸芸術館・ACM劇場
〈お問い合わせ〉MTP 03-6380-6299
http://www.ryutopia.or.jp/performance/event/303/ 





【取材・文/宮田華子 撮影/安川啓太】



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