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稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『遠ざかるネバーランド』

インタビュー

辻仁成の小説の舞台化『99才まで生きたあかんぼう』間もなく開幕! 村井良大・玉城裕規インタビュー

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「人間は死ぬまであかんぼうなんだと思いませんか?」
宇宙から見れば人の一生は、皆あかんぼうなのだから、驕らず、ただ静かにこの世界を受けとめていけたら。小説家辻仁成が、そんな願いを込めて書き綴った小説『99才まで生きたあかんぼう』が、辻自身の脚本・演出により舞台化され、2月22日によみうり大手町ホールで初日を開ける。(3月4日まで。以後、名古屋、福岡、大阪でも上演。)
1人の男の0才〜99才までが描かれる一大叙事詩の、様々な年代に登場する多彩な人々を演じるのはたった6人の男優たち。人の一生分のあらゆる場面が、凝縮された空間の中に少数精鋭のキャストで浮かび上がる、濃密なステージだ。
そんな作品に出演する村井良大と玉城裕規が、新たに生まれ出る舞台への意気込み、辻作品と演出の魅力、また、3年ぶりの共演となる互いへの信頼感を語り合ってくれた「えんぶ2月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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玉城裕規・村井良大

幸せな時も辛い時もある人生のリアルを描いている

──原作を読んだ感想から教えてください。
玉城 まず、すごく読みやすかったです。1人の男性の人生が1才ずつ、見開き2ページで展開されていて、とても珍しい表現の小説だなと思ったし、あっと言う間に読めました。
村井 自分と同じ年代のところが誰にでもあるから「どの年代の人にも読んでもらえる小説を書きたかった」という辻さんの願いが込められているなと。逆にもっと年齢を重ねてから読み返したら、感じ方が変わっているんだろうなとも思ったし。ずっと読み続けられる小説ですね。
──特に、自分の年齢のページが気になると思うのですが、どう感じましたか?
村井 僕はちょっと悲しい気持ちになった。ならなかった?
玉城 うん、切なくなったよ。1つには主人公が自分よりも様々な経験をしていて、大人だから。あぁ、同じ年でこんなに違う、というのもあった。
村井 10代から20代にかけて、かなり波乱万丈だからね。
玉城 家庭内の不和があったり、登校拒否にもなったり、過酷なことがたくさんあって。
村井 とても幸せな時もあれば、すごく辛い時もある。人生ってこういうものだよな、というリアルな感覚。それはやっぱり辻さんの人生経験から出て来たものだと思うから、演じる僕たちがどれだけ人生経験をしてきたかも、問われてくるなと。「幸福に気づき、成功を収め、人生に翻弄され、挫折を知ったあかんぼう」だよ? 玉ちゃん挫折なんてしてないでしょう?

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玉城 いや、してるから(笑)。してる、してる!
村井 いつ?
玉城 いつって、それ具体的に訊く?(笑)そう言ったら10代の頃からしてるよ。
村井 10代から挫折してたの?
玉城 サッカーやってたからね。小さいことで言えば、試合に出られないのも挫折だったし、怪我もしたし。
村井 あぁ、怪我はキツイよね。
玉城 うん、出られない大会とかもあったから。そういう良大は?
村井 挫折は多々あるよ。もう本当に多々あるけど、強烈なのが辻さんの作品に初めて出させてもらった舞台、『醒めながら見る夢』で悪魔役をやった時。その時も6人芝居だったんだけど、1ヶ月の稽古の中で辻さんが「天使と悪魔は今まで見たことのないような世界に連れて行ってくれ」とおっしゃって、ものすごくたくさん稽古したのに、その稽古最終日に「全部変えます」って言われて(笑)。相方の古川(雄大)君と僕のステージングを全部やり直すってなった時に、この1ヶ月の苦しみはなんだったんだろうって、無茶苦茶泣いた。「やっとここまで創り上げて来たのに、なんでそんなこと言うんですか」って。でも辻さんは「面白くする為だから仕方がない。次行こう!」って明るく(笑)。僕はもう打ちひしがれて、まぁ、初日は無事に開いたんだけどね。
玉城 僕その話、辻さんから聞いた。
村井 えっ? 本当に?
玉城 僕が『海峡の光』で初めて辻さんの舞台に出た時、「良大と古川雄ちゃんがすごく頑張ってチャレンジしてくれて、2人は舞台の笑いを持っていったから、君たちもそうなって」と(笑)。「そうなって」って、いきなり言われてもと思ったけど、辻さんが笑いのある舞台にしたいんだなってことはわかったから。
村井 でもそうか、辻さん覚えていてくれたんだ。
玉城 しかも、良大は挫折の話としてしたけど、辻さんは成功例として僕に話してたからね。
村井 あぁ、それ嬉しいな。
玉城 うん。だから、やっぱりこうやって話していても、『99才まで生きたあかんぼう』って、自分の人生を掘り出していく作業になっていくんだろうなと。そうしないと演じられないというか、きっと自分と向き合う作業が増えていくね。

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演じていて作品に陶酔していく

──辻さんの舞台作品の魅力をどのように感じていますか?
村井 辻さんの創るものは、普通の表現よりも更に飛び抜けることができるし、想像を膨らませてもらえる作品だなと。
玉城 わかる、わかる。自分で演じていて、どうしたって作品に陶酔していくの。
村井 言葉の使い方がすごく上品で綺麗で、でもロックなんだよね。綺麗なものを綺麗なまま読むと違う。どこかに自由さがないと。辻さん自身がロックな人だから。
玉城 柔軟でいないとダメ。表現が凝り固まると違ってくる。幅を持っていないと。今回は音楽もSUGIZOさんだし。
村井 まさにロックな方たちばかりだね。
玉城 しかもたった6人でこれだけの題材をやるわけで。辻さんはアーティスティックに試行錯誤して、様々なやり方を試していく方だから、それに対応してこちらからも色々な表現を出していかないと。
村井 しかもそのライブ感も楽しんでいて、なかなかいないタイプの演出家さんだよね。最終日に変わることもあるし(爆笑)。

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──そんな作品で共演するお互いの魅力についても話してください。
村井 玉ちゃんは優しいし、柔軟で、縁の下の力持ちにもなってくれる人なので、一緒に出ていて、すごく安心感がある。
玉城 それ同じ。良大と一緒って聞いただけで、嬉しくて楽しみだし、安心。
村井 電話で話したりしていても「今度いつ一緒にできるかな? 一緒にやりたいね」と必ず言っていたから。『里見八犬伝』(2014年)以来の念願の共演だし、しかも『里見』ではあまり絡みがなかったから、今回は絡みがたくさんあるといいなって。
玉城 いや、確実に絡むよ!(笑)6人でこの題材をやるんだから。
村井 そうだよね! そういう意味でもすごく楽しみだし、辻さん自身も久しぶりの舞台で気合が入っていると思うから、辻さんの世界を余すところなく舞台上に乗っけていきたい。どんな年代の人が観ても共感できる作品だから、たくさんの人に観て頂きたい。
玉城 色々な役を皆で演じるだろうし、役者人生で得て来た全てを出さないと板の上には立てない作品だと思う。小説で感じた感動を大切に、6人の役者とスタッフで辻さんの世界観を表現できるように、お客様の感情を揺さぶれるように、頑張っていきたいね!

【プロフィール】 


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むらいりょうた○東京都出身。07年テレビドラマ『風魔の小次郎』で初主演。また『仮面ライダーディケイド』などでも活躍。近年は舞台作品で大役を立て続けに演じて、存在感を高めている。主な舞台作品に『里見八犬伝』『マホロバ』『カワイク・シアワセでなくちゃいけないリュウ』『殺意の衝動』『真田十勇士』『キム・ジョンウク探し〜あなたの初恋探します』『RENT』『きみはいい人、チャーリー・ブラウン』『アダムスファミリー』など。

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たまきゆうき○沖縄県出身。強い印象を残す美貌で、舞台を中心に活躍中。主な出演作品に、舞台『弱虫ペダル』『Messiah メサイア』シリーズ、『海峡の光』『里見八犬伝』『カレーライフ』『曇天に笑う』ミュージカル『黒執事 〜NOAH’S ARK CIRCUS〜』『紅き谷のサクラ〜幕末幻想伝新選組零番隊〜』など、映画『のぞきめ』『新宿スワンII』『咲─Saki─』など。

〈公演情報〉
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『99才まで生きたあかんぼう』
原作・脚本・演出◇辻仁成
音楽◇SUGIZO
出演◇村井良大 松田凌 玉城裕規 馬場良馬 松島庄汰 松田賢二
●2/22〜3/4◎よみうり大手町ホール
●3/6・7◎名古屋市芸術創造センター
●3/20◎福岡市民会館 大ホール
●3/24◎梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
〈お問い合わせ〉東京公演/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10時〜18時)


【取材・文/橘涼香 撮影/山崎伸康】


ミュージカル『陰陽師』
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ワジディ・ムワワドの“約束の血4部作”の1作目『岸 リトラル』間もなく開幕! 小柳友・鈴木勝大 インタビュー

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レバノン出身の劇作家ワジディ・ムワワドによる『炎 アンサンディ』は、2014年と2017年にシアタートラムで上演され、演劇界に大きな衝撃を与えるとともに、数多くの演劇賞に輝いた。その『炎 アンサンディ』を含むムワワドの “約束の血4部作”の1作目となる『岸 リトラル』が、2月20日からシアタートラムで上演される。(3月11日まで)

出演者は岡本健一、栗田桃子、小柳友という『炎 アンサンディ』メンバーに加え、新しく亀田佳明、鈴木勝大、佐川和正、大谷亮介、中嶋朋子と、若手からベテランまで演技力に定評のある俳優陣が顔を揃えている。

【ストーリー】

青年ウィルフリード(亀田佳明)はある夜、ずっと疎遠だった父イスマイル(岡本健一)の死を突然知らされる電話をとった。彼は死体安置所で変わり果てた姿の父親と対面する。ウィルフリードは自分を生んですぐにこの世を去った母ジャンヌ(中嶋朋子)の墓に、父の亡骸を一緒に埋葬しようと決意するのだが、母の親族たちから猛反対される。どうやら、彼の知らない父と母の関係があるようだ。その語られなかった封印された父母の過去とは何なのか? 突如起き上がった父の死体とともに、内戦の傷跡がいまだ癒えぬ祖国へ向けて、奇妙な父子の旅がはじまる……。 

 

演出を手がけるのは、『炎 アンサンディ』と同じ上村聡史。上村が「この物語は、死んだ父の埋葬場所を探し旅する子どもたちの話だ。しかし、既にこの世にはいない父が、事あるごとに子どもたちにつきまとう」と解説しているように、物語にはさまざまな「息子たち」が登場する。その「息子たち」の中で、アメ役を演じる小柳友とマシ役の鈴木勝大に、まもなく稽古が始まるという時期に作品に挑む思いを語ってもらった。
 

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ふとした瞬間に、今も『炎 アンサンディ』が浮かんでくる

──この『岸 リトラル』は、『炎 アンサンディ』(以下、『岸』と『炎』)を含む“約束の血4部作”の1作目となるわけですが、鈴木さんは『炎』は、ご覧になったそうですね。
鈴木 再演を拝見しました。まずシアタートラムに足を踏み入れたときに目に入ったのが素舞台に近い状況で、そこから登場人物が現れて喋りだした瞬間、一気に世界が広がっていったのがすごく印象に残っています。出ている役者さんたちのパワーに同化したような気持ちで、一緒に物語を突き進むような感覚で観ていました。
──小柳さんは出演者の側でしたが、どんな思い出がありますか?
小柳 思い出すことは沢山あって、今もふとした瞬間にふっと色々なシーンが浮かんでくるんですが。とくに、ご一緒していた中嶋しゅうさんがお亡くなりになったことで、舞台に立つということへの覚悟を、改めて突きつけられたような気持ちになりました。命をかけて舞台に立つということが、自分にもできるのだろうかと。
──物語の始まりが、公証人の中嶋しゅうさんの台詞で、素晴らしかったですね。
鈴木 「確かに、確かに、確かに」と3度繰り返すんですけど、その台詞から、一体何が始まるのだろうと惹きつけられました。そして、明確な暗転とかセットの転換とかはなくて、登場する人間の力で、まったく別の場所と時間にパッと切り替わる。これは演出の力なのか役者の力なのか、どういう力なのだろうと思いながら観ていました。
──作品の内容はどう受け止めていましたか?
鈴木 いや、もう感想なんか簡単には言えないような気持ちというか(笑)。
小柳 そうなんですよね。観にきてくれた方に終演後にお会いすると、皆さん言葉が出てこないみたいな(笑)。演じている僕らは、もちろん深く入り込んではいますが、そこまで重くなってはいなくて(笑)。
鈴木 観ていてその世界に入りきっていたから、なかなか抜け出せなかったんだと思います。
──初演の作品作りは、たいへんだったのでは?
小柳 僕の役のシモンは、具体的にボクシングとか課題もありましたけど、なによりもシモンの人生が壮絶すぎて、僕の人生ではあり得ないことばかりで、でもそこに自分を寄せていかなくてはならない。その作業が体力的にも精神的にもしんどかったです。でも再演では、岡本(健一)さんに楽しみ方を教えていただいたこともあって、すごく楽しかったです。
──楽しみ方というのは?
小柳 シモンはつらい人生だけど、それを演じている自分を客観的に見ることが必要だし、演じる以上、苦しむのではなく楽しんだほうがいいと。役を本当に楽しむところに行くには、相当がんばらないといけないわけですが、そこへ行くためにも、自分の中で作品や役を深めていこうという思いになれました。それは岡本さんだけでなく、しゅうさんもおっしゃっていて、いつも楽屋を出るときに「よし、楽しんでこよう!」と。その言葉にいつも勇気をもらっていました。
 

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出てくる人間たちがウィルフリードの色々な面を照らす

──鈴木さんは、そんな舞台に出ることになった気持ちは?
鈴木 実は『炎』の再演を観たときは、すでに『岸』への出演が決まっていたんです。オーディションのような形で台本を読む機会もあったので、自分なりに『岸』の世界については想像したりしていました。でも『炎』は本も読んでなかったし、ストーリーもわかっていなかったから、舞台を観たときは衝撃で、想像していたものと違うというより、想像をはるかに超えている舞台だったので、正直「まずいな」と思いました(笑)。
──しかも、お二人ともアメとマシという本役以外に、何役も演じるのですね。
小柳 僕は5役です。『炎』では僕はシモンとあと1役くらいだったのですが、岡本さんや中村彰男さんは6〜7役くらい演じていたと思います。それをそばで見ていたことが、今回は役に立つかなと。お二人とも場面ごとにまったく違う人間になって出てくるし、その役としてちゃんと返してくださるので、毎回すごいなと思っていました。
鈴木 僕も、今回マシという役とは別に5役くらい演じるのですが、どの役も基本的に、息子ウィルフリードの色々な面を見せるためにいるところもあると思うんです。この物語は父イスマイルとウィルフリードの二人が変化していく話だし、ウィルフリードのイメージするシーンも出てきますし、彼の様々な面を照らすために、それぞれの役割もあると思うので、そこも自分の責任の1つだと思ってやっていきたいなと。そのうえで、それぞれの役柄自体が自分とは年齢も立場も立ち位置も違うので、そこを演じ分けていくことが必要だと思っています。
小柳 僕も1人1人を丁寧に作っていけば、それぞれ違う人に見せられるかなと思っていて、それぞれの役が自分という媒体を通してどう見えるのか、楽しみでもあるんです。でもあまり狙いすぎると恐いなと思っています。上っ面だけ変えてやれるような作品ではないので。
──ムワワドの戯曲は、政治や宗教、死生観、様々なテーマが入っています。その複雑な構造を、『炎』ではどうクリアしたのですか?
小柳 『炎』は、麻実れいさんが演じられたナワルの物語という主軸があって、その過去へと辿っていくという物語でしたから、主軸としての麻実さんがいてくれたことで、ある意味、自分たちの位置も把握しやすかったんです。でも『岸』は、時空も場所も役割もそれぞれなので、関係性をどう自分たちで作っていくかが課題だと思います。ただ今回も岡本健一さんがいらっしゃるので心強いなと。ダメ出しはもちろん、この映画を観たらいいとか、イメージを一緒に考えてくださったり、それは他の方たちもそうでしたが、カンパニーが1つになって作れたのはすごく有り難かったです。
 

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根本的にはいつの時代も変わらない。だから今やる意味がある

──『炎』は母と子がテーマでしたが、『岸』は父と息子です。
小柳 この物語に出てくる「父」は、たくさんの「息子たち」の父であるので、たぶん観ている方たちの自分の父親への思いも、いやでも見えてくると思います。
鈴木 この作品の中にある世界、環境とか起きている事象などは、今の僕らの世界で現在起きているものとは全然違うものだし、ここで描かれている関係は僕らの中にはなかなかないものなんですよね。でもそのうえで、根っこの部分ではすごく理解できたり、人間の感情は成長期に何が足りないとどうなってしまうのか、そういう根本はいつの時代も変わらないんだなと。だから今、ここでこの作品を上演することは意味があるんだと思います。
──3人の息子はそれぞれ父親との関係が異なりますね。自分の役に重なるところは?
小柳 アメは父親を殺してしまったわけですが、そのことが自分の心の傷としてすごく大きいからこそ、内面を人に見せることが少ない人間かなと。そのアメがどう生きてきたか。暴力的になる気持ちもわかりますし、周りが見えていないという意味では、『炎』の初演時の自分と一緒だなと。あの経験はもしかしたら役に立つかなと思ってます(笑)。
鈴木 僕は、すごく個人的な見解なんですけど、男って自分のルーツとか知りたがるなと。
小柳 あるね!
鈴木 そこがぐらついたりするとすごく不安になったりする。マシはすごくそこを知りたいのに、知ることができない不安とか恐怖があって、ゆえに今の自分がなぜ生まれてきたか、なんのためにここに居るのかが不明瞭なまま大きくなってきた。それは僕も、状況は違っていてもわからないことはなくて、存在の不安みたいなものが男にはあるのかなと。女性はそういう理由とかルーツとか関係なく、そこに存在していられるのを感じます。
 

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しゅうさんも、きっと観にきて、ダメだししてくれそうです

──演出の上村さんの印象も伺いたいのですが。
小柳 優しい方ですし、細かく丁寧に演出してくださいます。演出される作品もよく観せていただくのですが、繊細ですし、僕が言うのも生意気ですが見せ方が本当に上手だなと。シアター風姿花伝で上演した『悲しみを聴く石』とか、最後は吐きそうになるぐらい(笑)リアルで、本当に人間の内面の描き方がうまい方だなと思います。
鈴木 僕は3度ほどお会いしていて、最初はさっきも話に出たオーディションのときで、1人に40〜50分くらいかけてくださって、読んだ場面をその場で「こういうブレスでこういう言い方でやってみて」と。僕はかなりアップアップになりましたが(笑)。でもそのときのやり取りで、絶対ご一緒したいなと思いました。今回、演出していただけるのが本当に嬉しいです。
──戯曲について確かなイメージを持っている方なので信頼できますね。
鈴木 とくに今回の作品は、人によって読み方が違う部分は必ずあるだろうなと。それを上村さんなら率先して導いてくれるだろうし、その向かう方向を想像しながら稽古するのは、とても楽しみです。
──そういえば今回、お二人は初共演ですね?
鈴木 そうなんです。一応共通の知り合いはいますけど、話すのは初めてです。
小柳 でも、もう馴染んでますけどね(笑)。
鈴木 前回の『炎』に出ていたということで、本当に心強いです。
小柳 あまり頼りにならないと思うけど(笑)。でも一緒に作れるのがすごく楽しみです。
──色々な意味で興味が尽きない作品ですね。最後に改めてメッセージを。
小柳 この作品をできること、板の上で生きられることが幸せです。色々な人の思いを背負って立たなくてはいけないのですが、僕が信頼している方々が出演しているので、素晴らしい舞台になるのは間違いないです。亡くなったしゅうさんも、きっと観にきてくれるかなと。ダメ出しされるのではないかと(笑)思っています。
鈴木 こういう作品を経験させていただくことに感謝していますし、本当に貴重だなと思っています。今も世界にはこういう状況はあるわけで、台本を読んでいるとどこまでも考えさせられます。稽古でそれをどこまで自分が理解して、共演の皆さんと一緒に作り上げていけるか。でも、素晴らしいものになると確信しているので、ぜひ幅広く色々な方々に観ていただきたいです。
 

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鈴木勝大・小柳友

こやなぎゆう○1988年生まれ、東京都出身。テレビ、映画で活躍した後、舞台へも活動の場を広げる。主な出演映画は『トウキョウソナタ』『がじまる食堂の恋』『アオハライド』『ANIMAを撃て!』『娼年』など。舞台は『家康と按針』『非常の人、何ぞ非常に〜奇譚 平賀源内と杉田玄白〜』『炎 アンサンディ』『BENT』『すべての四月のために』など。2015年から作・演出・出演を自らがおこなうユニットGus4を兄弟で立ち上げ、二人芝居にも挑戦している。

すずきかつひろ○1992生まれ、神奈川県出身。第22回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを受賞し、芸能界デビュー。2012年『特命戦隊ゴーバスターズ』で主演を飾り、ドラマ初主演を果たした。以降、ドラマ『妄想彼女』『弱くても勝てます〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜』、映画は『帝一の國』『一礼して、キス』、舞台は『ロマンス2015』『シブヤから遠く離れて』『何者』などに出演。

〈公演情報〉

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『岸 リトラル』
作◇ワジディ・ムワワド
翻訳◇藤井慎太郎
演出◇上村聡史
出演◇岡本健一 亀田佳明 栗田桃子 小柳友
鈴木勝大 佐川和正 大谷亮介 中嶋朋子
●2/20〜3/11◎シアタートラム
〈料金〉6,800円 高校生以下3,000円 U-24 3,400円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515
〈公演HP〉https://setagaya-pt.jp/performances/201802kishi.html




【取材・文/榊原和子 撮影/アラカワヤスコ】

 
 


ミュージカル『陰陽師』


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『熱海殺人事件 CROSS OVER 45』味方良介・石田明インタビュー

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紀伊國屋ホールで恒例となっているつかこうへい公演が2月17日に幕を開ける。(3月5日まで)。
今年は『熱海殺人事件』の上演45周年を記念して「CROSS OVER 45」と副題をつけて上演する。
その作品で2度目の木村伝兵衛部長刑事役をつとめるのは、昨年、新世代の伝兵衛に抜擢され、役者としての資質を輝かせた味方良介。また、富山から東京警視庁に栄転してきて伝兵衛に対峙する熊田留吉刑事には、一昨年の『新・幕末純情伝』で坂本龍馬役に挑んで気を吐いたNON STYLEの石田明。
これからのつか作品を担う役者といってもいい2人に、今回の『熱海殺人事件』と、つか作品にかける想いを話してもらった「えんぶ2月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介。

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味方良介・石田明

味方伝兵衛をさらに跳ねさせるために

──味方さんは2度目の木村伝兵衛ですが、その話を聞いたときは?
味方 「よしっ!」でしたね。昨年一度やらせていただいて、その中で得たものが沢山あって、でも「これか!」と掴んだときは公演が終わってしまったという部分もあるので、もう1回この作品にぶつかることができる、新たな自分でもう一度向き合えるという喜びはすごくあります。
──そして石田さんは、『新・幕末純情伝』で素晴らしい龍馬を演じましたが、今度はいよいよ『熱海殺人事件』ですね。
石田 嬉しいですね。『新・幕末』では、味方くんや皆さんのおかげで成長させてもらったので、今回は味方伝兵衛をさらに跳ねさせたいなと。そのためのキャスティングだと思っています。
──もしかしたら部長刑事のあの椅子を奪いそうな強力な熊田刑事ですね。
石田 それくらいの勢いで行きます(笑)。味方くんの新境地が見たいなというのはホンマに思っていて、『新・幕末』のパワー倍掛けで挑みたいと思います(笑)。
味方 僕もこのキャスティングを聞いたとき、「おお、石田さんが熊田ですか!」という、いい意味での衝撃がありました。年齢では僕のほうが若いけれど、伝兵衛ですから絶対負けられない、熊田を潰しにいかなくてはいけないので。でも、石田さんとは『新・幕末』を共に戦い抜いた仲なので、そこは役の関係は変わっても、またどうやってお互いに突っ込んでいくかは楽しみです。
石田 こういう関係って、普段からちゃんと作っていかないとダメだと思うんですよ。だから稽古が始まったら、基本的には味方くんにおごってもらう形で(笑)。
味方 そこですか(笑)。

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つかさんの言いたいことは言葉の裏の部分に詰まっている

──石田さんは『熱海殺人事件』という作品にどんな印象がありますか?
石田 人間の底の部分というか、本当にどん底の部分、それを隠したり見せたりを、ずっと続けていく。役者も、表と裏の顔を使いながら、表でぶつかり合うところ、裏でぶつかり合うところ、表と裏でぶつかるところと色々な形で絡んでいく。そこが面白いし、それだけに演じる側も相当パワーいるなと思いました。
──なかでも伝兵衛は、自分でボケツッコミをしながら、熊田をからかったり水野婦警を口説いたり、忙しいですね。
味方 めちゃくちゃです(笑)。でも、本当は見せていない裏の部分がすごく難しいなと思っていて、なぜこう言うのか、その裏には何があるのか。おそらく、つかさんの言いたいことはそこに詰まっているので、そこを自分なりに理解していかないといけないんです。
石田 伏線がすごいよね。「え、そんな先の事を言ってたの?」みたいな台詞が沢山あるから。
味方 そう! でも、それをそこで見せちゃったらまた違ってくるので。あとで、「あれか!」みたいになるから、かっこいいわけで。
──伝兵衛は冒頭のたたみかけるような長台詞が有名で、早口ですし難関ですが、味方さんはきっちりクリアしていましたね。
味方 かなり頑張りました。僕はちょっと走りすぎる癖があるので、言葉がブワーっと行かないようにセーブしながらやってたんですが。それは今回も自覚しながらやりたいです。行きすぎず、抑えていく、自分に負荷をかけていくのが今回の課題です。
──石田さんの『新・幕末』での台詞も見事でした。その経験で『熱海』はどう挑みますか?
石田 龍馬って、実は1対1ばかりなんです。だから実はお芝居がやりやすいんです。でも『熱海』の熊田は、けっこうあちこちに突っ込んでいく人で。
味方 熊田は一番お客さん目線ですからね。みんなに翻弄されるし、相当たいへんです。
石田 ただ、すごく笑えるところも沢山あって、やっぱり笑いってすごく難しいと思うんですよ。でもそこが僕が活躍できるところだと思うんで、この作品の一番MAXの笑いを取れるようにはしたいなと思ってます。伝兵衛に「貴様!」っていう台詞だけで100パターン考えていこうと(笑)。
味方 本当に考えてきそうだな(笑)。そういう安心感があって、石田さんだったら任せられるというか。「ここは頼みます。俺ちょっと後ろで休んでますから」みたいな(笑)。
石田 ははは(笑)。伝兵衛が水飲んでるのを、客には見せないぞくらいの気持ちで、頑張ります(笑)。

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2時間フルスロットルで走り抜く!

──役者としての石田明はどんな人ですか?
味方 一緒に舞台をやっていて、2時間フルスロットルでいられる人です。つかさんの作品は、途中でパワーが落ちてはダメなんです。『新・幕末』で本番終わって喉カスカスなのに、次の日むちゃむちゃ声出るじゃん、みたいな(笑)。本当にフィジカルな部分が強いから、僕も安心してぶつけられるんです。
石田 正直、最初はつか作品の世界はまるでわかってなくて、でも皆さんの稽古を見て、自分なりに付いていきながらも不安は残ってたんです。でも本番が始まってからすごいパワーを貰って、そこから、この作品はこういうパワーでやればいいんだ、龍馬はこういう役なんだと、作品も役もわかっていった感じでしたね。
──その経験がその後の仕事にフィードバックした部分などは?
石田 めちゃくちゃありますよ。最近、けっこう後輩の漫才とかにダメ出しする仕事が多いんですけど、でも、ボケツッコミとかはあんまり言わなくて、言うのは、やっぱり関係性のこととかで、これを深くするだけで、ボケもツッコミも弱くていいと。「こいつがこれをしたい、でもこいつが邪魔するから、ここが熱が帯びるわけでしょ?」とか、そういう作り方をしていったら、4分間なんか一瞬で走り切れるんです。その熱量を作らずに、面白いボケツッコミだけを考えていくから、ブツ切れみたいになっちゃう。でも、こういうことが言えるようになったのは、やっぱり演劇を始めてからで。
──漫才も演劇論で分析できるのですね。すごいですね。では最後にぜひ『熱海』への意気込みを。
味方 僕は2度目の『熱海殺人事件』になりますが、共演者も変わるので、もう一度新たな気持ちで作り上げていこうと。やっぱり熱いものを見せたいし、石田さんとか、他のキャストのお客さんが、初めて『熱海』を観て、「やっぱり熱さっていいよね!」と思って貰えるような、そういう舞台を作りたいです。
石田 僕は稽古に入る前に骨折しないように(笑)。
味方 本当にそうですよ! マジでそうっす! 稽古中、怖かったもん(笑)
石田 本当に迷惑かけたんで、それだけはないようにしたいです。そして、子供ができたので、たぶん子供も劇場に来て、モニターで声を聞いてるだけかもしれないですが、そこにもちゃんと熱い思いを届けられるように、頑張りたいと思います。

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味方良介・石田明 
 
みかたりょうすけ○東京都出身。舞台を中心に活躍中。2011年デビュー。最近の主な出演作品は、残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』、PONKOTSU-BARON project第2弾『回転する夜』、ミュージカル『グランドホテル』、『新・幕末純情伝』、舞台版『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、舞台『Take me out』、『熱海殺人事件』、〜崩壊シリーズ〜『リメンバーミー』、『幽劇』、『ウエアハウス〜Small Room〜』『ミュージカル「黒執事」-Tango on the Campania -』など。
 
いしだあきら〇大阪府出身。井上裕介とともに2000年にお笑いコンビ「NON STYLE」を結成。07年に「爆笑オンエアバトル」9代目チャンピオンに輝き、翌年に東京進出。同年に「M-1グランプリ」で優勝を果たすなど、高い評価を得ている。脚本家、俳優としても活躍中。最近の舞台は、『スピリチュアルな1日』(主演)、舞台『ダンガンロンパ THE STAGE〜希望の学園と絶望の高校生〜』(出演・演出)、劇団間座旗揚げ公演『恋の虫』(脚本)、『新・幕末純情伝』など。

この公演の稽古場レポートはこちら
 http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52045964.html

〈公演情報〉
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『熱海殺人事件』CROSS OVER 45
作◇つかこうへい
演出◇岡村俊一
出演◇味方良介 木ゆりあ  敦貴(a-X’s)/匠海(a-X’s)[Wキャスト] 石田明   
●2/17〜3/5◎紀伊國屋ホール
〈料金〉6,500円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉東京音協  03-5774-3030 (平日11:00〜17:00)
〈公演HP〉  
http://www.rup.co.jp



ミュージカル『陰陽師』
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実在の詩人たちの物語 日本初演『BLOODY POETRY』間もなく開幕! 主演・猪塚健太インタビュー

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34年前にロンドンで初演以来、欧米各地で上演されてきた『BLOODY POETRY(ブラディ・ポエトリー)』が、2月8日に日本初演を迎える。(18日まで。赤坂 RED/THEATER)
登場する英国の実在の詩人役で主演するのは、猪塚健太。アミューズの劇団プレステージに所属し、4月に映画『娼年』の公開も控えるなど、そのまっすぐな演技で活躍が期待される若手俳優だ。
その猪塚にとって、今作は劇団を飛び出した外部初主演、初翻訳劇。多彩なキャストも全員初共演となる。
登場するのは全員が実在の人物。若き彼らがスイスで出会い、今も知られる名作『フランケンシュタイン』や『吸血鬼』が生まれていく。今作は、そこに確かにあった若者たちのもがき、葛藤、そして世界を変えようとする信念を描いた青春群像劇だ。主人公の詩人パーシー・ビッシュ・シェリーを演じる猪塚に作品の魅力を語ってもらった。

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「世界を変えるんだ」と信じて生きた実在の人物


──演じるパーシー・ビッシュ・シェリーは実在の人物ですね。
今回のオファーをいただくまでビッシュのことは知らなかったんです。調べてみると、『自由主義』を世界に訴えることに人生を賭けた詩人。29歳で死ぬまで「世の中は変わっていかなきゃいけない」と信じ続けた人でした。それでも、母国からは受け入れられず認められず、時にはずっと一緒だと思っていた人からもひどいことを言われたりする…。物語は、彼に関わる友人や妻たちとの20代の青春の物語です。
──ビッシュの訴えた『自由主義』はとても奔放で、恋愛も自由な人だったようですが…。
まさに自由恋愛主義者。フリーラブなので、今の世の中だったら絶対に謝罪会見しなきゃいけないようなことをしてる。ビッシュも、妻になるメアリーも「自由であることが正しいんだ、そうあるべきなんだ」と信じて、駆け落ちを繰り返したり、いろんな人を愛したりしています。けれども、自分たちはそれが正しいと思って実践していながら、恋愛のことになると嫉妬やもやもやした気持ちも芽生えたりする。
──劇中には実際にビッシュが書いた詩もたくさん登場しますね。
魅力的な詩です。「自分が世界を変えるんだ」という強い思いを込めて書かれています。その信念は時に揺らいだり、悲しみや葛藤もある。自分の理想通りにうまくいかないことがあって悩んでもがいて、それでも意思を貫き通す。死ぬまで書くことをやめなかったビッシュの詩は、とても力強い。演じる僕としては、詩を読むときはその詩の魅力そのものを伝えるのはもちろん、ビッシュがその詩を書いている時の感情を表現したいです。

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詩人バイロンとの出会いが生み出したもの

──作品の大きな軸に詩人バイロンとの出会いがあります。詩人同士の会話はとてもウィットに富んでいますね。
彼らは頭が良くて、会話の質が高い。だから時には哲学的だったり難しく感じるかもしれないけれど、実は人間関係はとてもシンプル。やってることは今の若者たちと何にも変わりないですよ。熱く夢を語ったりと、すごく人間臭い人たちの青春群像劇です。僕たち役者も、仲間と演技論を戦わせることがありますけど、そうやって自分が真剣に挑んでいることについて熱く会話するのと同じで、バイロンとビッシュが自分の考えにのっとって熱く議論する。それが面白い。
──バイロンとの会話は、その言葉だけを読むとケンカしているかのようにも感じます。
彼らの会話って言葉遊びなんですよね。詩人だから、自分の主張を言葉に乗せて相手に伝えようとする。甘い言葉だったり、痛烈な言葉だったり、いろんな言葉を使って意思を見せることに詩人としてのプライドを賭けている。そうやって言葉を戦わせることで仲良くなっていく。今でいうフリースタイルダンジョン(ラップバトルを交わすバラエティ番組)に似ているのかも。
──詩人だから比喩的な表現を使ったり、思いをストレートに言葉にしないのも、会話の面白さですね。
そうなんです。言葉は喜びを語っているのに、本心はそうではないかもしれない。だから稽古の最初の方は役者によってシーンの捉え方に食い違いがあり、それを擦り合わせていく作業が必要でした。
彼らの会話は、たとえば尻はさらけ出すのに、言葉では心を隠すことで自分の主張を訴えたりする。ビッシュとバイロンって、出会う前からお互いの存在は知っていたと思うんですよ。詩人として負けられないという意地があるから、言葉でかましあっていくうちに、「こいつ話せるじゃねぇか」と認めあう。見るからに仲良くなるのではなくて、言葉でお互いの内側を探って、抉っていくことによって、友情になっていくんですよね。そして一緒に作品を作ったり、議論を交わし合う関係になる。見ている世界や目指しているものを共有できる人とは自然に仲良くなるんだろうな。
──現場ではどうやって友情を作っていきましたか? バイロン役の内田健司さんをはじめ、みなさん初共演ですよね。
台本ではビッシュとバイロンの友情について明確には書いていません。だから(内田)健司は健司としてバイロンを作ってきて、僕は僕としてビッシュを作っていきました。それがある日、稽古以外の時に話していたらふと僕たちの間に共通言語が生まれたんです。僕がなにげなく「この人たちいろんなことワイワイ言ってるけど、けっきょく寂しがり屋だよねぇ」と言ったら、健司が「そうだよ、寂しいんだよ」って返してくれて。その瞬間、「ああそういうことなんだ」とふに落ちたんです。「寂しい」って簡単に言えちゃう言葉のわりには、本当に寂しい時には口に出せなかったりする。ビッシュもバイロンも世間からはみ出して、それでも信念を貫こうとするけれど、本当はどこか寂しい思いを感じあっていたのかなあと思うんです。
──好きなシーンはありますか?
バイロンとの関係が変わっていくところです。出会いを経て、関係性の変化を経て、それでもまたお互いの前に立つ時、なんだか不思議な男の高揚感みたいなものをすごく感じます。嬉しさの中に混ざる複雑な思いや、心臓が掻き立てられる感覚になります。

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彼らは、僕たちとなにも変わらない若者だって気づいた

──初主演・初翻訳作品、初共演者と初めてづくしの現場ですが、プレッシャーはありませんでしたか?
劇団を出て主演をやらせていただけるという喜びと、ずっとやってみたかった海外の戯曲ということで、出演が決まったときはすごく嬉しかったです。けれど実際に台本を手にすると、時代背景もわからないし、登場人物は知らない人ばかり。「勉強しなきゃいけないし、やることがいっぱいあるぞ。僕にできるのかな」という不安も大きかったです。でも稽古を重ねるうちに、「この台本ものすごく面白いな」と実感してきて、自信が出てきたんです。
──この作品はいいぞ、と確信したきっかけはあるんですか?
まず、詩や哲学について話す彼らは、べつに難しいことを言っているわけじゃないと気づいたこと。それはセリフを覚えて人間関係が出来あがっていくなかで、彼らは僕たちと何も変わらない20代の若者たちなんだとわかったからでした。通し稽古を見に来た人が「台本を読んだだけではわからなかったことも、実際に目の前で人が動いていたら何十倍も伝わった。こんなに面白い作品だったなんて、いろんな人に見てもらわなきゃダメだ!」と言ってくれた。僕たちが稽古でやってきたことはやっぱり間違ってなかったんだと思って、もっと突き詰めようとしています。舞台美術も特殊でいろんな仕掛けがあるんです。詳しくは観てもらうまで言えないですけど、目で観ても楽しいエンタメ性がたくさんあります。衣装も200年前のイギリスの人たちが来ていたデザインをイメージしたものです。劇場で当時の世界観に入って、そこで若者たちが生きていた空気を感じていただければと思います。

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いづかけんた○1986年生まれ、愛知県出身。劇団プレステージ所属。最近の舞台は『ウエアハウス〜Small Room』、『オーバーリング・ギフト』、プロペラ犬 第7回公演『珍渦虫』、『娼年』、朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』『俺とおまえの夏の陣』2016、地球ゴージャスプロデュース公演Vol.14『The Love Bugs』など。映画『娼年』が4月に公開。

〈公演情報〉
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舞台『BLOODY POETRY』
脚本◇ハワード・ブレントン
演出◇大河内直子
翻訳◇広田敦郎
出演猪塚健太 百花亜希 蓮城まこと 内田健司 青柳尊哉 前島亜美 
●2/8〜18◎赤坂 RED/THEATER
〈料金〉前売/一般 5,800円 学生2,800円 高校生以下2,000円(当日券は各 500 円増)(全席指定・税込)
〈チケット申込み〉 http://ticket.corich.jp/apply/87700/


【取材・文/河野桃子 撮影/交泰】



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古川健と日澤雄介の新作、戦時下に生きた1人の女性歌手の物語『Sing a Song』大和田獏・藤澤志帆インタビュー

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今、演劇界で最も注目を集める劇団チョコレートケーキの古川健による書き下ろしで、主宰の日澤雄介が演出する舞台『Sing a Song』が、2月7日から16日までの下北沢・本多劇場を皮切りに、3月まで全国公演を行う。
物語の主人公は、歌を愛し歌に愛された1人の歌い手、三上あい子。だが戦争が彼女から歌を奪おうとする。歌い手とその歌に惚れ込んだ仲間たちは、誇りを胸に皇軍慰問の旅に出る。
戦時中から戦後にかけての日本と満州を舞台に、1人の歌手と彼女を取り巻く人々の姿から、あの時代が浮かび上がる。
 
主人公の三上あい子役を戸田恵子演じ、そのマネージャー役には大和田獏、歌手の専属ピアニスト役には藤澤志帆、そのほか憲兵や軍人などの役で元唐組の鳥山昌克、 TRASHMASTERSの盒桐硫陝劇団チョコレートケーキの岡本篤が出演、演技派・実力派揃いの舞台となる。
そんな作品の内容と役柄について、大和田獏と藤澤志帆に話してもらった。

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大和田獏・藤澤志帆

女性ながらすごい気骨を持った人がいた

──それぞれご自分の役を、どんなふうに演じようと思っていますか。
大和田 台本に書かれていない部分、彼の経歴とかどんな経緯でマネージャーをやることになったのかなど、自分で色々想像しながら作っていこうと思っているんです。たぶん三上あい子という歌手をリスペクトしてると思うし、もしかしたら自分も音楽に傾倒していて、でも夢破れて、才能ある人間をバックアップする側に回ったのかなとか。軍部の人間とやり合う局面もあっただろうなとか考えると、堅気じゃなかったのかなと。そのへんは稽古が始まったら演出家と話し合って、固めていきたいですね。
藤澤 私はピアニストの役です。本当はクラシックの世界を目指していたのに、経済的な事情で諦めて、ダンスホールでピアノを弾いていたら、あい子さんの目にとまって専属ピアニストになります。あい子さんを信じて、慰問団について行くくらい信念があって、ピアノを弾くことが自分の使命だと思っている、芯の強い女性だと思います。
 
──劇団チョコレートケーキの古川さんと日澤さんが、作と演出を手がけますが、お二人は公演をご覧になってますか?
藤澤 劇団員の西尾友樹さんが『萩咲く頃に』のお兄ちゃん役だったので観に行きました。最初は難しくて、でもだんだんわかるようになって、今回、日澤さんに演出していただけるので、すごく楽しみです。
大和田 僕も『萩咲く頃に』がきっかけで観に行くようになりました。社会的なテーマに真面目に取り組んでいて、骨太な劇団だなと。
 
──今回の物語も、古川さんらしいテーマですね。
大和田 戦前、戦中の時代には、こういう話が実際にあって、歌も自由に歌えないし、国策映画を作らされたり、僕の小さい頃は、そういう経験を話してくれる人もいました。でも今は知らない人のほうが多くなってしまって。この作品のあい子は、淡谷のり子さんがモデルだそうです。
 
──そういえば劇中であい子が歌う「別れのブルース」は淡谷さんの歌ですね。戦争中は禁止されていたと聞きます。
大和田 でも兵隊さんたちには、そういう歌こそ慰めになったし、聞きたがったそうです。淡谷さんは軍部の意向に妥協しないで、ぎりぎりのところまで抵抗して、信念を貫いた。彼女の自伝も読みましたが、あの時代に女性ながらすごい気骨を持っていた人だと思います。

戦争への怒りとか嫌悪観が薄れてきている

──先ほど話に出た『萩咲く頃に』では、お二人は父娘の役でしたね。
藤澤 初演、再演とずっとご一緒していましたから、本当の親子みたいになって。
大和田 たぶん全部で100ステージ近くやったね。公演中は役名で呼び合ってて、一緒に食事したり、ずっとお父さんと呼ばれていたけど、今回はその関係は断ち切らないとね(笑)。
藤澤 もう甘えられませんね(笑)。
 
──俳優としてのお互いについてはいかがですか。
藤澤 獏さんはお芝居についても面倒見のいい方で、毎日のようにアドバイスしてくださるんです。
大和田 1回1回を大事に、慣れはだめだよとか、ごく当たり前のことしか言わないんですけどね。彼女はとにかく真面目過ぎるくらい真面目で、真摯だし、そこは安心できるんですけど、もう1つ殻を破るといいなと思っていて。演出家に真面目に応えるだけでなく、もう少し柔軟になると面白くなるはずだから。
藤澤 自分でもそうしたいという思いはあるんです。今回の日澤さんの演出で、少しでも殻を破れたらと。
大和田 そこは僕も一緒で、初めての古川さんの本で日澤さんの演出で、自分にまた新しい刺激を与えてくれそうだなと思っています。
 
──最後にこの公演への意気込みを。
藤澤 出演が決まったとき、尊敬する戸田恵子さんや獏さん、そして注目されている俳優さんたちの中に私がいていいのかと、プレッシャーでした。でも稽古場でのスタートは、年齢もキャリアも関係なくみんな一緒なので、私も殻を破ります(笑)。
大和田 たぶん僕が一番年上なので、役柄もそうですが、1歩引いたところから全体を見ているような立場でいたいなと。そして作品のテーマをしっかり伝えていきたいですね。戦後70数年経って、理屈ではわかっていても戦争への怒りとか嫌悪観が薄れてきている気がします。でも一度起きてしまったら、それによってどれだけ人間の生活が狂わされていくか、そこをこの作品で少しでも伝えていけたらと思っています。

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大和田獏・藤澤志帆

おおわだばく○福井県出身。73年、俳優としてデビュー。以降、映画やドラマへの出演多数。また昼の情報番組『ワイド!スクランブル』のメインキャスターや『獏さんのひゅーまんテレビ』(TX)の司会などで活躍。最近の主な出演作品は、映画『グッバイエレジー』『ろくでなし』、ドラマ『警視庁捜査一課長』、舞台『歌姫』『萩咲く頃に』『天国のシャボン玉ホリデー』『滝口炎上』『くちづけ』など。

ふじさわしほ〇東京都出身。女優として映画、テレビ、舞台などで活躍。2008年舞台『あのころのまま』でヒロイン役を務める。最近の出演作品は、映画『サヨナラ COLOR』『わさび』、ドラマ『わかば』(NHK)、舞台は『だいだいの空』『萩咲く頃に』『満月の人よ』『さよなら、先生』『静かな海へ−MINAMATA−』など。

〈公演情報〉
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トム・プロジェクトプロデュース
『Sing a Song』
作◇古川健 
演出◇日澤雄介 
出演◇戸田恵子 鳥山昌克 盒桐硫陝_本篤 藤澤志帆  大和田獏
●2月7日〜16日◎下北沢・本多劇場 
〈料金〉)一般前売¥5,000 当日¥5,500 U-25(25歳以下)¥2,500 シニア(60歳以上)¥4,500(全席指定・税込)※U-25・シニア券はトム・プロジェクトのみで販売。
〈お問い合わせ〉トム・プロジェクト 03-5371-1153(平日10:00〜18:00)
http://www.tomproject.com/peformance/sing-a-song.html

【地方公演 スケジュール】
※地方公演は各地域の主催事業となります。お問合せは各問合せ先へお願いします。
●2月18日(日)14:00
香川県高松市 サンポートホール高松 087-825-5010
●2月20日(火)19:00
岡山県岡山市 岡山県天神山文化プラザ 086-226-5005
●2月22日(木)18:30
兵庫県加東市 加東市滝野文化会館 0795-42-7700
●2月24日(土)14:00
大阪府富田林市 すばるホール 0721-25-0222
●2月25日(日)14:00
三重県伊賀市 伊賀市文化会館 0595-24-7015
●2月27日(火)18:30
兵庫県宍粟市 山崎文化会館 0790-62-5300
3月1日(木)19:00
宮崎県東臼杵郡 門川町総合文化会館 0982-63-0002
●3月3日(土)13:00
熊本県益城町 益城町文化会館 096-286-1511
●3月4日(日)15:00
佐賀県鹿島市 鹿島市民会館 0954-63-2138
●3月5日(月)19:00
福岡県行橋市 コスメイト行橋 0930-25-2300
●3月9日(金)18:30
石川県七尾市 能登演劇堂 0767-66-2323
●3月10日(土)14:00
石川県七尾市 能登演劇堂 0767-66-2323
●3月11日(日)14:00
石川県七尾市 能登演劇堂 0767-66-2323
●3月13日(火)19:00
岐阜県下呂市 下呂交流会館 0576-25-5000
●3月14日(水)19:00
愛知県長久手市 長久手市文化の家 0561-61-3411
●3月17日(土)14:00
秋田県由利本荘市 由利本荘市文化交流館カダーレ大ホール 0184-22-2500
●3月20日(火)13:00
兵庫県西宮市 兵庫県立芸術文化センター 0798-68-0255
●3月21日(水祝)15:00
新潟県上越市 上越文化会館 025-522-8800
●3月24日(土)14:00
神奈川県藤沢市 湘南台文化センター市民シアター TEL:0466-28-1135
●3月25日(日)14:00
東京都葛飾区 かめありリリオホール 03-5680-3333 








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