稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

浪漫活劇譚『艶漢』第二夜

インタビュー

大幅に役をチェンジして挑む再演! カムカムミニキーナ 『>(ダイナリィ)〜大稲荷・狐色になるまで入魂〜』山崎樹範・藤田記子 インタビュー

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一昨年、カムカムミニキーナが旗揚げ25周年を記念して上演した『>(ダイナリィ)〜大稲荷・狐色になるまで入魂〜』が、役柄を大幅に入れ替えて、再演される。
安倍清明と狐の謎を秘めた団体とそれを探る演劇探偵団という、めくるめく歴史ロマンの面白さに加えて、バックステージの役者と劇中の登場人物がメタ演劇的に入り交じる上演形式サラウンド・スケルトンで、カムカムの可能性と底力を示した傑作舞台だ。

【あらすじ】
未だ見ぬ母が屋根裏に隠した異国語の日記…ダイアリィ。
そこに無数に記された謎の記号「>」…ダイナリィ。
迷える少女がルーツを探るうちに紛れ込んでいく昭和の闇。
暗躍するはお稲荷様の嫁入り行列…オイナリィ。
平安の世より続く妖狐と陰陽師安倍清明の因縁。
人を変えてしまう恐るべき狐憑きの力。
その獣の超力を我が物にせんと企む軍人、商人たち。
闇に葬られた歴史を解き明かしていくのは、現代を生きる売れない前衛劇団。
即興劇による閃きと創作で真実に肉迫する、名づけて演劇探偵メソッド!
稲荷信仰の孕む霊気と狂気が、時代を超えた日本人の宿命を揺さぶる。
残された最後の手段は…愛ナリィ?

この作品で、一昨年に続いて座長をつとめる山崎樹範と、劇団の看板女優としてますますパワフルに存在感を発揮する藤田記子が、今回の『>(ダイナリィ)』の見どころを話してくれた「えんぶ10月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介。

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藤田記子・山崎樹範

団長役が変わったことで、みんなの役も変わって

──再演で大きく役が変わるそうですね。
藤田 私が言いだしたんです。初演は良い作品になったし、良い評価も頂いたんですが、再演の話を聞いたとき、どうせなら劇中の団長の役を、公演の座長でもある山崎くんにやってもらったらと。
山崎 松村さんに提案して。僕はびっくりしました。
藤田 山崎くんの前回の役も面白かったし、山崎くんならではの役だったけど、そろそろ清水(宏)さんがやるような役もやってみたほうがいいので。
山崎 その役が変わったことで、どんどん押し出されるように、みんなの役も変わって。俺の役は藤田さんになって。
藤田 そこは私には予想外の展開で、結局一番大変なところが来て。役替わりを言い出した以上、やるしかないなと。
──今回、山崎さんが演じることになった団長役ですが、どう捉えていますか?
山崎 自分で局面を動かせる役だなと。初演で演じた劇団員の役は、与えられたことに対してどう反応するか、流れの中でどう動くかという面白さがありましたが、団長の役は、自分の意志で物語の舵を切っていく。そこが役としては魅力的な部分ですね。
──今までの山崎さんのキャラクターにはあまりないような。
山崎 ないですね。だからこの役で説得力が出せたらすごいし、出したいです。
藤田 私もすごいプレッシャーで。あんなに走り回る役は久しぶりなんです。最近劇団では、お母さんとかお祖母さんの役どころになっていたので、まず体力的にすごく心配ですね。鍛えます。

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松村さんの懐の深さで20年以上続けられた

──それぞれ20年以上の劇団歴ですが、カムカムだから良かったということは?
藤田 つまらないとか面白くないとか、きついとか散々言われて育ってきたことが、今となっては、強さになっていますね。
山崎 カムカムで生き残れたら、他へ行っても通用しますから。
──山崎さんはメディアへの出演も多くて、つかず離れずきたわけですが、そのことで逆に劇団活動が続いている部分もあるのでしょうね
山崎 それはありますね。僕は劇団では末っ子長男気質というか、松村さんと八嶋(智人)さんは、役者としてのお父さんとお母さんだとは思って、散々わがまま言ってきたし、八嶋さんに本気で怒られるまで、劇団とちゃんと関わらなかったりしましたから。でもやっぱり僕を生んでくれたのはここで、それは一生変わらないことなので。今は2年に1回というペースがちょうどいいし、逆に2年に1回しか出られないのだから、その1回は大切にしないといけないなと思うようになりました。
──そういうペースで付き合えるのも、松村さんの懐の深さかなと。
山崎 結局、全部受け入れてくれますからね。来るものは拒まず去る者は追わずで。僕がしばらく休みますと言った時も「わかった」と。
藤田 器が大きいんです。作品のスケールもですけど、人としても大きい。
──それでいて過激で、劇団外でも演出されていますが、劇団で一番実験的なことをしている気がします。
藤田 それは松村さんも明言していて、カムカムは自分が一番興味あることを全部つぎ込むところ、実験する場所だと言ってますから。
──役替わり再演というまた過激な実験で楽しみです。最後に意気込みをぜひ。
藤田 この作品は、狐憑きの話と演劇探偵をする劇団の話が出てくるのですが、私は狐の側から劇団の側になるので、新しい作品に取り組む気持ちでがんばりたいと思います。
山崎 今回は本当の座長というか、真ん中をやってみろという負荷をかけられて、この歳で、こんなチャレンジやらされるとは思ってなかったですが、有り難いし、役者としてまた次に行くチャンスだと思っています。がんばりますのでぜひ観にきてください。

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藤田記子・山崎樹範

やまざきしげのり○東京都出身。95年より劇団に参加。ドラマ、映画、バラエティなどで活躍中。最近の主な出演作品は、映画『龍三と七人の子分たち』『幸福のアリバイ〜picture〜』、ドラマ『トットちゃん』『しあわせの記憶』『めおと蝶』、劇団以外の最近の舞台は『崩壊シリーズ〜リメンバー・ミー』『剣豪将軍義輝〜星を継し者たちへ〜』『テレビのなみだ』など。映画『火花』が11月に公開、NHKBSプレミアム『ワンワンパッコロ!キャラともワールド』レギュラー出演中。

ふじたのりこ〇東京都出身。94年、劇団カムカムミニキーナに入団。ダイナミックな演技で、舞台に大きなうねりをもたらす女優として、多方面で活躍中。08年には劇団拙者ムニエル澤田育子との演劇ユニット「good morning N°5」を立ち上げる。最近の出演舞台は『青木さん家の奥さん供戞悒ぅ鵐肇譽薀鵐垢虜廖戞悗匹匹畧磧戞愧羚颪良垰弋弔別鮨諭截昂遒good morning N°5『豪雪』を上演した。

〈公演情報〉
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カムカムミニキーナ
『>(ダイナリィ)』〜大稲荷・狐色になるまで入魂〜
作・演出◇松村武
出演◇山崎樹範 藤田記子 松村武/成清正紀(KAKUTA) 広澤草 豊原江理佳 本間茂樹/清水宏 ほか
●11/2〜12◎座・高円寺1
〈料金〉一般 5,000円 スペシャル割 4,000円(11/2・4・7の各19時、11/8の14時と19時公演)U-25割引 3,500円(要当日身分証、劇団のみ取り扱い) (全席指定・税込)
 〈お問い合わせ〉 カムカムミニキーナ 090-6328-1076 (平日12時〜18時)




【取材・文/宮田華子 撮影/安川啓太】


ミュージカル『魔界王子』
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女性漫才師役に戸田恵子を迎えてタクフェス第5弾『ひみつ』間もなく開幕! 宅間孝行・戸田恵子・松本利夫 インタビュー

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宅間孝行が仕掛ける極上のエンターテイメント「タクフェス」の第5弾『ひみつ』が、10月19日の鹿児島市民文化ホールを皮切りに、12月まで東京、大阪ほか全国10ヵ所を巡る。
 
宅間の4年ぶりの新作書き下ろしで、主人公の女性漫才師・渚を演じるのは戸田恵子、その弟で漫才の相方・五郎を宅間が演じ、劇団EXILE松組の松本利夫が、彼らのマネージャーで末弟の八郎に扮する。タイトルにもあるように、主人公の女性が背負ったある「ひみつ」をめぐって、姉弟、母娘、そして地域の人々の愛に溢れた、心温まる純愛物語だ。

派手なステージ衣装が映える漫才師コンビの戸田・宅間コンビ、すでにマネージャーらしい佇まいを見せる松本という3人に、本作品への取り組みと抱負を話してもらった「えんぶ10月号のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。
 
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このまま漫才師としてデビューできそうな2人

──今回の作品は、漫才という華やかな世界を描きながら、かなり社会的な問題を扱っているのですね。
宅間 実はかなり前から冤罪をテーマにした作品を作ろうと思っていて、今回、やっと形にできたかなというところです。『くちづけ』(2010年初演)もそうですが、書くモチベーションとして、世の中にある理不尽なことへの怒りみたいなものがあって、その中に冤罪もあって、ニュースやドキュメンタリーで見るたびに、21世紀になってもこんな酷いことがあるんだという衝撃もあって、色々調べるようになって。今回、戸田さんが出てくださるというので、戸田さんなら何でもできる方なので。
戸田 それはないです! きっとびっくりすると思います。あまりにできなくて。
宅間 いえいえ。とにかくどんな内容もありだなと思ったので、色々な可能性を欲張りにも全部詰め込んだ感じになってます。
──戸田さんと松本さんは、台本を読んでいかがでしたか?
戸田 タイトルも『ひみつ』というくらいなので、言えないことが沢山あるのですが(笑)。姉弟の漫才師で、もう1人の弟がマネジメントをしているという家族の話で、非常に面白い役をいただいたなと思います。私は一人っ子なものですから、家族とか姉弟の感覚を味わえるのは嬉しいです。思ったのは、男女の漫才って夫婦はよくありますけど、姉と弟の漫才コンビってあまりいないですよね。   宅間 そうですね。
戸田 珍しいから、このまま私たち漫才師としてデビューしたら売れるんじゃないかなと(笑)。そういうちょっと新しい形に挑めるのも面白いなと思っています。
松本 僕の役はマネージャーですが、台本の中ではそんなにマネージャー業の部分は出てこないので、家族としての面をうまく見せられたらと。僕はずっと宅間さんのファンで、タクフェスもずっと拝見していて、宅間さんの色というか味というかそれが好きなので、台本もサーッと読めたし、絵が浮かんでくるんです。お二人が漫才をやっている絵もすぐ浮かんできました。
──戸田さんを漫才師にしたのは、『なにわバタフライ』という芸人さんを演じた代表作があることからですか?
宅間 いや、実は堤幸彦監督の発案というか、戸田さんの番組に僕がゲストで出たとき、監督がコメントを寄せてくださって、「ぜひタクフェスで戸田さんと一緒にやってください。夫婦漫才の芝居なんかどうでしょう、それが評判になったあかつきには僕に映画を撮らせてください」みたいなことが書かれていて。確かに戸田さんと夫婦漫才みたいなことができたら面白いだろうな、というのはあったので。
戸田 確か2、3年前ですね。
宅間 今回ご一緒できるとなったとき、新作なのでアイディアが二転三転する中で、やっぱりちょっと重いテーマが出てきたり、親子や家族の愛が中心にあるので、そういうことと一番遠いところにある漫才が入ると、この作品がうまくエンターテインメントになるんじゃないかと思ったんです。

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還暦初舞台だからいたわってほしい

──戸田さんは、これまで宅間さんにどんな印象が?
戸田 ドラマなどで拝見していた感じと、舞台での印象が違うのでびっくりしました。とくにカーテンコールで熱く語るじゃないですか。今時、こんな熱い人いないというくらいに(笑)。でもお芝居の中では、ちょっと好いたらしいというか(笑)、色っぽさみたいなものを醸し出していて、カッコいいなと。作・演出家としては、どの登場人物を見ても共感できるし、最後はほろっさせて、観る人の気持ちを浄化させてくれる舞台を作る方だなと。
松本 舞台の宅間さんは、本当に色気みたいなものがありますよね。一言でいうと「ずるい」(笑)。
宅間 ふふふ(笑)。
松本 表現者としても良い意味のずるさが魅力だなと。それに僕も、熱い人だなと思います。それはきっと自分がプロデュースして、演出して、自分も出て、誰よりも作品に熱い思いを持っているからだろうなと。『歌姫』(2014年・劇団EXILE)のときは共演できなかったので、今回すごく楽しみで、色々盗みたい(笑)。戸田さんのお芝居も全部盗ませていただいて。
戸田 私には何にもないですよ。というか、お姉ちゃんなのでいたわってほしい(笑)。私、もう還暦になるんです。
松本 えーっ?
宅間 ほんとに?!
戸田 これが還暦初舞台です!(笑)輝かしき舞台なわけですから、みんなにいたわってもらおうと思ってますからね(笑)。きっと「はあ〜お姉ちゃん疲れたよ」ってなるから、大事にしてもらわないと(笑)。

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今までのタクフェスで一番良かったと

──戸田さんの役柄は、タイトル通り「ひみつ」を抱えていますが、影のある役も明るく見せられる女優さんかなと。
宅間 最初に痴呆症の老人みたいな感じで出ていただいて、ハワイの話とかするんですが、それは冤罪事件で拘禁症になって「自分はハワイ出身で」と言っていた方がいて、そういうところも戸田さんなら面白く演じられるだろうな。
戸田 どうしましょう! 今は私にはすべてが未知で、未知って楽しいけれど、第一歩がすごく恐ろしいので。それにだんだん勇気も薄れてきて、石橋を叩いて叩いて渡らない、みたいな(笑)。叩いて渡るための勇気がすごく要るんです。
松本 僕から見ると、お二人とも今までの経験値のすごさがあって、それはお金では絶対に買えないものだなと。それを稽古場や、食事とかご一緒できる機会があれば、そこで教えていただきたいし、宅間さんと戸田さんについていきたいですね。
──最後にこの作品への抱負をいただければ。
松本 今回、タクフェスに出させていただけるので、素晴らしいキャストの方々、スタッフの方々と一丸となって頑張らせていただきたいという思いと、色々な場所に行けるので、全国の皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。ぜひよろしくお願いします。
戸田 ほとんどの方と初めて舞台の上で共演することになりますが、タクフェスならではの味わいが出せたらと思っています。それから最近私は地方公演が少なくなっていたのですが、この作品は色々なところに行くので、その場所の方々からすでに声が届いていて、それも嬉しいです。色々挑戦しなければいけないことはありますが、出演する限りは、今までのタクフェスで一番良かったねと言われるように、宅間さんにも私たちが出て良かったと思ってもらえるように、頑張りたいです、と「今」は思っています(笑)。なにしろ還暦なので(笑)。
宅間 今回、4年ぶりの新作ですが、前回の『わらいのまち』のフィナーレ挨拶で、「戸田さんとMATSUくんとご一緒します」と言った時の反応がすごかったんです。そういう意味では、今までとはまた違った新しいタクフェスを、戸田さんとMATSUくんと、そして他のキャストの皆さんとともに作っていきたい。「タクフェスがまた一歩、先に行ったね」と言ってもらえるように、良い作品にしたいと思っていますので、ぜひご期待ください。
 
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たくまたかゆき○東京都出身。脚本家、演出家、俳優。1997〜1999年『東京セレソン』その後、2012年までは、劇団「東京セレソンデラックス」、以降は「タクフェス」を主宰。作家・演出家・監督・俳優として映像や舞台で活躍、辻本茂雄とのユニット「つじたく」でも活動中。俳優としての主な作品は、朝の連続小説『つばさ』『新選組血風録』大河ドラマ『花燃ゆ』『嵐の涙-私たちに明日はある-』など、映画は『くちづけ』(原作・脚本・出演)『海難1890』『団地』『嫌な女』『全員、片想い』内の短編「サムシング・ブルー」(監督)など。
 
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とだけいこ○愛知県出身。『中学生日記』で女優デビュー。薔薇座を経て、女優として活躍。「アンパンマン」など声優としても知られている。映画では日本アカデミー賞優秀助演女優賞、演劇では芸術祭賞演劇部門賞、紀伊國屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞最優秀女優賞など多数受賞。最近の舞台は『嵐が丘』『星屑の町 完結編』ミュージカル『わがまま』『不信〜彼女が嘘をつく理由』など。9月8日〜10日に60歳記念の戸田恵子60th Anniversary Live Show『Happy Birthday Sweet 60』を品川プリンスホテル クラブXで開催した。
 
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まつもととしお○神奈川県出身。2001年よりEXILEのパフォーマーとして活躍。俳優としても劇団EXILE公演や松本利夫ワンマンSHOW「MATSUぼっち」などに出演。2015年をもってEXILEのパフォーマーを卒業。2016年より自身が組長を務める劇団EXILE松組を始動させる。最近の舞台は劇団EXILE公演『歌姫』、劇団EXILE 松組 旗揚げ公演『刀舞鬼 -KABUKI-』松本利夫ワンマンSHOW『MATSUぼっち 04』-DOORS-、『ちるらん 新撰組鎮魂歌』など。

この公演の記者会見レポートはこちら
http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52034947.html 

〈公演情報〉
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タクフェス第5弾『ひみつ』
作・演出◇宅間孝行
出演◇戸田恵子/福田沙紀武田航平 赤澤 燈 岡本あずさ山崎静代 (南海キャンディーズ) 東風万智子松本利夫(EXILE)ベンガル宅間孝行 他
●10/19◎鹿児島市民文化ホール
●10/24◎北國新聞赤羽ホール
●10/26◎富山県教育文化会館
●10/28◎りゅーとぴあ・劇場
●10/31〜11/12◎サンシャイン劇場
●11/16◎足利市民プラザ
●11/19◎周南市文化会館
●11/24〜11/26◎刈谷市総合文化センター
●12/1〜12/2◎道新ホール
●12/6〜12/10◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 

〈料金〉東京公演  S席8,500円 タクフェスシート5,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉東京公演 サンライズプロモーション東京 
0570-00-3337(全日10:00〜18:00)






【取材・文/宮田華子 撮影/岩村美佳】


ふくふくや『くるんのぱー』
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「奇跡」とそれを取り巻く人間関係を描くイキウメの傑作『関数ドミノ』間もなく開幕! 前川知大・瀬戸康史インタビュー

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前川知大の傑作戯曲で、劇団イキウメの代表作の1つ『関数ドミノ』が、劇団外で初めて上演され、10月4日に本多劇場で幕を開ける。(15日まで。その後、九州、北海道、兵庫公演あり)
 
今回の演出は、劇団tsumazuki no ishi主宰の寺十吾が手がけ、出演は『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』に続けて前川戯曲に挑む瀬戸康史をはじめ、柄本時生、小島藤子、鈴木裕樹、山田悠介、池岡亮介、八幡みゆき、千葉雅子、勝村政信と多彩な顔ぶれが揃った。
 
物語は、とある交通事故で起きた「奇跡」と、それを解き明かそうとする人々の思惑や欲望を、前川作品ならではの超常現象的アプローチで浮かび上がらせるというもの。
 
イキウメの大ファンを自負する瀬戸が、作者の前川知大とともに本作の見どころと、真壁役への意欲を語った「えんぶ10月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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瀬戸康史 前川知大  

最初のドミノを倒せば、人生をコントロールできる

──まず、この作品のモチーフはどこから?
前川 初演がちょうど「カオス理論」が流行り始めた頃で、『バタフライ・エフェクト』(04年/アメリカ)という映画も作られてヒットしたんですが、自然現象にちょっとした力を加えることで、蝶の羽ばたきが台風になるとか、ほんのちょっとしたことで、すごい結果を出しちゃうみたいなことなんですが。
瀬戸 力が連鎖していくんですね?
前川 ドミノみたいにね。大きな出来事の原因を突き詰めていったら、結果的に小さいところにある。それってちょっと人生っぽい感じがするじゃないですか。なんかそういう、最初のこのドミノを倒せば、人生がコントロールできるみたいな。そこらへんからアイデアから始まったんです。
──関数との関係は?
前川 関数は方程式を書けばわかりやすいのですが、例えとしてはブラックボックスという謎の箱があって、何か入れるとその結果が出てくる。その謎の箱が「関数」であり、この作品では「ドミノ」で、その「ドミノ」とは、いったい何なのかという話になっています。
──なるほど、絶妙なネーミングですね。
前川 ものすごく気に入っているタイトルです(笑)。
──瀬戸さんはこの『関数ドミノ』という作品が大好きで、待望の出演だそうですが。
瀬戸 僕は2014年版を観たんですが、「奇跡」というものと、それを取り巻く人間関係が生々しくて、面白いなと。もともとイキウメが好きで、ある時期から必ず観に行くようになって。昨年、『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』で前川さんの作品に出られて、その時も嬉しかったんですけど、続けて前川さんの作品に出演できるのは、それこそドミノじゃないですけど、連鎖的な運命的なものを勝手に感じています(笑)。

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単なる二枚目じゃないほうが面白くなる役者だと

──『遠野物語』の瀬戸さんは、ササキ役で強い印象を残しました。
前川 ササキは伝承を語るうちに憑依しちゃうような役どころだったんですが、瀬戸くんは稽古場から、まるで憑依したような演技を見せてくれました。もちろん、すごく冷静に作れる俳優さんで、いわゆる憑依タイプではないと思いますが、人が変わったかのように、客席の空気をガラッと変えてしまう力があります。
瀬戸 あの時は確かに、憑依ってこういう感じなのかなという感覚があって、たぶん初めての経験だった気がします。今までは自分と役が半々ぐらいでしたが、ササキは誰かが自分を支配しているような感じがあって。言葉であの感覚を説明するのは難しいんですけど。
──瀬戸さんは映像では普通の好青年をよく演じていますが、舞台では意外と屈折感のある役が多くて、今回の真壁もかなり複雑な内面を持っていますね。
前川 作家とか演出家に、単なる二枚目よりはそうじゃない方が面白いと感じさせる人なんでしょうね。真壁はコンプレックスを持っていて、それもものすごく強いもので、それを納得させないとストーリーが通らない。瀬戸くんはきっとできるし面白いだろうなと。一方で、順風満帆な森魚という役を、今回、柄本時生くんがやる面白さがあると思うし、2人がうまくはまると絶対に面白くなるはずなんです。
──今回のラストは14年版ではなくて09年版に戻るそうですね。
前川 劇団公演では劇団の俳優にリライトするので、14年に安井(順平)さんが真壁をやった時、彼に合わせてかなり辛口なラストになったんです。今回は、カンパニー全体のイメージからも、09年版をポジティブに使うといいんじゃないかと。少し希望が見えるようなラストにしようと思っています。

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人間は自分で見えなくしている部分がある

──演出の寺十吾さんの印象は?
前川 演出作品も見ているし、俳優としてもよく知っていますが、僕としては楽しみでしかないですね。
瀬戸 寺十さんの作品は、とても丁寧に作られている印象があります。以前、この『関数ドミノ』のオーディションがあって、僕もアドバイスというかお話させていただく機会があったのですが、全くと言っていいほどNOと言わない方なんです。ちょっと意外でした。
前川 そういう人のほうが怖いかもしれない(笑)。
──そういう前川さんの演出は怖いのですか?
瀬戸 優しいです。『遠野物語』では、共通認識みたいなところから話し合って、1つ1つ積み重ねていく稽古場で、作品の理解も深まるし、スタッフさん含め、全員で1つの作品を作っている感じがすごくあって、本当に楽しかったです。
──前川さんの作品は共通言語、とくに超常的なものについての共通認識が欠かせないでしょうね。
瀬戸 僕は前川さんの話はすごくわかるんです。感覚が似ているといったらおこがましいのですが、霊的というかそういうものの存在を感じるし、見えないものに対する興味もものすごくあるので。人間って、自分で見えなくしている部分があるんじゃないかと思うんですよね。見ないようにするとか、なかったことにするとか、そのへんを前川さんの作品は気づかせてくれるんです。
──確かに「ドミノ」も、たとえば「念」とかに置き換えるとよくわかるのですが、日常の中で漠然と感じているものを、前川さんが論理的に表現してくれることで、改めて意識化させられるところがあります。
前川 瀬戸くんが言ったように、日常生活でそういうものを見ないことにしてしまうとか、見えないからないんだと了解をとっているのは、あまり面白くないので、この作品で「ドミノ」という現象として表現してみたわけですが。そういうものがあるのかなと思わせる力がある作品だと思っています。神社に行って何かを願うとき、とりあえず手を合わせるだけか、本気で祈るか、そこには差があるわけです。少なくともこの作品を見たあとは、本気で祈ってみるのも悪いことじゃないし、それでその人の何かが変われば、そっちの方が面白いと思っているので。

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早く瀬戸くんを「こいつ最悪だ」と思いたい!

──ますます期待が高まりますが、最後に観る方へメッセージを。
瀬戸 『関数ドミノ』を知っている方の中には、僕が真壁を演じることに違和感を抱く方もいるかもしれませんが、僕が真壁をやることで、観た方が共感してくださったり、僕が真壁をやる意味をきちんと感じていただけるようにしたいですね。
前川 僕が一番楽しみにしているのは瀬戸くんの真壁で、早く「こいつ最悪だ」と思いたいですね(笑)。みんなが少なからず持っている「人を妬んだり嫉妬したりする被害妄想」みたいなものを凝縮したような人間なので、絶対共感できるんだけど、共感と同時に嫌悪するから、観ている方たちにちゃんと嫌悪感を立ち上がらせることができたら、成功なので。
──瀬戸さんのファンが一瞬引いたりするかもしれませんね。
前川 ファンなのに、「こいつ最悪」って思っちゃったら成功ですね(笑)。ただ09年版は、最後に自分の価値にも気づいて、ちょっと前向きになるので、そこは瀬戸くんだからこそで。それに14年版の安井さんの真壁は孤独だったけれども、今回は理解者の女性が1人いて恵まれているんです。にも関わらずひがんで、世の中を恨んでいて(笑)。そういう真壁に瀬戸くんが説得力を持たせてくれたら、本当に面白くなると思う。
瀬戸 全ての言葉をプレッシャーに感じていますが(笑)、がんばります。


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前川知大 瀬戸康史

まえかわともひろ○新潟県柏崎市出身。03年結成のイキウメを主宰。日常に潜む異界を超常的な世界観で描く。13年からは、劇団の実験室「カタルシツ」を開始。最近の作品は『プレイヤー』『天の敵』『生きてる時間』『太陽』『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』。『太陽』は入江悠監督、『散歩する侵略者』は黒沢清監督により、映画化される。『散歩する侵略者』は、小説(角川文庫)発売中、映画が9/9より公開中、イキウメの舞台が10/27から上演となる。

せとこうじ○福岡県出身。2005年俳優デビュー。以降、舞台・映画・ドラマで幅広く活躍中。最近の出演作品は、ドラマは、NHK連続テレビ小説『あさが来た』『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』『幕末グルメ ブシメシ!』(主演)など。舞台は『マーキュリー・ファー』『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』『陥没』など。ドラマ『先に生まれただけの僕』(NTV系)が10月から放送開始、映画『ナラタージュ』が10/7公開、映画『ミックス。』が10/21公開される。

 〈公演情報〉
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『関数ドミノ』
作◇前川知大 
演出◇寺十吾
出演◇瀬戸康史 柄本時生 小島藤子 鈴木裕樹 山田悠介 池岡亮介 八幡みゆき 千葉雅子 勝村政信 
●10/4〜15◎本多劇場
九州、北海道、兵庫公演あり
〈お問い合わせ〉ワタナベエンターテインメント 03-5410-1885(平日11:00〜18:00)




【文/宮田華子 撮影/アラカワヤスコ】

 


唐組『動物園が消える日』
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黒柳徹子主演の海外コメディ・シリーズ『想い出のカルテット』間もなく開幕! 茅島成美・団時朗・鶴田忍インタビュー 

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黒柳徹子主演の海外コメディ・シリーズとして2011年と2014年に上演され、好評を博した『想い出のカルテット〜もう一度唄わせて〜』が、9月29日からEX THEATER ROPPONGIで、3年ぶりにアンコール上演される。(10月15日まで)
 
物語の舞台になるのは、引退した音楽家たちが入所できる老人ホーム。そこで、かつてオペラで共演したことがある4人が再会。ヴェルディ生誕を祝うコンサートで、再び四重唱を披露しようとするが…。 
輝いていた頃の自分たちをもう一度取り戻そうと奮闘する4人に、黒柳徹子、茅島成美、団時朗、鶴田忍が扮し、『リゴレット』の有名な四重唱にも挑戦!観る者に最高の笑いと感動を与えてくれる傑作コメディだ。
 
この作品で、黒柳扮する元プリマドンナのジーンに振り回される昔の仲間、シシー、レジー、ウィルフを演じる茅島成美、団時朗、鶴田忍に、この作品の見どころとコメディエンヌ黒柳徹子の魅力を語ってもらった「えんぶ10月号」インタビューを別バージョンの写真とともにご紹介。

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団時朗・茅島成美・鶴田忍
 
本格的な衣裳を着てアカペラで朗々と

──皆さんの役名とキャラクターを教えてください。
団 僕の役はレジナルド・バジェット、みんなにはレジーと呼ばれていて、とても真面目な男です。黒柳さんのジーン・ホートンとはかつて婚姻関係にあったのですが、気の多い女性で(笑)、バスだのテノールだの他の歌手と浮気をするので、9週間で離婚しました。
鶴田 僕はウィルフレッド・ボンド、ウィルフです。おしゃべりな男性で、いろいろな登場人物の名前がカタカナなので、それがまあ〜たいへんで、舌を噛まないようにしないと(笑)。年齢は4人の中で一番上です。
茅島 私はこの作品は今回初めて出演します。一番若いセシリー・ロブソン、愛称がシシーという女性を演じます。
──今度で3度目の上演ですが、この作品が観客を惹きつける理由は?
 このコメディ・シリーズのお客様は、徹子さんと同じような年齢で、人生経験の豊富な方が多く来られるんです。それもあって最近の作品はわりと深みのある人間ドラマが多く、この作品も老人ホームの話ではあるのですが、とても希望の持てる結末が描かれています。全員どこか調子が悪くて、まだら痴呆の人もいたりするんですが、4人が最後に一緒に、もう一度みんなで歌おうという1つの目的に向かっていく。歌う場面は本格的な衣裳を着て、アカペラを朗々と歌う。そこはとても感動しますし、この作品の素晴らしさだと思います。また、そこの鶴田さんがとても素敵でね。
鶴田 いや、団さんがいるからこそです。マントヴァ公爵の衣裳を着た姿だけでも絵になりますから。
茅島 また、よくお似合いになるの!
鶴田 階段から降りてくる姿があんなに様になる人はいないですから。あそこの四重奏は、二重の素敵さがありますね。音楽の素敵さと、文字通り「もう一度唄わせて」という思いで歌う素敵さと。
 設定が元音楽家専用の老人ホームというところが、いいですよね。イタリアにはこの作品のモデルになった、ヴェルディの作った音楽家のための老人ホームが本当にあるんです。
茅島 舞台には出てこないのですが、すごく個性豊かな人たちが入っていて、そのエピソードが、私たちのおしゃべりの中には出てきます。
 スピンオフでやりたいような面白い人たちばかりでね。

どんなハプニングもなんとかしてしまう徹子さん

──茅島さんは今回、シシーをどう演じようと?
茅島 以前は阿知波悟美さんがされていた役で、阿知波さんは達者な女優さんだし、4人しか出ないお芝居だから、私にできるかなと最初は不安でした。
 本読みでは素晴らしかったですよ。
鶴田 本当に!  シシーのままで。
茅島 まだら痴呆という状態が難しいんですよね。台詞が交錯するので、そのやり取りをこれからちゃんと覚えていかないと。
 大丈夫ですよ。キャラクター的には茅島さんご本人に近いと思いますから。
茅島 「豊満で天真爛漫」という設定で、たしかに豊満ですけど(笑)。

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──皆さんは黒柳さんと他の作品でも共演していますね。女優・黒柳徹子の素敵なところを語っていただければ。
茅島 団さんが一番沢山共演していらっしゃいますよね。
 そうですね。一番すごいなと思うのは、毎日の放送などで鍛えていらっしゃるから臨機応変で、何があろうと動じないんです。僕など稽古したものからちょっとでもはずれたら不安になるんですが、黒柳さんは、どんなハプニングもなんとかしてしまう。だから一緒に仕事していて安心ですね。
鶴田 僕は迷惑をかけたことがあって、やはり生ものですから突然、セリフが飛んじゃうこともあるんです。そういうとき必ず拾ってくれるんです。「全然説明になってないじゃないの」とか突っ込みながら(笑)、うまく進めてくれる。
 以前、芝居の最中にけっこう大きな地震があって、そのときお客様が立ち上がりかけたら、黒柳さんがアドリブで「これくらいなんてことないわ!」とかセリフを作って、お客様を落ち着かせてしまったんです。

人間の喜怒哀楽が深く描かれている作

──このコメディ・シリーズは、もう31弾になりますが、ここまで続いてきた理由はどこにあるのでしょう?
 やはり演出家の高橋昌也さんが、黒柳さんに合う海外の戯曲を次々に見つけてこられたからだと思います。日本語にしたらどうなるかという読み解きもされたうえで上演されていましたから。2014年に昌也さんが亡くなられてから新作が作れなくなったのがとても残念ですね。
鶴田 僕は喜劇をやる俳優として、ずっとこのシリーズを拝見していて、いつも素晴らしいなと。ですから誘われたときは本当に嬉しかったです。黒柳さんには毎回教わることばかりで、舞台でやり取りしていて、すっと入ってくるんです。こちらの余計な計算とか思惑なんかどっかに行ってしまうような、自然で柔らかな演技なんです。喜劇は笑わせようとしたら笑ってくれませんよね。人間の普通の暮らしの中にあるおかしみで、ふっと笑わせる。この作品でも、まだら痴呆になったシシーとレジーのやり取りとか、涙が出そうになりますからね。僕のウィルフなんかも、下品なことばかりしゃべったりするんですが、人に言えない思いを抱えていて、バカを言うことで救われているんです。
茅島 だから自分の台詞ではないところも、読んでいてとても胸にくるし、感動するんですね。本当に隅々まで完成されている戯曲だなと思います。楽しいところも悲しいところもあって、人間の喜怒哀楽が深く描かれている。その人が長く生きてきただけの意味がちゃんと書かれているんです。
──最後に改めて見どころを。
 黒柳さんは最初は出てこないんです。約20分くらい経って登場します。そこまで僕ら3人でおしゃべりしているわけですが、そこを我慢して(笑)、観ていてくだされば、あとは黒柳さんが一気に引っ張っていってくれます。老人ホームの話ですが、恋愛も性の話も出てきますし、とても人間らしい部分が描かれている作品だと思います。それから『リゴレット』の四重奏を、ぜひ楽しみにしていてください。
茅島 あの場面は衣裳も素敵ですね。私も新参加ですが精一杯がんばります。
鶴田 見どころは階段を降りてくる団さんのマントヴァ公爵です。見逃さないでください!(笑)
 

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団時朗・茅島成美・鶴田忍
 
かやしまなるみ○東京都出身。60年東映第六期ニューフェイスとして映画『白馬童子』でデビュー。以後、映像を中心に活動。近年の主な出演作品は、ドラマ『3年B組金八先生』『隠れ菊』『逃げる女』など、映画は『おとうと』『東京家族』『オケ老人!』など。黒柳徹子主演海外コメディ・シリーズには『ルーマーズ』(06、12、15)に出演。
 
だんじろう○京都府生まれ。68年CMでデビュー。71年TV『帰ってきたウルトラマン』(TBS)に主演、人気を博す。舞台、TV、映画で活躍中。近年の主な出演作品は、ドラマ『銀二貫』『信長協奏曲』『べっぴんさん』『京都人の密かな愉しみ』シリーズなど。舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』『ヴォイツェク』、黒柳徹子主演海外コメディ・シリーズは『ブロンドに首ったけ』(02)から『レティスとラベッジ』(16)まで5作品に出演。来年3月、4月『ロマーレ〜ロマを生き抜いた女』が控えている。

つるたしのぶ○東京都出身。劇団俳優座養成所第16期生。66年俳優座に入団、71年退団。TV、映画を中心に活躍中。近年の主な出演作品は、映画『釣りバカ日誌』シリーズ、ドラマ『子連れ信兵衛』『レッツゴー!永田町』『浅見光彦〜最終章〜』『警視庁捜査一課長』など。舞台は『屋根の上のヴァイオリン弾き』『最後の恋』『三婆』、黒柳徹子主演海外コメディ・シリーズは本作品と、『ルーマーズ』(12,15)に出演。


〈公演情報〉
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黒柳徹子主演海外コメディ・シリーズ第31弾
『想い出のカルテット』
作◇ロナルド・ハーウッド
訳◇丹野郁弓
演出◇高橋昌也
出演◇黒柳徹子 茅島成美 団時朗 鶴田忍
●9/29〜10/15◎EX THEATER ROPPONGI
〈料金〉一階席9,800円 
二階席6,500円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 (全日10:00〜18:00)
http://www.parco-play.com/web/program/quartet2017/




【取材・文/宮田華子 撮影/岩村美佳】


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UFO騒ぎに巻き込まれる一家! 青年座第228回公演『真っ赤なUFO』 高松潤インタビュー

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ピンクレディーの「UFO」がテレビを賑わせ、「スター・ウォーズ」などのSF映画が大流行していた昭和の時代を背景に、普通の父親とその家族が予想もしない出来事に巻き込まれていくという、舞台『真っ赤なUFO』が、9月29日から青年座劇場で上演される。(10月8日まで)
脚本は太田善也。青年座には、2010年に書き下ろした『つちのこ』以来の第2作目で、演出は『つちのこ』や朋友公演『ら・ら・ら』など、太田作品を多く手がけている黒岩亮が務める。

【ものがたり】
1978年(昭和53年)。ピンク・レディーの歌う「UFO」や映画「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」が大ヒット。全国各地でUFOの目撃情報が相次いで報告され、空前のUFOブームが起きていた。
東京の郊外にある一軒家。印刷業を営む斉藤清は、優しい妻、市役所に勤める娘、大学生の息子、そして年老いた母と、一家五人、慎ましく暮らしていた。ところが、清が45歳の誕生日を迎えたその夜、とんでもない事が起きる。
それは、家族、娘の恋人、近所に住む親戚、さらには小説家や大学教授、そしてテレビ関係者をも巻き込み、大騒動となってゆく……

この、ちょっと奇想天外なシチュエーションの物語の中で、娘の恋人・柴龍之介役で登場する高松潤に、この作品世界や俳優としての彼自身を語ってもらった。

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1970年代の昭和の匂いと一癖ある人間たちの面白さ

──高松さんは、太田善也さんと黒岩亮さんコンビの前作『つちのこ』にも出演していますね。今回と共通の部分はありますか。
太田さんの書かれる作品というのは、どの作品も太田色というか、1970年代が背景になっていることで、『つちのこ』の場合は岐阜の田舎の話で、今回は東京と、場所は違うんですけど、その時代ならではの匂いというものがあるんです。
──物語は1978年の話ですが、高松さんはまだ生まれたばかりですね。
ちょうど2歳くらいですね。先輩方の中には、当時のことをリアルタイムで知っている方も沢山いて、初めて「スター・ウォーズ」を観たときのショックとか、そういう話で盛り上がっていて。演出の黒岩先輩も、ちょっとSFオタクで、そういう話に一番熱くなっています(笑)。
──高松さんとしては、歴史を勉強しながらという感じなのでしょうか?
完全に時代物として捉えています。ですから当時の映画を見たり、YOU TUBEでCMを見たり、例えば「記憶にございません」というキーワードが出てくると、背景に何があったのか調べたりしています。この物語の1978年というのは、ちょうどオイルショックで景気が落ち込んだ時期だったことを知って、主人公は印刷業なので、その影響を受けて苦しんでいるという話に、「なるほどな」と思ったり。
──台本を読ませていただいたら、主人公は頑固で不器用な昭和の男性ですが、周りの人たちは、かなりユニークなキャラクターが出てきますね。
太田さんはいつも一癖も二癖もある人間を書かれて、そこが面白いんです。今回の僕の役も、名前からして柴龍之介とか普通じゃなくて(笑)。
──登場するシーンもインパクトがありますね。本人は真面目に考えて行動しているようですが。
真面目で真剣なんです(笑)。その真剣さが面白味を生むので、僕としても大真面目に取り組もうと思っています。
──高松さんへの当て書き部分などもありそうですね。
かなり当て書きされていると思います。太田さんとは、実はもう5本目なんです。入団2年目にスタジオ公演がありまして、それが太田さんの作・演出で、初めてお会いして、そのあと太田さんの主宰されていた劇団「散歩道楽」に、2回客演させていただきました。
──では、太田さんは高松さんを熟知しているのですね。いつもこういう個性的な役なのですか?
個性的ではありますね。太田さんの作品は、まずワークショップから始まって、ゲームをやって、そこから役者の個性とか面白いところを拾って書かれるんです。僕についても、いつも自分ではわからない面白さや新しい面を見つけてくださって、物語の中で僕の個性をどう生かすか工夫してくださるんです。今回の登場シーンも、色々考えてくださったうえでこういう形になったと思います。ありがたいですね。
──柴龍之介は、東京太陽族という劇団の俳優という設定ですが、どんなふうに演じようと?
柴については、演出の黒岩さんから、東京キッドブラザースの柴田恭兵さんのイメージと言われたんです。
──東京キッドブラザースは、1970年代に和製ロックミュージカルを上演して人気のあった劇団ですね。
ニューヨークのオフ・ブロードウェイで人気が出たそうですね。僕は去年、『朝食まで居たら?』でヒッピー役をやったのですが、その匂いのするような劇団だったのかなと。ですから柴もそれなりのポリシーを持っている俳優なのかなと思っています。
──そういう役どころで、物語の展開にどう絡んでいくのでしょうか。
物語の展開に関しては、ネタばれも含めてまだ言えない部分もあるのですが、たぶん結婚相手の父親を守るために闘うことになると思います。そこからどうなるかは、劇場で観るまでのお楽しみということにしておいてください(笑)。

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航空宇宙工学を学ぶ日々から俳優志望へと大転換

──今回、主人公を演じる山秀樹さんと、その妻役の小林さやかさんは、高松さんと同じ70年代生まれですね。話が通じやすいところもあるのでは?
世代が同じという以上に、同じ劇団の俳優同士ということの良さと強みを感じますね。芝居の現場はまず顔合わせから始まりますが、劇団だと距離感が近いので、すぐに芝居そのものに取り組んでいけること。そして芝居のことでも日常のことでも、気さくに話し合えるのが有り難いです。
──高松さんは在団15年ですが、大学では航空宇宙工学を学んでいたそうで、そういう経歴の人は珍しいですね。
あまりいないと思います。親戚にパイロットがいたことから、高校時代に航空産業に興味を持って、これからこの業界が盛んになるのではないかと思って入学したんです。でもパイロットより作る側、研究職の方が自分には合うような気がしたので、人工衛星とかロケット作りに興味を持って、そちらを目指したんですが、途中で挫折しました。
──そこから演劇へ方向転換したのは?
就職の時期に、サラリーマンになるイメージが持てなくて、もともと映画が好きでよく観ていたんです。松田優作さんがとくに好きで、そこから俳優をやるにはどうしたらいいのだろうと考えて、演劇を観るようになって。優作さんが文学座出身ということや、映画などで好きな俳優さんが大体舞台経験者とか劇団出身の方だったので、伝統のある劇団の養成所に行った方がいいんだろうなと思ったんです。でも、何もやってないわけですから、勇気がなくてなかなか踏み込めなくて。その頃、二科目ぐらい足りなくて大学を留年することになってしまったので、その時間を利用して思い切って、短期留学みたいな形でロンドンに留学したんです。ロンドンにはたまたま親戚が住んでいたので、そこに住まわせてもらって、町のカルチャースクールに行ったりとか、演劇が盛んなのでそういう場所が色々あるんです。そこでシェイクスピア作品を読んだり、ワークショップとか体験してみたらすごく楽しくて。
──やってみたら演劇が合っていたわけですね?
そう思いました。それで帰ってきて、大学卒業と同時に養成所などいくつか受験した中に青年座研究所があって。青年座のことなど何も知らずに入ったんですが、入ってみて、自分の肌に合うな、ここでよかったなと思いました。
──研究所のレッスンはいかがでした?
楽しかったです。全部初めてやることばかりで新鮮でしたし、体を動かすのは好きでしたから。大学のサークルではバスケットボールをやっていたんです。
──俳優になった今、自分のどういうところが役者に向いていると思いますか?
理系だったことが役作りではプラスになっているかもしれません。論理的なメソッドとか好きなので。黒岩さんも役作りは薬の調合みたいだとおっしゃっていますし。性格的なことで言えば、人と接することが好きなんです。デスクワークとか数字を相手にするより、人間を相手にするほうが楽しいですね。
──人付き合いが好きなのは、この仕事ではメリットですね。
基本的に嫌いな人っていないんです。たまたま何か嫌なことを言われたりすることがあっても、それは何かしら原因があって、こうだからこう言ったのかなとか考えると、その人を嫌いになれないんです。

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「人類の宝として生きたい」という言葉に感動して

──劇団には色々な先輩がいると思いますが、たとえば目指す人とか、尊敬する先輩とかいたら教えてください。
尊敬は先輩全員です。役者を長く続けること自体たいへんなことですから、どんな先輩もまず尊敬しています。その中で、付き人をさせてもらった方が2人いて。劇団にはとくに付き人制度はないのですが、たまたまその時の状況で付くことになったのです。その1人は東恵美子さんで。
──東恵美子さんは青年座の創設メンバーの1人ですね。素晴らしい女優さんでした。
入団1年目に、車の運転手を兼ねて2ヶ月ぐらい付きました。蜷川幸雄さんの『リチャード三世』(03年・日生劇場)に出演していらしたときで、今日の稽古はこうだったとか、昔の話などもしてくださったり、毎日のように役者としての心構えとか色々な話をしていただいて、本当に貴重な体験をさせていただきました。
──それはすごい財産ですね。もう1人はどなたですか?
津嘉山正種さんです。3ヶ月ぐらい付きました。
──津嘉山さんも名優ですね。ご本人はどんな方ですか。
とにかくストイックで、役者というものはここまで芝居を突き詰めるのかという、それが一番衝撃でした。とても繊細な方で、優しさもある方です。このお二方は、今でも無条件に尊敬しています。
──津嘉山さんとは、昨年の『朝食まで居たら?』で共演しましたね。
3人きりの出演者で、1日の半分以上は一緒でしたから、たくさんのことを教えていただきました。毎日、明日はこうやってみようかとか話し合ったり、日常のこととか映画のこととか、昔の舞台の経験など、色々な話をしてくださるんです。
──名優たちの経験を直接そばで聞けた高松さんは、すごくラッキーですね。
本当に運がいいんです、僕は(笑)。
──運も才能のうちと言いますから。これからについても伺いたいのですが、役者としてどうなっていきたいですか。
まずは色々な役をやりたいです。そして、本当におこがましいのですが、志としては「人類の宝になりたい」と思っているんです。というのは、画家の篠田桃紅さんの絵を見たときすごい衝撃を受けまして、どんな人なのか知りたくて、桃紅さんが書かれた本を読んだんです。その中に「人類の宝として生きたい」という言葉があって、それに感動して、自分も表現者の一員として目指すならここかなと。
──まさに大志ですね。 
世界中の人たちを、楽しませたり、泣いてもらったり、感動してもらえるようになりたい。ですから映画にもどんどん出たいです。役者は人に影響を与えられる仕事だと思うんです。自分がそうだったように人の生き方を変えることができる。すごい職業だなと思います。昨年40歳になったのですが、40歳は不惑ですから、惑わず、生涯俳優でいきたいと腹を括りました。
──これからの高松さんにますます注目していきたいと思います。最後にご覧になる方にアピールをいただければ。
この作品は肩肘張らずに観られるわかりやすいお芝居で、きっと共感してくださるところも多々あると思います。SFというか、ちょっと夢のある内容になっていますし、非常に面白い作りになっていますので、必ず楽しんでいただけるのではないでしょうか。
──真っ赤なUFOは本当に降りてきますか?
どうでしょう? それはぜひ劇場で、ご自分の目で確かめてください(笑)。


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たかまつじゅん○東京都出身、2003年青年座入団。最近の主な舞台作品は、『わが兄の弟』(2017年、演出=宮田慶子)『朝食まで居たら?』(2016年〜17年、演出=伊藤大)『フォーカード』(2016年、演出=宮田慶子)『外交官』(2015年、演出=黒岩亮)『地の乳房』(2014年、演出=宮田慶子)『UNIQUE NESS』(2014年、演出=早川康介)『つちのこ』(2010〜13年、演出=黒岩亮)以上、青年座。外部出演は舞台「刀剣乱舞」義伝 暁の独眼竜(2017年、脚本・演出=末満健一 マーベラス)など。


〈公演情報〉
チラシ表

劇団青年座 228 回公演
『真っ赤なUFO』
作◇太田善也
演出◇黒岩亮
出演◇山秀樹 小林さやか 當銀祥恵 松田周 山本与志恵 高松潤 井上夏葉 矢崎文也 平尾仁 山賀教弘 伊東潤
●9/29〜10/8◎青年座劇場
〈料金〉一般4,200円 U25チケット3,000円[25歳以下・青年座のみ取扱]初日割引3,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉劇団青年座 0120-291-481(チケット専用 11時〜18時、土日祝日除く)
〈青年座HP〉http://seinenza.com




【取材・文/榊原和子 撮影/竹下力】





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