稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

観劇予報は2019年2月20日に引っ越しました。
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インタビュー

福岡出身の役者たちで演じるゾンビものの集大成!『帰郷』入江雅人インタビュー

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福岡県出身の俳優で作家・演出家としても活躍中の入江雅人と、同じく福岡県出身の俳優・池田成志が、20年も前からあたためていた企画がついに実現。その作品『帰郷』が1月25日から東京 俳優座劇場で開幕する。(2月3日まで。そののち2月8日〜10日、福岡 イズムホールで公演)

物語は1980年、福岡…真夏の暑い夜。しげお、向井、香月、長崎、竜彦の5人は、学校のはずれの部室で秋の文化祭で上映するホラー映画を撮影していた。そこで彼らが体験する不思議な出来事とは…?

キャストは池田成志に加えて、NHK「サラリーマン・NEO」で楽しい福岡弁コントの掛け合いをしていた入江雅人と田口浩正のコンビネーションが再び実現。そして坂田聡、尾方宣久、岡本麗といった実力派が顔を並べる。出演者全員が福岡出身だけに本物の福岡弁で、青春の終わりをセンチメンタルタッチに描く新作だ。
この熱い地元愛のこもった舞台を作ろうと思った理由などを、入江雅人に話してもらった「えんぶ2月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

入江

青春時代の話と
ゾンビ化した日本を絡めて

──今回の作品は、入江さんの一人芝居で何度か上演していたものがベースになっているそうですね。
評判の良い作品で、もう4回くらいやっています。登場人物の高校時代の思い出を、ゾンビパニックが起きた後の福岡の話に絡めた30分くらいの話ですが、毎回ちょっとずつ変えてやってて、今回はその長編バージョンになります。
 
──長編になることで大きく変化するところは?
一人芝居の方は男友達2人ドライブに行く話なんですけど、この公演では彼らの高校時代からの前日譚も付けて、そこに至るまでの青春時代の話とか、ゾンビから逃げながら東京から福岡に帰る話とか、福岡の人たちにゾンビ事態が刻々と迫ってくる話とか、エピソードを新しく書いて足しました。
 
──ゾンビを何度も素材にしているその理由は?
生きることと死ぬことの話になるので、題材として面白いと思っているんです。家族とか友人がゾンビになって起き上がってくる。それって笑いも切なさも描けるんじゃないかなと思って。ゾンビものは一人芝居以外でも長編も含めて、たぶん10本くらい書いているのですが、この『帰郷』という作品でゾンビものの集大成というか、その面白さを全部詰め込めたらと思っています。

故郷に対する思いは
複雑でそれぞれ違う

──出演者の方たちは、皆さん入江さんと付き合いのある方ばかりですか? 
成志さんとは長い付き合いで、田口君もNHKの「サラリーマンNEO」で何年も一緒でした。坂田くんは飲みの席でしか会ったことないんですけど、出ている舞台はよく観ていました。尾方君は一人芝居を観に来てくれて出会ったのですが、調べたら出身地が福岡で、線の細い弱い役が欲しいなと思っていたので、「お、ここにいた!」みたいな(笑)。岡本麗さんも、「サラリーマンNEO」にゲストで来られた時にお会いしてて、是非、お母さんで出ていただこうと。
 
──福岡出身の方たちがこういう形で結集して、故郷でも上演するというのは素敵ですね。やはり故郷への思い入れを感じます
故郷に対する思いってそれぞれ違うし複雑だと思うんですよね。僕の場合は、夢を追うために、ある意味故郷を捨てて出てきたわけで。懐かしくもあるし、好きなとこも嫌いなとこもあるし、切なさもあったりする。ただ、年を取るにつれ帰りたくなります。のんびりするなら福岡がいい。食べ物も美味しいし(笑)。
 
──福岡弁というのも今回、楽しみなファクターです。
福岡弁って、わりと東京の方にも楽しんでもらえるんですよね。テンポがいいというか、何人かで話してるとちょっとしたグルーブ感というか、盛り上がり感があるんです。バカバカしいことを福岡弁で言うとよりバカバカしくなるし、悲しいことは、面白いけど切ないみたいなニュアンスになる。なかなか特殊な言葉です。それをリアルに福岡出身の役者さんで、しかもゾンビものでやってみたいと思っていたんです。 
 
──そういう意味では福岡出身の人にとっては、とくに嬉しい公演になりますね。最後に意気込み、アピールをぜひ。
福岡出身の役者さんたちによる本物の福岡弁の芝居ですから、東京でも福岡感を味わってもらえると思いますし、福岡出身で東京にいる人たちにはぜひ観て欲しいです。そして福岡公演は、出演する全員にとって、里帰り公演なので、みんな楽しみにしています。ぜひ福岡のお客様に同郷の役者たちががんばっている姿を観ていただければ。ゾンビもので福岡弁ですが、青春への思いが込められた作品ですから、観ている方それぞれに、どこか共感していただけると思います。

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いりえまさと○福岡県出身。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)の同期、ウッチャンナンチャン、出川哲朗らと劇団SHA・LA・LAを結成。映画、TV、舞台と幅広く活躍中。近年の主な舞台は『ヒトラー、最後の20000年〜ほとんど、何もない』、国産第1号『安心』、『クラウドナイン』、『演劇部のキャリー』(作・演出のみ)など。作・演出・出演の「グレート一人芝居シリーズ」も精力的に発表している。

観劇レビューはこちら
http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52069027.html 

〈公演情報〉
帰郷PR
 
『帰郷』
企画・作・演出◇入江雅人
出演◇池田成志 田口浩正 坂田聡 尾方宣久 岡本麗 入江雅人
●1/25〜2/3◎東京・俳優座劇場、
●2/8〜10◎福岡・イズムホール
〈料金〉6,800円 プレビュー公演(1/25)5,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉
東京公演/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337 (全日10:00〜18:00)
福岡公演/ピクニックチケットセンター 050-3539-8330 
(平日11:00〜17:00) 
 
〈公演HP〉https://www.kikyou2019.com/





【構成・文/宮田華子 撮影/友澤綾乃】




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平成最後の新春浅草歌舞伎で奮闘中! 中村鶴松・中村梅丸インタビュー

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若手の大きなチャレンジの舞台であり、お正月の浅草名物でもある「新春浅草歌舞伎」。平成最後となる節目の公演が1月2日から上演中だ(26日まで)。

演目は、第1部が上方(関西)と江戸の廓話を洒脱に語る舞踊『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』で開幕。源氏と平氏の駆け引きを大立廻りとともに見せる古典『源平布引滝 義賢最期』、ユーモラスな舞踊劇『芋掘長者』。第2部は、江戸の初芝居といえばコレ!の『寿曽我対面』に始まり、皿屋敷伝説をもとにした新歌舞伎の名作『番町皿屋敷』、花形俳優がオールキャストで華やかに見せる『乗合船惠方萬歳』。古典の名作あり、新歌舞伎あり、舞踊あり。若手のほとばしるエネルギーはもちろん、歌舞伎の豊かなバリエーションも感じられるラインナップとなっている。
開幕前に出演者が日替りで新年の挨拶をつとめる「お年玉〈年始ご挨拶〉」、地元浅草の芸者衆がお客様を出迎える「浅草総見」(1月11日の第2部)、「着物で歌舞伎」(1月20日の第2部)など、新春浅草歌舞伎ならではの楽しいイベントももちろん健在。
 
出演者は、尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村隼人、中村橋之助、中村鶴松、中村梅丸といったフレッシュな若手花形歌舞伎俳優。そこに中村歌女之丞、大谷桂三、そして中村錦之助といったベテラン俳優が加わり、舞台に厚みを加えている。

開幕間もない時期に、稽古場にて期待の若手歌舞伎俳優の、中村鶴松と中村梅丸にインタビューを行った。鶴松の演じる役は『義賢最期』の御台葵御前、『芋掘長者』の腰元松葉、『番町皿屋敷』の腰元お仙、『乗合船惠方萬歳』の芸者。一方の梅丸は、『戻駕』の禿たより、『義賢最期』の待宵姫、『寿曽我対面』の化粧坂少将、『乗合船惠方萬歳』の子守。それぞれ、昼夜あわせて4役ずつ(!)と奮闘中の2人に、公演にかける思い、自身が演じる役のこと、新年の抱負などを語ってもらった。仲の良さが伝わるやり取りもあわせてお楽しみください!

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 中村梅丸 中村鶴松 

昼夜で4演目
4役ずつの大役に挑む!

──「新春浅草歌舞伎」はそれぞれ何度目になりますか?
鶴松 僕、何度目なんだろう? 3年ぶりですね。最初が『一本刀土俵入』(2009年)です。お兄さん達(中村勘九郎・中村七之助)が色々な役に挑んで必死に頑張っている姿を見てきたので、そこに僕も加われるというのは非常に嬉しいです。
梅丸 僕は6年前だと思います。
鶴松 そこからずっと出演している?
梅丸 そうです。今回で7回目です。
鶴松 丸ちゃん(梅丸)ばっかり、僕、全然出してくれない(笑)。
梅丸 いやいや(笑)、それはほら他の劇場とか出てるから(笑)。
鶴松 直接「出してください」ってお願いしたんだけど(笑)。共演する事もあんまりなかったよね。
梅丸 そう。4年前に初めて浅草で共演して、それ以来ですね。  
──昼夜でそれぞれ4役ずつですが、なかなか1日に4役というのはないのでは?
梅丸 しかも責任ある中での4役ですから、やはり重みが違いますね。
鶴松 どの役も1つ1つ大切ですが、『義賢最期』はやはり義太夫(狂言)ですし、歌舞伎俳優としてしっかり勉強していかなくてはいけません。僕は義太夫狂言は、歌舞伎俳優でありながらそんなに経験した事がないので、今回はありがたいですし、しっかりやらなければと思います。今は、世話物やコクーン歌舞伎・赤坂大歌舞伎などの新作が多く、古典をしっかり勉強する機会が限られてくるので。丸はしょっちゅうやってるよね?
梅丸 そうですね。義太夫狂言というのは「王道」で、それを皆さん若いうちに勉強されてきたわけで、そのチャンスを我々も頂ける事は、今後を考えてもすごく意味のある事だなと感じています。
──他の狂言と「ザ・古典」の義太夫狂言との最大の違いは?
鶴松 型にばかりとらわれ過ぎると心が見えませんし、かといって心を意識し過ぎて型が乱れてもいけません。リアルな心と型との兼ね合いが難しいですね。
──それぞれどなたに教わるのですか?
鶴松 僕は『義賢最期』は(市川)笑三郎さんに教わりました。
梅丸 『義賢最期』の待宵姫と、『対面』の少将は、以前もこの浅草でさせて頂いたのですが、待宵姫はその時中村壱太郎兄さんが小万をお勤めになっていたのですが、一緒にみてくださいました。少将は基本的には(中村)魁春旦那がみてくださいました。
──先輩に堂々と教わりにいける良い機会なんですね。
梅丸 そうですね。いくら教わりたくても、お役を頂かないとなかなか教わる機会はないですし、その教わる先生たちも毎月舞台がありますので。
鶴松 とくに僕は、中村屋となるとメンバーが決まっていますし、お兄さん達がやってきたお役を頂く事も多いので、そのままどちらかに教わる機会がほとんどで、もちろん教えていただく内容は正しいものなのですが、他の方に教わることで、色々な視野を持てるのはいいなと思っています。

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舞踊から新作歌舞伎、
古典まで勉強できる場

──ほかの役についてはいかがですか?
鶴松 『芋掘長者』は以前、大名で出させて頂きました。楽しい舞踊です。今回は腰元なので下品にならないように上品に勤めたいと思います。『番町皿屋敷』の腰元お仙は、前に丸ちゃんがやっていた役で、昨日も聞いたりしていたのですが、こういう役も難しいよね。
梅丸 新歌舞伎ですからね。
鶴松 色々な役をやらせて頂いていて、それぞれ色が本当に違うので、細かいところでも役の違いを出せたらと思います。丸ちゃんは、わりと同じような役かな?
梅丸 そうですね。禿と子守はどちらも子どもの役で、どちらも常磐津ですが、舞踊としてのテイストは全然違います。『戻駕』は歌舞伎舞踊といわれる作品ですので、芝居の要素が高い古風な舞踊です。どこが面白いのか、どこに山場を持って行くか、作品を良く理解して踊らないとお客様に分かっていただけないと思います。それは (藤間)勘十郎先生も仰っておられるので、しっかりと勉強して踊らせて頂きます。各々の見せ場をどうするのか、まとまった時にどうなるのか、自分ではまだまだ見極めがつかず、古風だからこそ難しい踊りだと思います。『対面』もやはり古風な芝居で、基本が詰まった作品です。どなたが演じてもすることは同じなのですが、座組によって舞台にのった時に違ってくるのが、 古典歌舞伎の面白いところであり、また、難しいところだと思います。最後の『乗合船』は総出演で、華やかに。
鶴松 僕は芸者はやった事がないんだよね。ある?
梅丸 芸者…うん、ある。ちょこっとだけ。
鶴松 芸者も初めてですし、(『義賢最期』の)御台様という役どころも初めてなので、まだ慣れなくて、戸惑いながらやっています。でも新しい役柄を勉強できるのは嬉しいですね。まさか葵御前をやるとは思っていなかった。
梅丸 そうだね。こんなに年の近い葵御前と待宵姫は今までにないんじゃないかな(笑)。僕も聞いた時、びっくりしました。
鶴松 (片岡)仁左衛門さんも来てくださって、色々細かいことを教えてくださっています。

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お互いに刺激を受けながら
新春浅草歌舞伎で成長を!

──これまでの「新春浅草歌舞伎」で、とくに思い出に残っていることは?
鶴松 色々観ていますが、お兄さん(勘九郎)の『身替座禅』は覚えていますね。
梅丸 中村屋(十八代目中村勘三郎)さんが教えにきてた?
鶴松 そう。お兄さんに教えるために歌舞伎座から浅草に行くのに、僕も一緒について行って。
梅丸 そうなんだ。
鶴松 今回初めてポスターの9人の中に並ばせて頂いて、若い頃のお兄さん達と同じ立場になれたというのがありがたいなと。
梅丸 僕は忘れられないのは、1年目の時にも『対面』に少将で出させていただいたのですが、この舞台稽古がすごかったんです、客席が。
──ご指導の先輩方ですね。
梅丸 まずうちの旦那(梅玉)がいて、大和屋(十代目坂東三津五郎)さんが松也兄さんを教えに来て、出演者(坂東新吾、中村種之助、中村米吉)の父君達と指導した師匠達が一堂に会したので、まるで名題試験みたいな(笑)。
鶴松 それぞれの役の人が教えに来てというのは、浅草ならではだね。やる方は大変でしょうね。いくつで少将をやったの?
梅丸 16(歳)かな。
鶴松 すごいね。
梅丸 もう全然。ただ座ってるだけで精一杯でした(笑)。
──お互いのリスペクトできる点はどういうところですか?
鶴松 毎年「新春浅草歌舞伎」で勉強している分、自信をもってやっているよね。稽古を見ながらそう思った。やっぱり堂々としていたし、松也さんはじめ、皆さんがすごく自信をもってやっている。だからこそ大きく見えるんだなと。
梅丸 いや、僕もそれ言おうと思ってた。すごく自信をもっててすごいなと。それに自信があるのは当然ですけど、その中に一門のカラーが完全にあって、もちろん、そうじゃなければおかしいし、一門の事が好きでなければ絶対にそうならないのだけど。一門の方達と一緒の方向を見ているというか、エネルギッシュだよね、小さい頃から。
鶴松 あぁ、それはそうかもしれない。
梅丸 思い切ってやる感じがあって、お芝居を観てても、僕はここまで振り切れないやと思う事がある。
──鶴松さんはその自覚はありますか?
鶴松 いや、わかんないですけど。振り切りある? 
梅丸 うん。僕だったらどうしても気にしちゃうところを、気にせずに、「ここは僕のしどころだからやってやる!」という感じでやれる。どうしても小さく綺麗にまとまってしまいがちなところだと思うのですが、それが全くない。大先輩の方達とフラットな感じで芝居しているのを観て、いつもすごい事だなと思います。
鶴松 では僕からも。丸はとにかく美少年です。本当に整ってるなと。
梅丸 何を言ってるんですか。ご自分だってどれだけ言われてるか(笑)。
鶴松 いやいや(笑)。
──最後に2019年の抱負を伺いたいのですが?
鶴松 2018年は学生を卒業して初めての1年の始まりだったのですが、毎月(公演に)出させて頂いてありがたかったです。本当に芝居漬けになってきているので、2019年もそうありたい。休みなく働いて、毎日毎日勉強したいと思っています。
梅丸 僕も3月には、一応もう大学生ではなくなるので…。
鶴松 含みがある言い方だね(笑)。
梅丸 こちら(鶴松)はちゃんと卒業されたんですけど(笑)。2018年は沢山の新しい事にチャレンジさせて頂きました。若手の皆さんと一緒に古典の勉強をする機会を頂いたり、大先輩達のお芝居に出して頂いたり、師匠(中村梅玉)と離れて出して頂く機会が多かった1年でした。2019年は、身につけたものが少しでも舞台で出していけるようになれたらと思っております。小さい頃から部屋子の1年上の先輩として、常に前を走っていっている鶴松さんを見ながら、これからも成長していきたいです。
鶴松 僕こそ稽古場で丸の事を見ていて、色々なところで勉強してきている分、僕が言ったら偉そうですけど、成長しているのが見えますし、僕ももっともっと頑張らなければいけないなと思っています。お互いに良い刺激を受けながら、この「新春浅草歌舞伎」で色々なことを身に着けられればと思っています。 
 
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〈公演情報〉
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「新春浅草歌舞伎」
[第1部] 11:00〜
 お年玉〈年始ご挨拶〉
 『戻駕色相肩』
 『源平布引滝 義賢最期』
 『芋掘長者』
[第2部] 15:00〜
 お年玉〈年始ご挨拶〉
 『寿曽我対面』
 『番町皿屋敷』
 『乗合船惠方萬歳』
出演◇尾上松也 中村歌昇 坂東巳之助 坂東新悟 中村種之助 中村隼人 中村橋之助 中村鶴松 中村梅丸/中村歌女之丞 大谷桂三 中村錦之助   
●1/2〜26◎浅草公会堂  
〈料金〉1等席9,000円 2等席6,000円 3等席3,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489




【取材・文・撮影/内河 文】




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念願の劇団☆新感線の舞台で締めくくった2018年を振り返る! 柳下 大 インタビュー

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若手演技派俳優として、2018年も舞台での活躍がめざましかった柳下 大。
まず1月開幕の『Shakespeare's R&J 〜シェイクスピアのロミオとジュリエット〜』では、注目の若手俳優による4人芝居。続いて4月開幕のRock Musical『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』では、オリジナルミュージカルの初演に挑んだ。また6月開幕の二兎社『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』では、ベテラン勢のなかで最年少キャストとして、社会派の話題作に出演。そして12月31日まで出演したのは、彼の夢でもあった劇団☆新感線の作品、ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc3。
その『メタルマクベス』の千秋楽を目の前にした2018年の年の瀬に、充実の1年の活動を振り返ってもらった。

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2つの「ロミオとジュリエット」で
シェイクスピアに正解はないと

──2018年は舞台4作品に出演して、そのなかでも『ロミオとジュリエット』を題材にしたものが2作品、『マクベス』を題材にしたものと、シェイクスピア作品が多かったですね。
そうですね。ただシェイクスピアではあるのですが、ある意味、変形型の舞台ばかりでした。でも、それによってシェイクスピアのいろいろな解釈の仕方、表現の仕方を改めて感じましたし、原作がもともと持っている“強さ”のようなものも感じました。結果的にいろんなジャンルの芝居をやらせてもらったなと思います。今までにやったことのないジャンルが多かった印象です。
──1、2月の『Shakespeare’s R&J 〜シェイクスピアのロミオとジュリエット〜』は、2003年にロンドンで初演されたジョー・カラルコの脚色の「Shakespeare's R&J」の日本版。厳格なカソリックの全寮制男子校の寄宿舎で暮らしている4人の男子学生が、夜にこっそりベッドを抜け出し、読むことを禁じられた『ロミオとジュリエット』のリーディングをする、というものでした。
まず本がすごく難しかったです。だから演出の田中(麻衣子)さんと僕たち4人(矢崎広、小川ゲン、佐野岳)で、“僕たちなりの答え”を出そうと、試行錯誤してやっていたのを覚えています。
──どのように作っていったのですか?
田中さんは演じる僕たちの気持ちに歩み寄ってくださるので、稽古場では自分の解釈を提示して「どう見えますか?」という話をよくしました。だから本当に「みんなで一緒に作っていった」というような感覚が大きいです。
──柳下さんは「学生2」という役で、ジュリエットを中心に演じましたね。
そうですね。ジュリエットを演じているんだけど、「学生2がジュリエットをやっている」という感覚が強いお芝居で。そこに苦労しましたし、不思議な作品だったなと思います。

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──続けて4月には再び『ロミオとジュリエット』を題材にした、Rock Musical『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』に出演しました。これは石丸さち子さんが『ロミオとジュリエット』を題材にして脚本・作詞・演出を手掛けたオリジナルミュージカルで、登場人物も時代背景も現代的で、結末も石丸さんならではでしたね。柳下さんのマキューシオ役をモチーフにしたポドフ役が合っていました。
石丸さんは蜷川幸雄さんの演出助手をしていた方で、蜷川さんも「『ロミオとジュリエット』はマキューシオの話だ」とおっしゃったことがあるそうです。シェイクスピア自身も、マキューシオをやってほしい役者さんを口説くときに、タイトルを聞かれて『マキューシオ』と答えたという話もあるそうで、そういうこともあって、石丸さんもマキューシオには思い入れがあったようです。 
──観客にとっても、心に残る役だったと思います。
シェイクスピアっていろんな読み方、捉え方ができるし、どれが正解というのもないと思うんです。そのなかで、『5DAYS』のマキューシオ(ポドフ)の感情として色濃く出されたのは、ロミオ(ハワル)を想う気持ちで、どれくらい想っているのかとか、LOVEとLIKEの割合とか、その加減が難しかったですね。今回は、石丸さんの脚本と演出なので、ああいうふうになりましたけど、演出や役者によって全く変わる物語だと思いました。
──石丸さんの演出は熱いですし、内側も抉り出されますよね。
稽古場で一番熱演してくれる方です(笑)。僕はずっと試されてる感じがしていました。「こうして」とか「こうしなさい」というより、「何を思ってるの?あなた」という感じの稽古でしたから。そのなかで僕は、もちろん石丸さんは本を書いたわけだから役について一番わかっている方なのですが、だからこそ「そこを超えなきゃな」という気持ちがありました。だから石丸さんに「そういう面もあったのね」と思ってもらえるように、と考えてやっていました。「ポドフのことは僕が一番知っています」という状態にならないと、あれだけ熱がある方の演出は受けられないので。
──和田俊輔さんの音楽もまた合ってましたね。ポドフの歌もメロディ、歌詞含めとても印象的でした。ただ稽古場で柳下さんが「歌うのは苦手」ともおっしゃっていたのも覚えています。
いえ、僕は歌うのは好きなんですよ。柳下 大として歌うのは好き。でも、これは勉強不足なだけですが、ミュージカルの歌い方はやっぱり難しいんですよね。ただ石丸さんも、ミュージカル的な歌い方を求めたわけじゃなかったから。“技術で歌う”というよりも“気持ちで歌う”という感じでやれました。

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永井愛の“言葉”の凄さと
先輩たちの力を感じる日々

──6月から9月にかけて二兎社『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』に出演されました。これもまた評判がよかった作品ですね。
楽しかったです。少人数の芝居で、大人の方々と一緒にお芝居できて。二兎社は前作の『ザ・空気』でも演劇賞をいくつも受賞していて(作・演出の永井愛は第25回読売演劇大賞の最優秀演出家賞、二兎社は優秀作品賞、キャストの若村麻由美は優秀女優賞をそれぞれ受賞)、この『ザ・空気ver.2』も永井さんの本がすごくよく出来ていて、単純に台詞を喋っているだけで伝わるのがわかりました。
──そういう感覚はいつ感じましたか?
本番が始まってからですね。僕は大手新聞社の若手記者、小林の役でしたが、僕自身はそこまで世の中のことをわかっていないので、台詞の内容も「そういうことがあったんだ」と思うことが、最初はたくさんあったんです。でも、幕が開いてみると、観にきたお客さんたちは、そういう台詞の中に永井さんの仕掛けたもの一つひとつに反応して笑っている。そういうのを目の当たりにして、「すごいな!」と思いました。
──小林記者は、最初は正義感に燃えているのですが、最後は空気を読んで変節していく。でも柳下さんが持っている素直さが生きて、憎めない青年になっていました。小林として役作りは?
小林記者の29年間を、学校ではこうで、就職先でこういうことがあって……というふうに考えたりしたのですけど、それよりも、書いてあることをちゃんとお客さんに伝えようと。それができれば小林のことも伝わる本になっていたと思いますし、舞台の上でなにが起きているか、みんながなにを思って喋っているか、それぞれの“言葉”を伝えることが一番大事な舞台だったと思います。
──永井さんはどんな演出をされるのですか?
明確なんです。ご自分で書きながら演出もしているし。実は台本が書き終わったのは本番1週間前だったのですが、永井さんのなかでは既に見えているから、「こういう人」「こういう感じで喋って」と、具体的なイメージを言ってくださるので、あとはそれを自分のなかで膨らませていく感じでした。
──5人だけの舞台で、共演者は安田成美さんや眞島秀和さん、馬渕英里何さん、松尾貴史さんと年上のキャストばかりでした。
皆さんすごい方ばかりですから、お芝居を見ているだけで楽しかったですし、「こういう力のある人たちが俳優として残っていくんだな」と感じました。そういうなかで、一番年下で参加させてもらった自分の一生懸命さと、まだ駆け出し記者の小林がうまく重なったんじゃないかなと思っています。永井愛さんとの出会いは、とても得るものが多かったし、これからの自分にとって大きな意味があったと思っています。

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憧れの新感線でもがきながら
探し続けた「自分らしさ」

──そして年末には、ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc3で、憧れの新感線の舞台に、グレコ役で出演しました。
出演が決まったときは本当に嬉しかったです。
──実際に稽古が始まってどうでしたか?
理想と現実のギャップに戸惑ったっていう感じでした。そこでやられているのは、自分が観てきた“新感線の舞台”の稽古なんですが、そこに自分のピースがなかなかはまらないっていう。
──新感線の作品を観ているときに、「ここに自分がいたら」という想像をしたことはあったのですか?
それが全く想像できていなかったんです。ただ好きで観ていたというか。「いつか出てみたいな」という感覚だったんですよね。それも「アンサンブルで出てみたい」くらいのイメージで、もし役をもらっても自分ができるのかというクオリティの表現がされていましたから。だから稽古中は苦しかったです。次の日が休みだと、出演者仲間を誘ってヤケ酒してました(笑)。
──演出のいのうえひでのりさんとのコミュニケーションは?
それが、すごい人の演出を受けてると思ってるのでテンパっちゃって(笑)。とにかく「やって」と言われたことを必死でやってるつもりなんですけど、テンパりすぎてるから全然違うことになってたりするんです。劇団員の皆さんは「いのうえさんに聞きに行っていいんだよ」と言ってくださるんですけど、それもなかなか行けなくて。粟根まことさんと吉田メタルさんとは共演経験があったので、いろいろ話してくださったり、橋本じゅんさんも気にかけてくださったりしたんですけど、僕、新感線メンバーが好きで憧れているから……。もうよくわからない状態でしたね。稽古映像を観ると、全然できてない自分もわかるし。
──それでも幕は開くわけでしょう?
そう。だから幕が開いても、自分のなかで「こういうことを求められてるけど、できてない」というのがあって。公演中も毎公演録画を確認して、少しずつでもいいから一つ一つやっていこうとしていた感じです。そんなとき事務所の社長が観に来てくれて「もっとあなたらしくやりなさい」と言われて、確かに自分らしさは全然出てないなと思って。そこから「自分らしさってなんだろう」とか、この作品に役に立つためのグレコって?とか考え出しました。本当だったら稽古が始まるときに考えるようなことなのに、本番が始まってやっと考えられるようになった。余裕がなかったんですよね。

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──グレコ役としての見せ場もありましたし、パワーもあって、そんなに悩んでいたようには見えませんでした。
今はだいぶラクになりました。それには1つきっかけがあって、ちょうど折り返しくらいの頃、なんとなく自分でも課題が明確になってきたし、ひとまず最低ラインにはいけたかなというところにきて、逆になんか不安になって、これまで色々な作品でお世話になっている演出家の宮田慶子さんに観に来ていただいたんです。宮田さんと会った瞬間、思わず泣きそうになりました(笑)。でも宮田さんが「大丈夫、ちゃんとあなたがやれることやってるから」と言ってくださって。それを聞いてふっきれて、そこからはラクになりました。
──ちなみに「新感線でこれができて楽しかった!」というのは?
新感線の殺陣が好きだから、それができるのは楽しかったですね。毎日チェックしてもらって、チェック事項も少しずつ減っていきました。
──そうやって積み重ねることで、最初に自分のピースがなかなかハマらないと感じたことが、ハマっていった感覚はありますか?
そういう感覚はあります。この作品が終わったら達成感はすごいだろうなと。ただ、目標が一旦なくなる気はしています。 
──ちょうど30歳の節目に、そういう作品に出られてよかったですね。
そうですね。でも今はあと1週間ありますから、ちょっとでもよくしたいです。そうしなきゃ出た意味がないと思うし。出るからには「できてる」じゃなくて「めっっちゃいい!」じゃないといけないと思うから。
──最後に2019年の目標は?
年が明けてからゆっくり考えます(笑)。

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やなぎしたとも○神奈川県出身。06年、俳優デビュー。以降、映像や舞台で活躍中。最近の出演作は、ドラマはNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』BSスカパー!藤沢周平シリーズ『果し合い』MHKドラマ『みをつくし料理帖』NHKプレミアムドラマ『主婦カツ!』舞台は『熱海殺人事件 Battle Royal』『アダムス・ファミリー』『真田十勇士』『オーファンズ』『浮標』『お気に召すまま』ミュージカル『手紙』『牡丹燈籠』『Shakespeare's R&J』Rock Musical『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』二兎社『ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ』ONWARD presents 新感線☆RS『メタルマクベス』disc3など。



 
【取材・文/中川實穂 撮影/田中亜紀】



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『Like A』room[002]間もなく開幕! 石賀和輝・平牧仁インタビュー

石賀平牧

演出・脚本を三浦 香、脚本を伊勢直弘、振付を當間里美、楽曲制作をAsu(BMI Inc.)という『Club SLAZY』シリーズのスタッフが再集結した完全新作オリジナル舞台『Like A(ライカ)』が、初演から約1年ぶりに第二弾『Like A』room[002]を上演、1月12日に全労済ホール/スペース・ゼロで幕を開ける。(20日まで)
 
初演で描かれたのは、海沿いの静かな街に立つ一軒の高級ホテル「PERMANENT」で働く人々の謎に満ちたストーリー。さまざまなジャンルで活躍するキャストの歌やダンスが印象的な作品となった。
初演に続き出演するバトラー役の石賀和輝とFC(エフシー)役の平牧仁に話を聞いた「えんぶ12月号」のインタビューを別バージョンの写真とともにご紹介する。

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平牧仁    石賀和輝 

作っている自分たちにも謎が多い作品

──初演時にもおふたりの対談取材をさせていただきました。そのときは初対面で「これから」という感じでしたが、あれから仲良くなりましたか?
石賀 (即答で)全然なってないです。
平牧 なんでだよ!
石賀 (笑)距離は縮まってると思います。
平牧 僕があおむけで寝転がってたら、その顔面に向かって腕立てをしてくるくらいの距離感です。
 
──かなり仲がいいですね。初演は、『Club SLAZY』シリーズの制作陣による作品ということでショー要素が強いのかと思っていたら、ストーリーに寄り添う歌やダンスが中心で新鮮でした。
平牧 僕も想像と全然違いました。『Like A』はどちらかというと音楽劇っぽい感じ。音楽の力も強くて、だんだんとカタチになっていくにしたがって「この作品……やべえ!」って思いましたね。
石賀 作品を作っている自分たちにも謎が多い作品なので、お客さんと同じように作品にのめりこんでいくというような感覚を味わいました。1公演くらい客席から観てみたいですね。

──演出も独特でしたよね。
石賀 座った席によっても見え方が変わってくると思います。
平牧 本当に覗き見してるみたいな感じが面白かったよね。

一緒に歌いたくて「仁さん、やりましょうよ」

──平牧さんは、FC役はいかがでしたか?
平牧 日に日に気持ち悪くなっていったと思います(笑)。最初は塩梅がわからなかったので振り切れきれなかったんですけど、本番中に楽しくなってきちゃって。
石賀 舞台上で僕を笑わせようとしましたよね?
平牧 そんなことした?
石賀 しましたよ! 僕が演じるバトラーはそんなに笑わないキャラクターなのに、仁さんのアドリブがあまりにもくだらなすぎて笑っちゃいました(笑)。
 
──石賀さんは、バトラー役はどうでしたか?
石賀 楽しんで演じさせていただきました。普段の自分ともギャップがある役だったので。あんなにクールじゃないし、しっかりしてないですし(笑)。

──でも当て書きだったのでは?
石賀 喋らなければ近い感じに見えるんだと思います(笑)。初演は、仁さんの弾くピアノで歌うシーンもあったのですが、舞台上で本番で合わせるのがやはり違いました。自分の中にあるものをえぐり出される感じがしました。
平牧 一緒にやったね。
石賀 毎回、公演前に舞台上で合わせてたんですよ。後半はもう不安もなくなりましたけど、ただ一緒に歌いたくて「仁さん、やりましょうよ」って言ってました。みんなで歌うシーンも、カンパニーが仲良くなったり、一緒に過ごす時間が重なるにつれて、濃いものになっていきました。「みんなで歌ってるな」ということを日に日に感じるようになって本当に楽しかったです。
平牧 キャストがみんな音楽が好きなので、だからこそ追求できるものがあったよね。

──第二弾の楽しみな部分はどこですか?
平牧 あらすじを読んで「え? どういうこと?」と思いました。
石賀 そうですよね。今回は新キャストも入るので、また初演とは違う空気が作れたらなと思っています。
 
──なんだか石賀さん、初演より自由になりましたね。
石賀 仁さんの存在が大きいです。僕が言えないようなことも、気付いて言ってくだって。さっきの「舞台上で合わせよう」っていうのも最初は仁さんが声かけてくださったんです。それで僕も言えるようになった。もっと自分を出していいんだってことをこの作品で知りました!
平牧 成長したー!

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平牧仁    石賀和輝 

いしがかずき○1996年、大阪府出身。「アミューズオーディションフェス2014」ファイナリストを経てデビュー。近年の主な舞台に『ガスマスクの伊藤さん』、『ジョン万次郎』、dorama project #1『ラケット』、『閉店拒否!〜俺たちは帰らない〜』、「『黒子のバスケ』OVER-DRIVE」、ミュージカル『八犬伝―東方八犬異聞―』二章、『露出狂』、Act Against AIDS 2018 『THE VARIETY 26』など。 

ひらまきじん○東京都出身。自身が作詞曲を手掛ける音楽ユニット「シキドロップ」として活動中。ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン大石秀一郎役などで注目を浴びる。近年の主な舞台に、舞台『炎の蜃気楼昭和編 散華行ブルース』、ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』など。ピアノが特技で『烈車戦隊トッキュウジャー』では自身歌唱のキャラクターソングを作曲。 
 
〈公演情報〉
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『Like A』room[002]
脚本・演出◇三浦 香 
脚本◇伊勢直弘 
振付◇當間里美 
楽曲制作◇Asu(BMI Inc.)
出演◇辻 凌志朗   石賀和輝 SHUN(Beat Buddy Boi) 中谷優心 磔俊吾 岩 義人  橋本有一郎 齋藤健心 橋本有一郎 今井稜/平牧仁 鎌苅健太
●1/12〜20◎全労済ホール/スペース・ゼロ
〈公演HP〉https://www.clie.asia/LikeA/


【構成・文/中川實穂 撮影/田中亜紀】



『プリシラ』


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開局30周年J-WAVE × 創設10周年劇団ゴジゲン コラボレート舞台『みみばしる』松居大悟・石崎ひゅーい・本仮屋ユイカ 取材会レポート

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J-WAVE開局30周年プロジェクトとして、10周年を迎える松居大悟率いる劇団ゴジゲンとコラボレート、ラジオと舞台のJUMP OVER(越境)を目指す新作舞台が2月から東京、福岡、大阪で上演される。
作・演出は、劇団ゴジゲンの作・演出・主宰をつとめている松居大悟。映画『君が君で君だ』や、ドラマ『バイプレイヤーズ』シリーズのメイン監督であり、ミュージックビデオ制作など数多くの作品を世に送り出している。その松居がナビゲーターを務めるJ-WAVEの番組「JUMP OVER」では、“稽古場ラジオ”と題して、創作の様子をリスナーに発信し、リスナーの声を創作に反映させる取り組みが行われている。舞台作品のロゴマーク選定からオーディション、稽古まで、普段は参加することのできない舞台制作の過程を公開し、リスナーと一丸となって本多劇場のステージを目指すという企画だ。
そして同番組のオリジナルテーマ曲も担当した石崎ひゅーいも、今回のコラボで舞台の音楽監督に初挑戦する。さらに映像のみならず、昨年は妄想歌謡劇団『上を下へのジレッタ』など舞台でも活躍する本仮屋ユイカの主演も決定した。
 
リスナーキャストの募集では約1カ月で800名以上が応募。演技経験などは問わないため、11歳から上は80歳まで応募が集まり、プロの「俳優」はもちろん、「看護師」「助産師」「占い師」「鉄工所の従業員」などキャストの職業も幅広い層から集まった。
そんな異色でスケール大きな公演について、作り手たちに話してもらう取材会が行われ、松居大悟、石崎ひゅーい、本仮屋ユイカが出席した。

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松居大悟、本仮屋ユイカ、石崎ひゅーい

リスナーと一緒に
「境界」を超えたい

──まず今回の『みみばしる』を、こういう形で作ろうと思ったコンセプトから聞かせてください。 
松居 J-WAVEと初めて舞台に取り組むのなら、ありきたりの宣伝みたいなことではなく、例えば舞台の本番のちょっと前から、制作の進捗状況などを話しながら一緒に作っていきたいと。ラジオの番組そのものを稽古場で作るとか、そういうラジオでしかできないことをやってみたいと話したんです。そしたら1年間番組をやらせていただけることになって、生放送で舞台作りを伝えられることになりました。今はリスナーからキャッチコピーなども色々送ってもらったり、台本の中身も伝えたりしているところですが、これからまさに稽古場の様子そのものを、ラジオで伝える番組になると思います。
──800人以上のリスナーの方々がオーディションに応募したそうですが、選んだ基準は?
松居 まずラジオを好きで聞いていること。もう1つは「境界」を超えるということをそれぞれ自分でどう考えているかで、自分の人生を一歩踏み出したいというような方を選びたいと思いました。 
──一緒に作るクリエーターとして、本仮屋ユイカと石崎さんにオファーした理由は?
松居 まだ具体的に何も決まってない中で、ともかく一緒に走れる人がいいなと。ひゅーいには映画に出てもらったり、楽曲に僕が映像をつけることなどはあったけど、作品を一緒に作ったことはなかったのんです。でも、頼んだらすぐ「いいよ」と言ってくれて。それからキャストは、同世代でラジオを好きな人でと探したら本仮屋さんがいて、無理かなと思いつつ思いきって聞いたら、面白そうだと言ってくれたので、マジかと(笑)。
本仮屋 私は何も内容がわかってなかったし、本当にやるのかもわからないまま打ち合わせに行ったら松居さんが居て、これは本当なんだと(笑)。
──石崎さんと本仮屋さんは今回のオファーを受けて期待したところは?
石崎 ふだんは1人で曲を作っているんですけど、一番影響されるのは人なんです。人からもらったものが音楽に出てくる。松居くんの映画に出たり、PVを撮ってもらったり、一緒に作品作りすると、そのあとで自分の中で曲がワーッと零れてくるので。
松居 おー(笑)。
石崎 だから一緒にやった時間は、僕のものにもなるので(笑)。今回もゼロから冒険するということなので、ぜひやらせてもらいたいと。最終的には自分のものにしてやろうと(笑)。
本仮屋 女優っていつも最後に作品に入るんですけど、これはその過程を全部みられるなと思ったので。でも本当にたいへんそうです(笑)。松居さんとの出会いはショートショート・フィルム・フェスティバルでしたが、監督がそれぞれ自分の作品を紹介するんです。松居さんはすごく楽しそうにそれをやってて、ふにゃふにゃとへらへらとしたその佇まいが素敵で(笑)、私もこんなふうにやってみたいなと。そして何よりも私はラジオが好きなので、ラジオと舞台の両方ができるのが一番の魅力でした。

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聞くしかない「耳」が
衝動的に「みみばしる」

──出演者がリスナーだからこそ良いという部分は?
松居 僕はラジオと演劇は近いような気がしていて、日常を過ごす中で自分から出会おうと思わないと出会えないもので、そこで発信されているものはちょっと危険で不健康なものもある。それに両方とも、人と人が直接関わり合う1対1のものですよね。だから親和性はすごくあるなと。きっとラジオのリスナーは舞台が好きだと思います。
石崎 僕はラジオと演劇は流れていくものだなと思っていて。僕は2002年にデビューしたんですが、自分の曲がラジオから流れてくるのを聞いたとき、不思議でけっこう嬉しい気持ちになったんです。小さい頃からずっと聞いていたのに、なにかちょっと違った感覚でした。なんか儚いというか、残らないんです。演劇もラジオもその時だけで残らない儚さがある。そういうところがラジオは魅力的だなと。
本仮屋 リスナーが出演することについては、もちろん役者が演じることでも熱量は出せますけど、「もともとラジオを聞いてる人の熱量には勝てないんじゃないか」と。これは松居さんがおっしゃってました。確かにオーディションのとき、これはたいへんだ、カオスだなと(笑)。出演するのがプロの俳優ばかりですと最短でゴールに行けるのですが、そうじゃない人たちばかりだと、ゴールがどこになるかもわからない。ということはどこにでも行けるわけで。そういう未知数が一緒に組むことの面白さだと思います。
──『みみばしる』というこのタイトルですが、どんなところから?
松居 主人公がリスナーで、リスナーが発信者になっていくような話だと考えたときに、「耳」って口とか手と違って情報を出すことはできない、聞くしかないわけです。そんな「耳」が衝動的に「耳走ってしまう」ような劇だと。そういう劇にしようと。それで漢字を入れるかどうするか3時間くらい考えて(笑)、結局全部ひらがなになりました。
本仮屋 すごく素敵ですよね。
石崎 そういうの松居さんうまいですよね。『くれなずめ』とか(笑)。

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絶対に会わないような人たちが
板の上で出会う

──石崎さんは音楽をもう作りはじめているそうですね?
石崎 そうですね。松居くんからなんとなくこういうプロットだと聞いて、じゃこんなメロディはどう?みたいに、会話するように作っていってます。キャッチボールが始まったばかりです。
松居 「こういう音楽だと思うんだよな」と、ひゅーいが作ってくれた音楽で、次の場面のイメージが浮かんだり、今までになかった作り方になってます。こちらが固め過ぎると、ひゅーいに発注するだけになってしまうので、そうじゃなく、ひゅーいの作った音楽で話も出来上がってくるというのが面白いし、ワクワクします。
──本仮屋さんからのクリエイトのヒントはいかがですか?
松居 沢山あります。先ほども話に出た「女優は一番最後だから一から作ることに憧れる」という話を聞いて、それいいなと思ったので台本に取り込んでます。
本仮屋 やったー!(笑)でも私のプライベートな話してるときにメモしたりしてるんですよ。ストーリーに関係ない話してるんだけど?みたいな(笑)。私の弱い部分を色々集めているのかなとビビってます(笑)。
──すごく気の合う3人という感じですね。
松居 ユイカさんもひゅーいも気を遣わなくていいし、年も近いので共通言語も多いし、でも本職がそれぞれ違うので、持っている言葉がすごく刺激になりますね。この3人を中心にスタッフがいて、さらにリスナーがいてという、そういう大きな円が出来上がっていく過程は、演劇を作っている感じともまた違うし、音楽を作ってる感じでもない。すごく特殊な命のかたまりみたいなもの、という気がします。

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──そこにオーディション組の様々な人たちが入るわけですね。
松居 普通のオーディションなら落ちるような人もいて、ほんとに声が出ない子とか。その子のラジオ愛がすごくて、聞こえないような声で、「こんな僕でも仲間に入れてもらえるからラジオが好きなんです」って言うんです。この子が舞台立ったら全部もってっちゃうなと。もちろんプロの役者もいるし、たぶん普通に生きていたらお互いに絶対に会わないような人たちなんですよね。でもこの企画があるから一緒に1か月を過ごすことになる。その彼らが同じ板の上で生きる地図を僕らが作るわけです。すごく演出家冥利に尽きると思っています。
本仮屋 私も今までの自分のやり方、意識してなくても持っていたやり方、それを全部壊されてしまう現場になるだろうなと。これ終わったらきっとOSがリニューアルした感じの、アップデートされちゃうんじゃないでしょうか(笑)。ふだんは保育士さんやってるとか、金融系なんだとか、色々な人がいて、そういう人たちと話すだけじゃなくて、舞台って心も開いてキャッチボールするわけですから。いわば命綱つけてて相手が落ちたら自分も落ちていくわけで。そういう舞台というところで、こんなに色々なバックグランドを持った人たちと会えたことは、人生の中で宝になっていくんじゃないかなと、とても楽しみです。

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【追加情報】
来年2月の舞台『みみばしる』の前に放送される年の瀬ドラマ『平成ばしる』(テレビ朝日 12月28日 0:20〜1:20放送予定 ※関東ローカル)が発表された。またその監督も務めることになった松居大悟が、雑誌AERA誌上の人物ノンフィクション「現代の肖像」密着取材を受け、12月10日号発売のAERAに登場している。

〈公演情報〉
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舞台『みみばしる』
作・演出◇松居大悟
音楽監督◇石崎ひゅーい
出演◇本仮屋ユイカ(以下50音順)
市川しんぺー俳優/劇団「猫のホテル、祷キララ俳優・大学生、工藤真唯保育士、小松有彩会社員、鈴木翔太郎大学生、鈴政ゲン俳優、タカハシマイミュージシャン/Czecho No Republic 、玉置玲央俳優/劇団「柿喰う客」、仲山賢高校生、奈良原大泰アルバイト、日高ボブ美俳優/劇団「ロ字ック」、藤井克彦楽器屋店員・ブロック塀研究家、前田航基俳優・大学生、三浦俊輔俳優・大工、宮平安春庭師、村上航俳優/劇団「猫のホテル」、目次立樹俳優/劇団「ゴジゲン」、本折最強さとし俳優/劇団「ゴジゲン」、ゆうたろうモデル・俳優・ショップ店員
歌・演奏◇ワタナベシンゴ (THE BOYS&GIRLS

●2019/2/7〜17◎東京・下北沢 本多劇場
〈料金〉6,800円 プレビュー公演 6,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉ゴーチ・ブラザーズ 03-6809-7125(平日10:00-18:00) 
●2019/2/23〜24◎福岡・久留米座
〈料金〉6,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉ピクニックチケットセンター 050-3539-8330(平日11:00-17:00) 
●2019/3/1〜3/3◎大阪・近鉄アート館 
〈料金〉6,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日10:00-18:00) 
〈公演HP〉https://mimibashiru.com




【取材・文・撮影/榊原和子】



方南ぐみ企画公演『伊賀の花嫁』


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