観劇予報

おん・すてーじ『弥次さん喜多さん』双

インタビュー

チェーホフとその家族を描く創作劇。青年座『わが兄の弟』横堀悦夫・大家仁志 インタビュー

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マキノノゾミ作+宮田慶子演出による青年座公演『わが兄の弟―贋作アントン・チェーホフ傳―』が、4月7日から紀伊國屋ホールで上演される。(16日まで)
マキノ+宮田コンビの作品としては、『MOTHER』『フユヒコ』『赤シャツ』『横濱短篇ホテル』に続く5作目で、今回はロシアの劇作家アントン・チェーホフとその家族の物語となる。
モスクワ大医学生の頃からユーモア小説を書いて、その原稿料で家計を支えていたアントン。帝政ロシアの貴族支配による社会的矛盾と、革命直前の過激な思想や運動が混在する19世紀末ロシアを背景に、医者であり作家であったアントンの生活者としての実像に迫る。作中にはチェーホフの四大戯曲、『かもめ』『ワーニャ伯父さん』『三人姉妹』『桜の園』の人物を連想させる役柄を登場させるなど、演劇的趣向を凝らしたオリジナルなアントン・チェーホフ傳となっている。
この作品で、主人公アントン役を演じる横堀悦夫、その次兄ニコライ役の大家仁志に、作品と役柄について話を聞いた。

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横堀悦夫・大家仁志

チェーホフ像を壊さないようにとか余計なことは考えずに

──お二人はこれまでチェーホフ作品への出演は?
横堀 まったく縁がなかったです。青年座は創作劇の劇団ですからね。もちろん観たことはありますが。演じるにあたっては、ロシアの演劇はイギリスやアメリカの演劇とどういう違いがあるのか、そこから理解しないといけないので、これは大変な課題を背負わされたなというのが最初の感想でした。
大家 僕も同じですね。しかも今回、マキノ(ノゾミ)さんは、チェーホフっぽい書き方をしましたとおっしゃっているので、チェーホフ劇をやるような感覚でやらなくてはいけないわけです。ただ副題に「贋作」と付いてますから、偽物のチェーホフ劇でいいのかなという気もしています(笑)。
──横堀さんがアントン・チェーホフ役ということですが、彼については沢山の研究書がありますね。
横堀 色々な本を読みました。そのうえで台本を読むと、いかにマキノさんが膨大な資料を忠実に読んで、その中から今回の台本に抽出してきたかということがよくわかるんです。その苦労たるや、想像するだけで「大変だな、大変なものを書き上げたんだな」と思います。
──写真も資料も残っていることで、作りやすい部分もあるのでは?
横堀 いや、逆に難しいですね。実在のチェーホフに近づけようとすると、ツッコミどころが沢山出てくると思うんですよね。世の中にはチェーホフが好きな人や、研究家がいっぱいいるわけですから。でも、そういう方々のチェーホフ像を壊さないようにとか、余計なことは考えずにやろうと思ってます。あくまでもマキノさんの作った新たなチェーホフの世界ですから。ただ、創作劇団の青年座としては、これはチェーホフの演劇とは違うとか批判されても、はね返せるぐらいの自分たちの世界観を作らなくてはいけないと思っています。
大家 僕の役のニコライも少ないながらも資料が残っているし、数え切れない程の方たちが研究しているので、そこからイメージをもらったりヒントをもらったりしつつ、自分なりにイメージを膨らませるようにしています。

2ショット㈪
 
──今回の台本を読んだとき、どんな印象を受けましたか?
横堀 まず、とても静かな展開だなと。安易に笑いは取れないし、安易に感動させることもできないと思いました。例えば、昨年の鈴木聡さんの『フォーカード』だったら、「トランプ」という時事ネタを出すだけで、お客さんと共有できるものがありましたが、これはそういうものは一切ないです。でもエピソード的には面白いものがいくつも出て来ますし、感動できるところもあります。とくに、ニーナという女性の存在をマキノさんが序幕と終幕でうまく繋ぎ合わせていて、トータルで見終わったときに、「あ、なるほど」と感動してもらえるのではないかと感じています。
大家 台本を読んだあとで色々な短編を読んでいると、「これはあの作品から持ってきてるのかな?ここはあの場面に出てくるな」とか気づくんです。ですからチェーホフを好きな方には、すごく楽しんでもらえるのではないでしょうか。もちろんチェーホフを知らない方が観に来ても、面白いと思っていただけるようにしないといけませんが。

一家を支えるアントンと破滅的なニコライ

──この作品は作家のアントンが主人公ですが、家族の群像劇のようになっていて、それぞれのエピソードの中に、ロシア革命前という時代背景が見えてきますね。そしてロシア独特の家族制度も描かれていて、アントンは三男ですが一家を養っています。
横堀 破産してモスクワに父親と母親が逃げ込んだあと、アントンは人手に渡った自分の家に残って、中学校高等科を卒業するんです。モスクワに行ってからは、たまたま作家としてユーモア小説を書く才能があったので、一家の稼ぎ頭になります。
──家族を支えるためにものすごい数の小説を書きますね。ただ「医学は正妻、文学は愛人」とも書いていて、本当は医者として生きたかったのでしょうか?
横堀 僕の考えでは、医学は1つの生きる手段だったのではないかと思っているんです。当時のロシアでは、医者になること自体はそれほど困難な時代ではなかったらしいんですね。そして、医者になる道を選べば奨学金がもらえる。それから、彼が病気になったとき、ユダヤ人の医者に助けられたというエピソードがあって、それも医者になったきっかけだったようです。ですからとくに高い志で医者という道を目指したわけではなかったと捉えています。

横堀ソロ

──大家さんが演じるニコライは、アントンの次兄で画家です。一家の中でも一番破滅的な人ですね。
大家 そうですね。画家としての仕事は挿絵とかけっこうあったらしいのですが、酒に溺れてしまいます。今回のポスターに使われているのはニコライが描いたアントンで、良い絵ですよね。
──劇中でもアントンのことをすごく愛していて、先ほども話に出たニーナという女性と関わりがありますね。役柄としてはどう取り組もうと?
大家 最初は陽気な人間かなと思っていたのですが、よく考えると違うなと。なぜこういう生き方しかできなかったんだろうと思ったときに、ニーナという存在から考えればわかる気がしました。ニーナと別れたことで酒とかそういうところにしか逃げられなくなってしまった。それだけニコライにとってニーナは大きな存在だったと思います。ニーナはそれ以外にも大きな役割があって、革命に絡む話は彼女のところでしか出てこないんです。
──マキノさんはそのへんもチェーホフの戯曲を意識していますね。革命がすぐそこまで来ている時代を感じさせますが、ダイレクトにはそれを描かないという。
大家 出てくる男たちは誰もそういう話をしないんですよね。
横堀 一度だけアントンの台詞の中で「長年、この国で専制主義に虐げられてきた人たち」についての話が出てくるけどね。
大家 でも、男同士でそういう会話するところは不思議なくらい出てこないんです。
──そのかわり家族同士の会話が沢山出てきて、ロシア独特の家族主義を感じます。
横堀 そのへんは最初はなかなか理解しにくかったです。家を出た兄やものすごく厳しい父親を、アントンは最後まで愛し続けているんですよね。ただ、ロシアの厳しい風土を乗り越える中で培われてきた家族主義というもの、その根底には家族としての情があるんだろうなと、今は思っています。そして家族は絶対のもので切り離せないんだろうなと。そこをお客様にもわかってもらうことが大事ではないかと思っています。

2ショット決め㈫

感覚が違う者同士だから面白くて飽きない

──お互いのことも語っていただきたいのですが、お二人は共演も多いし、年齢も1つしか違わないですね。
大家 学年は一緒なんです。青年座への入団時期は、横堀さんのほうが6年先輩です。横堀さんのすごいところは、セリフセリフしていないところで、無理やり劇的にするとかそういうことは絶対にしない。そういう潔さがあります。マキノさんの『赤シャツ』も一緒だったんですけど、あれも小説を題材に作家夏目漱石についての話になっていて、僕としては今回のアントンと赤シャツが妙にダブるんです。
──マキノさんは当て書きもされますから、横堀さんに作家的な何かを託したくなるのでしょうか?
大家 マキノさんと横堀さんって血液型と誕生日が一緒らしいんですよ。だから何か託しているんじゃないですか。
横堀 それはないでしょ(笑)。
大家 (笑)今回、マキノさんはチェーホフになりきって書いていると、僕は思うんですが、セリフの中にアントンが「自分はものすごく冷たいんじゃないか」と思ってるようなところがあるんです。それはマキノさん自身が、自分についてそう思っているからかなと。
──劇中のアントンは客観的で、ものごとを俯瞰して見ているところがありますね。
横堀 マキノさん自体がそういう人なのかもしれないですね。
大家 だから作家になれたんじゃないかな。

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──横堀さんからみて大家さんと共演する面白さというのは?
横堀 周りからよく言われるのは正反対だと。役者としての居ずまいとか物事への向かい方とか。だから変にライバル意識を持たないし、なるほどそんな風に考えるんだ、面白いなと思うんですよね。
──いわゆる感覚が違う者同士という感じですか?
横堀 そう、感覚が違うんです。僕はいつも、1本のお芝居の中にできるだけ感覚の違う人がいたほうがいいと思っているんです。先ほど大家くんが僕に言ってくれた「劇的なことを自ら作ろうとしない」のが横堀であるのだったら、大家くんは、例えば静かなところに、いきなりバシャンと波を立てたりすることができる。そういうことは自分にはできなくて、やれるものならやってみたいし、羨ましいと思うけど、でも彼にしかできないことなので。そういう役者がいることは、自分にとってとても面白いんです。
大家 僕はいつも稽古の最初の方で脚本を読み間違えるんですよ。でも横堀さんは、最初からちゃんとわかってらっしゃる人で。僕は何回も間違って、こういうことかって気づくのにものすごい時間がかかるんです。今回、横堀さんと一番絡むというか、横堀さんとしか絡まないので、また色々なことをやらせてもらえるかなと。
横堀 僕は大家くんの考えてることがわからないから飽きないんですよね(笑)。わかったら、こうくるだろうなと想像できますけど、それじゃない出方をしてくる。まあ、それを含めての想定内ではあるのですが。でも、何本も一緒に出ているわりには、ちゃんと絡んでないよね。
大家 そうですね。去年の『横濱短篇ホテル』なんか、全然絡んでなかったですね。だからすごく客観的に「そうなるんだ!俺だったらどうなるんだろうな」とか、「俺だったらこの役はできないだろうな」とか思いながら観てました。

大家ソロ㈪

チェーホフの芝居を観たくなったと思ってもらえたら

──では最後に、改めてこの作品への意気込みを。
横堀 今回、マキノさん自身がチェーホフになったつもりで書いていて、翻訳劇を書くような、スケールが大きく崇高な脚本を書いていただいたと思っています。それを僕らがどうやってねじ伏せていくのか、それが一番の課題ですね。そしてセリフをねじ伏せるだけではなく、例えば情緒みたいなものを寡黙さで表現しているところがあるし、長ゼリフの言葉の多さで自分の心を隠しているようなところがあったり。この長ゼリフがとてつもなく大変です。1人でダーッと喋るときに、例えば目の前にお茶があって、それを口にした時どうだったとかいう長ゼリフだったら、なんとかなるのですが、今それを言っている裏側は何?という長ゼリフですから。そういうセリフを使いこなすのがまず第一段階で、その裏側にある心情を掴みとるのが次の段階というふうに、かなり時間がかかるだろうなと。僕の中での戦いですね。
大家 横堀さんがおっしゃったように、チェーホフの伝記みたいな中に彼の考えていたことが色々出てきますが、その中で僕のニコライがどういう意味を持つのかなと考えるんです。ニコライは二幕しか出てこないんですけど、そのあともずっと皆が名前を言ってくれている。だから、「ああ、あの兄さんのことだな」と観ている方に思って貰えるようにしたいなと。そこをきちんと残しておかないと、横堀さんの芝居も成立しなくなると思っています。ニコライのイメージとしては、ちょっと歪んだ、変な形の愛情みたいなものが濃い人にできたらなと。そして、やっぱりこの作品は大作だと思うんです。マキノさんも書いているうちに、今までの自分にはない、もっと違うところをと思って書いている気がするし、マキノさんの台本としてもハードルが上がっている。それに応えたいですね。
横堀 そうだね。昔、俺らが劇団に入ってきたときは、こういう匂いの作品が多かったように思う。そういうスケール大きなマキノさんの世界観で、劇場を埋め尽くさなくちゃいけない。そのためには、とにかく僕は全身でチェーホフに成り切らなくてはと思ってます。マキノさんが作ってくれたチェーホフでいるために精一杯やりますので、この世界観をぜひ見にきていただきたいですね。
大家 この作品が創作劇の青年座にとって、また1つ新しい方向を拓くものになるのではないかと思っています。そして、チェーホフを全然知らない人にとって、チェーホフの芝居への入り口になったらいいなと。「チェーホフの芝居、ちょっと観てみたくなった」と思ってもらえたら一番嬉しいですね。

2ショット決め㈪
横堀悦夫・大家仁志

よこぼりえつお○63年生まれ、群馬県出身。青年座研究所第8期卒。映像や舞台で幅広く活躍中。最近の主な出演作品は『横濱短篇ホテル』『天一坊十六番』『フォーカード』『俺の酒が呑めない』『外交官』『鑪−たたら』『地の乳房』など。

おおやひとし○64年生まれ、長野県出身。青年座研究所第14期卒。数々の舞台で幅広く活躍中。最近の主な出演作品は『横濱短篇ホテル』『ブンナよ、木からおりてこい』『フォーカード』『山猫からの手紙』『世界へ』『地の乳房』『UNIQUE NESS』など。

〈公演情報〉
チラシ
劇団青年座 第226回公演
『わが兄の弟―贋作アントン・チェーホフ傳―』
作◇マキノノゾミ
演出◇宮田慶子
出演◇横堀悦夫 安藤瞳 山本龍二 大須賀裕子 石母田史朗 大家仁志 野々村のん 松田周 坂寄奈津伎 津田真澄 小暮智美 那須凜 豊田茂 名取幸政 田上唯 高松潤
●4/7〜16◎紀伊國屋ホール
〈料金〉4,800円 U-25 3,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉劇団青年座 0120-291-481(11:00 〜 18:00
土日祝除く)
http://seinenza.com/performance/public/226.html




【取材・文/榊原和子 撮影/竹下力】



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劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)、2017年、異例の演劇賞・文学賞4賞連続受賞の快挙!所感を語る!

早川贈賞式
C🄫公益財団法人早川清文学振興財団

ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出の『キネマと恋人』が、第4回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞を受賞し、その贈賞式では、妻夫木聡、緒川たまき、ともさかりえをはじめとするキャスト、スタッフ、関係者が一堂に会し、互いの労をねぎらい、祝い合った。また、公益財団法人せたがや文化財団理事・永井多惠子より『キネマと恋人』の再演決定という朗報も発表された。

ケラリーノ・サンドロヴィッチは、2015年第40回菊田一夫賞受賞を皮切りに、2016年第23回読売演劇大賞では脚本・演出を手掛けたKERA・MAP#006『グッドバイ』が、最優秀作品賞、最優秀女優賞(小池栄子)、優秀演出家賞受賞の3冠制覇、さらに同作品の脚本・演出において第66回芸術選奨文部科学大臣賞受賞するという、立て続けての受賞となった。が、彼の快進撃は留まるところを知らず、明けて2017年、第51回紀伊國屋演劇賞個人賞、第68回読売文学賞戯曲・シナリオ賞、第24回読売演劇大賞最優秀演出家賞、第4回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞、の4賞連続受賞の快挙を成し遂げた。つまり2016年に彼が手掛けた作品の全てが各賞の受賞対象となった。この異例の受賞ラッシュを受け、ケラリーノ・サンドロヴィッチから、各賞受賞についての所感コメントが届いた。

〈第51回 紀伊國屋演劇賞 個人賞〉 
●cube presents『ヒトラー、最後の20000年〜ほとんど、何もない〜』の作・演出に対して、
●世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#007『キネマと恋人』の台本・演出に対して 
s_ヒトラー 引地信彦
キューブ企画・製作『ヒトラー、最後の20000年〜ほとんど、何もない〜』撮影:引地信彦 C🄫キューブ
 
紀伊國屋演劇賞には縁がないかなと思っていましたので、今回の受賞はちょっとびっくりしました。残念ながら授賞式に欠席し直接選評を伺えなかったのですが、『ヒトラー、最後の20000年』が対象作になったのは、意外であり嬉しかったです。
古田新太と企画した『犯さん哉』『奥様お尻をどうぞ』『ヒトラー〜』の3作は、”絶対に賞の取れない、ナンセンスに特化した作品”を古田と一緒に創っていくイメージでした。『ヒトラー〜』はその最終作ですが、ナンセンスしかない、教訓めいたことや感動めいた事、もっと言えば物語すら発信していない自負があるので、そういうものが評価して頂けたのはとても嬉しいことです。
本当は日本の演劇賞に、ブロードウェイにもあるような”コメディー賞”とか”ミュージカルコメディ部門”といったようなものが設けられると、そういったものを創る人たちの励みにもなり、活性化するのではないのか、と思うんですけれどもね。
受賞の報告は、『キネマと恋人』の地方千穐楽の日に受けました。まだ公演中に『キネマと恋人』のカンパニーとこの喜びを伝えられ分かち合えた事は良かったです。インフルエンザ休演など残念だった想いがあったので、そのしょんぼりとした気持ちに、花を添えられたのではと思います。

〈第68回 読売文学賞 戯曲•シナリオ賞〉
●世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#007『キネマと恋人』の台本に対して
『キネマと恋人』 撮影 御堂義乘
世田谷パブリックシアター+KERA・MAP『キネマと恋人』撮影:御堂義乗 C🄫世田谷パブリックシアター

受賞はとても意外でした。舞台『陥没』の稽古中に受賞を伝えられたのですが、上演台本という特殊な形態のものにも”文学賞”が与えられる、一瞬何の事やら分からなかった。最終的には作品全体への評価を頂く事が一番嬉しいのですが、それとまた逆の、劇作家である純粋な個人に対して賞を頂いたことは光栄です。岸田戯曲賞を頂いた後は、”戯曲賞”や”文学賞”をという名を冠したような賞には一生縁が無いと思っていました。
授賞式で、他の受賞者の方々のスピーチを聞いてるうちに、これは物凄い賞なんだということを実感しました。10年がかりで作品を書いた話をお伺いしたり、僕は僕で大変でしたけれども、それどころじゃない一生を賭けて書いて、その人の人生を決めるような賞なんだと思いました。だからまだ「何で俺?」という気持ちがちょっとあります。

〈第24回 読売演劇大賞 最優秀演出家賞〉
●シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ 2016『8月の家族たち August:Osage County』の演出に対して
8月の家族たち 撮影 宮川舞子
シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ 2016『8月の家族たち August:Osage County』撮影:宮川舞子 C🄫Bunkamura・キューブ

この作品を上演した経緯に想いを巡らせます。この戯曲を演出するに至るまで、ひたすら色々な戯曲や、戯曲が原作の映画を見て、脚本を取り寄せ読み、また探す、ということが繰り返され、思いのほか大変なこと始めてしまったと思いました。この作品との出会いは、たまたま映画館でやっているものを観たという運命的なものでした。結果が残せたのは、作品選びが大変だった分報われてよかったなという感じです。
演出家賞は上演作品を観た上で頂く賞ですから、上演の印象が良かったというのは、本当にキャストのお陰だと思います。そして、そのキャストに至ったのはプロデューサーサイドとの話し合いを経てなので、僕1人だったら『8月の家族たち〜』を、このキャストでの上演するには到底至らなかったと思います。
期せずして麻実さんにああいう役を演じて頂いたのは、本当に作品の大きな印象になりました。
何度も一緒にやっている秋山菜津子や犬山イヌコとはまた違って、麻実さんが僕と組んだ時にどう演じられるか未知でしたが、結果、ダイナミックにはまったという感じでしょうか。
麻実さんは謙虚さが素敵です。僕はやっぱり謙虚な俳優さんが好きです。役的にはでしゃばった役でも、作品全体を考え、自分がどう得をするかではなくて、作品のなかでどう生きるかを考える。僕の作品は、そういう方が多く集まってくれていると思います。
だからこの演出家賞の中には、やはりみんなの、キャストやスタッフの力が大きく入っていると思います。
演出に関しては特別なことをやった意識は全く無く、強いて言えば舞台上であの盆(舞台の下手から上手に移動しながら回転する回り舞台)を回したことくらいですけれども、それは単純に、あの大家族が食卓を囲む姿を、不自然でなく、まんべんなく見せられるように、ということからで、割と当たり前の事だったとは思います。

〈第4回 ハヤカワ「悲劇喜劇」賞〉
●世田谷パブリックシアター+KERA・MAP#007『キネマと恋人』
『キネマと恋人』 撮影 御堂義乘

やはり「作品賞」が一番嬉しいです。そしてこの作品で頂けたということが、何の疑問もなく、然るべきという感じがします。『キネマと恋人』は他の作品に増して、”総合的”な作品だと思っています。
ステージングの小野寺(修二)君や、映像の上田(大樹)君、音楽の鈴木(光介)君、皆本当に均等に、作品に力を寄与していて、正に総合芸術としての演劇作品だったと思います。
このタイミングでできたことも運命だと思いますし、カンパニーの1人でも別の方向を向いてる人がいたら、上手くいかなかったんじゃないかと思います。劇中映画の映像では、時代劇を撮影し、映像設備などハード面でもリスキーな部分もありましたし、普通だったら考え直しませんか、となりうる話ですが、「ちょっと待ってください」という声が出なかったのは本当に素晴らしいと思いました。
この作品はずっと頭の片隅にはあって「いつかやるんだろうな」と思いながら、やるとなったら大変だ、となかなか手が出なかった作品でした。
「悲劇喜劇」賞は年間で1作しか選ばれない賞ですが、その名の通り、「悲劇」と「喜劇」、その背中合わせである『キネマと恋人』という作品にはぴったりな賞ではないかと思います。
上演の機会を与えてくださった世田谷パブリックシアターに、そしてシアタートラムという空間にも大きな感謝をしています。

〈4賞連続受賞についての所感〉
自分の中では、様々な賞を頂戴したことによって自分自身は変化をしたくないという気持ちが大きいですが、世間的な認識は大きく変化してほしいです(笑)。僕の場合、出自がバンドだったこともあり、ミュージシャンが何かへんてこりんな演劇を創ってるらしい、というような、観ず嫌い、食わず嫌いのような人も多くいましたので、そういった人たちが、偏見なく観てくれるきっかけになるといいなと思います。
あと創作において、もちろん傍若無人が良いとは思いませんが、不必要な謙虚さを持ってしまうとやっぱり面白いものなんかできなくなってしまう。無理かもしれなくても、やりたいと思うことは、言っていかないと面白くならないと思います。箔とかそういったことは大切だとは思いませんし、創作の本質にはあまり関係のないことなのかなとは思いますけれども、やりたい事を言いやすくなる環境ができることで、作品もより良くなる強度を増す、そういった相乗効果が生まれるのならば、大切な事かもしれないと思います。
2017年、『陥没』が終わり、これから『ワーニャ伯父さん』とナイロン100℃の公演が控えています。『ワーニャ伯父さん』は今まで上演したチェーホフ作品の中でもコメディのセンスを入れ辛い、苦い印象の作品。ナイロンも別役実的な不条理路線にしたいと思っていますので、今年の作品は、シリアス目のものが続くと思います。
今まで1作1作、ピンボールゲームのように、1つ作品を創ったら今度は反動で真逆の方向の作品を創る、といったようなスタイルでしたが、これからは、1つの作品ですぐ跳ね返すのではなく、1年2年かけて少し掘り下げていくような、もう少しブレスを長く取るようなやり方になるんじゃないかなと思っています。

s_KERA photo

1982年 ニューウェイブバンド・有頂天を結成。また自主レーベルであるナゴムレコードを立ち上げ、数多くのバンドのアルバムをリリースする。
1985年 劇団健康を旗揚げ、演劇活動を開始する。
1992年 劇団健康解散
1993年 ナイロン100℃を始動。
1999年 『フローズン・ビーチ』で第43回岸田國士戯曲賞を受賞、現在は同賞の選考委員を務める。
2015年 第40回菊田一夫演劇賞を受賞。
2016年、第23回読売演劇大賞KERA・MAP『グッドバイ』最優秀作品賞、優秀演出家賞受賞
2016年、平成27年度芸術選奨文部科学大臣賞(KERA・MAP『グッドバイ』の成果により)
2017年、第51回紀伊國屋演劇賞 個人賞(『ヒトラー、最後の20000年〜ほとんど、何もない〜』『キネマと恋人』)
2017年、第24回読売演劇大賞 最優秀演出家賞(『8月の家族たち August : Osage County』)
2017年、第68回読売文学賞 戯曲・シナリオ部門(『キネマと恋人』上演台本)
2017年、第4回ハヤカワ「悲劇喜劇」賞(『キネマと恋人』)
●プロフィール詳細(キューブHP)
http://cubeinc.co.jp/members/prf/012.html

〈今後の予定〉
●シス・カンパニー KERA meets CHEKHOV Vol.3/4 『ワーニャ伯父さん』上演台本・演出
2017年8月下旬〜9月下旬 新国立劇場 小劇場
●ナイロン100℃ 44th SESSION 『新作(タイトル未定)』作・演出
2017年11月〜12月 下北沢 本多劇場 12月 三重、兵庫、広島、北九州、新潟公演予定
 


 

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ミュージカル『ゲゲゲの鬼太郎〜十万億土の祈り唄〜』間もなく開幕! 井上一馬・大塚庸介インタビュー

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ねずみ男/大塚庸介・小豆はかり/井上一馬
 
劇団イッツフォーリーズが2014年に初めてミュージカルとして上演し、大評判となったミュージカル『ゲゲゲの鬼太郎〜十万億土の祈り唄〜』、その3年ぶりの再演が3月28日に俳優座劇場で幕を開ける!(31日まで) 
1968年にアニメ化されて以来、広く親しまれているオープニングテーマ「ゲゲゲの鬼太郎」、そしてエンディングテーマ「カランコロンの歌」は、劇団の創設者いずみたくが作曲したもの。ミュージカル化に際しては、脚本・演出にラサール石井を迎え、“鬼太郎”が誕生するまでの物語を、オリジナルストーリーで描いている。
そのキャストの中から、小豆はかり役の井上一馬とねずみ男役の大塚庸介に、水木しげるの故郷、境港の風景の中で話を聞いた「えんぶ4月号」の記事を別バージョンの写真とともにご紹介する。

水木先生の意思を継いで、身を引き締めて演じる

──豪雪の中、鳥取の境港市にある「水木しげる記念館」で衣裳を着て撮影していただきました。
井上 大塚くんの衣裳は暖かそう(笑)。こっちは寒いよ。ねずみ男は、出っ歯を口に入れて喋るし歌うから大変だね。
大塚 井上さんの頭を作るのも大変ですよ。最初は「まりも」のように小さいから、これを巨大にする苦労があります。ただ、この格好で町を歩いても驚かれなかったですね。
井上 町中が水木ワールドの住人だからね。その日も米子で『死神』の公演があったけど、豪雪の中、270人ものお客様がいらっしゃって、みんなで感動したよね。
大塚 町全体に優しさがあります。
井上 館長の庄司行男さんも突然の訪問を快く受け入れてくださった。水木先生の生い立ちから、執筆していた場所も含めて目撃できて、幼い頃に読んでいた水木作品と今回の『ゲゲゲの鬼太郎』が結びついて、改めて気持ちが引き締まりました。
──役どころは大塚さんがねずみ男、井上さんが小豆はかりなのですね。
大塚 ねずみ男は、人間が持っている欲の代表ですが、鬼太郎のどこか怠けた部分とも共通する、妖怪と人間の間を仲介しているポジションです。
井上 僕はアニメには一切登場しないキャラクターです。天井の上で小豆をパラパラさせて「一瞬は永遠であり永遠は一瞬である」という水木先生の名言を言います。力のない妖怪ですが、哲学的で人間の心の闇を小豆はかりに託した先生の意思を感じさせます。 

力で押し返すのではない方法があるんじゃないのと

──記念館では水木先生のお話も出ましたか?
井上 館長さんが話してくれたことが非常に強烈でした。「鬼太郎がヒットしてお金を儲けさせてくれてありがとう」とおっしゃったそうです。子供向けのファンタジーを作っていながらあえて善人ぶらない。お金を稼ぐことを卑下してはいけない。正直でいなくちゃいけないと。そして、人間というのはしたたかだけど、頑張らなくてもいいんだ、怠けていいんだよと。まさに鬼太郎のことですよね。みんなが優秀でエリートでなくてもいいとおしゃっている気がします。
大塚 今、時代はピリピリしているじゃないですか。だから劇中の「頑張らなくてもいいんだよ」というナンバーが大事なんです。妖怪と戦うシーンでバカになって歌うんですが、その歌で妖怪たちのバリアが浄化されていく。戦争体験をした先生だからこそ、「力で押し返すのではない方法があるんじゃないの」と言っている気がしました。
──この作品は劇団の財産演目になっていきそうですね。
大塚 お客様はこの年齢じゃなきゃだめとかいうのではなく、年齢の高い方から低い方まで、一緒に見てもらいたい作品なんです。とにかく色々な方々に見ていただきたいです。
井上 NHKのニュース番組で2.5次元舞台が若い女性に受けていて、今後の日本の演劇界の柱になると言ってました。この作品も漫画の原作ありきで2.5次元ですが、万人が楽しめて、水木先生の精神性が残り続ける作品にしていきたいですね。
──最後に、作品を楽しみにしている方へ一言。
大塚 この舞台はファミリーミュージカルというカテゴリーに入ると思うんですが、みんなで一緒に楽しめる作品なので。ぜひ親子で観てもらたいですね。
井上 いずみたくが作ったテーマ曲を、ぜひ口ずさんで帰ってほしいです。

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大塚庸介・井上一馬

いのうえかずま○鹿児島県出身。『ルドルフとイッパイアッテナ』で客演を務め、その後イッツフォーリーズに入団。2011年には、てがみ座『線のほとりに舞う花を』で佐藤佐吉賞優秀主演男優賞を受賞。主な出演作品に『お・ど・ろ』『死神』『秋に咲く桜のような』『夏の夜の夢』など。特技はヒップホップダンスからタップダンスまで何でもこなす。

おおつかようすけ○東京都出身。杉並児童合唱団に所属している頃、いずみたくの曲に憧れ役者を志す。その後イッツフォーリーズに入団。また得意のギターを生かしてフォークデュオ「かぼす」を結成。主な出演作品に『おれたちは天使じゃない』『野菊の墓』『霧のむこうのふしぎな町』『死神』など。2017年4月には『見上げてごらん夜の星を』で主演を務める。

〈公演情報〉
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イッツフォーリーズ公演
ミュージカル『ゲゲゲの鬼太郎〜十万億土の祈り唄〜』
原作◇水木しげる
脚本・作詞・演出◇ラサール石井
音楽◇玉麻尚一
挿入歌◇作詞・水木しげる 作曲・いずみたく
出演◇明羽美姫 井上一馬 勝部祐子 大塚庸介 金村瞳
中村つむぎ 田中愛実 新井あゆ美/外岡えりか
築出静夫 縄田晋 四條久美子(ペテカン)  西海健二郎(劇団SET) 丸山優子(劇団SET)
●3/28〜31◎俳優座劇場
〈料金〉前売4,000円/当日4,500円 30日・31日11時 前売3,500円/当日4,000円 U25/3,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉オールスタッフ 03-5823-1055(平日11:00〜19:00) 
http://www.allstaff.co.jp



【取材・文/竹下力 写真提供/イッツフォーリーズ C水木プロ】 



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タクフェス春のコメディ祭!の第1作目『わらいのまち』間もなく開幕! 宅間孝行・鈴木杏樹 インタビュー

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宅間孝行が主宰するタクフェスに、コメディ路線の新しいシリーズ「タクフェス春のコメディ祭!」が登場する。その第1作目になる『わらいのまち』が、3月30日の東京グローブ座初日を皮切りに、名古屋、兵庫で公演する。
この作品は、2011年に宅間の作・演出で上演、寂れた田舎町の寂れた温泉旅館「まつばら」を舞台に、行き違い、勘違いが巻き起こす、抱腹絶倒のシチュエーションコメディだ。
今回はキャストの中に、宅間作品を10数年前から観続けてきたという鈴木杏樹を迎える。その鈴木杏樹と宅間孝行に、この『わらいのまち』について語ってもらった「えんぶ」4月号の対談記事を、別バージョンの写真とともにご紹介する。

Unknown-3鈴木杏樹・宅間孝行

お互いに10年先まで、この世界で頑張れたらと

──タクフェスに新しいシリーズができるということですが?
宅間 秋のタクフェスは、泣いて頂く作品を上演していて、それを楽しみにしてくださるお客様が沢山いますので、それはそれで大事に。でも笑いの作品もやっていきたいなということで、明るい春に笑いのシリーズをやることにしたんです。
鈴木 泣ける作品と笑える作品と、どちらも作れるってすごいことですよね。
──鈴木さんは宅間さんの作品をずっとご覧になってきたそうですね。
鈴木 10年以上観させていただいてます。宅間さんが脚本を書かれたドラマに出させていただいたのがきっかけで、その本が本当に素敵で、どんな方が書かれたのか聞いたんです。
宅間 東京セレソンデラックスの時代ですね。
鈴木 ちょうど『ピリオド』という公演が上演中で、観に伺ったんです。終演後に「初めまして」とご挨拶したんですけど、私が感動して号泣していたせいで、ご挨拶もままならないという(笑)。
宅間 そのまま飲みに行って、そこからほぼ全部観てくださってますね。一度だけ海外に行ってて、観ていただけなかったけど、まだ1週間くらいしか公演を打てない時期だったのに、必ず観に来てくれて、最初に劇団のファンクラブを作ったときは、なんと10年分の会費をいっぺんに振り込んでくれて。
──10年先まで観たい劇団だったんですね。
鈴木 お互いに10年先まで、この世界で頑張れたらいいなという願いをこめて。
宅間 たぶん同じ業界の人では一番長く観てくださってます。

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なんでうちじゃないの? と若干ジェラシーが

──そういうお付き合いなら、いつ宅間さんの舞台に出てもおかしくなかったですね。
宅間 杏樹さんは絶対舞台をやらないと思っていたから。つねにレギュラー番組もあったし、生放送とか持ってると舞台のスケジュールは難しいですよね。ところが一昨年、いきなり「舞台出ますから、観に来て下さい」と言われて、「えーっ、やるの?」(笑)。
鈴木 初めてで、恥ずかしいですけど、やっぱり観てほしかったのでお声をおかけしたんです。
宅間 その『Walk oN!』の杏樹さんがすごく良かったんです。それで「舞台も全然OKじゃない! ていうか、やるんだ芝居!?」みたいな。若干ジェラシーがありました。なんでうちじゃないの? という(笑)。本当にやらない人だと思ってたから。
──出てみたい気持ちはあったのですね?
鈴木 ずっと拝見してましたから夢ではあったんですが、体力的にどうなんだろうとか、持っている番組との兼ね合いで諦めていたんです。でも『Walk oN!』で西村雅彦さんに声をかけて頂いて、知ってる方が一緒だと心強いなと。
──宅間さんの作品は好きだからこそ逆に出たくないとか?
鈴木 私はそんなこと全然ないんですけど、弟も宅間さんのお芝居が大好きで、その弟が「えーっ! 大丈夫??」って、すごい不安がってます(笑)。好きな世界に、姉が入ることで、現実として受け止めたくないみたいで。
宅間 ははは(笑)。
──具体的に出て頂くまでのいきさつは?
宅間 作品が『わらいのまち』に決まって、仲居の真知子役を誰にしようかなと考えたとき、杏樹さんならぴったりだなと。スケジュールもあるので引き受けてもらえるか心配してたんですが、出てくれることになって。関係者みんな、めちゃくちゃ盛り上がりましたよ(笑)。
鈴木 私も嬉しかったです。「えっ宅間さんの舞台? 出る出る出る!」(笑)、作品が何かとか役とか聞かないうちに「出る出る!」って(笑)。
──初演もご覧になってると思いますが、真知子役については?
鈴木 関西弁で喋る役で、関西出身なので言葉は大丈夫なのですが、たぶん登場人物で私1人だけ関西弁ですよね? 周りが違う中で喋るって意外と難しくて。
宅間 ああ、引っ張られるんだよね。
鈴木 『Walk oN!』の大阪公演で、西村さんに「カーテンコールでは関西弁で挨拶して」と言われたんですけど、全員が標準語で挨拶しているので、うまく関西弁が出てこなかったんです。大阪のテレビ局の方に「東京に心売ったんやな」と(笑)。次の日は、関西弁を喋るスタッフさんと袖で練習して、無事関西弁で挨拶できたんですけど。今回もちょっとそこが心配なんです。
宅間 出演者の辻本祐樹くんが確か大阪出身なので、彼と喋っててください(笑)。

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スライムみたいな状態で役に入っていく

──宅間さんから見て、女優さんとしての杏樹さんは?
宅間 一度共演してますよね。別れた旦那役で。
鈴木 私が主演した『ライアの祈り』(2015年)という映画に出てくださって。
宅間 ドラマも観てますが、素の杏樹さんとは違う人に、ちゃんとその役に見えるんです。
鈴木 嬉しいです。ありがとうございます。
──バラエティと役を演じるときとでは意識が違いますか?
鈴木 バラエティに関しては、素の鈴木杏樹で出ています。発言なども私自身です。でも役を演じるときは、その人はどんな人か考えて役になろうとします。そしてスライムみたいな状態で役に入っていきます。
──作・演出家としての宅間さんとは今回が初めてになりますね?
鈴木 そうなんです。以前、1回だけ初演の『歌姫』で稽古場を見せていただいたことがあって、自分で演出しながら主役でも出るってすごいなと感心した覚えがあります。よく色々な方が言う「怖い演出家」という印象はなかったです。
宅間 怖くないですよ(笑)。
鈴木 でも初演の『わらいのまち』のDVDの特典映像で、柴田理恵さんが「宅間さん怖いです」って言ってて、あの柴田さんが怖いって?(笑)。
宅間 いやいやいや、柴田さんのほうが怖いですって(笑)。
──そんな楽しい座組が今回も楽しみです。最後に意気込みをぜひ。
鈴木 私は、本当なら不安という気持ちがあってもいいのに、全然なくて(笑)、楽しみでしかなくて、ワクワクしています。出演者の皆さんやお客様と一緒に、楽しくすごせたらいいなと思っています。
宅間 この「タクフェス 春のコメディ祭!」が毎年のシリーズになればいいなと思っています。素敵なメンバーが揃ったので、期待して頂いて大丈夫です。東京グローブ座では初めてですが、コンパクトで居心地の良い劇場ですから、楽しみにいらしてください。

宅間孝行 鈴木杏樹
鈴木杏樹・宅間孝行

たくまたかゆき○東京都出身。脚本家、演出家、俳優。97〜12年にかけて劇団「東京セレソンデラックス」、以降は「タクフェス」を主宰。作家・演出家・監督・俳優として映像や舞台で活躍、辻本茂雄とのユニット「つじたく」でも活動中。俳優としての主な作品は、NHK朝の連続テレビ小説『つばさ』『新選組血風録』大河ドラマ『花燃ゆ』『嵐の涙-私たちに明日はある-』など、映画は『くちづけ』(原作・脚本・出演)『海難1890』『団地』『嫌な女』、昨年『全員、片想い』内の短編「サムシング・ブルー」を監督した。

すずきあんじゅ○1992年、連続ドラマ『十年愛』(TBS)でデビュー。以後、数々のドラマや映画に出演。現在、『相棒シリーズ』(EX)レギュラー。95年から20年間司会をした『MUSIC FAIR』は記憶に新しい。TVは朝の情報番組『ZIP!』(NTV)で金曜日のメインパーソナリティーとして出演、ラジオは『鈴木杏樹のいってらっしゃい』(04年〜/月〜金/LF)『オールナイトニッポン MUSIC 10』(15年9月〜/毎週水曜/LF)のレギュラー。舞台は『Walk oN!』(15年)に続いて2作目。

〈公演情報〉
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タクフェス 春のコメディ祭!『わらいのまち』
作・演出◇宅間孝行
出演◇宅間孝行 永井大 柄本時生/柴田理恵 鈴木杏樹 ほか
●3/30〜4/12◎東京グローブ座、
4/14〜16◎中日劇場、
4/18〜23◎兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
〈お問い合わせ〉東京/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
http://takufes.jp/warainomachi/


【撮影◇岩田えり】 



えんぶ4月号 




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伊阪達也、荒木健太朗を迎えて新作上演! 劇団イヌッコロ『まわれ!無敵のマーダーケース』インタビュー

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前列/伊阪達也、荒木健太朗 後列/小野友広、長谷川哲朗、森訓久

劇団イヌッコロとは、俳優の長谷川哲朗と森訓久、作・演出の羽仁修が中心となって、2010年1月1日から正式に活動を開始。毎回ワンシチュエーションのコメディにこだわり、様々な作品を発表してきた。今回、その11回目となる『まわれ!無敵のマーダーケース』が、3月21日〜26日まで中野ザ・ポケットで上演される。
出演者には、長谷川と森、小野友広などの劇団員以外に、様々な舞台で活躍中の伊阪達也、荒木健太朗をはじめとする客演を招き、今までに観たことのないコメディとなるはずだ。

【あらすじ】
作家・藤澤智彦(伊阪達也)は書いたことのないサスペンス物の仕事を引き受けてしまった。何日経ってもいっこうにアイディアは浮かんでこない。それどころか根本的な描写の仕方すらわからない。それほど藤澤はサスペンスに疎かったのだ。そんな中、彼はとんでもないことを思い付く。「そうだ! 嘘の殺人事件を起こして、人間のリアルな反応を見よー!!」
編集者の末國(大塚真矢)に協力を仰ぎ、人里離れたペンションを探し、売れない役者を雇い、知人を招き、いざ計画を実行したのだが、そこに本物の殺人鬼(荒木健太朗)が現れて…。

公演初日に向けて、熱く繰り広げられる稽古の合間を縫って、伊阪達也、荒木健太朗、長谷川哲朗、森訓久、小野友広がこの作品について、語ってくれた。

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お客さんにじゃれて喜んでもらおうと命名

──まず、演劇集団イヌッコロとはどういう劇団か、メンバーから語っていただきたいのですが。
長谷川 ラフな劇団です。
小野 って、それだけ!? イヌッコロという劇団だけに、お客様にじゃれ合う雰囲気のある劇団ですね。
伊阪 僕は大型犬っぽいねって言われますよ。
4人 わかる、わかる。
小野 話がずれてきた(笑)。真面目に「楽しく」じゃれ合うんです。
荒木 真面目に「適当」にじゃれ合うんですよね?
小野 適当、まあ、そう言われれば。いやいや真剣に笑いに打ち込むストイックな部分もあったりするんですよ。
荒木 計算で笑いをとる。決して偶然ではないんです。面白いものをワンシュチュエーションとしてやっているイメージがありますね。
長谷川 今、そう思いました。
 リーダーやん(笑)。最初は映像、舞台、声優というジャンルの仲の良い役者メンツで、草野球チーム「ハトス」をやっていたところから始まったんです。
4人 へー!
 (長谷川を見ながら)君も驚いてどうする!? 長谷川くんと僕が初めに立ち上げて、作・演出をしている羽仁修が脚本を書いてくれました。基本的にワンシチュエーションのコメディにこだわって、お客さんに笑ってもらいたいな、お客さんにじゃれて喜んでもらおうというコンセプトがありました。
荒木 どうしてイヌッコロという名前にしたんですか?
小野 これは諸説ありますね。僕は最後に入ったのでわからないな。
 僕が入る頃には名前が決まってましたね。
長谷川 羽仁修とファミレスで適当に決めました。
小野 やっぱり適当かい(笑)。

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「いいかげん」ではなくて「いい、加減」

──伊阪さんと荒木さんから見て劇団イヌッコロの印象は?
伊阪 劇団員はみんな適当なんです。適当ですけれど、作品はしっかりしています。みんなでお客さんを笑わそうとしますから。
 「適当」は、「適」時に「当」たるという意味ですから良い意味なんですよ。
伊阪 しかも個性的なんです。それぞれ役割があって、作品の中で役割分担ができていて、バランスがいいですね。今回、客演として入らせていただいてますが、すごく居心地が良いんです。引っ張っていってくれるところは引っ張ってくれる。それから、演技はこういう方向性だよと教えてくれたりします。みんなそれぞれの仕事があるし、素敵な劇団だなと思いながらも……稽古はきついです(笑)。
小野 伊阪くんは主役だからね。みんなをうまく回したり、見なくちゃいけないから。
伊阪 痩せました。
 コメディですから、主人公がてんやわんやするのが基本ベースにあるので、膨大なリアクションとセリフを主役が担わなくちゃいけない。
荒木 コメディは本当に気を抜く瞬間がないですよね。
 お客さんはずっといろんなリアクションを見ているので、新しいワードが出た時に、主役の伊阪くんがどんな反応するのか、全方向から観ることになるので、映像と違って、フォーカスが当たってない部分をどう演じるか、その面白さと難しさがありますね。
荒木 僕は去年の今頃、『トラベルモード』出ていたこともありますし、何度か拝見させていただいたんですけど、雑に見えるけれど、すごく計算されていて、適当という言葉ではないですけど、「いいかげん」ではなくて「いい、加減」なんですね。
4人 うまーい。
荒木 ワンシュチュエーションコメディは、今の演劇の中で減っています。その中では稀有な劇団だと思います。真面目にやるのが大前提でコメディとして成り立させているから、嘘がないように見えますね。
長谷川 公演を観てくれて出たいと言ってくれた人でも、やってみると大変だという人もいますから。
伊阪 僕は楽しいですよ!
小野 確かに大変だけど、狙った通りに笑いが来たらとても気持ちいいんです。
伊阪 お客さんがいると、また色々と見えてくるものが多そうですね。
 公演ごとに発見があります。特に初日ですね。本読みの時に感じていたものが、稽古をやっていると慣れもあって薄れるんです。それが初日は、お客さんの前に立つことで新鮮な気分になって、それで新たなことに気づくことが多いです。作・演出家の羽仁(修)とも「お客さん、ここでこういう反応来るんだね」と違った発見に驚くこともあります。また、客演の方によってさらに違うテイストが出るので、それも楽しいんです。荒木くんと伊阪くんの2人のシーンは、イヌッコロのメンバーにはない感じで面白いですし、今回の2人はとても頼もしいです。
伊阪・荒木 ありがとうございます。

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笑わせることが第一目標で最終目標

──今回の台本を最初に読んだ時の印象は?
長谷川 面白いなって思いました。
小野 客か!? グルメリポーターにもなれないね。
長谷川 うん。グルメレポーターのオーディションに落ちたことがある(笑)。
──どういったところが面白いなと?
長谷川 これまで僕はサスペンス的なお話をやったことがないんですよ。
小野 僕も今回、どんな笑いになるかなと思っていましたが、どの部分も面白くなる雰囲気を感じました。
 イヌッコロの脚本ミーティングは、みんなで話すのですが、その中で、今回サスペンスにしようとなった時に、いつものイヌッコロのパターンを想像していたんです。でも、今回はいつもと違う形になります。最後の仕掛けでどういう風にコメディにするのか、楽しみにしていてください。
荒木 羽仁さんが、9割がコメディで1割をサスペンスにしたいとおっしゃって。僕はサスペンス側をやらなければいけないけれど、台本を読んで初見の時に笑ってしまって、「これ笑わないで耐えられるかな?」と思ったほどです(笑)。荒木健太朗になってしまわないようにしないと。
 荒木くんは殺人鬼役ですけれど、主人公で作家の伊阪くんとのやり合いが面白いんですよね。
伊阪 僕も初見で笑ってしまったんです。そんなことあまりないから嬉しかったし、シチュエーションコメディというのはこういうことかと。事件が起きている状況の中で、てんやわんやがあって、その中で笑いを取るのが、シチュエーションコメディなんだなと。演じる上でセリフにも幅があって、どういう風になるのか想像すると楽しみです。とにかく第一目標はお客さんを笑わせるだけです。
小野 うん。第一目標で最終目標ですね。

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2回目も来たくなるように盛り沢山な工夫が

──それぞれの役柄についても教えてください。
伊阪 藤澤という作家で、サスペンスを書くことになったけれど、書き方がわからない。だから、役者さんをよんで、実際に殺人事件をドッキリでやる。でも、その中に本物の殺人鬼が紛れ込んでいて、彼に翻弄されつつ、ドッキリのみんなのリアクションを見て本を書いては悩んでいく、ちょっとドタバタな役です。
荒木 先ほども言ったようにサスペンス側ですし、伊阪くんの真逆なんですよね。ドッキリだと知らない状態の人間だから、そのバランス加減が難しいです。稽古を積み上げて、ほかの役者さんのセリフを聞きながら完成させたいなと思っています。
長谷川 僕は谷川という役です。いい役をもらったなと思います。
小野 役柄がないよ(笑)。谷川は僕の演じる広野と一緒で、藤澤先生に招かれた客です。
 僕はドッキリが行われるペンションのオーナーです。お話を演劇的に転がして、お芝居だとわかるようにしていく役です。
──この作品の見どころはどんなところになりますか?
小野 伊阪くんの奮闘ぶりだね。巻き込んでいるのに巻き込まれてる感じが面白い。
 藤澤先生の暴君ぶりに翻弄されていく僕らも見どころかな。
長谷川 そうだね。それにここにいる5人以外にも面白い人はたくさんいます。
──最後に公演向けての意気込みを。
伊阪 僕らは四苦八苦しながら頭を使って演じますが、観る方はボケーっと観てくれたら最高に面白いと思います。「殺人事件を体感しようかな」くらいの気軽な感じで来てもらいたいです。
荒木 演劇が好きじゃない人にも観てもらいたいですね。とっつきやすい作品ですし、テレビを観るような感覚でさらっと観れますから。
長谷川 やっている自分たちは、怒られたりけなされたり大変なんですけど。そういうことは全然わからないように頑張りたいです。
小野 一生懸命やるけれど、それを見せずに、気楽に見て欲しいですね。ただ楽しんで、2回、3回と来なさい!
 何ですか、急に先生みたいになって。
伊阪 確かに2回観てもらいたいですね。物語がわかった上で観てもらうとさらに面白いはずです。
小野 そんな雰囲気を醸し出すぞ〜!
 おー!って(笑)、確かに強制ではなく、2回目も来たくなるように色々工夫しています。ポイントカードを作ったり、初めて「お犬様席」を作ったり。トークショーだけじゃなく、どの公演のでもいいのでイヌッコロTシャツを着ていたら楽しめるイベントや、「イヌッコロ・サスペンス劇場」なんかもあります。どれも内容はまだ秘密ですけれど。お芝居だけでなく盛りだくさんの内容になっていますので、ぜひ、劇場に足を運んでください。
 
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前列/伊阪達也、荒木健太朗 後列/小野友広、長谷川哲朗、森訓久
 
いさかたつや○1985年生まれ、石川県出身。04年から放送された『幻星神ジャスティライザー』の伊達翔太/ライザーグレン役で人気に。05年、初舞台『ROCK MUSICAL BLEACH』に主演。以来、テレビ・舞台に活躍中。最近の主な出演作に『戦国BASARA2』(主演)『攻殻機動隊 ARISE』 『RE-INCARNATION RESOLVE』『灰とダイヤモンド』『WORLD ~beyond the destiny~』『拡がる世界の片隅で』(主演) 斬劇 『戦国 BASARA4 皇』 『ROSE GUNS DAYS ーseason1ー』など。

あらきけんたろう○1982年生まれ、熊本県出身。04年の劇団オーディションにて劇団スタジオライフに入団。シェイクスピア「Romeo&Juliet」のロミオ役や泉鏡花『天守物語』の姫川図書之助等、数多くのタイトルロールと主演を務め14年退団。以降、様々な舞台に出演。最近の主な出演作にKAAT『ペール・ギュント』『ロボ・ロボ』『のぶニャがの野望 幸村と五輪の輪』『トラベルモード』『ミュージカル 刀剣乱舞」〜阿津賀志山異聞〜』トライアル公演&本公演、『真田十勇士』『メサイアー暁乃刻ー』など。

はせがわてつろう○1980年生まれ、東京都出身。テレビ・舞台など、様々な作品に出演。主な出演作品に、舞台に『ケロケロちゃいむ』(98年)など。

もりのりひさ○1972年生まれ。声優・俳優。アニメの代表作は『おじゃる丸』川上さん役、『テニスの王子様』柳沢慎也役。舞台ではミュージカル『ハンター×ハンター』ブリゲルラ役など他にもテレビなど幅広く活躍中。

おのともひろ○1979年生まれ。大分県出身。主に映像や舞台などで活躍中。

〈公演情報〉
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『まわれ!無敵のマーダーケース』
作・演出◇羽仁修
出演◇伊阪達也 荒木健太朗 天野麻菜 こいづか登 若松春奈 高橋佑一郎 大塚真矢 想乃 牧田雄一 長谷川哲朗 小野友広 森訓久
●3月21日〜26日◎中野ザ・ポケット
〈料金〉前売り・当日3,800円、初日割・平日昼割3,300円、特別お犬様席4,800円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉inuccoro2010@gmail.com
〈公式サイト〉http://inuccoro.strikingly.com



【取材・文・撮影/竹下力】




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