観劇予報

『向日葵かっちゃん』舞台化決定!

インタビュー

ワンツーワークス『アジアン・エイリアン』間もなく開幕! 古城十忍・多田直人 インタビュー

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社会問題に真正面から向きあった作品を生み出してきた劇団ワンツーワークスが17年ぶりに『アジアン・エイリアン』を上演、6月22日に赤坂レッドシアターで開幕する。(7月2日まで)
ワンツーワークスの前身、劇団一跳二跳時代の代表作だ。本物の水を使った衝撃的な演出が、この社会の不気味さをひたひたと感じさせ話題となった。
初演から20年近くたった今回は、客演に4人の若手俳優を迎えての公演となる。現代にいかに蘇るのか? 
初顔合わせという作・演出の古城十忍と、客演の多田直人(演劇集団キャラメルボックス)に語り合ってもらった。

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多田直人・古城十忍

明るくさわやかにを超えて「芸人」の域

──お二人は初めてご一緒するそうですね。多田さんは他劇団へ客演されてみていかがですか?
多田 ワンツーワークスには一跡二跳時代も含めて何十年と培われてきた身体訓練のメソッドがあります。ほかの劇団の文化に触れている感覚があって、それがすごく楽しい。何よりも素敵だと思ったのは、音楽がかかって、その音楽のサイズにストレッチとアイソレーションが全部はまっていて、劇団員は指示しなくてもできる。ある種の効率化、システム化された訓練というのは、すごくいいなって思いました。
──古城さんはいろんなタイプの客演を演出してきていますが、しっかり劇団活動をやってきた多田さんはいかがですか?
古城 多田君は最初に会った時の印象とほとんど変わってないですね。
多田 どんな印象だったんですか?
古城 最初に会った時に「天才や引きこもりとか、変わった役柄が多い」って言ってたんです。もちろん、そういう役もできるだろうけど、この人はね、笑顔が結構卑怯だなって思って…(笑)。
多田 卑怯の中にどんなニュアンスが含まれてるかは置いておいて(笑)、初めて言われました。
古城 なんというか笑顔を武器として使う技術を持ってるから、明るくて面白い役をやった方が絶対に幅が広がるのになぁと思ったんです。だから今回、多田君に金山(男3)という役をと思ったのは、この芝居の中で唯一、清涼剤的な側面を持つ役だから。「その役割を担って、明るくさわやかにね」って言ったんですけど、もうそれを超えて今や「芸人」です(笑)。
多田 確かに最近は物語の重いところというか、闇だとかシリアスな面を抱えてるような役が多かったから、今回、軽いフットワークで動いたりしゃべったりしてるのは新鮮ですね。
古城 ただ、金山も心の中にはある秘密を抱えているんです。それをどうやって多田君が明るいだけではなく見せていくのか。それはちょっと楽しみですね。
多田 何を抱えているかは今は話せないのですが…。作品のテーマそのものがシリアスだし、誰もが心の中に抱えていることだとも思うので、前回の上演から17年経った今の時代にも意味あるものにしなくてはという感覚はありますね。一方で、初演から変わらないものももちろんある。これから初日までに、相手役がどう見てくれるか、どうセリフを発してくれるかみたいなところでバランスもとりつつ、つくりあげていきたいと思っています。

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この作品を書いていた当時の思いが再び

──
多田さんが話されたように時代性と普遍性が両極に出てくる作品だと思うのですが、古城さんが今、この作品を取り上げた理由を教えてください。
古城 『アジアン・エイリアン』は1998年が初演で、2年後に再演して以来、上演していないんですよ。評判もよかったのですが、その後、9.11(アメリカ同時多発テロ事件)などいろんなことが立て続けに起こって、そっちの方に気持ちが行ってしまっていた。それが一昨年ぐらいから、シリアでの内戦が要因となって大量に生まれた難民を受け入れるのか受け入れないかっていうことから、極右政党がヨーロッパで台頭してきて、あげくにアメリカではトランプ氏が大統領になってますます自国第一主義みたいな流れになってきた。数年前からヘイトスピーチが日本でも問題になっていたし、『アジアン・エイリアン』を書いていた当時に感じていた胸クソ悪い思いが再び自分の中でわき起こってきたんですね。この芝居の稽古をしていると胸のあたりがすごく苦しくなるんですが、今がそんな時代だからこそもう1回この作品をやった方がいいんじゃないかと思ったんです。あ、でも、直接的に自国第一主義だとか、今の世の中がどうっていうことを声高に言う芝居ではないです。個人レベルで考えていく芝居にしないと共感は得られないと思うんで。
多田 古城さん、そういう話をもっと稽古場でしてくださいよ(笑)。作家は思いを込めて書いたはずなので、その答を持ってる人間が現場にいるというのは、僕は得だと思うんですよ。それを自分なりに解釈して、こういうふうにやりますよっていうことが提示できるかなって思うので。
──では、作家・古城に多田さんから聞いてみたいことは?
多田 台本を読んだ時、雰囲気というかムードがすごくある脚本だと思ったんですよ。だから求められているものは察しやすい感覚があった。でもじゃあ、この本を僕らが感じ取ったムードのままやっていいのか。逆にこのムードを少し壊してやるのかっていうのは、古城さんのお好み次第だと思うのですが。
古城 んー、そこがなんか不思議なところで、自分で書いて演出してというのが長いからかもしれませんが、本を書いてる時には完璧にイメージがあるんですよ。もう泣きながら書くし、笑いながら書くし、頭の中の登場人物も活き活きしゃべって動いてくれる。ビジュアルもできている。でも、キャスティングをして読み合わせをした時点で、当たり前ですけど、そのイメージはガラガラと崩れるんです。でもだからといって僕の持っていたイメージに俳優たちを当てはめていくのは演出の仕事ではない。芝居というのは本をもとにしながらも、俳優やスタッフ、みんなで意見や知恵を出し合いながらつくりあげていくものですから。だから僕にとっては他の人の本をやろうが自分の本をやろうが、演出としてのスタンスは同じなんですよ。

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1トン以上の「不可視の水」の意味
  
──では、多田さんが演じる金山にはどういう思いを込めていますか? 憤りや怒りを抱えた登場人物はほかにいますが、金山は明るいですね。
古城 それはまったく個人差の問題だと思うんですよ。性格の問題というか。例えば、自分の抱えている問題を話したがらない人もいるし、あっけらかんと話す人もいる。じゃあ、あっけらかんと話してる人が問題意識が低いか、問題の重さが違うのかというと、決してそんなことはないんです。
多田 金山は何かを抱えてるっていうのもあるけど、大好きな2人の先輩に対する思いもあるかなって思います。その先輩への思いと自分の思いのバランスなんですね。今まで培ってきた人間関係とか、可愛がってもらった思い出があるからこその思いも存在する。今回は、その先輩の1人、境田役(男1)の奥村洋治さんが作品の真ん中にいらっしゃって、客演の4人が奥村さんにぶつかり稽古していくみたいな台本になってる。だから仙人みたいな奥村さんをグラグラ揺り動かしてあげるのが僕たちの役目だと思っている。おこがましい言い方なんですけど、いろんな奥村さんを引き出してあげるのが僕らの役目かなと。
古城 今の稽古の時点で、それを自覚的にたくさんやろうとしているのが、多田君だよね。
──客演の4人はD-BOYSの山田悠介さん、劇団スパイスガーデンの山中雄輔さん、フリーの池永英介さんと、それぞれバックボーンが違いますね。
古城 客演全員と初めてですが、出自の違いはあまり気にしてないですね。ただ、やっぱりアプローチは全然違うなぁとは思います。
多田 僕の思いとしては、この作品を観てもらう時、奥村さん演じる境田役に感情移入してほしいですね。境田という役と一緒になって奇妙な感覚になったり、えーっと驚いてもらったりした方が、このお話に没入できるじゃないかと思うから。もちろん、金山の思いも共感してもらいつつですけど、まずは主演の奥村さん!
古城 さっき、多田君も言ったけど、この脚本は奥村対多田、奥村対山田、奥村対池永みたいな構成になってるんですよ。奥村君のスタンスが客演それぞれ相手によって違うのが、奧村君とは長年一緒にやってるから手に取るように分かって、それがまたおもしろいですね。
──初演でも本水を使うのが話題になりましたが、水を使うことの意図と、実際その中でやってみるのはどうなのかお聞きしたいのですが。
古城 水を使った稽古は劇場に入ってからじゃないとできないので、そこに相当苦労するんじゃないかっていうことを危惧はしています。台本に「不可視の水」と書いてあるように、「水は見えない」「水はない」という設定なので、水しぶきが上がるようなシーンで顔に水がかかったとしても、俳優は拭ったり払ったりしちゃいけないんです。初演の時は、水がかかったりしても「生理的な反応をしない」という稽古をしましたからね。水を使ったのは、この作品のテーマを演劇的に表現する方法はないかと、ずっと考えていたんです。物語だけで伝えるのなら演劇でやる意味がないですから。それで「存在が見えない、わからないものって何かないか」と思っていたときに、「あっ、水を使えばいいんだ」って思いついたんです。そのときはもう天にも昇る気持ちで、「俺は天才!」と思いましたよ(笑)。
──それで小劇場で本当に使ってしまう劇団はめったにないです。
古城 しかも1トン以上だからね(笑)。
多田 大変だろうなって思うけど、同時にすごい楽しみでもありますね。本当に素晴らしい発明だと思う。水がひたひた出てくるのって、意味ももちろん込められているけれど、もう少しズルいこと言うと、役者が黙っていても舞台に見応えが生まれると思うので。
古城 そう、そう、そう(笑)。

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多田 水が波打ったりとか、ポタポタしてるとか、それだけでお客さんの想像力が働く。たとえ僕たちの演技がスカスカだったとしても、すごく助けてくれるだろうなっていう思いもある(笑)。だからこそ、稽古でしっかりお芝居を作っておけば、これに水を足した時には相乗効果でもっとすごいことになるんじゃないかっていうワクワクがありますね。 
──謎解き的な内容もあってネタバレできない部分が多いですが、最後にこの作品を観るお客様へのアドバイスはありますか? 社会派な作品だと聞くと、どうしても難しく考えなくてはと思ってしまいますが。
古城 この芝居も「社会派」みたいなくくられ方をするんだろうけど、受け取り方はもちろん自由なわけです。ただ今回は、チラシにも「水を使う」ってことは前面に打ち出しているので、「あの水って、何なんだろう」って思いながら見てほしいですね。見終わった時に多分こういう意味だろうっていうのが、一人一人違うような気がするんです。でも、それでいいんじゃないかと思っていて、その答えをたくさん知りたい。アンケートにどんどん書いてもらえるとすごく嬉しいです。
多田 そうですね。わりと謎めいた感じで進んでいくし、全員が最後にスッキリしたっていう終わり方ではないかもしれません。でも、それは演劇ならではの感覚だと思うんですよね。想像する楽しさ、自分で考えて観る楽しさがある。種明かしができたとか、笑えたとかじゃなくて、「どうだったんだろう?」「私はこう感じたんだけど?」というのを投げかけてもらえるのがいいかなと思います。 


〈公演情報〉
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ワンツーワークス#22『アジアン・エイリアン』 
作・演出◇古城十忍 
出演◇奥村洋治(ワンツーワークス) 関谷美香子(ワンツーワークス)多田直人(演劇集団キャラメルボックス) 山田悠介 池永英介 山中雄輔(劇団スパイスガーデン) 増田 和(ワンツーワークス) 原田佳世子(ワンツーワークス) 小山広寿(ワンツーワークス) 吉澤萌々茄 石川亞子 松尾敢太郎 田村往子
●6/22〜7/2◎赤坂レッドシアター
〈料金〉前売4,500円 当日4,800円 学生3,000円(当日、受付にて学生証を提示)(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉オフィス ワン・ツー/劇団ワンツーワークス 03-5929-9130  



【取材・文・撮影/田窪桜子】



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ノーベル化学賞受賞作家が描いた注目の戯曲! 地人会新社『これはあなたのもの 1943-ウクライナ』 吉田栄作・保坂知寿 インタビュー

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地人会新社第7回公演『これはあなたのもの 1943-ウクライナ』の東京公演が、6月15日から新国立劇場 小劇場で幕を開ける。(25日まで)
原作は、1981年にノーベル化学賞受賞を日本の福井謙一氏とともに受賞した化学者、ロアルド・ホフマンが書いた戯曲で、自分の体験がもとになっている。
 
かつてはポーランドであった現ウクライナに、1937年、ユダヤ系ポーランド人として生まれたロアルド・ホフマンは、第二次世界大戦中のナチス占領による迫害の間、母親とともにウクライナ人の家庭の屋根裏部屋にかくまわれていた。その5歳だった1943年のウクライナと、アメリカに渡り成功を収めた1992年を交錯させる劇構造の中に、当時の彼が見た世界、彼の母親の怒りと悲しみなどが、浮かび上がる。
演出は鵜山仁、そして出演者は八千草薫、吉田栄作、保坂知寿、かとうかず子といった実力派俳優たちが顔を揃えている。まさに注目の舞台だ。

【物語】
戦後アメリカに渡り、内科医として成功をおさめたエミール(吉田栄作)。妻タマール(保坂知寿)と2人の子供(万里紗、田中菜生)、そして母フリーダ(八千草薫)と暮らしている。フリーダはウクライナでの記憶を消すかのごとく、当時のことを語らない。その上、かくまってくれていたウクライナ人のオレスコ氏についても、時折、複雑な思いを口にするだけだ。 学校でホロコーストのことが課題となった17歳になる孫娘の質問攻めに、少しずつ話しはじめるフリーダ。そんなある日、オレスコ氏の娘アーラ(かとうかず子)が尋ねてくる…。

この舞台で、作家自身を映し出したエミール役の吉田栄作、その妻タマール役の保坂知寿に、稽古の終盤の時期に作品世界について話を聞いた。

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シリアスなテーマの中に化学者らしい達観した目線が 

──この戯曲を化学者の方が書いたということに驚きました。
吉田 ロアルド・ホフマンさんの実体験がもとになっています。彼は母親とともに、ウクライナ人の家の屋根裏で、ナチ占領下の15ヵ月を過ごしたわけです。ドイツでのホロコーストは、僕も歴史の勉強や資料などから知っていますが、現ウクライナでも同じようなことがあったことは勉強不足でした。ただ、当時の世界情勢を描いた作品には色々出演していることもあって、そんなに遠い世界ではなかったです。
保坂 私は最初に作品を読んだ時点では、やはりウクライナという場所で起きたことなので、初めて知ったこともあって、なんと複雑な背景なのだろうと思いました。そしてその難しい題材を、自分の感覚として受け止めるのは簡単ではないだろうなと。でもとても挑戦しがいのある作品で、出演できることは喜びでもありました。
──背景になる村はウクライナ人、ユダヤ人、ポーランド人が暮らしていて、そこがソ連領になり、さらにナチスが侵攻してきます。その混乱の中で人種の違う者同士が憎み合う。その空しさが描かれていますね。
吉田 本当に難しい問題が描かれていると思います。ただ、一幕と二幕の初めに神と天使が出てきて、ちょっとしたブラックコメディタッチの寸劇があるんです。そのへんが化学者ならではの目線で達観したような風刺が入っていて、面白いなと思っています。きっとホフマンさんは、ウクライナで経験したことについて、単純にどちらがどうとか、勝ちとか負けとかで割り切れないものがあると。そこを描きたかったのかなと思っています。

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──役柄ですが、吉田さんのエミールは母親とともにかくまわれていた少年で、のちにアメリカに渡って医者になりますね。
吉田 内科医になるんです。妻が心理学者で、恐いんですよ(笑)。頭で考えていることが全部見えちゃうので(笑)。
保坂 (笑)。
──母親との関係はどのように捉えていますか?
吉田 まず母親がいなかったら彼は生きていなかったし、現在の家庭もないわけです。エミールは母に護られて、生き延びて、アメリカに行くことができて、医者になれた。その母への思いはとても強いと思います。そして母親が体験したことは想像できないほど大変なことだったわけです。だから母親が封印しているものはなるべく開けたくないし、なるべく当時のことは話さないようにしている。とてもセンシティブな問題ですし、エミールの気持ちはとてもよくわかります。
──その封印していたものが、ウクライナ人の娘アーラの訪問で、いやでも向き合わなくてはならなくなりますね。
吉田 そのことでエミールとしては、とても複雑な心境になるわけです。ただ、いつかは向き合わなくてはいけないことだったと思います。
──タマールは、そういう過去についてほとんど知らないまま結婚したのですね。
保坂 ウクライナ時代にお母さんと一緒にかくまわれていたことぐらいしか知らないんです。そして訪ねてきたアーラによって、当時起きたことを知ることになるのですが、やはりお母さんのことを考えると触れてはいけない部分であり、そこに踏み込んでいくと今の幸せな生活が壊れるかもしれない、そう考えて今まで生きてきたのだと思います。もちろんエミールが何かを抱えていることは気づいていたし、アーラがきっかけでエミールがそれを乗り越えなくてはいけない状況になった。そこでやっと踏み込もうと、一緒に背負っていくことができるのではないかと、思えるようになった。
──タマールは心理学者ということで、ある意味では客観的に分析できる力もある女性ですね。
保坂 彼が思い出していく中で、考え方が色々変化していくのを、自分なりに手助けしようとします。でも自分が勉強してきたマニュアル通りにはいかないということを、彼女自身もまた知ることになります。
吉田 その過程での夫婦の会話がとても深いし、とても面白いです。

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最初からスコンと
エミールになっている

──母親役の八千草薫さんとは、お二人とも初共演だそうですね。
吉田 僕は画面で拝見してきた立場で、大々先輩です。ご自身にとってもこういう舞台は、もしかしたら挑戦かなと思うのですが、凜として、ぶれないんです。ご自身は「役どころがそうだからよ」とおっしゃるのですが、やはり、それは内面から滲み出てくるものだなと。沢山の素晴らしい仕事とさまざまな人生経験をされてきた、そういう方ならではのぶれなさを、毎日のように感じさせていただいてます。
保坂 私も、まずご一緒できたことが本当に光栄です。おそらくそんな機会はこないだろうと、違う世界の方だと思っていましたから。ですから今、あれだけのキャリアを重ねてきた方が、今回も時間をかけて作っていく姿を、そばで見させていただいているだけで、とても沢山のものをいただいています。本当に淡々と、いつも穏やかで、でも、ただそこに座っているだけで何かが伝わってくるんです。すごいなと無条件で思います。
──保坂さんは吉田さんとも初共演ですが、印象はいかがですか。
保坂 私は映像で活躍されている栄作さんを、ずっと拝見していた側で。
吉田 いやいや(笑)。
保坂 今回のエミールという役は、とても沢山の複雑なものを背負っている役なのですが、栄作さんは、なんていうかスコンとそこに入られて、肩に力を入れずにエミールにスコンとなっていらっしゃる。それは稽古の初めからそう思いました。
吉田 嬉しいですね(笑)。当初はこの作品の中にある、複雑な民族の三つ巴、四つ巴みたいなものがわかりにくくて、どう向き合おうというのがあったのですが、とりあえず漠然と誰にでもある母への思い、父への思いというのを糸口にしようと。それから翻訳の川島慶子さんから、「ロアルド・ホフマンの手記」があると教えていただいて読んだら、自分の中で何かが動き出した感じがありました。ホフマンさんが本当に体験されたことがそこで読めたので、ありがたかったです。そのおかげでエミールに気持ちを重ねていくことができました。
──ホフマンさんはノーベル賞を受賞した化学者ですから、どこか超越している部分もあると思いますが、共感できる部分は?
吉田 人間としてとても共感できる方です。今、実際にホフマンさんはウクライナの人たちと交流があって、あの当時起きたことなどを伝えていこうとしている。彼は化学者としてだけでなく、人類にとっての理想を色々な形で追求していると思います。そういう彼の思いというのは、すごく素直に僕の中にスコンと入ってきました。そのうえで共演の方々や演出の鵜山(仁)さんから、良い影響を受けることで、日々、エミールとして生きているという感覚です。

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──保坂さんとの初共演はいかがですか?
吉田 ずっと違う街道を(笑)歩いてきた方と、その道が重なるこの一期一会というのは、とても貴重ですよね。ミュージカルで活躍されていることは知っていましたし、お芝居も上手な方だと聞いていました。今回は夫婦ですからがっちり組んでのやり取りなのですが、毎日楽しくやらせてもらってます。演技という場で共に高まっていける、とても良い時間を過ごしています。
保坂 私はいつも栄作さんのお芝居を見ていて、余計なことをされないのがとてもすごいなと。
吉田 余計なことができないだけで(笑)。
保坂 いえいえ。これだけ大変なシチュエーションを背負った役なのに、それを説明しようとしないことで、あらためて「そうなんだな」と思わせられるんです。
吉田 いや、もともとが舞台の人間ではないので、技がないだけなんです(笑)。
──つまり本質からなりきるしかないということでしょうか?
吉田 理想はね。理想はそうなんですが(笑)。

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30数シーンを流れるように見せていく鵜山演出

──鵜山さんの演出についても話してください。
保坂 私は初めてなんです。栄作さんはもう3作目なので鵜山さんとツーカーなんですが(笑)。とてもテリトリーが広い方ですよね。それで何を伺っても全部答えてくださるのですごいなと。1つ聞いたらワーッと沢山のことにどんどん話が広がっていって。でも動きや台詞についての指示はとても具体的で、わかりやすいです。
吉田 僕は『オットーと呼ばれる日本人』(08年)と『トロイラスとクレシダ』(15年)でご一緒して、普段からけっこう仲良くさせていただいているのですが、そのおかげで鵜山さん独特の、どんどん広がっていくロジックにも慣れてきて(笑)、言わんとするところがよくわかるんです。自分でも不思議なんですが(笑)。
──鵜山さんは宇宙規模のスパンで物事を話される方で、その哲学についていけるのはすごいです。
吉田 いや(笑)。とにかく天才肌の方で、つねに100年先、1000年先を考えて作るとおっしゃっていて、今回この戯曲を選んだのも、それがあると思います。
──では最後に、お客様へのメッセージをいただければ。
保坂 戦争に関わる作品はいつも思うのですが、何かを考えるきっかけになればと。私自身も考えながらの毎日ですが、ご覧になる方にとっても、この作品がそんな機会になればいいなと思っています。
吉田 悲惨さとか愚かさとかそういう歴史を踏まえた作品ですが、とても芸術性が高くて、演劇的な仕掛けもたくさん入った面白い作品になっています。1992年のフィラデルフィアと1943年のウクライナを、全30数シーンで見せていくのですが、鵜山さんの演出で流れていくように作られていますので、その時間を楽しみながら、何かを感じていただけたらと思います。

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吉田栄作・保坂知寿
 
よしだえいさく○神奈川県出身。東映映画『ガラスの中の少女』でスクリーンデビュー。TV『もう誰も愛さない』で一世を風靡。95年米国へ居を移し生活。98年、TVドラマ『流通戦争』(NHK)、99年大河ドラマ『元禄繚乱』で活動再開。その後、『武蔵』(NHK)『ブラックジャックによろしく』(TBS)でギャラクシー賞奨励賞を受賞。近年の舞台は『ローマの休日』(10年、12年)『シングルマザーズ』『裏小路』『Paco〜パコと魔法の絵本〜 from「ガマ王子vsザリガニ魔人」』ミュージカル『ファントム』『トロイラスとクレシダ』など。本年7月に『ローマの休日』の上演が控えている。

ほさかちず○東京都出身。82年から06年まで劇団四季に在団。『キャッツ』『アスペクツ・オブ・ラブ』『マンマ・ミーア!』『オンディーヌ』などに出演。退団後もミュージカルからストレートプレイまで幅広く活躍している。近年の主な出演作品に『秘密は歌う』『地獄のオルフェウス』『フル・モンティ』『道化の瞳』『休暇 Holidays』『ヴェローナの二紳士』『ライムライト』『ドッグ・ファイト』『エドウィン・ドルードの謎』など。第34回菊田一夫演劇賞を受賞。


〈公演情報〉
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地人会新社第7回公演
『これはあなたのもの』1943─ウクライナ
作◇ロアルド・ホフマン
演出◇鵜山仁 
翻訳◇川島慶子
美術◇乗峯雅寛
照明◇沢田祐二
出演◇八千草薫 吉田栄作/万里紗 田中菜生/保坂知寿 かとうかず子 
●6/15〜25◎新国立劇場 小劇場
〈料金〉A席7,000円 B席5,500円 25歳以下3,000円/15日のみ全席5,000円 25歳以下2,000円(全席指定・税込)  
〈お問い合わせ〉J-Stage Navi 03-5912-0840(平日11:00〜18:00)





【取材・文/榊原和子 撮影/アラカワヤスコ】



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しりあがり寿の人気漫画がエンターテインメントな舞台に!「おん・すてーじ『真夜中の弥次さん喜多さん』双」 唐橋充・藤原祐規 インタビュー

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唐橋充・藤原祐規

2016年1月に上演された「おん・すてーじ『真夜中の弥次さん喜多さん』」の続編にあたる「おん・すてーじ『真夜中の弥次さん喜多さん』双(ふたつ)」が6月21日から全労済ホール/スペースゼロにて上演される。(25日まで)
しりあがり寿ならではの独特な世界感が描かれた漫画を原作に、川尻恵太が演出を手掛け、初演では、歌、ダンス、パフォーマンスを絡めたエンターテインメント舞台として上演された本作。引き続きW主演として、弥次郎兵衛役を演じる唐橋充、喜多八役を演じる藤原祐規に、初演の思い出と今作への意気込みを語ってもらった「えんぶ6月号」の記事をご紹介。 

しりあがり寿先生が「いいとか悪いとか聞かないで! と

──初演を振り返っていかがでしたか?
唐橋 俺ひどかったよね。最初の読み合わせの後。
藤原 「俺、できないかも」って言うから「諦めるには早すぎるんじゃないですか?」って(笑)。
唐橋 原作ではエネルギーのあまりない二人が淡々と変な事象に巻き込まれていくので。そのままいくと演劇として成立しないと思ったんです。それが怖かった。
──とはいえ原作ファンにもたいへん好評でした。
唐橋 劇中のそこここに、ファンの方にとって「これをこんなにちゃんと表現してくれるんだ!」みたいな部分があって。それにハマってくれたのかなと思います。
藤原 それも演出の川尻(恵太)さんがすごく考えてくれたからですよね。僕も初めは、この舞台って面白いんだろうかという思いもあったんですけど、途中で「そもそもハマる人がめっちゃハマってる作品だから、舞台もそれでいいのかもしれない」って。
唐橋 でも、わかる人にわかればいいというのではなく、「みんな絶対好きな箇所はあるはず」ということに懸けていこうって話をして。そこは精密にやりました。
──原作に寄せていったのですか?
唐橋 原作に関しては、なんとしりあがり寿先生が稽古場にお越しくださって。「昔の作品で覚えてねーから、これいいですか? 悪いですか? とか聞かないで!」って(笑)。
藤原 好きにやってくださいって(笑)。
唐橋 すごいでしょ? その器。じゃあいろいろ試していいんだ、と。ただその分パチッとハマらないといけないので、そこを鋭利にしていく作業をずっとしてました。
藤原 僕はラブストーリーだと思って演じました。いろいろな不可思議な出来事に弥次さんと喜多さんが巻き込まれていく話ですけど、僕の中でそれは二の次で。出来事は“受け”ていくことにして、弥次さんとどう挫折して、どう復活して、どうそれが成就していくか、みたいなところだけ考えてました。
唐橋 “受け”でいいんだってわかったときは嬉しかったよね。
藤原 なんか発信しなきゃいけないって思ってるときが辛かったんですよね。
 
「純愛」「かわいい」、そんな弥次喜多をお届けします!

──今回はまた新しい展開になりますが、どう向き合いますか?
藤原 僕、今年36歳なんですけど、精神年齢が下がってきている気がして(笑)。いつからだろうって思ったら『弥次喜多』が大きい。
唐橋 (笑)。
藤原 唐橋さんとくだらないノリあい、ふざけあい、みたいなのをしたのがすごく楽しかったんですよね。今回もそういうのをどんどん入れていきたい。本当にわけのわからない世界を表現することになると思うので、すごく好きな人もいれば気後れしちゃう人もいるかもしれないけど。そことは全く別のベクトルで、かわいい二人も届けます。応援できるというか、離れ離れになるだけで心配しちゃう、みたいなところを狙っていければいいかな。
唐橋 それに「演劇ってこんなにすごいんだよ」ということをお見せできる作品なんじゃないかと思うんです。初演でもそこは自信を持ってやっていて、辛かったけど本当に楽しかったので。
藤原 テーマは変わらず「純愛」「かわいい」。そんな弥次喜多をお見せできればと思います!

 
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唐橋充・藤原祐規

からはしみつる〇福島県出身。俳優、イラストレーターとしても活躍中。早稲田大学演劇研究会・劇団「Cretan Crete」(2002年解散)に在籍し、俳優として活動を始める。主な出演作品は、ドラマ『仮面ライダー555』(EX)『鉄神ガンライザーNEO』(テレビ岩手)、舞台『最遊記歌劇伝』シリーズ『舞台「青の祓魔師」京都紅蓮篇』中屋敷法仁リーディングドラマ『ぼくらが非情の大河をくだる時ー新宿薔薇戦争ー』少年社中『ネバーランド』など。
 
ふじわらゆうき〇三重県出身。俳優、声優として舞台、アニメ、ゲームで活躍中。主な出演作品は、舞台『最遊記歌劇伝』シリーズ舞台『PERSONA3 the Weird Masquerade』シリーズ『Club SLAZY』シリーズ『叫べども叫べども、この夜の涯て』『インフェルノ』『バカフキ!』プロペラ犬×時速246億 SPECIALコラボ公演『ハッピーセット』『極上文學』シリーズ、アニメ『CHAOS;CHILD』『アイドル事変』など。今年9月にはミュージカル「しゃばけ」弐に出演が決定している。
 

〈公演情報〉
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おん・すてーじ『真夜中の弥次さん喜多さん』双(ふたつ)
原作◇しりあがり寿
作・演出◇川尻恵太(SUGARABOY)
出演◇唐橋充 藤原祐規 愛原実花/松本寛也 岡田あがさ
松本祐一 古谷大和 足立英昭 石田隼 田代哲哉
福井将太/加藤良輔 米原幸佑
●6/21〜25◎全労済ホール/スペースゼロ
〈料金〉グリーン席10,800円 指定席7,500円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉CLIE 03-6379-2051
http://www.clie.asia/on_yajikita/




【取材・文/中川實穂 撮影/山崎伸康】




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名作に若き俳優たちが挑む!『あたっくNo.1』 高野洸・岩谷翔吾(THE RAMPAGE)・藤原樹(THE RAMPAGE)インタビュー

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2001年に初演され、瞬く間に多くのファンを魅了した方南ぐみの舞台『あたっくNo.1』。脚本・演出の樫田正剛の伯父が、戦地に向かう潜水艦内で書き綴った日記に着想を得たという作品で、樫田の代表作として、幾度となく再演を重ねてきた。今回は、新キャストを交えた11名によって、6月2日(金)から11日(日)まで銀座の博品館劇場で上演される。
役者陣はフレッシュな顔ぶれが並ぶ。『チア男子!!』や『スタミュ』など話題作に事欠かない高野洸、舞台初出演になる「THE RAMPAGE」の岩谷翔吾と藤原樹、劇団プレステージの太田将熙、劇団Patchの近藤頌利、また戸谷公人、橋本真一、諒太郎といった若手で勢いのある役者たちが、潜水艦の乗組員を演じる。さらに、味のある演技で定評のある扉座の岡森諦、自らの作品では脚本・演出も務める水谷あつし、THE CONVOYで卓抜なダンスを披露する瀬下尚人が、上官として脇を支える。

【あらすじ】
「見送る者は無言の自然のみ。行く先は何処ぞ…」。1941年11月18日。男たちは行き先も目的も告げられることなく潜水艦伊18号に乗艦した。祖国を離れた2日後、艦長が全員に告げる。行き先はハワイ真珠湾。敵はアメリカ。「敵に不足なし」艦内に若者たちの咆哮が爆音と共に鳴り響く。男たちの青春が今ここに炸裂する──。

豪華俳優陣で演じるこの感動的な作品について、キャストの高野洸、岩谷翔吾、藤原樹が、稽古で忙しい合間に熱く語ってくれた。

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岩谷翔吾・藤原樹・高野洸

樫田正剛さんの熱意に必死で喰らいついていく
 
──いよいよ6月2日に初日が開きます。ここまでの稽古の手応えを。
高野 作・演出の樫田正剛さんが熱意を持って演出してくださっているので、僕らはそれに必死についていって、それ以上のものを出せるように頑張っています。全員にこの舞台を成功させたいという想いがあるので、毎日とても熱い稽古で、楽しみつつも、緊張感をもって稽古をさせていただいています。
藤原 僕は初舞台で、普段はパフォーマーなので演技は初めてになります。本稽古前のプレ稽古から参加させていただいて、とにかく樫田さんのおっしゃることを吸収し続けました。それに応えられるように、自分にできる最大限の意識を演技に集中して、他の方々の熱意に負けない気持ちで、稽古をやらせていただいています。
岩谷 僕も初舞台です。わからないことばかりですから、僕と樹は気合いで歯を食いしばって頑張ることしかできない。体育会系の稽古なので、とにかく負けないように必死に食らいついていきたいという気持ちでいっぱいです。プレ稽古をさせていただいた時も、体ひとつでぶつかっていくので、あまりに激しすぎて、1メートルぐらい鼻水が(笑)出ました。涙もとめどなく出てきて、涙と鼻水でぐちょぐちょになりながら、感情を爆発させる稽古をしていました。
──その『あたっくNo.1』について、持っていた印象は?
高野 初めて台本を読んだ時に、凄まじい作品だなと。今回、関わることができて幸せです。これまであまり知らなかった戦争のことや、真珠湾に向かう潜水艦のことを知ることができて、こんな切迫した人生もあったのかと驚き、とても感動して、僕も頑張らなくてはと思いました。
藤原 この舞台は、自分たちの先輩である「EXILE TRIBE」のみなさんも多く出られている舞台だったので、いつかこの作品に出たいという気持ちがありました。そういう意味では、『あたっくNo.1』は「EXILE TRIBE」の登竜門に近い作品になっていると思いますし、「THE RAMPAGE」から僕と翔吾さんが参加できることは嬉しいです。
岩谷 僕たちの先輩であるEXILEの方たちから、「『あたっくNo.1』はやばいよ」と何回も聞いていました。僕は、2013年と2015年に実際に観させていただいたのですが、観劇しながら泣くという体験は、この作品が初めてでした。ものすごく感情移入して、1941年の潜水艦に入り込んだ気分になるほどリアルな作品だと思いました。今回この作品に携われてテンションが最高潮になっています。
──2001年に初演、その後何度も再演を繰り返す人気作で、書籍化もされています。本当に多くの方に観ていただいている作品ですね。
高野 これまでの方々が成功されているので、プレッシャーがあります(笑)。それを超えられるように頑張って、「今回も観てよかった」と言ってくれる方がいらっしゃったら嬉しいです。『あたっくNo.1』という、ずっと受け継がれる作品に携われる幸せをひしひしと噛み締めながら、これからも大事にしてもらえる素晴らしい舞台にしたいです。
藤原 今回で100公演目を迎えるそうです。記念すべき舞台を僕たちが演じさせていただけるのはありがたいですね。洸も言いましたが、錚々たる方々がやっていらっしゃるので、比べられるプレッシャーはありますが、前回を超えたいという気持ちでやっています。
岩谷 樫田さんが本当に大切にしてきた舞台で、すごい熱量で取り組んでいる姿勢を毎日見ていると、さらに燃えてきますし、もっともっと良いものにしたいなと思います。キャスト一同、みんな試行錯誤しながら、もがいてもがいて頑張っているので、「過去イチ」の『あたっくNo.1』にしたいですね。
 
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潜水艦に乗っているように朝から晩まで一緒の仲間
 
──樫田さんから具体的に学んだことはありますか。
高野 本当にたくさんあります。プレ稽古では早口言葉で演技をしました。そうすることで、感情の変化の付け方、樫田さんへの要望に応える姿勢、どの演技が正解だったのか少しずつわかってきました。ただ、本読みになると「読みが弱い」と言われる。そうして、台本と向き合って、一文字一文字を大事にしながら演技を磨いてきました。また、立ち稽古では、樫田さんが、視線の持って行き方や、視界の邪魔にならないような動きを細かく指導してくださいます。
藤原 樫田さんから、お客様に言葉で伝えることを意識しろと言われました。そこから自分の言葉で感情を伝えることにフォーカスして話すようになりました。僕たちはパフォーマーなので、今後の舞台の経験や、ダンスをするときに役立つと思っています。毎日成長させてもらっているし、今は役に立つことばかりですね。
岩谷 樫田さんはとても愛のある人で、稽古が終わるとご一緒にお食事させてもらうのですが、最初の時に、「この1ヶ月半を11人のメンバーで過ごすのだから、腹を割って話せ」と言っていただきました。実際に潜水艦に乗っているように、朝から晩までみんなと一緒で、稽古もみんなで頑張るという生活をしてきました。そのおかげで仲間意識がとても高くなりました。それだけではなくて、最初に来たらトイレ掃除をするとか、稽古場への意識も変わりました。芝居以前の人として生きる姿勢を教えてくださいます。
──それぞれ、役への取り組み方を教えてください。
高野 上官に対するときは姿勢をきちっとするなど、軍人としての基本をまず自分の中に叩き込む必要があるので、1941年の軍人の生き方を、どんどん勉強して取り込んでいけたらいいなと思っています。上官の不条理な命令に反対意見を言うような場合でも、潜水艦の環境を変えたい、日本を変えたいという強い意思を持っているような、それを個性として前面に出せたらと思っています。
藤原 例えば、この物語では勝杜という人物が出てきます。勝杜は樫田さんの伯父さんがモデルで、『あたっくNo.1』は、その方の書いた日記を元に作られています。この人物はめちゃくちゃ明るくて、お調子者で、人懐っこい性格です。下士官と上官の中間の立場で、下士官には話しかけて可愛がるし、上官からは可愛がられるという存在です。実はこの物語に出てくる人物は、そのほとんどが実在の人物がモデルになっていますので、その方々に失礼の無いように自分を高めていければと思っています。
岩谷 実は稽古が始まる前に、樹と2人で『あたっくNo.1』の舞台になった広島の呉や、横川一等兵のモデルとなった方の出身地である鳥取に行きました。潜水艦を見たり、資料館に通ったり、当時の琴浦はどんなところなのか、肌で感じて役を膨らませていきました。僕と樹はとにかく今は、樫田さんの指導にがむしゃらに食らいついて、頭がパンクするぐらい考え抜くことしかできないので、体ひとつで戦いながら役を作っていけたらと思います。

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高校の同級生2人が東京で同じ仕事で再会して
 
──みなさんは年齢も近いですが、お互いにどのような印象を持っていますか。
高野 樹とは福岡で同級生だったんです。彼は高校2年ぐらいで東京に上京しましたが、それまではずっと仲の良い集団で、食堂で昼食を一緒に食べていました。あまり喋らなくて静かだけど安心感があります。一緒にいると心地いいんです。同じ舞台に出るので楽しみにしていましたが、仕事の時は目つきが違いますね。さすがだなと思います。これからもお互い高めあっていけたらいいなと。岩谷くんはダンスやっている時と雰囲気が違って、ミュージックビデオを観てすごいなとびっくりしました。
岩谷 まさか?観てくれたんだ(笑)。
高野 明るくてまっすぐという印象です。2人からは『あたっくNo.1』に対しての熱意を強く感じますね。
藤原 洸が言ったとおり、福岡の学校では休み時間もずっと一緒にいるぐらい仲が良かったんです。何年か経て、東京で一緒に仕事をしているのは運命のようで不思議な感じがしますね。洸も芸能界で活動しているから刺激をもらえる存在です。僕は「THE RAMPAGE」をやっていますが、洸はいろいろな舞台で活動したり、Dream5というグループでダンサーをしていたこともあったので、会えばダンスや演技の話になるんです。これからも一緒にキャリアを積んで上達していきたいし、刺激しあえる関係でいたいですね。翔吾さんとは小学生の時に「EXPG(EXILE PROFESSIONAL GYM)」で、EXILEのサポートダンサーとして一緒に踊っていました。翔吾さんはすごく真面目でまっすぐなので、軍人という役に合っていますね。
岩谷 なんか照れ臭いな(笑)。もともと、樹から洸は同級生だと聞いて、会うのを楽しみにしていました。プレ稽古で一緒になった時に、僕と樹は、大声を出すと次の日には声が枯れてしまうんです。でも洸はへっちゃらで稽古場に現れる。喉も強くて、さらっと器用にセリフをこなすので、すごいなと思っています。樹とは長い付き合いなので、改めて言葉にするのは恥ずかしい(笑)。潜水艦の乗組員は上下関係なく親しいという事なので、プライベートからお互いの関係性が出来上がっていることで、演じることもやりやすいし、遠慮なく意見を言い合える。樹は普段は無口ですが、役に入ると結構おちゃらけで、正反対だから驚いて見ています(笑)。
藤原 (笑)。

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プレッシャーに負けず「過去イチ」と言われる舞台に!

──藤原さんと岩谷さんは、EXILE TRIBEの「THE RAMPAGE」で活動していますが、これまでの経験は活きていますか。
岩谷 パフォーマーをしていてよかったのは最初のシーンですね。スローで走るシーンがあって、そこはダンス的な要素があるので、リズムや間の詰め方がわかるので、胸を張って誰よりも負けねえぞと堂々と動いています(笑)。それから、『あたっくNo.1』の稽古を少しお休みして、「THE RAMPAGE」としてライブをしたことがあったのですが、その時に稽古で培った表現が、ライブの中に自然と活かされていてびっくりしました。『あたっくNo.1』の稽古で気付かされたことは、「THE RAMPAGE」の活動にも確実に活きています。
藤原 「THE RAMPAGE」は2014年に結成されて、そこから3年間かけてようやくメジャーデビューにたどり着きました。その中で、全国をパフォーマンスして回る武者修行やチーム力を上げるための強化合宿もあったり、きつい思いをたくさんしながら、いろいろな試練や壁をみんなで乗り越えてきました。この『あたっくNo.1』の稽古は、先輩方にも「人生で一番きつくて、一番追い込まれる」と聞かされていた通り、精神的に追い込まれますし、たくさんのことを考えなくてはいけない。ただ、「THE RAMPAGE」で乗り越えてきた経験があるので、自分を信じて頑張ろうと思えるんです。
──高野さんは2人を見ていかがですか。ご自分もこれまでの舞台経験は今回の舞台でも活かされていますか。
高野 僕は、プライドをぜんぶ捨てて、樫田さんがおっしゃってくださることを全部吸収しするようにしていますが、2人もそれは同じで、例えばダンサーの方の中には、お芝居でもキレに重点を置いてかっこよく動く人もいますが、樹と岩谷くんはダンサーのかっこよさを捨てて、普通に人間らしい動きをするんです。最初のダンスのシーンはびっくりすると思いますよ。だから僕も余計なものをかなぐり捨てて、2人に仕切ってもらっています(笑)。
──博品館劇場は歴史ある劇場です。そこにこの若さで真ん中に立つことは、とてもすごいことだと思いますが?
高野 僕は19歳ですが、年齢を気にせず、先輩方にも負けたくないと思っています。同級生もいるし頑張るぞ!(笑)
藤原 初舞台で歴史ある博品館劇場に立てるのは、すごいことだなと感じています。そのぶん、もっと頑張らないといけないという無言のプレッシャーがありますね(笑)。
岩谷 あーだこーだ言わずに(笑)、ただ真っ直ぐやるしかないよね!
──最後に公演への意気込みをぜひ。
高野 みんなで素敵な舞台を作り上げられる座組みだと思っているので、最後までしっかり樫田さんについていきたいです。『あたっくNo.1』を知っている方にも、すごかったと言っていただけるように、立派に役を生きていけたらと思います。
藤原 今までやってこられた「EXILE TRIBE」の先輩方に負けない、恥じない演技をしたいですね。樫田さんの指導に食らいついて、「過去イチ」と言われる舞台を作れるように全力で頑張りたいです。
岩谷 『あたっくNo.1』という素晴らしい作品に恥じない舞台にしたいです。取り組む姿勢を含めて、稽古は厳しくもありますが、愛があるこのカンパニーで、全員で一丸となって素敵な舞台にできたらと思っています。
 
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 岩谷翔吾・藤原樹・高野洸
 
たかのあきら○1997年生まれ。福岡県出身。2009年、NHK教育『天才てれびくんMAX』が開催したオーディションに合格し、Dream5のメンバーとなる。2016年、『フライングパイレーツ〜ネバーランド漂流記〜featuring GUY'S』で初舞台。『ROCK MUSICAL BLEACH 〜もうひとつの地上〜』、Live Performance Stage『チア男子!!』、ミュージカル『スタミュ』などに出演。

ふじわらいつき○1997年生まれ。福岡県出身。2011年から2013年まで、GENERATIONSのサポートメンバーとして活動。現在「THE RAMPAGE from EXILE TRIBE」のメンバー。今作が初舞台となる。
 
いわやしょうご○1997年生まれ。大阪府出身。2011年から2013年、GENERATIONSのサポートメンバーとして活動。現在「THE RAMPAGE from EXILE TRIBE」のメンバー。2016年、ミュージックビデオ「GENERATIONS from EXILE TRIBE『AGEHA』」、映画『HiGH&LOW THE MOVIE』に出演。今作が初舞台になる。
 

〈公演情報〉
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方南ぐみ企画公演『あたっくNo.1』
脚本・演出◇樫田正剛 
音楽◇三沢またろう
出演◇岩谷翔吾 太田将煕 岡森諦 近藤頌利 瀬下尚人 高野洸 戸谷公人
橋本真一 藤原樹 水谷あつし 諒太郎(50音順)
●6/2(金)〜11(日)◎博品館劇場
〈料金〉¥6,500(全席指定・税込)
〈お問い合せ〉方南ぐみ info@2017attackno1.info
 


【取材・文・撮影/竹下力】




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つかこうへい初期の傑作『郵便屋さんちょっと2017 P.S. I Love You』待望の再演!  山中崇史インタビュー

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つかこうへい七回忌にあたった昨年、横内謙介が上演台本・演出を手がけて好評を博した扉座公演『郵便屋さんちょっと』が、1年の時を経て『郵便屋さんちょっと2017 P.S. I Love You』となって帰ってくる。6月21日〜25日は紀伊國屋ホール、7月2日には横内謙介の地元、厚木市文化会館 大ホールでも公演を行う。

原作の『郵便屋さんちょっと』は、つか戯曲としては初期のもので、上演される機会も少なかったこの作品を、つかを敬愛する横内が、現代日本を映し込みながら見事に甦らせた。
物語は、まだ郵便局が国営の時代、民営化の波に対抗しながら公僕としてがんばる郵便配達員たちの、可笑しくも愛おしい生き様を描いている。
その舞台で、ロサンゼルス帰りの郵便局長、ジョン・センジロウをパワフルに演じて好評を博し、今回も主役をつとめる山中崇史。彼が再演への抱負を語った「えんぶ6月号」のインタビューを、別バージョンの写真とともにご紹介する。

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苦しんだからこそ待っていた再演!

──山中さんにとって、つかこうへいという存在は?
僕にとっては雲の上の人でした。演劇をはじめた頃、先輩たちは皆つかさんに憧れていて、僕はよく知らないまま若者演劇を代表する表現だからという感じで、つかさんの芝居を真似て演じたりしていたんです。一度だけ酒席でお会いする機会があって、それまで一緒に騒いでいた北区つかこうへい劇団の友人たちが、つかさんの姿を見ていっぺんに正座した。そのときのカリスマ性が記憶に残っています。
──そのつか作品に初演で初めて取り組んで、いかがでしたか?
僕はここ数年、舞台は1年に一度くらいしか出ていなかったんです。そのせいで演劇脳が退化したんじゃないかと思うくらい、この戯曲の世界に追いついていけなかった。最初は台詞量がすごいなとは思いましたが、そこまで大変だと思ってなくて。でも、いざ稽古になったら台詞が出てこないんです。つかさんの芝居は色々観ていたので、ああいうふうに言おうと思ってもそれができない。先輩たちが「ただ吐けばいいんだから」とか言ってくれるんですが、自分の中で腑に落ちてないので、ちゃんと吐けないんです。固まってしまって稽古にならなかった。
──でも本番では思い切りよく演じているように見えました。
追いついてなくてもとにかくやるしかなかったので。気持ちは100%できていたんですが、表現としては7,8割という感覚でした。ただ、初日の前なんか本当に幕が開けられるかというくらい悩んでいたのに、千穐楽が終わったら、またやりたいなと。再演の話もいただいてましたから、早くやりたいと。
──苦しんだ分だけ何かが残ったのでしょうね。
当時は、体に詰め込んだ台詞とか感情を全部見せるだけで1回1回が終わるという日々で、ただ走り抜けた感じでした。でも今、改めて台本を読んでいると、あれをやろうとかこれをやろうとか思いつくんです。初演では全然思いつかなかったのに。ですから再演できて本当によかったです(笑)。

横内さんの作品で人としてどうあるべきかを

──山中さんは扉座に入団して22年目ですが、早くから活躍していましたね。
最初に良い役をもらったのは代役で、横内さんの戯曲をマキノノゾミさんが演出した公演でした。当時は自信過剰で生意気でしたから、「よし、来たな!」と思って稽古に入ったら、何をやってもマキノさんから「ダメ、ダメ」と言われて、伸びていた鼻をポキンと折られました。今思えば自分勝手な芝居してたんだと思います。
──扉座にいたことで一番良かったのはどんなことですか?
僕は横内さんの作品をやっていたおかげで、人として間違ったほうに行かなかったと思ってるんです(笑)。人としてどうあるべきかを、演劇の中で教わっている気がします。横内さんの作品に書かれているような人間が好きで、人は好きなものになろうと自然に思いますから。
──横内さんは善悪含めて人間を愛して描きますね。その横内さんが師と仰ぐのがつかさんで、今それを演じているわけですが。
幸せだと思います。だからこそ初演は、応えきれていないという不甲斐なさがあったので、今度こそちゃんと応えたいです。いつも「つかさんの芝居はもっとカッコいいんだよ」と叱られていましたから、今度こそカッコよくやりたいですね。

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やまなかたかし○埼玉県出身。95年劇団扉座入団。以来、劇団の中心的俳優として活躍中。97〜99年まで東京FM『ミリオンナイツ』のDJをつとめる。テレビ朝日「相棒」シリーズの芹沢慶二役で人気になり、『相棒─劇場版─』(東映)シリーズにも出演。最近の出演作品は、TVはドラマスペシャル『検事の死命』(テレビ朝日)、映画は『王妃の館』(東映)など。最近の劇団公演は『アトムへの伝言』『いとしの儚〜100days Love〜』。


〈公演情報〉
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幻冬舎PRESENTS つかこうへい×扉座シリーズ第5弾
『郵便屋さんちょっと 2017  P.S. I Love You』
原作◇つかこうへい
上演台本・演出◇横内謙介
出演◇岡森諦 中原三千代 有馬自由  山中崇史 犬飼淳治 高橋麻理 ほか
●6/21〜25◎紀伊國屋ホール、
●7/2◎厚木市文化会館 大ホール
〈お問い合わせ〉劇団扉座 03-3221-0530(平日12:00〜18:00)
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