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レビュー速報

藤原樹(THE RAMPAGE)、高野洸、岩谷翔吾(THE RAMPAGE)らがフレッシュに生き生きと演じる『あたっくNo.1』上演中!

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熱い支持を受けて再演を繰り返している方南ぐみの人気舞台『あたっくNo.1』が、若いキャストたちによって、6月2日に幕を開けた。(11日まで博品館劇場にて) 
脚本・演出の樫田正剛の代表作で、彼の伯父が戦地に向かう潜水艦内で書き綴った日記から着想を得た作品だ。
役者陣は、人気ダンス&ボーカルグループTHE RAMPAGEの岩谷翔吾と藤原樹が舞台初出演、劇団プレステージの太田将煕、『チア男子!!』『スタミュ』などの高野洸、劇団Patchの近藤頌利、さらに戸谷公人、橋本真一、太田将煕、諒太郎など勢いのある若手たちが顔を並べる。また、初演から出演している扉座の岡森諦やベテラン水谷あつし、THE CONVOYの瀬下尚人が上官として脇を支えている。この合計11名の豪華メンツが舞台を所狭しと駆け巡り、熱気漂う舞台となっている。
 
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【あらすじ】
「見送る者は無言の自然のみ。行く先は何処ぞ…」。1941年11月18日。男たちは行き先も目的も告げられることなく広島の呉から潜水艦伊18号に乗艦した。祖国を離れた2日後、艦長が全員に告げる。行き先はハワイ真珠湾。敵はアメリカ。「敵に不足なし」艦内に若者たちの咆哮が爆音と共に鳴り響く。しかし、上層部は彼らにとある秘密を隠していた。その秘密を巡って彼らは争い葛藤をするのだが、時は残酷に迫ってきて…。

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舞台は息苦しくなるような狭い兵員室後部。潜水艦の後ろの甲板に位置しているこの場所で、ここに兵員は寝泊りをしている。中央には銀行の金庫室にあるような頑丈な扉、そして奥には質素な寝どころのみ。暗転後、上手の「イ−18」と書かれた箱にスポットライトが当たり、やがて、この舞台の着想を得たという、樫田の伯父の魂を宿した柏田勝杜兵曹長(藤原樹)が徐々に浮かび上がる。彼は白い軍服に身をまとい、箱に座って日記を読み上げる。そんな勝杜に、古瀬繁道中尉(橋本真一)が「日記なんて野暮な真似を」などと笑いながら話しかける。密閉された圧迫感のある空間を和ませる雰囲気が清々しい。そこから舞台が始まる。
 
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演劇キックのインタビューで(http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52027751.html)、岩谷翔吾が最初のシーンについて「ダンス的な要素がある」と語っていたように、まるでスローモーションのように走る動作をキャスト全員で魅せる。明日を信じて祖国に戻ろうという熱い決意をにじませたようなダンスで、特にパフォーマーとして活躍中の岩谷翔吾、藤原樹、THE CONVOYの瀬下尚人ら、やはりダンス巧者たちの動きには目を奪われる。
 
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そこから舞台は、横川寛模一等兵曹の誕生日会のために、彼の上司である古瀬の音頭で「Happy Birthday to You」の練習をしているシーンに変わる。もちろんアメリカは敵で英語は敵性語になっているので、日本語に意訳してあるのだが、「誕生日めでたい貴様」というおかしな歌詞や盆踊りのような音頭が、客席の笑いを誘う。

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この舞台は戦地に向かう船上での出来事を描く苛烈な作品だが、若い軍人たちは。まだリアルな戦争そのものからは遠く、10代や20代の放つ青さを全開していて、青春の輝きを感じさせてくれる。そこには、今の時代と少しも変わらない笑いがあり、涙があり、妄想も明日への夢もある。だが、大きな違いは、彼らは戦時下に生きていて、彼ら自身では解決できない葛藤があるということだ。
また、この作品を魅力的にしているのは、すべてのキャストが主人公で、それぞれの立場や考え方が詳細に描かれていることで、それによって俳優個々が光って見えるのだ。
 
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戸谷公人が演じる寺内中尉は力のない上司で、同じ中尉の古瀬が皆に愛されることが許せない。部下の北少尉に押されて出世しようと頑張るのだが、自分が選ばれると思っていた敵軍に打撃をお見舞いする任務に、古瀬の部下の横川が選ばれたとを知り、腹立たしく思う。そんな屈折にとらわれていた寺内が、次第に仲間への思いを変化させていく様は泣かせる。

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太田将煕は寺内の部下の北吾一少尉。軍人らしく上下関係を重視するのだが、寺内の曖昧で弱気な態度が気にいらない。そこで必死に上官らしく振舞ってくれと懇願し、考えをめぐらしたりする。太田はそんな北の若さゆえの直情と、当時の上官・部下に存在する義理と人情の世界を誠実に演じてみせる。
 
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古瀬繁道中尉の橋本真一は誰からも愛される人間を、自然に熱く演じる。古瀬は、部下の横川だけでなく、自身も「小ちゃい潜水艦」に乗り込むこと、それが死地への片道切符の旅であることを皆に隠している。そして国のためだと言い聞かせた覚悟があるからこそ、笑顔を振りまき、誰よりも優しく接する。そんな内心の諦念を見せることない古瀬の明るさが胸に迫る。

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二等主計兵曹の永井実を演じる近藤頌利は、コメディーリリーフ的な存在として場面を賑わせる。彼はコックであることを卑しく思い、自分も爆撃に参加したいという思いがある。また男性しか愛せない彼が、仲間たちを和ませるために、筋肉質な身体を使った裸エプロンなどで笑わせる姿は切ない。

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諒太郎は軍医大尉の村松秀明で、潜水艦内の情報を全て把握したうえで、彼らの悲劇を見つめる重要な役割を果たしている。軍医として皆の健康状態をチェックしているのだが、実は古瀬と横川の健康状態が一番大切で、それに葛藤を感じる彼の、人間らしい悲しみが背中から浮かび上がってくる。

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高野洸は一等兵曹の二本柳肇、知的で合理主義で、平等主義を体現したような芯の強い人間だ。日本の国力ではアメリカに勝てないと現実を訴え、潜水艦内ではすべての兵員が平等ではないかと説く。いわば兵員たちの心の内を一身に担い、同時に客席や現代の人々の戦争観を背負ったような存在だ。高野は、その大役をシャープな身のこなしと豊かな感情表現で演じきる。劇中で上官と取っ組み合いをする場面など、その本気度がリアルに迫って恐いほどだ。
 
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岡森諦は主計兵曹長の渡久保権太。コック長の役割でありつつ父性を感じさせる役どころで、皆をまとめ、また極限状態にある兵員に人間としての尊厳を失わせないように諭し続ける。初演から演じているだけあって、登場するだけで安心感がある。時にはおっちょこちょいで笑わせ、時には老年の夢を語り泣かせるなど、この作品全体を熟知しての演技が圧巻だ。
 
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水谷あつしは整備兵曹長の宇津木真。整備士として艦内を見回っているのだが、どこか間が抜けていて、お茶目といってもいい役柄だ。誰より歌が下手くそで、誰よりも状況が把握できないのだが、それゆえのホッとさせる部分と可笑しさを巧みに演じてみせる。
 
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瀬下尚人は大滝鉄男少尉で、元は陸軍や海軍という表舞台で活躍していたことで、潜水艦内の兵員を「ドン亀」呼ばわりする。この戦争に諦念を感じているやさぐれた存在なのだが、兵員たちの熱い息吹に触れることで、次第に潜水艦の役割に目覚めていく。その変貌ぶりをいぶし銀のような演技力で見せてくれる。
 
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そして初舞台の2人。THE RAMPAGEの岩谷翔吾は横川寛模一等兵曹を演じて、初舞台とはまったく感じさせない生き生きした存在感がある。「小ちゃい潜水艦」に乗って敵地へ乗り込む覚悟を持った彼は、丸刈りの頭で、胸を張って声を出し、はち切れんばかりの笑顔をいつも忘れない。その明るさと強さが、観るものの心に迫り、最後にとてつもないカタルシスをもたらすのだ。

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同じくTHE RAMPAGEの藤原樹は柏田勝杜兵曹長を演じていて、語り部役でもあり、仲間と仲間をつなぐ存在として、ある意味ではこの舞台のすべてを表現してみせる。時には10代の若者らしいたわいのない妄想で笑いを取り、泣き、怒り、悲しみを、ダンスとセリフと表情で力強く訴えてくる。その姿には、1941年の開戦前夜の日本人の心情そのものが託されているような気さえして、胸が痛くなるのだ。
 
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作・演出の樫田正剛の脚本は、戦争を決して悲しみだけでは捉えていないように見える。反戦や非戦といった括りだけでは語れない、人間そのものにある業を、極限状態の中から丁寧にすくいながら、笑いに、涙に、怒りに変えて見せる。登場人物それぞれのキャラクターを、きちんとフォーカスしてみせる演出は見事で、人間個々の命の大切さを伝えてくるとともに、どんな状況でも勇気を忘れないで生きること、そして誰もが寄り添って生きることが希望だと訴えかけてくる。そのことで時代性を感じさせない新鮮な舞台として、明日も見えないような2017年の日本で生きる我々にも、ひたむきに生きる勇気を与えてくれるのだ。

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(注)ここから具体的な内容に触れている写真があります。事前に情報を入れたくない方は、観劇後の閲覧をお勧め致します。

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〈公演情報〉
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方南ぐみ企画公演『あたっくNo.1』
脚本・演出◇樫田正剛 
音楽◇三沢またろう
出演◇岩谷翔吾 太田将煕 岡森諦 近藤頌利 瀬下尚人 高野洸 戸谷公人
橋本真一 藤原樹 水谷あつし 諒太郎(50音順)
●6/2(金)〜11(日)◎博品館劇場
〈料金〉¥6,500(全席指定・税込)
〈お問い合せ〉方南ぐみ info@2017attackno1.info
 


【取材・文・撮影/竹下力】



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喜多村緑郎・河合雪之丞コンビで新派に新たな可能性を拓く意欲作! 妖しくも美しい『黒蜥蜴』開幕!

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喜多村緑郎と河合雪之丞の競演により、新たに新派版として誕生した舞台『黒蜥蜴』が、日本橋の三越劇場で開幕した(24日まで)。

名探偵明智小五郎と女盗賊黒蜥蜴の、華麗な対決と互いを好敵手とみなすが故の、複雑な心の交感を描いた江戸川乱歩の傑作小説『黒蜥蜴』。昭和初期のどこか妖しく耽美な世界観と、世界中に名探偵が活躍した時代の「探偵もの」ならではの醍醐味を併せ持つ作品として、今なお多くの人々から愛され続けている。これまでにも、舞台、映画、テレビドラマと、数多い上演・上映の歴史があり、美輪明宏がライフワークの1つとする三島由紀夫脚色版や、近年ではデビッド・ルヴォー演出によるバージョンが特に親しまれてきた。そんな作品に、今回、劇団新派が新たな脚本・演出による新派版『黒蜥蜴』で、新しい命を吹き込む舞台を創りあげている。

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【物語】
時は昭和初期。国宝級のダイヤ「クレオパトラの涙」を保有する宝石商岩瀬(田口守)は、心穏やかならぬ日々を過ごしていた。この世のすべての美しいものを所有したいと願う、稀代の女盗賊「黒蜥蜴」が、美しき1人娘早苗(春本由香)と「クレオパトラの涙」を狙っているというのだ。岩瀬は早苗の警護を、名探偵として誉高い明智小五郎(喜多村緑郎)に依頼する。
危機を逃れる為とは言え、高級ホテルに軟禁状態の早苗は、憂鬱を募らせていたが、そんな彼女の慰めは、社交界の花形である緑川夫人(河合雪之丞)の存在で、早苗から明智がホテルに来ていることを知らされた緑川夫人は、岩瀬の部屋を訪れ、名探偵である明智との出会いを喜びダンスに興じる。その一方で、こっそりと早苗を連れ出した緑川夫人は、素知らぬ顔で明智に互いに最も大切なものを賭けたポーカーを提案する。刺激的で挑戦的なゲームに乗った明智だったが、ついに賭けポーカーに敗れてしまう。そればかりか、警護していたはずの早苗がいない!
勝ち誇る緑川夫人。だがそんな彼女に明智は言い放つ。あなたこそが黒蜥蜴だと。
互いの知恵と、誇りを賭けた闘いは、黒蜥蜴の配下雨宮潤一(秋山真太郎)や、事件解決を目指す片桐刑事(永島敏行)をも巻き込み、騙し、騙される追跡劇を続けていく。そんな闘いの果てに明智小五郎と黒蜥蜴が見たものとは?

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舞台に接してまず感じるのは、新派によって新たに生まれたこの『黒蜥蜴』が、三越劇場という創立90年の歴史を持つ、古式ゆかしい伝統を感じさせる劇場全体を、そっくりそのまま作品の世界観としてある意味で利用し、ある意味で取り込んでいる見事さだ。
まず、近年の劇場内装では考えられない、三越劇場の装飾性豊かな壁や、扉をそっくりそのまま模した背景が舞台上にも飾られ、劇場全体を舞台世界の延長として感じることができる巧みな仕掛けが施されている。しかも、それら装置が、回り舞台の機構のない劇場で、人力で転換されることによって、舞台にスピード感を生んでいて、どこか金毘羅歌舞伎を思わせ、人の力、アナログの力を再認識させてくれる一助ともなった。
これは、如何にも江戸川乱歩の世界、作品の世界観に相応しい美学で、舞台横の扉から直接客席に出演者が出ることができる、三越劇場以外ではほぼお目にかかれない出入りを使った逃走劇や、客席の360度あらゆるところから登場する出演者たちの神出鬼没も面白い。この手腕は、劇場を知り尽くした脚色・演出の斎藤雅文の大きな功績と言えるだろう。

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しかも、作品の登場人物たちが繰り広げる殺陣や様式的な動き、また歌舞伎界から新派の世界に飛び込んだ喜多村緑郎と河合雪之丞コンビの特性を活かして、歌舞伎の所作までも取り入れて、トリッキーでアクロバティックで、かつ妖しいファンタジーに満ちた舞台には、娯楽性と耽美性を兼ね備えたロマンチシズムに溢れている。これは日本独自の美しさを表現し続けてきた新派の土台に、だからこそ花開いた目くるめく幻惑の世界で、まさにここにしかない江戸川乱歩、ここにしかない『黒蜥蜴』としての魅力に満ちている。
大正から昭和初期にかけての時代だからこそ生まれる独特の美を、ここまで表現できる劇団は今、そう多くない。その意味でも新派は、この挑戦で非常に大きな鉱脈を掘り当てた。この作品をきっかけに、古典はもちろん、明治時代にそもそも「旧派(歌舞伎)」に対する、文明開化の波と共に誕生した新しい演劇として台頭した「新派」の今後が、一層輝き始める予感を覚えた。

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その胎動を確かに感じさせたのが、明智小五郎の喜多村緑郎と、黒蜥蜴の河合雪之丞の存在であることは言うまでもない。喜多村の明智には、確かな様式美と端正な品位があって、この時代のインテリジェンスな男性特有の気障な仕草や立ち居振る舞いを、わざとらしさのかけらをも感じさせずに、スッキリと決めてくれる見事さがある。そのことが、ダンディを絵に描いたような「名探偵・明智小五郎」を十二分に具現化していて、当代の当たり役を引き当てた。現代の男優でこれだけのダンディズムを体現できる人材は数少なく、その意味でも貴重だ。

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対する黒蜥蜴の河合雪之丞も、女方が演じるならではの妖しさがこの役どころに打ってつけ。劇中、生い立ちや本名さえもが伏せられたままの「謎の女」である黒蜥蜴役には、こうしたこの世の者でない香りが実に似つかわしく、何よりもその美しさが役柄を支えている。喜多村との息もピッタリで、二人の丁々発止のやりとりと、息詰まる魂の交感が舞台を大いに盛り上げていて、最後の最後まで作品のカラーを貫いた様が光っている。二人が初めて取り組んだというタンゴを踊るシーンなど、みどころも多く、二人から目が離せない。

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物語の鍵ともなる令嬢早苗の春本由香は、劇団新派で活躍した故・春本泰男を祖父に、歌舞伎俳優の故・六世尾上松助を父に、人気若手歌舞伎俳優・尾上松也を兄に持つという、この世界のサラブレット。昨年9月に新派に入団以来、急速に成長している期待株らしく、劇中の時間を経るごとに、刻々と変化する早苗の境遇を、地に足のついた芝居でしっかりと表現している。もともとの個性にもクラシカルなものがあり、新派という水を得てますます大きく泳いでいってくれるだろう。期待したい。

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黒蜥蜴に人生の全てを捧げる雨宮潤一には、劇団EXILEの秋山真太郎が扮し、新派の世界に初参加の本人と役柄が上手くリンクしていて、これは配役の妙。硬質な美丈夫という持ち味も、ボクサーである役柄の背景によく合い、アクションシーンの鋭さと共に印象的な客演になった。

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そして、全体の語り部的役割も担う片桐刑事の永島敏行は、1人抜きんでた現実感があるのが、作品の求める存在としてぴたりと嵌まる。酸いも甘いも噛み分けた、いわゆる食えない男である片桐を、過度に笑いに走ることなくしたたかに表現したのはさすがベテランの味わい。作品の貴重なアクセントとなっている。

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他に、重要な役どころの伊藤みどり、田口守、児玉真二、小川絵莉、市村新吾などの確かな演技はもちろん、出演者すべてが転換やアクションなど、舞台全体を演じながら転がしていく様が素晴らしい。この作品が新派の新たなレパートリーとして、そしてこの三越劇場での定番公演となっていくことを期待したい、優れた舞台となっている。

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 【囲みインタビュー】

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春本由香、 河合雪之丞、喜多村緑郎、永島敏行、秋山真太郎
 
初日を控えた5月31日、通し舞台稽古を前に、喜多村緑郎、河合雪之丞、秋山真太郎、春本由香、永島敏行が囲み取材に応えて、公演への抱負を語った。

──初日を前にした、意気込みをお願い致します。
喜多村 明智小五郎役の喜多村緑郎でございます。このお芝居が決まってから、キャンペーンとか記者発表とか、たくさん色々していく中で「ご期待ください」という言葉をたくさん使ったんです。大体いつもの公演でも「ご期待ください」と申しますが、どこか心の中でその言葉に嘘はないか?と思ってしまったこともあるのですが、今回はもうそのまま言葉通り信じて頂いて結構でございます。大変面白いものになったと思っております。ちょっとハードル高くしちゃったかな?と(笑)思いますが、十分飛び越えられますので、是非劇場にいらっしゃって頂ければと思います。
河合 本当に大変です。役者もスタッフも含め、目の回るような大変な舞台でございますけれども、その分お客様に楽しんで頂けるという風に思っております。やはり我々出演者、スタッフが大変な思いをしている舞台というものは、それだけお客様に喜んで頂ける舞台が作り上げられているのだと思っておりますので、喜多村さんではございませんけれども、ご期待頂ければと思っております。

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春本 岩瀬早苗役をやらせて頂きます春本由香です。今回3度目の舞台になりまして、はじめてのことばかりで、色々と大変ですけれども、足を引っ張らずに頑張っていきたいと思いますので、どうぞ皆様劇場にお越しくださいませ。
秋山 雨宮潤一役をやらせて頂きます秋山真太郎です。新派初参加ということで、まさかこんなに体力を使うとは想像もしていなかったんですけれども、その分板の上で汗をかいているので、魅力的な舞台に仕上がっていると思います。あとは先輩方の教えを乞うて楽しく稽古で培ってきたものを、お客様に見て頂ければと思っております。
永島 銭形刑事役の…
喜多村 (笑)違う、違う。
永島 あ、違った?(笑)片桐刑事役の永島です。最近豊洲に最新の360度から見られる劇場が完成致しましたが、この三越劇場は90年以上の歴史があって、到底動かないのですが、逆にその三越劇場の90年の歴史がある劇場で、役者が360度から動き回って、お客様参加型の芝居に仕上がったのではないかなと思っております。絶叫マシンではありませんが(笑)、あっという間に終わる芝居になるのではないかな?と楽しみにしております。その分、老体に鞭打って(笑)、最後まで行けるかどうか、心配ですけれども、頑張りますのでよろしくお願いします。

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──今、雪之丞さんから「大変」という言葉が何度も聞かれましたが、皆さんお稽古場でご苦労された点は?
喜多村 もう数えきれないくらいです。初体験のこともありますし、歌舞伎時代にやっていたこともありますし、とにかく何でもありの世界なってしまいましたので、ずっと大変です。タンゴも踊りまして、それも初体験ですが、どこか日本舞踊にも通じるところがあるのを発見できたりとか、ちゃんこ鍋のようになんでも入っている舞台です。
河合 やっぱり新しいお芝居を作るということには大変な労力と体力がいるので、既存の作品をまた我々が勉強させて頂くのとは違った労力と体力がいりましたので、そういった意味での苦労はお稽古場からずっとありました。たぶん初日が開いてからも、千秋楽まであると思います。
春本 今までやってきた古典という作品とは違い、新たに作り上げていくものなので、どういう風に作り上げたらいいのかというところに苦労したのと、道具を使いながら動き回るのが…
喜多村 アクションあるものね。初アクション。
春本 はい、そこが大変でした。

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秋山
 僕も内容に触れてしまうので、ちょっと言えないのですが、初めて経験させて頂く所作がありましたので、そこが大変だったと言えば大変でした。そこは見て頂けたらおわかり頂けると思います。
永島 私もまさか歌舞伎のものを演じるとは思いませんでした。昭和初期の物語ですが、歌舞伎の所作が入ってくるとは思わなかったので(笑)、とてもそこが不安です。
喜多村 歌舞伎の所作+拳銃ですね、まぁ「だんまり」なんですけど。
永島 (秋山に)「だんまり」って言われてまずわからなかったもんな。
秋山 はい。
喜多村 ただ、ただ、だまっちゃうのかなと(笑)。でもそこは皆さんさすがで、とても初挑戦とは思えなくて素晴らしいです。歌舞伎俳優でも難しいものなので。是非観てください。

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──これまで演劇界でも広く親しまれてきた名作ですが、新派の皆さんで演じるならではの魅力や、見どころは?
喜多村 じっくり突っ込んで深くお芝居する場面もありますし、今までの新派の舞台にはない激しいアクションですとか、先ほども言った歌舞伎の所作とか、現代的なものと歌舞伎のちょっとした融合的なところなど、新派とは言わず、今までに見たことがない、でもクオリティの高い、ストーリー的にも深く感動できるものになったのではないかと思います。脚色・演出の斎藤雅文さんのおかげですね。道具然り、転換然り、登場人物のコスチューム然り、ビジュアル面でも楽しんで頂けると思います。おそらく賛否両論たくさんあると思いますし、「こんなの新派じゃない」というご意見なども出るだろうことは覚悟しているのですが、とにかく面白いものを作ろう!と言ってはじまったので、幅拾い年齢層の方々に観て頂きたいです。お子様でも楽しめますので。
──変装シーンもたくさんありますよね?
喜多村 多いです。僕は天知茂さんの明智小五郎のファンだったので、思いっきりイメージしてやっているのですが、変装シーンもケレン味もたっぷりです。その点もご期待頂ければ。
──黒蜥蜴役はいかがですか?
河合 もう大変で、私、大変しか言ってないね(笑)。もう怪我のないようにと願うばかりと言うくらい、走り回っていますので、あっちから出て、こっちから出てとやっておりまして、それは私に限らず皆さんそうなので、本当に永島さんがおっしやったように、どこから人が出てくるかわかりませんので、皆さんご注意ください(笑)。

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──女方さんの演じる黒蜥蜴の魅力はいかがですか?
永島 僕は刑事なんですけれども、下心はすごく持っている男なんです(笑)。職業柄それをなかなか出せないけれども、本当はものすごく憧れていて、1度は見たいと思っていて、それがすれ違い、すれ違いという中で会えないので、僕の中での妄想は(頭の上のまで手を広げて)こんなに大きくなっている刑事です。
秋山 僕は普段の舞台ではメイクをすることがほとんどなくて、メイクを見てもらっている時に雪之丞さんが楽屋に入ってこられて、女性が入ってきた!と思って、えっ誰!?と思ったら雪之丞さんで、最初全然気づかないくらいでびっくりしました。また板の上ではずっと愛し続ける役なので、是非そこも観て頂けると嬉しいです。
──では皆さんにメッセージを。
喜多村 三越劇場へ
全員 是非お越しください!

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〈公演情報〉 
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六月花形新派公演 
『黒蜥蜴』
原作◇江戸川乱歩  
脚色・演出◇齋藤雅文  
出演◇喜多村緑郎 河合雪之丞/秋山真太郎(劇団EXILE) 春本由香/永島敏行  他  
●6/1〜24◎三越劇場
〈料金〉9,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489、三越劇場:0120-03-9354



【取材・文・撮影/橘涼香】




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豊原功補が初の脚本・演出で落語を珠玉の舞台に! 芝居噺『名人長二』上演中!

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豊原功補の企画・脚本・演出・主演舞台、芝居噺『名人長二』が、5月25日から新宿・紀伊國屋ホールにて上演中だ(6月4日まで)。
モーパッサンの短編小説「親殺し」をベースに、現代落語の祖と言われる三遊亭圓朝が新聞連載した『名人長二』。その落語を、小泉今日子が企画製作を行う「明後日プロデュース」の第2弾として舞台化した作品である。
豊原功補の大好きな落語を題材に、念願かなっての舞台で、指物師長二と彼に関わる人間たちの生き様を描き出している。共演には高橋惠子、山本亨、舞台初出演となる森岡龍、さらにモロ師岡、梅沢昌代、花王おさむなどの個性溢れる役者たちが顔を揃えている。

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【あらすじ】
舞台は江戸時代後期(享和から安政の時代)、本所の〆切(現在の墨田区・スカイツリー周辺)に住む腕利きの指物師(机や箪笥といった家具を作る職人)で、産みの親知らずの堅物な長二〈豊原功補〉と、その弟子の兼松〈森岡龍〉は、札差(米を差配する分配業)の坂倉屋助七〈モロ師岡〉の依頼で仏壇を作る。これが見たことのない美しい作品で、長二は指物師として江戸中に名を轟かせることになる。その仏壇への対価の100両を元に、足の悪い兼松と長二に幼い頃からあったという背中の傷を癒すために湯河原に湯治に出かける。そこで長二は宿に住み込む湯河原の婆〈梅沢昌代〉によって、出生の秘密を知ることになる。そして、仏壇の一件以降、頻繁に指物を注文してくれ、好意を抱いてくれる両替商の亀甲屋幸兵衛〈山本亨〉とその妻・お柳〈高橋惠子〉が実の両親でないかと疑い、やがてあるきっかけで確信へと至る。そしてこの夫婦が自分を棄てた産みの親だと気付いた長二は、一言でいいから親を名乗ってくれと詰め寄る。しかし、頑なに認めようとしない亀甲屋夫婦に、ついに刃を向けてしまう。彼は、師匠の清兵衛親方〈モロ師岡〉や兼松と縁を切り、自ら死刑を望む覚悟で奉行所に自首する。そして南町奉行所の筒井和泉守〈山本亨〉が判決を下すのだが…。
 
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暗転後、スポットライトとともに、高座の紫色の座布団に着物姿で正座をして頭を下げた落語家が見える。そして顔をあげると、それが豊原功補であることがわかる。その鋭い眼差しと風格ある佇まいは、まるで天才的な人情噺家の古今亭志ん生が、彼の背中に憑依しているようで、それだけで会場に張り詰めた空気が満ちる。
そんな空気を和らげるように、彼はマクラ(本筋に入る前の前説のようなもの)を始め、この舞台のストーリーや人物の性格を笑いを交えながら解説する。そして、本筋に入る瞬間に豊原の高座が動き、さっと江戸時代の衣装を着た坂倉屋助七のモロ師岡が正座する高座に入れ替わり、そこから落語の世界、いわば劇中劇が始まっていく。そして狂言回しのように、モロ師岡が話し始める。この狂言回し的な役割は、次々と色々な役者に渡され、内面の独白や、ストーリー展開を説明する役割を果たす。
 
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美術(中根聡子)はシンプルだ。高座は3台ほどあり、これがパズルのように組み合わさり、場面を展開していく。また、天井から障子の桟を模したパネルが最大で5枚ほど降りて、長屋や寺、宿屋、竹藪、大店の奥座敷など場所を表現、パネルの後ろには映画館にあるようなスクリーンがあり、そこに当たるデリケートで美しい照明(倉本泰史)が天候や季節感を表してくれる。
小道具は、指物を表す箱形のもの以外は、落語のように扇子と手ぬぐいだけで表現、話の中に登場する食べ物(そば・つまみ)、飲み物(酒・タバコ)を扇子一本と所作で見せていく。その所作が全員みごとで、手練れの役者ばかりを揃えたキャストなので当たり前なのだが、初舞台だという森岡龍まできちんと見せてくれるのは、豊原の演出力に負うことが大きいだろう。
物語は、豊原が演劇キックのインタビューで(http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52027013.html)「群像劇」と言っているように、11人の役者が、ときには2役を兼ねながら17人の役を演じていくのだが、その役柄が演じ分けも含めて、それぞれぴたりと嵌まって、落語の「名人長二」の世界がリアルな演劇空間となって立ち上がる。

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主人公長二を演じる豊原功補が圧巻だ。気っ風が良くて、人情味に溢れ、優しさもあり、だが仕事にかけては一切の妥協がなく、頑ななまでの職人気質という、江戸前の良い男がよく似合う。そんな長二が、ふとしたことで産みの親が生きていることを知り、そこから彼の運命が急転回していくのだが、それからの長二=豊原功補は、静かな狂気さえ感じさせて、目が離せない。親と対峙し、ついには殺しに至る顛末は、歌舞伎の殺し場のようで美しささえ感じさせ、終盤のお白州の場にかけては、長二の愚直なまでの生き様と信念、それゆえの悲劇を、内面に熱を抱きながら淡々と演じきる。落語の語り部分も含めて入魂の演技で、豊原がどんなにこの物語を愛し、芝居噺として観客に見せたかったか、その情熱が全身から伝わって、鬼気迫るものさえ感じるほどだ。

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長二の弟子でお調子者の兼松は森岡龍。これが初舞台だというが、口跡がしっかりとしていて、思い切りの良い演技で、役割を堂々と果たしている。兼松は身分の低い出自で、足には古傷がありうまく歩けないのだが、そんな負の部分を見せずに、あっけらかんとしたたかに生きている。だがその明るさは、おそらく地を這うように生きてきた彼の人生の裏返しなのだろう。そんな彼の素顔が垣間見られるのは、亀甲屋の忘れ物のご馳走に喰らいつき、長二や手代萬助にとがめられる場面で、泣きながらも黙々と食べ物を口に運び続ける兼松の姿が切ない。 

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豪商の坂倉屋助七と長二の師匠清兵衛を演じ分けるモロ師岡は、坂倉屋では金持ちの傲慢さをのぞかせ、清兵衛では弟子を信じ守ろうとする人情味を見せる。どちらも長二の腕に惚れ、想い入れする江戸っ子気質の頑固な男で、粋と渋さを滲ませて、物語世界に厚みを加えている。

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板倉屋の丁稚の三吉と、先代の亀甲屋に出入りして、のちに金貸しになる茂二作を演じる菊池均也は、対照的な2つの役どころ。前者はどこかトンチンカンで笑いを誘うコメディーリリーフ的な役で、後者はドラマ展開の鍵を握る悪辣な金融業者。まさに陽と陰、2つの顔を鮮やかに演じ分ける。

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花王おさむも対照的な役だ。亀甲屋の菩提寺の和尚と出入りの鍼灸医で、和尚では長二を産みの親へと繋いでいく役割となり、鍼灸医では強請を行う悪徳医者として姿を現す。どちらも出番はあまり長くないのだが、物語を進める要として、花王ならではの大きな存在感を示す。

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清兵衛親方の息子恒太郎と、長二の幼馴染の繁蔵を演じるのは神農直隆。恒太郎は長二の兄弟子でもあって、父や友である長二を守る。また繁蔵は町奉行の筒井和泉守に仕える侍だが、その立場を支えに長二を救いたいと奔走する。いわばこの芝居に通奏低音で流れる「人情」を、誠実な風貌で体現してみせる。

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その真逆といってもいい役どころが亀甲屋の手代萬助で、演じるのは岩田和浩。身分の低い生まれにコンプレックスを抱いていて、同じ出自である兼松に悪意をぶつける。その暗い眼差しや憎悪を、岩田は巧みに表現して物語のスパイスになっている。

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牧野莉佳は助七の娘お島、のちに筒井和泉守の腰元島路となる役を演じる。ほんのりとした色香があり、大店で大事に育てられた娘ならではの無邪気さとともに、知性やユーモアも持っている良い女。筒井和泉守との掛け合いでは和ませるなど、この物語の明るい部分を担う。

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梅沢昌代は湯河原の宿の婆と、金貸し茂二作の妻おはるの2役で実力派の面目躍如、登場すると場面をさらう。長二の生い立ちを知る湯河原の婆は、とぼけた味の中に俗物の一面も覗かせ、だが憎めない人間くささがある。おはるは茂二作との腐れ縁に飽きている年増女で、どこか崩れた風情が色っぽい。2役ともいわば汚れ役なのだが、それゆえに女性の抱える業が逆に浮き立って見えるのはさすが。

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幸兵衛の妻であるお柳は高橋惠子。持ち前の大人の色香は、この物語の核心部分を背負うにふさわしいファムファタルぶり。惚れ惚れするほど美しい着物姿の内からエロスが滲み出る。子を棄てた母親の罪深さに苦しみ、夫との間で懊悩する姿は哀れを誘うが、同時に弱い人間の保身も見えて、母性と女の本能の間で引き裂かれるさまは、まさに女優・高橋惠子の真骨頂と言えよう。

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その夫、亀甲屋幸兵衛と、町奉行の筒井和泉守を演じる山本亨は、物語で言えば正反対の立場に位置する難しい2役だ。幸兵衛は赤子を見棄て、商売のためには裏取引も行い、金ですべてが解決できると思っている合理主義者だ。一方、町奉行の和泉守は、役職を超えて人間として長二と向き合い、法を逆手に取ってまで彼を生かす道を探ろうとする。幸兵衛の商売人としてのリアリストぶりから、打ってかわって、ロマンと人情に生きる町奉行の和泉守に変身する中で、ときにはユーモアを交えながら緩急をつけて演じ、主人公長二の狂気にも似た情念を正面から受け止める懐の深さで、作品を引き締める。

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豊原演出は、落語の表現方法を巧みに取り入れながら、シンプルで観客の想像力を掻き立てる舞台を作り上げている。外枠である語りと、長二の物語部分をシームレスに行き来し、現代的なテンポと江戸の市井の生活感を違和感なく織り交ぜながら、ぐいぐいと観客を引っ張っていく。
音楽のチョイスも洒落ていて、時折り入るジャズが緊迫感を表し、三味線の紫蘭まきの和洋折衷的な演奏と歌が江戸情緒を醸し出す。
また、豊原脚本は、圓朝とモーパッサンへの敬意を表しつつ、オリジナルなラストを用意していて、それは観客自身が答えを見つけ出さなくてはならないような、難しい問いを突きつけてくる。
筋を通し、信念を通して生きる長二。その不器用なまでの一徹さは、理想であると同時に、常人にはできない孤高の生き方でもある。その生き方を、親子という理屈では割り切れない間柄にまで貫こうとした長二。その果ての親殺しとその後の顛末は、無残だがどこか潔くもあり…。悲劇ではあるが、ラストシーンの兼松の姿とともに、清々しい後味が心に残る珠玉の舞台が出来上がった。
 

〈公演情報〉
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明後日プロデュースVol.2 
芝居噺『名人長二』
原案◇ギ・ド・モーパッサン「親殺し」
原作◇三遊亭圓朝「名人長二」 
企画・脚本・演出◇豊原功補
出演◇豊原功補 森岡龍/モロ師岡 梅沢昌代 花王おさむ/菊池均也 神農直隆 岩田和浩 牧野莉佳/山本亨 高橋惠子
●5/25〜6/4◎紀伊國屋ホール
〈料金〉6,800円(前売・当日共/全席指定/税込) 
〈お問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00)
 
【文/竹下力 撮影/アラカワヤスコ】





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堀井新太・黒島結菜らが演じる岩松了の最新作『少女ミウ』ザ・スズナリにて開幕!

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人間の暗部を独自の鋭い会話で描く作・演出家、岩松了。その最新作『少女ミウ』は、一家心中の生き残りとなった少女ミウをめぐる虚偽と真実についての青春群像劇。NHK連続テレビ小説『マッサン』などで注目を集める俳優・堀井新太ら10名の若手俳優たちが出演している。その公演が5月21日に、下北沢ザ・スズナリで開幕した。(6月4日まで)
そのレポートと堀井新太、黒島結菜、岩松了のコメントが届いた。

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【初日レポート】
 
21日に開幕した岩松了の新作、M&O playsプロデュース「少女ミウ」は、若手中心の俳優10名で繰り広げる青春群像劇。岩松が200席規模のザ・スズナリで作品を発表するのは6年ぶりとなる。タイトルロールのミウを期待の20歳・黒島結菜が、ミウに惹かれていくTVキャスター広沢役を24歳の堀井新太が演じている。
作品について予備知識がほぼなかった筆者の耳に、“ヒナンシジクイキ”“センリョウ”という語句が飛び込んできた。岩松が今回、東日本大震災をモチーフにしたことは大きな注目点であるだろう。“あの会社”の社員で賠償問題の責任者だった人物を父に持つ中学生のミウ(黒島)。6年前、母、妊娠中の姉とその夫、そしてミウの一家は「社会的な制裁」であるかのように避難指示区域に住んでいたが、父はその3ヶ月前に家族を残して失踪。またミウは、自分と同じ歳の異母姉妹がいることを知らされる。その少女が一家を訪れた日、家族はミウだけを残して心中する。そんな衝撃の幕開け。かくして少女ミウは隔離された場所から一人、社会という野へと放たれる。

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スズナリの小さな演技スペースを2段に分けて使い、一段降りるとそこは6年後のテレビ局である。とある番組が、震災被害者である2人の少女の復興への軌跡を長期間に渡って追うという企画を立て、その“2人の少女”こそ、ミウとあのときの少女・アオキユーコ(金澤美穂)であった。その番組の敏腕パーソナリティー・広沢(堀井)はやがて、2人の少女の間で揺れ動く。奥底にどこか野性的なものを感じさせながら純粋な処女性を放つミウと、やや鼻にかかった声や大人びた言動が蠱惑的な印象を与えるユーコ――二つで一つであるようで対照的な彼女たちの魅力に、広沢同様、観客も幻惑されてゆく。

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2段の舞台はそれぞれ、避難指示区域にあったかつてのミウの家とTV局(スタジオ、控え室)として使用。それらを分かつ灰色の幕は、硬質なシャッターを思わせる。場面もシームレスに入れ替わり、6年前と現在が行ったり来たり。なお6年前の場面は、新しいものから古いものへ時間が逆に流れている。そしてキャストの大半は、6年前と現在でそれぞれ別の2役を演じている。そんな少々トリッキーな作りは、まさにこの作品が描く“虚実”を表すにふさわしい。被災地の状況に対して真の実感を持てない首都圏、ドキュメンタリーとして出発するも徐々に練られたフェイクへと変化させていくメディアなど、現代の虚実にまつわる問題をビシッと突いてくる脚本でもある。
ミウとユーコ、そして広沢の三角関係が、全く別の男女の三角関係とリンクしている終盤の展開には痺れた。物語はメビウスの輪のように円環をなし、再び紡がれるだろう。虚から実、そしてまた虚へ。震災や原発といういつになくリアリティあるモチーフを用いて、岩松ならではのファンタジーに仕上がった。(取材・文:武田吏都)

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【コメント】
 
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堀井新太

(初日を迎えるにあたって)緊張していますけど、楽しみの方が強くて。稽古でやってきたことを思い切りやるしかないですね。ドラマ(「3人のパパ」)の撮影と並行して稽古していたのですが、ドラマの役とはとてもギャップのある大人の役なので、頭が良く見えるようにしないと(笑)。
稽古での岩松さんの“千本ノック”は、すごく楽しかったです。最初わからなかったことがわかってくるという、繰り返すことはそこに意味がありますね。例えば、「なぜここは机を触りながら台詞を言うんだろう?」と最初思っても、その仕草を何回も何回もやっていくと日常になってきて、そこに“居る”人になっていく。そういう新しい発見が常にどんどん出てくるのが面白かったです。
 
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黒島結菜
岩松さんの稽古では、“千本ノック”と呼ばれるように同じシーンを繰り返しやっていくんですけど、何回もやるうちに手とかちょっとビリビリしてきたり、今までなったことのない感覚になることが何回かありました。初めて体がそういう感じになったなっていう。考えなきゃいけないことが多くて頭もすごく使ったし、でも考えすぎてもわからなくなってしまうので、目の前のことをひとつひとつやっていけば、積み重ねで全体が見えてくるのかなと思いながらやっていました。そうして作り上げていったミウは、上手くつかめないとかいうことはなく、自分と離れているとか近いとか、そういうこともあまり気にしませんでした。今ミウを演じられて良かったなって、すごく思っています。

岩松了
この作品の脚本を執筆中に、別の仕事の取材で福島に行っていたんです。最初から温めていたというよりは、自分の生理的なものが福島に向かっていたのでごく自然に、こういう題材の話になっていきました。
若い俳優たちとやると、少しずつ良くなっていくのを目の当たりにできるのが楽しいから、本当は稽古があとひと月ぐらいあればいいなというぐらい。もしそれぐらいあれば、黒島さんや堀井くんに対しても今感じていることとはまた別のことを僕が感じ始めると思うし、そうなると人物像の輪郭がまた膨らんでくるから、やればやるだけ面白い座組みだろうなと思っているんですが。こういう座組で作るものについては、よくできたお菓子を「はい、どうぞ」と安全なところから差し出してもあまり意味ないなという感覚が僕の中にあります。そうではなく、自分の身を少し危険に晒したものを届けてみたい気持ちがあって、そうした作品になっているのではないでしょうか。

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〈公演情報〉
『少女ミウ』
作・演出◇岩松 了
出演◇堀井新太、黒島結菜
川口覚、富山えり子、金澤美穂、篠原悠伸、新名基浩、藤木修、
岩井七世、安澤千草
●5/21〜6/4◎ ザ・スズナリ
〈料金〉前売・当日共¥5,500 U-25 ¥3,500 (観劇時25歳以下対象・当日指定席券引換・枚数限定・要身分証明書・チケットぴあにて前売販売のみ取扱)
〈お問い合わせ〉 M&O plays 03-6427-9486(平日 11:00〜18:00)
http://morisk.com/plays/miu.html







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藤田富・高宗歩未らが現代に「愛」を問いかける。劇団アレン座第1回公演『空行』上演中!

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劇団アレン座(Allen suwaru)の旗揚げとなる公演『空行(そらいき)』が、5月18日に初日の幕を開けた。(29日まで東京・吉祥寺シアターにて)

はっぴぃはっぴぃどりーみんぐ〈はぴどり〉として活動してきた來河侑希、鈴木茉美が新たに結成した劇団で、骨太なストレートプレイで、今日の世界を視界に入れた社会派の舞台を、幻想的な美しさを織り込みながら、リアルな今日の問題として提出している。
 

キャストは若手俳優の藤田富、高宗歩未、永井理子や、実力派として知られる中西良太、近童弐吉、内田淳子、古屋隆太を客演に迎え、劇団員の來河侑希、栗田学武、普光院貴之が出演している。
作・演出は、『JYUKAI-DEN』『ホイッスル』などを手がけている鈴木茉美。 そして、舞台美術に、2013年度読売演劇大賞最優秀スタッフ賞受賞し、青年団、地点、サンプル、LUDENSなどで活躍する杉山至、照明に白井晃作品などを手がける齋藤茂雄といった凄腕スタッフが顔をならべている。


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【あらすじ】

その街は炭鉱だった。大きな何かと判別できない荘厳な塔のような機械がそびえ立つ古びた建物。石灰の匂いと白い埃、希望を求めて人々はほこりを巻きちらし炭鉱を探すために穴を掘り続けた。ある日、炭鉱と置屋のオーナーであるモトヤマが連れてきたのは、7歳の少女だった。「イチカです。何も知りません。色々教えてください」。少女は教えられた通りに言葉を発した。炭鉱夫たちは金を払い少女で自身を慰める。そして、少女はモトヤマの息子のヒロトと出会う。彼の読む物語を通して、イチカは世界を知って行く。彼女の持つ信念を通して、ヒロトは自分を知って行く。運命を受け入れる少女と、運命を壊したい少年の心は、どこに答えを見つけるのだろうか…。

 

杉山至の舞台装置が美しい。円形のサークルの床の真ん中に完成したパズルのピースのような切り込みの入ったスチール板がまっすぐ走り、それを囲むようにプラスチックのとても小さな白いパイプが、まるで海辺の砂のように広がっている。舞台奥には4つの移動するドア。戸板はスクリーンになっていて、印象的な言葉や、写真が映り、また影絵を作り出す仕掛けになっている。
舞台が始まる前は、中央には更紗のかかった塔がそびえ立っている。淡い緑色のような照明とSEの赤ん坊の笑い声がまじりあうと、異界に入り込んだような、どこか懐かしくて遠い場所に来たような感覚を覚える。そして暗転し、スポットライトとともに塔の下で寝そべっている2人の白い衣装を着た男女が浮かび上がる。それがヒロト(藤田富)とイチカ(高宗歩未)だ。

彼らが夢を見ているような会話をした後、更紗が落ちると、そびえ立つ鉄パイプで組み上げられた塔が屹立する。本棚のようになっている場所もあり、中央付近には窓がある。そこはとある街の炭鉱を無骨にイメージした場所でもあり、グロテスクな置屋も想像できる。また、7歳のヒロトとイチカのいたイノセントな場所も彷彿とさせる。答えはどこにもない。あるがままに感じることを許してくれるとても広々とした世界のように見える。
 

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そして物語が始まる。ヒロトは炭鉱主で置屋の胴元でもあるモトヤマ(中西良太)の息子。そこに母親に捨てられた7歳のイチカが置屋に連れてこられる。彼女は、炭鉱夫のヨシオカ(栗田学武)やマキノ(普光院貴之)など、男たちの欲望の対象として生きることになる。彼女の他にルリ(永井理子)もそうした存在だ。さらに、炭鉱夫を夫にしていたが、夫が亡くなり、置屋の主人になったミナコ(内田淳子)がいる。そこに様々な男たちがやってくる。炭鉱と癒着している政治家カトウ(近童弐吉)、カトウから金を巻き上げようとするフリージャーナリストのサメジマ(古屋隆太)、ハッピーマインドという慈善団体にいるタカギ(來河侑希)。彼らが織りなすストーリーは、ひたすら自己の欲望を満足させようとする男たちと、そのはけ口となって傷つく女性たちが絡み合いながら、グロテスクでありながら美しく静謐に進行していく。
 

ヒロトの藤田富は、イチカに影響を受けつつ自己を発見していくのだが、炭鉱夫の息子は炭鉱夫でしかないという負の現実に傷つき、やがて男としての欲望に染まっていく。無垢な少年が、次第に狂気を孕んでいく様を、悲しみを感じさせながら熱演していて、この作品の核となる存在を見事に果たしている。


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イチカの高宗歩未は、イノセントでありつつ、男の欲望の対象になることを厭わない。家族を救うためであり、その決意を感じさせる凛とした佇まいが美しい。イチカはヒロトによって色々な物語を知り、やがて「愛」という人間の本質を知り、そこから「すべてを赦す」というミューズのような役割を果たしていくのだが、その変化をセリフや表情で演じきってみせる。

ルリの永井理子は、イチカの友だちであり、男の欲望の対象であることに抵抗していく女性だ。そして闇雲に傷ついてしまうのだが、人間として戦いながらも負けてしまうという、この舞台での女性の「負の性」の部分をリアルに伝えてくる。

ミナコの内田淳子は、コメディエンヌ的存在で、女性であることをどこか諦めつつも、イチカやルリを癒していく。モトヤマとのやり取りで、金という即物的な、だからこそ、この作品に出てくる男たちの象徴のようなものを利用し、あわよくば寝首を搔こうとする姿など、根性と母としての強さを感じさせて頼もしい。


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 政治家カトウの近童弐吉は、金と女への欲望と、欺瞞と嘘をひたすら体現したような存在だ。ボランティア団体のハッピーマインドと手を組み、票を稼ごうと演説する姿は、現実の政治家たちのカリカチュアそのもので、今の日本の政治家を映し出してリアルに迫ってくる。 

フリージャーナリストの古屋隆太は、ただ外から見ているという周縁的な存在だ。どんな問題も決して踏み込むことはなく傍観者を決め込んでいる。舞台装置のサークルから踏み込まないでいる姿は、どんなに努力をしても良い結果が得られないという、諦めに似た閉塞感を抱える現代社会の病理のメタファーだ。彼はデジタルカメラを使って消費されていく女性を写すのだが、それは「男から見た女」という視線をそのまま表現する。


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ハッピーマインドの來河侑希は、妻も子供もいて文字通りハッピーな存在。慈善団体として置屋の状況が許せないのだが、その対立姿勢がひたすら暴力的で押し付けがましい。また彼は善人ぶって、やたらとニーチェを引用するのだが、ペダンチックで悪意でしかない善意を巧みに表現する。 

炭鉱夫の栗田学武や普光院貴之は、ひたすら男の欲望を加熱させていき、最後には暴発してしまう。その暴力的な様を、背筋が凍るほどスリリングな演技で見せてくれる。


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そして凄まじいばかりの演技力で存在したのは、置屋のモトヤマの中西良太だ。黒の中折れ帽子にストールを巻いてカッコいい佇まいだが、彼はすべてを金に換算することしかできない、即物的で欲望に身を委ねるストレートな存在だ。しかし、すべてを手に入れることができるはずなのに、妻、つまりヒロトの母親は、金も才能もない男と逃げていった。その寂しさを、よく通る声音と背中で語って見せる。ある意味では男のダンディズムで生きているのだが、だからこそ成長したヒロトとの出口の見えないやりとりは、男の親子にある独特なちぐはぐさを際立たせる。「すべての結論は運命的に決まっていて変えようがない」という諦念のようなものを纏うモトヤマはどこか虚しい。
 

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忘れてはならないのが、鈴木茉美の脚本と演出だ。ルリやイチカ、ヒロトは無垢な存在として白い衣装を身にまとい、欲望に生きる人々は普通の服というコントラストで、観客の感情移入しやすい空間をつくっている。さらに、ルリやイチカは、時折体の節々に紫や赤色のペインティングを施し、男の欲望に傷つく様を、あからさまではなく表現していて、彼女たちの悲しみのようなものが、まるで淡い色の花のようにそっと浮き上がる。

しかし、少女たちは一方的に虐げられているだけの存在ではない。男たちの差し出す金を破き捨てたり、それを折り紙さえ見立てて、笑い飛ばす。そんな生命力を感じさせる演出は、鈴木が女性であることと無縁ではない。

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象徴的なのは、塔に登ることができるのはルリとイチカだけであり、それ以外の役者は見上げるだけだ。特に男性陣はドアの開け閉めと出たり入ったりを繰り返す。その即物的な行為から救いとなる唯一の聖域が、塔なのだ。そこには誰も近づけない。また空を見渡せる窓はどこか開放的で安らぎがあり、そこに鈴木の慈しみや愛が表現されているのを感じる。だから観客は、ひたすら暴力的な男たちと、それを受け入れる女性という対立構造の中でも、神経をヒリヒリさせられるだけではなく、救いのようなものを感じて安心できるのではないだろうか。まるで海のさざ波を聞いているように、穏やかな気持ちさえ感じるのだ。

劇中に「愛は赦す」というニーチェの言葉が出てくる。それは、決して男だけが悪いわけではない、女性だけが正しいわけでもない、と宣言しているようであり、人間が生きることの業のようなものを浮かび上がらせる。この作品は、東南アジアのある国がモチーフになっているということだが、今現在も、世界を覆っている悲惨な現実は変わらず、その根源にある人間という存在の罪深さも変わらない。それでもあえて、「他者を愛することで他者を赦す」という、人間が辿り着くべき理想を観るものに訴えかけてくる。その誠実さに心を打たれるのだ。

 

〈公演情報〉
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劇団アレン座(Allen suwaru)第1回公演『空行』
脚本・演出◇鈴木茉美
出演◇藤田富 高宗歩未 中西良太 近童弐吉 内田淳子 古屋隆太 來河侑希  栗田学武 普光院貴之 ほか
●5/18〜29◎吉祥寺シアター
〈料金〉一般指定席5,500円 吉祥寺シアターシート(B席)4,500円 S席プレミアムシート7,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉0120-240-540(平日10:00〜18:00)
http://allen-co.com/soraiki/

 
 


【文/竹下力 写真提供/劇団アレン座(Allen suwaru)】




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