稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『江戸のマハラジャ』

レビュー速報

劇団公演では3年ぶりの新作書き下ろし、ナイロン100℃44th SESSION『ちょっと、まってください』開幕!

DFC_0019

来年25周年を迎える劇団ナイロン100℃、その第44回公演『ちょっと、まってください』が11月10日、下北沢 本多劇場にて開幕した。

『ちょっと、まってください』は、劇団公演としては3年ぶりの新作で、ナイロンファン待望の公演。三宅弘城、大倉孝二、みのすけ、犬山イヌコ、峯村リエ、村岡希美といった劇団の主力俳優が集結、水野美紀、遠藤雄弥、マギーという実力派客演陣が加わり、キャストをみるだけでも層の厚さに期待が高まる。
 
ここ数年、『グッドバイ』『8月の家族たち August:Osage County』『キネマと恋人』『陥没』などで、演劇賞を総なめにしている作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、自身のホームである劇団で、今自分が一番やりたいことを、KERA作品の神髄を表現出来る鉄人メンバーによって上演する本作品には、大きな注目が集まっている。

DFC_0088

物語は、どこの国かははっきりしないが、クラシカルな洋装に身を包んだ、裕福な家庭の居間から始まる。
金持ちの父親(三宅弘城)、母親(犬山イヌコ)、息子(遠藤雄弥)、娘(峯村リエ)、使用人(マギー)などが四方山話に花を咲かせる。
一方、屋外には宿無しの乞食の家族。その息子(大倉孝二)と娘(水野美紀)が、何やら込み入った話をしている。
全く環境の違う2つの家族の日常の中に、少しずつ入り込んで来る異物感。この2つの家族にどんな接点が生まれ交差してゆくのか……。

DFC_0251

物語が進んでいくに従い、登場人物達を隔てている区別の不安定さ、定義付けしようとすれば煙に撒かれるような感覚、傍観する観客の観点も、足下が揺らぐような不思議な感覚にとらわれる。

DFC_0976
 
KERAは、今公演の発表時には、別役実的な不条理喜劇を創りたいと述べていたが、別役作品へのパスティーシュもありながら、カフカ的なところもあり、だが、やはり唯一無二のケラリーノ・サンドロヴィッチの世界観が、そこにある。不条理な会話1つ1つに目を離せない密度があり、キャスト陣の技術の豊かさが堪能出来る作品だ。
時に笑い、時に困惑しながら行き先不明の航海を楽しんでほしい。

DFC_0867

公演初日を迎えて、劇団員・三宅弘城が以下のように語った。
「(初日を迎えるまでは)結構、切羽詰まっておりましたが、力を合わせて1つの作品を作り上げていくのは劇団ならではだなと思いました。今は無事に初日を迎えることができてホッとしています。(お客様が入り)どんな風にご覧になり、どんな風に笑いがくるのか、楽しみだったのですが、喜んで頂けた感じだったので良かったです。爆笑するタイプのものとまた違う面白さがある作品だと思いますので、是非、劇場に来て頂けたらと思います。来年劇団は25周年、自分が出る作品は『睾丸』(仮題)という作品なので、タイトルに負けないように頑張りたいと思います」 
初日の感想を安堵した様子で語り、来年25周年を迎える劇団への所感を述べた。

DFC_1047
DFC_0719
DFC_1465


〈公演情報〉
promotion photo
 
ナイロン100℃44th SESSION
『ちょっと、まってください』
作・演出◇ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演◇三宅弘城 大倉孝二 みのすけ 犬山イヌコ 峯村リエ 村岡希美 藤田秀世 廣川三憲 木乃江祐希 小園茉奈/水野美紀 遠藤雄弥 マギー
●東京公演/11/10〜12/3◎下北沢 本多劇場
●三重公演/12/6◎三重県総合文化センター 三重県文化会館 中ホール
●兵庫公演/12/9・10◎兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
●広島公演/12/12◎JMSアステールプラザ 大ホール
●北九州公演/12/16・17◎北九州芸術劇場 中劇場
●新潟公演/12/20◎りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
〈お問い合わせ〉キューブ 03-5485-2252(平日12時〜18時)
〈ナイロン100℃HP〉http://sillywalk.com/nylon_swp/
〈キューブHP〉http://www.cubeinc.co.jp


 
 
【資料提供/キューブ 撮影/桜井隆幸】




『えんぶ8号』
kick shop nikkan engeki 

古田新太、小池徹平らで伝説のカルト・ロック・ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』初日開幕!

DSC_4882
 
伝説のカルト・ロック・ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』が、11月7日、Zeppブルーシアター六本木で開幕した(12日まで)。このあとサンシャイン劇場公演を行い、東京公演ののちは北九州、仙台、松本、大阪と巡演、12月31日まで公演を行う。

世界中で観客を熱狂させるこのミュージカルの初演は1973年のロンドン。ロイヤル・コート・シアターにある小劇場のシアター・アップステアーズで、座席はわずか63席。しかし、チープで、セクシャルで、アナーキーで、グラム・ロックな音楽がきらめく舞台は瞬く間に大ヒット。イギリス・カンパニーを引き連れた日本初上陸は75年、同時期に映画化もされ、『ロッキー・ホラー・ショー』ブームが巻き起こり、以来、さまざまなカンパニーで上演され、今回は5年ぶりの上演となる。

DSC_4794

【あらすじ】
友人の結婚式の勢いに乗せられ、自分たちも婚約してしまったブラッド(小池徹平)とジャネット(ソニン)。ふたりは恩師に報告しようと、嵐の夜、車を走らせていた。しかしタイヤがパンク。助けを求めた彼らは、人里離れた荒野に建つ古い城にたどり着く。困り果てた二人の前に現れたのは、不気味な執事リフラフ(ISSA)と使用人のマジェンタ(上木彩矢)やコロンビア(アヴちゃん)たち。その異様な雰囲気に呑まれて戸惑う二人をそっちのけに、城の中ではノリノリのパーティーが始まる。
さらに、黒いガーター&ストッキング姿も妖艶な城の主・フランク“N”・フルター(古田新太)が登場。いかにも性倒錯者然の彼は、この城で秘密の実験をしている科学者であるという。その実験とは、人造人間を創り出すこと。まさにこの夜は、彼の輝かしい実験が最終段階を迎えようとしていたのだった…。

主人公のフランク・フルターに、2011年の劇団☆新感線版に引き続いてこの役をつとめる古田新太。演出は、いのうえひでのりからバトンを渡された河原雅彦。“ロッキー・フリーク”を自称してはばからない2人が新タッグを組む。
さらにキャスト陣として、ミュージカル界でも活躍目覚ましい小池徹平とソニン。抜群のダンスと歌唱力を誇るISSA。アーティストでもある上木彩矢。注目のバンド女王蜂から舞台初挑戦となるボーカルのアヴちゃん。新感線きっての肉体派吉田メタル。舞台・ドラマ・バラエティーと幅広く活躍する武田真治など、グラム・ロックの香りも濃厚な多彩な顔ぶれが集まった。 

DSC_4984

舞台はシンプルで、ピンクの極彩色の壁に映画でも話題になった半開きの唇がいたるところにプリントされている。サイケな雰囲気だ。化学室を模したのか、骸骨も吊り下げられている。舞台上段には生バンド。演奏は、女王蜂(ギターのひばりくん、ベースのやしちゃん、ドラムのルリちゃん)、キーボードのながしまみのりと大塚茜。時にはサックスで武田真治、ギターでROLLYが参加する。

公開されたシーンは、ブラッド(小池徹平)とジャネット(ソニン)が古い城にたどり着くところから始まる。車のトラブルがあって、ブラッドが電話を貸してくれと言うのだが…。
そんなことはお構いなしにショーが始まっていく。早速披露されるのが、ブラッド、リフラフ、ジャネット、マジェンタ、コロンビア、ファントムたち(東京ゲゲゲイ)、ナレーター(ROLLY)があの名曲「タイムワープ」を演奏して2人を歓迎する。

音楽監督のROLLYは、ロック色が強いグラム・ロックとインタビュー(参照サイト:http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52038268.html)で語っていたように、ソリッドで超がつくほどロッキン。キレのあるギターやサックス、叩きつけるようなキーボード、ベースラインは骨太でグルーヴィー、8ビートのドラム。思わずノリノリになることは確実だ。そこに乗っかるリフラフ(ISSA)のヘンテコな容姿と歌のギャップがかっこいい。
 
DSC_4868

そのあと、黒いガーター&ストッキングにモジャモジャ頭のフランク(古田新太)が登場、圧倒的なオーラで物語に君臨する。彼の下僕であるリフラフ、マジェンタ、コロンビア、ファントムたちがブラッドとジャネットの歓迎の挨拶をするのだが、その様子が胡散臭い。そして披露されるのが「スイート トランヴェスタイト」。フランクのシャンソン的な歌に強烈なドラムが乗っかる曲。曲の終盤では女王蜂のアヴちゃんのコロンビアがみせる。中性的な歌にめくるめくダンスと色とりどりのライトの洪水。グラム・ロックかく有るべしと言わんばかりだ。グラムといったら欠かせないのが、古今東西の歴史ある音楽がチープでノリのいい曲になることだ。オペラ、シャンソン、クラシック、それらはすべてロックの名の下に平等になってしまう。 

DSC_4959

そしてフランクが人造人間を作り出したので見てくれということになり…。生まれたのがロッキー・ホラー(吉田メタル)。金髪で筋骨隆々の彼が登場すると「ダモクレスの剣」「オトコにしてあげる」「熱いぜ青春」とギターがギュンギュン鳴る生演奏のロックナンバーが矢継ぎ早に続いて会場を盛り上げていく。スピード感が半端じゃない。そこに出て来て演奏するエディ役・武田真治のサックスのソロは鳥肌ものだ。そしてロックに欠かせない8や16を刻むリズムがかっこいい。
 
古田新太がペンライトや鳴り物を持ってきてほしいと語っていたように、ロックショーのように盛り上がれるステージ。最後は笑って帰ることができること間違いなしだ。
 
【囲みインタビュー】

DSC_4641
河原雅彦、武田真治、ソニン、古田新太、小池徹平、ISSA、ROLLY
 
この初日を前にプレス用にフォトコールと囲みインタビューが行われ、古田新太、小池徹平、ISSA、ソニン、武田真治、ROLLY、河原雅彦が登壇した。

──初日を迎えた気持ちを。
古田 とりあえず危険がいっぱいある舞台なので、怪我と風邪が流行っていますから喉に気をつけて。
小池 ミュージカルとしては尺が短いタイプの作品。ただし濃厚です。みなさんも汗だくで騒いでいただいたらなと。
ソニン 『ロッキー・ホラー・ショー』初参戦。これは、お客さんと一体型のミュージカルだと思っています。ライブでどう変化するのかとてもドキドキしています。

DSC_4655
 
ISSA こう見えても好青年役で、はちゃめちゃなミュージカルなので、僕らも楽しみながらやりたいと思います。
武田 こんなかっこいいミュージカルでかっこいいメンツと一緒に大晦日まで走り抜けられることを幸せに思います。
ROLLY 『ロッキー・ホラー・ショー』に参加させていただいて22年になりますが、今回は一番グラム・ロック度が高く、バンドが大活躍します。スピード感があってとにかく楽しめる舞台です。

DSC_4656
 
河原 バカバカしいことや、かっこいいことを、とても練習しました。ミュージカルよりも出し物だと思っているので、とにかく、出し物はお客さんが入ってもらって、お客さんの熱量が加わって、初めて完成なので、やっと見せられるという喜びでいっぱいです。
──稽古はどれくらいでしたか。
河原 1ヶ月半ですね。2時間ないお芝居なのに。
──座長の古田さんからご覧になって、チームとして初日を迎えた仕上がりは。
古田 みんな非常に真面目なメンバーなので信頼できますね。安心してフィーバーしていただきたいですね。

DSC_4651

──座長の古田さんについてはいかがですか。
武田 僕の出ないシーンで古田さんを観させていただいて、本物のフランクだと思いました。古田さんの2011年のバージョンも観ているので、今この人と一緒に舞台に立つというワクワク感でいっぱいです。
河原 稽古中に絶対本番でやっちゃいけないことをやるんです。それが見せられなくて残念。
古田 今、やれって言われたよ。
河原 やばいやばい(笑)。危険がいっぱいなのは古田さんのことです。

DSC_4650
──古田さんは『ロッキー・ホラー・ショー』がお芝居を志すきっかけだった。
古田 はい。もともとミュージカルをやろうと思ってこの世界に入ったんです。しかも『ロッキー・ホラー・ショー』みたいなおバカな作品をやりたいと思っていた。前回のROLLYさんと一緒にやった『ロッキー・ホラー・ショー』で、全然間違いなかったな、と思いました。こういう作品を新たなに作れないかなと思います。
──年内の公演は12月31日までです。体力的にはいかがですか。
古田 厳しいでしょ。昨日リハーサルで足がガクガクになっていましたからね。地方も回るので美味しいものを食べれば大丈夫ですけど。

DSC_4653
 
──古田さんはお酒を飲むんですよね。
古田 お酒はクールダウンするものなので、火照った体や上がったテンションを鎮めるために必要なお薬です。
──古田さんのお芝居と素のときは。
ソニン 楽しいですね。何が飛び出てくるかわからない。私とは人種が違うと思うぐらいたくさんの引き出しが出てくるのが楽しいです。
──楽しそうですね。
古田 楽しいほうが楽しくないより偉い。きついステージなので、なるべく楽しめるように、にこやかに朗らかに終わりたいですね。
──ここを見ていただきたいというポイントは。
古田 ソニンのおっぱいかな。

DSC_4652
 
ソニン やめてくださいよ。そんなプレッシャーかけるの。 
武田 これ本当なんですよ。
河原 クオリティーが高いおっぱいなんです。 
ソニン それを存分に活かしてもらう衣装だったり、ネタもありますので、惜しみなく出したいです。
古田 そこしかないのかい!
小池 フォローします。衣装がものすごく派手で早替えも大変なので、その辺の驚きは伝わるかなと思います。

DSC_4654

──衣装の着心地は。
古田 胸は暑いし、肩は寒いし、カツラは暑いし、足は寒いし大変です。風邪ひかないようにしないと。
ソニン 薄着の人が多いですからね。
──家から何か持って行ったらいいものはありますか。
古田 定番通りのグッズで遊ぼうと思っているので、ペンライト、それから新聞紙。英字新聞が良いとされていますが、日本の新聞で大丈夫です。鳴り物とか、色々あると思いますけど、劇場でも販売していますから、楽しみにしてください。目立ちたいと思う方は特殊なものを持ってきてくださいね。今日から『ロッキー・ホラー・ショー』が始まります。今度はいつやれるかわからないので、ぜひこの機会にきて一緒に暴れましょう。コスプレ大歓迎です。この間のハロウィンの衣装をしまってなかったら着て来てください。一緒に踊りましょう。

DSC_4643
 
〈公演情報〉
PARCO presents 
RICHARD O'BRIEN'S『ロッキー・ホラー・ショー』
脚本・作詞・作曲◇リチャード・オブライエン
演出◇河原雅彦
訳詞・音楽監督◇ROLLY
振付◇牧宗孝(MIKEY from 東京ゲゲゲイ)
出演◇古田新太 小池徹平 ISSA ソニン 上木彩矢 アヴちゃん(女王蜂) 吉田メタル 東京ゲゲゲイ(BOW・MARIE・YUYU・MIKU) 戸塚慎 若井龍也 佐藤マリン ROLLY 武田真治
演奏◇女王蜂(ひばりくん、やしちゃん、ルリちゃん)ながしまみのり、大塚茜

●11/7〜12◎Zeppブルーシアター六本木
〈料金〉11,000円 U-25チケット6,000円〈観劇時25歳以下対象・当日指定席引換・要身分証明書〉(全席指定・税込)
●11/16〜12/3◎サンシャイン劇場
〈料金〉S席11,000円 A席9,000円 U-25チケット6,000円〈観劇時25歳以下対象・当日指定席引換・要身分証明書〉(全席指定・税込)
●12/9・10◎北九州芸術劇場 大ホール
〈料金〉S席9,500円 A席7,000円 ユース5,000円〈24歳以下・枚数限定・要身分証提示〉 高校生チケット1,500円〈枚数限定・窓口前売りのみ取扱い・購入時/入場時用学生証提示〉(全席指定・税込)
●12/16・17◎仙台サンプラザホール
〈料金〉S席10,000円 A席8,500円 U25チケット5,500円(全席指定・税込)
●12/23・24◎まつもと市民芸術館 主ホール
〈料金〉S席9,500円 U18チケット7,000円(全席指定・税込)
●12/28〜31◎森ノ宮ピロティホール
〈料金〉12,500円(全席指定・税込)

〈お問い合わせ〉東京公演/パルコステージ 03-3477-5858(月〜土11:00〜19:00/日・祝11:00〜15:00)
〈公式HP〉http://www.parco-play.com/




【取材・文・撮影/竹下力】




『えんぶ8号』
kick shop nikkan engeki 

学園悪魔ファンタジーを360°円形ステージで上演! ミュージカル『魔界王子 devils and realist』the Second spirit 開幕!

s__MK16327

ミュージカル『魔界王子 devils and realist』the Second spiritが、新宿FACEにて、11月4日に開幕!好評上演中だ(12日まで)。

原作は人気作家の高殿円と彼女の原案を元に漫画化した雪広うたこの人気コミックの『魔界王子 devils and realist』で、舞台は昨年6月に初演が上演され、学園悪魔ファンタジーとキャッチーなミュージカルナンバー、さらに斬新でアナログな演出で話題となった。
 
初演と同じく、ウイリアム役には石渡真修、ダンタリオン役には鮎川太陽、ジル・ド・レイ役には碕理人、クロスビー牧師役には松本祐一、カミオ役には米原幸佑(特別出演)、ケヴィン役に田村良太、シトリー役に櫻井圭登、ミカエル役に山中健太など実力派の新キャストも加わり、演出にエムキチビートの元吉庸泰を招き、豪華布陣で第2弾に臨む。(※カミオ役の米原幸佑はスケジュールの都合によりゲネプロは欠席、代わりに市川耕大が出演している)

_MK15652_1

【あらすじ】

名門貴族、トワイニング家の跡継ぎであるウイリアム・トワイニング(石渡真修)。彼はひょんなことから悪魔・ダンタリオン(鮎川太陽)を召喚してしまう。魔界の皇帝ルシファーが眠りにつき、その代理の王の候補者であるダンタリオン。そして、実は古代イスラエルの王ソロモン血を引き、魔界の代理王を選ぶ権利を持つ選定公であったウイリアム。彼のもとへやってくる代理王候補の悪魔シトリー(櫻井圭登)やカミオ(米原幸佑)、それ以外の悪魔たち。ストラドフォード校での学園生活を謳歌するウイリアムは、「俺はリアリストだ! 悪魔など信じない!」と、頑なに誰も選ぼうとしない。業を煮やした魔界の公爵バアルベリト(遠藤誠)は、かつてソロモンの持っていた指輪を探せと悪魔ジル・ド・レイ(碕理人)に命令する。その指輪はどんな願いも叶えられる力を持つという。ソロモンが神から与えられた鉄と真鍮でできた叡智の結晶。時同じくして、天界も動き出す。天使もまたソロモンの魂と指輪を求め、ウイリアムを狙う。交錯するそれぞれの過去と思惑。ウイリアムの選択する“今”とは…。

_MK15072_1

舞台はシンプルだ。初演と同じく八百屋舞台(傾斜がある舞台)になっている。舞台は360°円形ステージで、全方位を客席に囲まれているスタイル。装置はほとんどなく、Clothemble(梅津瑞樹、福井将太)が紫色の美しい布を巧みに操りながら『魔界王子』の世界を表現する。演出の元吉庸泰が、原作の持つ不思議な世界観を見事に具現化しながら、物語を展開していく。

_MK15704_1

徹底的なリアリストのウイリアム(石渡真修)は、シトリー(櫻井圭登)が、魔界の代理王に選んでくれとやたらに付きまとうのを、うっとおしく感じている。シトリーはウイリアムが召喚した悪魔のダンタリオン(鮎川太陽)とライバル関係にあるのだ。科学では解明できない魔界の理不尽さに違和感を抱えつつ、学園の寮生活を楽しんでいた。また、名門貴族トワイニング家の跡継ぎである彼の家は没落したため、名門校のストラドフォード校への学費が払えないピンチに陥っていた。
そんな時、ウイリアムはクロスビー牧師(松本祐一)からスカラシップ(奨学金)の話を教えてもらう。しかし、それを得るには、近日中に行われる学内テストで1位になることが求められるという。
成績優秀者でもあるウイリアムは、スカラシップの獲得を目指して猛勉強に励むのだが、そこにミカエル(山中健太)という同じく秀才のライバルが現れ、さらに悪魔や天使が、ソロモンの指輪を求めるという自体が重なってどんどん状況はカオスになっていって…。

_MK15227_1

ミュージカル作品なので歌は外せない。ウイリアム(石渡真修)が学園生活での日常を歌うポップな曲から、ダンタリオン(鮎川太陽)、ケヴィン(田村良太)、ミカエル(山中健太)のそれぞれの過去が交差する美しいバラード、さらには全員で歌うオペラ風の曲まで、20数曲もの楽曲が登場し、舞台を盛り上げて行く。
 
_MK15779_1
s__MK14970-1

初演からの当たり役を演じる石渡真修や鮎川太陽、碕理人らに加え、初参加の田村良太や櫻井圭登たちも、この意欲的な舞台に果敢に挑んでいる。悪魔や天使が出てくるなど宗教色やゴシックな趣を感じさせながらも、決して重すぎないファンタジー性と、キャラクターたちが見せる個々の楽しさ、さらに洒落たユーモアもあって、原作の面白さと魅力を、生きた俳優たちによって立体的にリアルに伝える舞台になっている。

_MK15433_1
s__MK14376

 
【囲みインタビュー】

s__MK16449
後列/KEN・鮎川・石渡・田村・遠藤  
前列/梅津・碕・櫻井・山中・松本・福井


この舞台の初日を前に囲みインタビューが行われ、石渡真修、鮎川太陽、田村良太、櫻井圭登、碕理人、山中健太、松本祐一、KEN、遠藤誠が登壇した。

ウイリアム役/石渡真修㈪_MK14982_2
石渡真修(ウイリアム)
360°が客席というステージは、僕たちもお客様もあまり体験したことのない世界だと思います。そんな空間をお客さんと一緒になって楽しめるように、キャスト・スタッフ全員で、協力して頑張りたいと思います。観劇後は、笑顔でお帰りになってください。

s_ダンタリオン役/鮎川太陽_MK14308_1_Re
鮎川太陽(ダンタリオン)
ザ・ミュージカルです。人間と魔界と天使界の三つ巴の戦いが新宿FACEにて繰り広げられます。キャストは様々なところから登場するので首の体操をしていらっしゃってくださいね。

s_ケヴィン役/田村良太_MK14885_Re
田村良太(ケヴィン)
360°お客様に囲まれた場所の中で、お客様もそれぞれ別の場所からお楽しみいただきます。キャスト全員が100%の力を出し切って、歌い、会場全てを“魔界”にします。観たことのない舞台になっていると思います。

s_シトリー役/櫻井圭登_MK27847_1
櫻井圭登(シトリー)
ミュージカルということで、どれだけ歌で魅力をお届けできるか、僕自身も、今回のカンパニーでたくさん勉強させていただいたので、この作品を通して、またひとつ新しい自分に変わっていきたいです。

ジル・ド・レイ役/碕理 人_MK15374_1
碕理人(ジル・ド・レイ)
初演からのキャラクター、そして新キャラクターも加わり、とてもキャラクターがたくさん出てきます。歌も、ダンスも、もちろんお芝居も、さらにパワーアップした『魔界王子』をみなさんに観ていただきたいです。360°客席ということで臨場感があり、エンターテインメント!遊園地みたいになっていますので、生で体験してください。やっぱり舞台は生が一番ですよ。待ってます!

s_ミカエル役/山中健太_MK14134_up
山中健太(ミカエル)
僕が演じる役は、天使なのにドSで人を足蹴にするボス的な役柄です。この作品を精一杯盛り上げられるように頑張りたいと思います。

s_クロスビー牧師役/松本祐一_MK27779_1
松本祐一(クロスビー牧師)
新宿FACEから『魔界王子』の世界を広げていきます。キャストもお客様に近づきますからね。1人1人がどんな表情で、舞台に立っているか楽しみにしてください。

s_バフォメット役/KEN_
KEN(バフォメット)
舞台が始まって最初に歌うという重要な役割を任せられたので、前回以上に、みなさんを“魔界”の世界に誘いたいと思っています。最後の最後まで一生懸命頑張ります。

バアルベリト役/遠藤誠_MK14650_
遠藤誠(バアルベリト)
ついに初日を迎えます。1ヶ月間の稽古をこのカンパニーでこなして、素晴らしい作品になっていると思います。ぜひ劇場で皆様を魔界に誘いたいと思っております。

s_カミオ役/米原幸佑※場当たり写真より※
米原幸佑(カミオ役)
※スケジュールの都合によりゲネプロ及びフォトセッションには不参加。
写真は場当たりより。
 

〈公演情報〉
s_ミュージカル『魔界王子

ミュージカル『魔界王子 devils and realist』the Second spirit
 
原作◇『魔界王子devils and realist』(原作:高殿円・漫画:雪広うたこ)コミックZERO-SUM(一迅社)連載中
演出◇元吉庸泰(エムキチビート)
脚本◇伊勢直弘
脚本協力◇高殿円
出演◇石渡真修、鮎川太陽/田村良太、櫻井圭登、碕理人、山中健太、松本祐一、遠藤誠、KEN/米原幸佑(特別出演)ほか
●11/4〜12◎新宿FACE

(c)2017 高殿円、雪広うたこ・一迅社/ストラドフォード校歌劇部
 


【取材・文/竹下力 写真提供/CLIE 撮影/鏡田伸幸】



キャラメルボックス『ティアーズライン』お得なチケット販売中!
kick shop nikkan engeki 

宅間孝行、戸田恵子、松本利夫らで描く家族愛の物語。タクフェス『ひみつ』上演中! 

DSC_2280

宅間孝行の作り上げる極上のエンターテイメントプロジェクト「タクフェス」。その第5弾『ひみつ』が、10月19日の鹿児島市民文化ホールを皮切りに、12月まで東京、大阪ほか全国10ヵ所を上演中だ。
 
本作は、宅間孝行による4年ぶりの新作書き下ろし。主人公「渚」を演じるのは、女優、声優、歌手などマルチに活躍中の戸田恵子で、宅間孝行とは今回が初タッグとなる。渚の弟「八郎」には、劇団EXILE松組の演出家・俳優の松本利夫(EXILE)が扮している。
さらに、福田沙紀、ベンガル、山崎静代(南海キャンディーズ)、東風万智子、武田航平、赤澤燈、岡本あずさ、越村友一、益田恵梨菜など豪華出演陣が脇を固めている。
 
その東京公演初日にあたる10月31日の昼に、プレス用の公開通し稽古と囲みインタビューが行われた。(Wキャストの本橋京太郎役は三谷翔太)

DSC_1905

【あらすじ】
ある秋の日。とある田舎町にある別荘に連れてこられた山之内夢(福田沙紀)は、車椅子に乗る年老いた一人の女性と出会う。そして、今は名前を名のることも出来なくなったその女性が、自分を産んだ母親だと告げられる。彼女の名前は、本橋渚(戸田恵子)。本橋家には3人の姉弟がいた。姉の渚と弟の五郎(宅間孝行)は、“虹色渚ゴロー”という漫才師として活躍していた。マネージャーでもある末弟の八郎(松本利夫)に支えられ、人気絶頂だったこの姉弟に、運命を一変させるある事件が起きる。なぜ渚は25年間、夢と別々に生きる道を選んだのか、そして本橋家の「ひみつ」とは…。
 
DSC_2339
 
スクリーンに映し出されたのはタブレットの画面、その動画再生アプリがクリックされると、25年以上前の“虹色渚ゴロー”の漫才が再生される。この漫才が宅間孝行らしいキレのあるボケとツッコミの応酬で、その爆笑の中、スクリーンが上がると、そこは田舎町の別荘で、年老いた本橋渚(戸田恵子)が登場する。渚は甥の京太郎(宅間孝行・二役)にタブレットで昔の動画を観せてもらっているのだが、動画の漫才師の1人が自分だとわからないらしい。
そばには、同じく名前さえわからなくなった、かつての所属事務所の長妻社長(ベンガル)もいる。そこへ突然、弟の八郎(松本利夫)らが山之内夢(福田沙紀)を、目隠しして足を縛って拉致してくる。京太郎は「そんな大仰なことをしなくても」とツッコミを入れながら、夢を解放し、余生の短い渚に会ってくれないかと頼み込む。夢は渚の娘なのだ。突然の話に驚き必死に否定する夢。それを予期していたかのように、京太郎から25年前の「ひみつ」が語られる…。

DSC_2198

本橋渚の戸田恵子は、25年という年月を自在に行き来して、宅間孝行がこの作品で訴えたかったテーマを背負うに相応しい存在として物語を牽引する。人気漫才師の華やかなスター性、女性の弱さと母としての強さ、そして苦しみの中で年老いた姿を、場面ごとに鮮やかに浮かび上がらせる。 
その弟の五郎の宅間孝行は、漫才では姉に頭の上がらない黒縁メガネのゴローを演じているが、現実では家族愛に満ち溢れた男。直情径行で無骨だが、誰よりも兄弟のことを心配している不器用な優しさは、役者・宅間孝行の真骨頂でもある。二役の京太郎では、まったく違う若々しい青年像を達者に演じる。
 
DSC_2049

八郎の松本利夫は、“虹色渚ゴロー”のマネージャー兼作家として、日夜漫才のネタを書きながら、オロオロと姉たちの心配をする末っ子気質の優しい男。だが家族が危機になれば真っ先に立ち上がり、身を呈して守ろうとする。誠実な持ち味が生きて、また動きのキレの良さはダンスで鍛えたMATSUならでは。 
山之内夢の福田沙紀は、次第に明かされていく秘密に、1つ1つ、泣き、笑い、喜び、怒り、感情を揺さぶられる若い娘の姿を、無垢な赤子のような純粋さで演じている。
 
DSC_2264

こんな一家をめぐって、様々な個性豊かな人物たちが登場する。
長妻社長のベンガルは、 “虹色渚ゴロー”を抱えるプロダクションのオーナーで、面倒見がよくて気のいい「おっさん」。だが複数の愛人を持つなどダークな一面も見せる。 

DSC_2089

その長妻社長と訳あり?の1人が、別荘の管理人漆原さんの東風万智子。気っ風のいい女性で、長妻との関わりを面白く見せてくれる。
長妻の現在の愛人であるナオミは岡本あずさ。ナオミは両親との不和から荒れた生き方をしていたが、長妻に救われ、彼を愛している。それだけに本橋家の仲の良さが憧れで、不協和音を持ち込むレイジが許せない。そんな真っ直ぐな想いが伝わる。
 
DSC_2042
DSC_2366

漆原さんの息子の一馬は赤澤燈、茶髪にリーゼントに特攻服で、いかにも不良という外見だが、“虹色渚ゴロー”に憧れ、恋人のまりちゃんとコンビを組んでいる。
まりちゃんは益田恵梨菜で、根は優しいのに強面のあねさんといった風情、この2人のコンビはちょっと寒い漫才で笑わせてくれる。

DSC_2029

渚の年下の恋人レイジ役は武田航平で、どこか浮ついてチャラチャラした若い愛人の色気があり、だが同時にしたたかで、この物語の核心を握るキャラクターとして、強い印象を残す。

DSC_2215
DSC_2073

五郎の妻の元子は山崎静代、漫才師の妻として本橋家を支えるおおらかさと、息子京太郎を愛おしむ母性を自然に滲ませている。
その息子、京太郎の子供時代を演じるのは子役の三谷翔太で、驚くほどの量のセリフをみごとにこなしている。
駐在の碑文谷役は越村友一で、“虹色渚ゴロー”の別荘に出入りする怪しげなファンとして、ちょっと異色のオーラを放っている。

DSC_2480

この作品は残酷な現実に引き裂かれた家族の話だ。そして、今現在もこの社会で起きているさまざまな事件と、そこに巻き込まれる人々の苦しみが描かれている。ある究極の状況の中で、愛するものを守ることとは本当の愛とは何かが問いかけられる。そして、家族の絆の強さと温かさが、宅間独特の「笑い」をスパイスに、真摯に切実に綴られていく。
名作『くちづけ』に代表されるタクフェスの社会派エンターテインメント、その傑作がまた1つ誕生した。

DSC_2434

【囲みインタビュー】
 
DSC_2697
松本利夫(EXILE)、福田沙紀、戸田恵子、宅間孝行
 
この公演『ひみつ』に合わせ宅間孝行、戸田恵子、福田沙紀、松本利夫(EXILE)が登壇し、囲みインタビューが行われた。

DSC_2725
宅間孝行(本橋五郎・本橋京太郎)
旅から始まった公演。東京に戻ってくるまでにすでに4公演。かなり一緒にいる時間が長かったので、今までにないチームワークで東京に乗り込んできました。本番が終わった後には、朝5時まで、「人狼」というアプリゲームを使って『ひみつ』について語り合う。「人狼」は子役の子がやりたいとやり始めたんです。6年生に負けちゃうんですよね(笑)。なかでも、武田くんと沙紀ちゃんが強いんですけど、喧々諤々のやり合いでカンパニーが破裂するんじゃないかと思いましたね。お昼ご飯は炊飯器を持ってきて、毎回炊き出しをして食べるので、稽古場から同じ釜の飯を食べて、とにかく明るいカンパニーです。戸田さんは毎日差し入れを持ち寄ってくれて、卵焼きが美味しかった。山崎静代が対抗心を燃やして出汁巻を作ってくれたんですけどこれも結構美味しかった。良いこと続きです。お酒を9月3日から断酒したのも成功で体調良く朝を迎えられるし、僕と戸田姉さんだけ飲んでなくて、みんないい加減にしろよと思っています。お酒は毒です(笑)。4年ぶりの新作です。正直いえば、お客さんの前に持っていくのは不安でしたが、4公演を上演して、お客様に喜んでいただけている様子なので、自信を持って東京で上演できます。

DSC_2740
戸田恵子(本橋渚)
何回か公演を重ねてきたのでかなりいい雰囲気で東京で上演できると思っています。これまでのツアーの思い出は、演技に集中しすぎて詳しくは忘れてしまいましたけど、熱く観てくださった。ご当地のネタも盛り込んでいます。例えば、方言はレイジの武田航平くんが公演ごとに変えるのですが、彼はそれで苦しんでいるところが見どころです(笑)。差し入れはたまにですから、他所でも期待されたら困りますね(笑)。この舞台は発展途上にあると思って、1回1回を集中してやっていきたいという気持ちです。役どころの性格上、精神的に追い詰められて、終演後に独特な雰囲気があります。気持ちが切れないように、新鮮な気持ちで取り組んでいけるようにして、12月の公演までやっていきたいと思います。

DSC_2744
福田沙紀(山之内夢)
稽古場でも、お芝居で人と人に向き合う素敵な時間を過ごしてきました。九州の鹿児島から一緒に旅をしてきて、その土地の美味しいものをいただきながら、お客様の前でお芝居をして、気が緩める暇もないほど、芝居に向き合えています。お酒の話でいうと、宅間さんが全くお酒を飲まないんです。信じられないと口々に言われて、代わりにスイーツ男子に変身していました(笑)。感情のコントロールをしながらいっぱいアンテナを立てて、いろんな感情を受信してやっていけたらと思います。今作では新しい試練をいただいたような気がします。感情が爆発する演技が多いので、ここでは感情をあえて抑えるというアプローチも新しい挑戦です。精神的にも自分の秘密を知っていく役所なので、秘密を新鮮に受け止めて、自分の中で感じる気持ちの変化に敏感になりながら、1つ1つを舞台で表現したいです。最初に脚本を読んだ時は、人生で忘れないだろうという衝撃を受けたので、その時の気持ちを大事にしつつ、目の前にカンパニーの皆さんとしっかり芝居をしていきたいたいと思います。

DSC_2746
松本利夫(本橋八郎)
ツアーから始めさせていただけるので、稽古中は、終わったら食事に行かなかったのですが、ツアー先で終わってからご飯に行ったり、「人狼」というゲームを使ってお芝居のお話をさせていただいて、素敵なカンパニーになっていると思います。僕は稽古場でご飯を食べるのが斬新でしたね。お酒に関しては、稽古場を通してよくしずちゃん(山崎静代)と飲んでいるんですけど、一番の乙女ですよ。何よりこの舞台に立たせていただいている感謝を持ちながら、毎公演しっかりやらせていただきます。タクフェスという名前がついている以上、大切な題材で、始めから終わりまで、ストーリーも伝えつつフェスも楽しんでいただけるように全力で突き進みたいと思います。

DSC_1995
DSC_2114
DSC_2333
DSC_2428
DSC_2383
DSC_2305
DSC_2474
DSC_2469

〈公演情報〉
PR

タクフェス第5弾『ひみつ』
作・演出◇宅間孝行
出演◇戸田恵子 福田沙紀 武田航平 赤澤燈 岡本あずさ 山崎静代(南海キャンディーズ) 東風万智子 松本利夫(EXILE) 越村友一 益田恵梨菜 三谷翔太(Wキャスト) 松本純青(Wキャスト) ベンガル 宅間孝行
●10/31〜11/12◎サンシャイン劇場
〈料金〉S席8,000円、TAKUFESシート(後方席)5,000円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉東京/サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(全日10:00〜18:00) 
●11/16◎足利市民プラザ
●11/19◎周南市文化会館
●11/24〜11/26◎刈谷市総合文化センター
●12/1〜12/2◎道新ホール
●12/6〜12/10◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ



【取材・文・撮影/竹下力】



キャラメルボックス『ティアーズライン』お得なチケット販売中!
kick shop nikkan engeki

傷ついた家族の絆を描く松田正隆の名作 ala Collectionシリーズ Vol.10『坂の上の家』東京公演間もなく開幕!

s_181A8125

可児市文化創造センター制作のala Collectionシリーズ、その Vol.10『坂の上の家』が、11月3日〜11月10日まで吉祥寺シアターで上演される。
ala Collectionシリーズとは、新作主義の日本の演劇界に対して、過去の優れた戯曲に焦点を当て、リメイクして作品を再評価するプロジェクト。また、アーティスト・イン・レジデンスを基軸として、第一線で活躍するキャスト・スタッフが可児市に滞在しながら作品を制作し、サポートメンバーの尽力によって、質の高い作品を全国に発信していくシリーズだ。

第10作目に当たる本作は『坂の上の家』。マレビトの会代表で長崎県生まれの松田正隆が、1993年に発表、第1回OMS戯曲賞大賞を受賞した傑作戯曲で、1982年に長崎で起きた大水害を背景に、ある家族の関わりや愛情、人と人の絆や葛藤を、日常の情景の中で描いている。スタッフとキャストは文学座から多く参加、演出は高橋正徳、美術は数々の舞台で才能を発揮している乘峯雅寛、出演者は、『ヘンリー四世』『マリアの首』などに出演した亀田佳明、昨年の『お気に召すまま』で初舞台という鈴木陽丈、若手女優の大野香織。文学座以外からは、劇団四季『ライオンキング』に出演した若手の石丸椎菜、演技派のベテラン陰山泰など、個性豊かなメンバーが揃っている。
 
【あらすじ】
長崎県のとある坂の上の家。その家には、若い3兄妹が暮らしている。彼らには苦い記憶がある。1982年7月23日の長崎大水害。多くの犠牲者を出したこの災害で両親を亡くした。彼らはまだ幼く、父と母を失った家で兄弟で助け合って育ってきた。あれから5年…。社会人になった長兄の本上幸一(亀田佳明)、予備校生の次兄の本上慎司(鈴木陽丈)、妹で高校生の本上直子(石丸椎菜)の3人は、今も坂の上の家で一緒に暮らしている。夏の初め、長兄が恋人の佐々木陽子(大野香織)を連れてくることになった。もうじき、またあの夏の日が、両親の命日が巡ってくる…。

s_1005_1470
 
天井から当たるスポットライトは控えめで柔らかく清々しい。上手の手前には、その時代でも使わないだろうという壊れかけのような扇風機。奥には茶色の座布団が5枚、そして黒電話がある。下手の奥に常に一脚の籐椅子があり、その手前には蚊取り線香が置かれたり、お土産が置かれる。中央には重そうなちゃぶ台。これが家族の、いや、兄弟たちの生きてきた人生の重さを象徴しているように見える。一家は1982年の長崎大水害で両親を失ったという事実があり、ちゃぶ台の重々しさでその虚無を埋めようとしているようにも見える。

この家、本上家の娘、直子(石丸椎菜)はこの時期、どういうわけか朝早く起きてしまう。両親を亡くした水害の時期だからだ。そこへ兄で予備校生の慎司(鈴木陽丈)がやってきて、どこでもある兄妹の会話が繰り広げられる。太陽が昇り、舞台がオレンジ色に光りだすと、あの日とは違う現在の彼らの1日が始まる。 
 
遅刻寸前の長兄、幸一(亀田佳明)は、呑気に新聞を読んで朝ごはんを待っている。彼は町役場の役所に勤めている。そんな兄を母親代わりに甲斐甲斐しく世話をする直子。幸一は今日の夕方、縁談の相手、佐々木陽子(大野香織)を連れてくると言う。色めき立つ弟妹。幸一の照れ隠しにも見える笑顔が嬉しそうだ。
夕暮れ時の雨が降るなか幸一が陽子を連れてくる。直子は得意の皿うどんを作り、ビールも用意して家族は陽子を歓迎する。だが、幸一と陽子は互いに気を使い合って、なかなか2人の間は進展しない。

そんな兄妹のもとへ、大阪から父親の弟、叔父にあたる本上善一郎(陰山泰)が、精霊流しの見物に本上家にやってくる。いつもと少し違う空気の中、いくつかの事実が明らかになってくる。幸一と陽子の縁談がうまくいかなかったこと。慎司は幸一のお金で通っていた予備校をやめて料理人になりたいと告白。さらに長崎で被曝した両親の元に生まれた病弱な陽子が大学病院に入院していること。必死で生きてきた家族は、ある種の崩壊感に襲われるが…。

s_1005_1766
 
幸一役の亀田佳明は一本筋が通った九州男児で、何事につけ頑固で不器用だが、弟妹を守り通すという意思を感じさせる。少し猫背でスキップするようなリズミカルな歩き方が彼の持つ前向きな強さを表現しているかのようだ。
慎司役の鈴木陽丈は、少し引いて家族を眺めているようでもあり、つねに遠いところを見ているようでもある。心の中には葛藤があるのだが、兄や妹の前ではそれを感じさせないで、ノンシャランな雰囲気を無理に作っている。そんないじらしさを巧みに見せる。
直子役の石丸椎菜は、まさに気っ風のいい女子高生で、兄たちの世話を積極的に行い、家事に洗濯に活躍。やや大ざっぱなところもある女の子だが、兄たちを守りたいという健気な気持ちが伝わってくる。
佐々木陽子役の大野香織は寂しげな雰囲気を持っていて、その理由が見えないことで、どこかエロチシズムさえ漂わせる。
本上善一郎役の陰山泰は、父親たち三兄弟の末っ子で、意地っ張り。若い時に喧嘩をして、啖呵を切って大阪に飛び出していったことを話すのだが、それはどこか幸一と慎司の未来を暗示させるかのようだ。また彼は父親の遺品の浴衣を着るのだが丈が合わない。やはり彼は優しい叔父でしかなく、不在の父親の代わりにはなれないという距離感をリアルに表現する。

s_1005_1628
 
この戯曲は松田正隆の代表作の1つといわれるだけあって、物語の構成が見事だ。兄妹3人を軸に、そこに他者が、つまり4人目(陽子、善一郎)が入ることによって、兄妹の秘密が明らかになったり、関係が壊れていったり、日常に亀裂が走る。しかし4人目がいなくなると、兄弟の絆がそれ以前より強くなり、家族として成長していくところが清々しく、人間の生命力を感じさせる。演出の高橋正徳は、そんな家族間や他者との関係性を、それが誰にでもどんな家族にでも起こりうる普遍的な出来事として、自然に生き生きと描き出し、観るものへと引き寄せている。
そしてその舞台を効果的に支えていたのがスタッフワークで、坂と家の中が見える開放的な空間、どこか静謐な空気を漂わせながら圧倒的な情報量を伝える家族の暮らす場所という、日常的でありながら美しい乘峯雅寛の美術。
音響の原島正治は、ガムラン、マリンバ、ピアノといった打楽器の音楽を場面転換時に流すのだが、転換明けに残るその音の余韻は、まさに夏の残りという雰囲気を醸し出す。
照明の阪口美和も、そんな音に合わせるように余韻を残しながら消えて行くライトで余白を感じさせる。また灯籠流しのシーンでは、格子戸からのスポットライトと映し出される影が目が眩むような美しさだった。 

可児市発信のプロジェクトとして、スタッフと俳優が現地に長期滞在して作った作品だからこそのチームワークの良さとクオリティの高さがあり、松田正隆戯曲ならではの繊細でリアルな人間たちの営みが、沁み入るように心を潤す舞台になっている。

s_1004_0272


〈公演情報〉
main

『坂の上の家』
作◇松田正隆
演出◇高橋正徳
美術◇乘峯雅寛
出演◇亀田佳明 鈴木陽丈 石丸椎菜 大野香織 陰山泰
●11/3〜10◎吉祥寺シアター
〈料金〉5,000円 学生券2,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉石井光三オフィス 03-5797-5502(平日 12:00〜18:00) 
 

【取材・文/竹下力 写真提供/石井光三オフィス】



花組芝居『黒蜥蜴』お得なチケット販売中!
kick shop nikkan engeki 
記事検索
演劇キックラインナップ

演劇キック

観劇予報

宝塚ジャーナル

演劇人の活力源

日刊えんぶ

えんぶ情報館

えんぶショップ

えんぶミロクル

えんぶfacebook

広告について