稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

『ハンサム落語第十幕』

ニュース

「〜平成家族物語〜舞台芸術によるまちづくりプロジェクト」第1弾「東松山戯曲賞」応募結果発表!

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(本年4月の「東松山戯曲賞」創設会見)

埼玉県東松山市では「東松山芸術祭」など文化事業に力を入れているが、「〜平成家族物語〜舞台芸術によるまちづくりプロジェクト」の第1弾として、本年4月から公募していた「東松山戯曲賞」が、去る8月31日に締め切りとなり、全国からの応募43作品が集まった。

【応募状況詳細】
〜平成家族物語〜舞台芸術によるまちづくりプロジェクト第1弾『東松山戯曲賞』
 
○応募期間:平成30年4月から8月31日まで
応募作品数:43作品
(東松山市内:3名、埼玉県内市内以外:8名、東京都:13名、千葉・神奈川:7名、それ以外・北海道:12名)
年齢:22歳から79歳まで
(20代:6名 30代:6名 40代:9名 50代:10名 60代:5名 70代:2名 不詳:5名)
1次選定・最終選定:平成30年9月〜11月
(選考委員/山崎正裕、岩松了、桑原裕子、瀬戸山美咲、渡辺弘)
優秀作品の発表:平成30年11月上旬(財団HPにて発表)
公演作品の記者会見・市民キャストの募集:平成30年12月
東松山市総合会館にて稽古開始:2019年2月〜3月
朗読劇上演(演出/瀬戸山美咲):2019年3月24日(日)@松山市民活動センターホール
〈お問い合わせ〉東松山文化まちづくり公社 平成家族物語事務局 0493‒24‒6080(平日9:00~17:00)
〈戯曲賞HP〉http://www.pac.or.jp/hfs.html






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らまのだ『青いプロペラ』がネクスト・ジェネレーションvol.11としてシアタートラムに登場!

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世田谷パブリックシアターによる、若い才能の発掘と育成のための事業「シアタートラム ネクスト・ジェネレーション」は、1年に1度、公募により選ばれた団体にシアタートラムでの上演機会を提供、劇場が全面的にサポートを行っている。これまで、快快、FUKAIPRODUCE、羽衣、てがみ座、スズキ拓朗、開幕ペナントレース、泥棒対策ライト、to R mansion など、現在演劇界で活躍中の多くの才能を輩出してきた。第11回目となる今年は、緻密に構成された会話劇で、人間の本質的な不合理さ・悲哀を時に滑稽に描きつつも、丁寧に浮かび上がらせ、その作劇・演出手腕が注目を集める「らまのだ」が登場する。
 
「らまのだ」は、劇作家・南出謙吾の戯曲を森田あやのプロデュースによって上演することを目的に、2015 年より活動を開始した。惨めが滑稽に、滑稽が悲哀に見えてくるような、焦点をずらしたやりとりで浮かび上がる、不合理な人間の存在そのものを炙り出す作風が特徴だ。
劇作を務める南出謙吾は、過去、AAF戯曲賞・OMS戯曲賞等で最終選考に選出、2015年第2回希望の大地の戯曲北海道戯曲賞で『終わってないし』にて優秀賞を受賞。同年『ずぶ濡れの鳩』(現『青いプロペラ』)で第21回日本劇作家協会新人 戯曲賞最終候補に選出され、その翌年『触れただけ』にて同戯曲賞を受賞した。また、演出家である森田あやは、青年座研究所にて演劇を学び、「らまのだ」旗揚げ後、『青いプロペラ』『明後日まで内緒にしておく』の評価にて、日本演出者協会主催「若手演出 家コンクール2016」で優秀賞を受賞している。「らまのだ」は近年のネクスト・ジェネレーション選出団体とは異なり、一見して目を奪われるような特殊な手法こそとっていないが、オーソドックスでありつつも、その驚異的な集中力によって、誠実に、丹念に練り上げられた作品の数々で、観客の感情を大いに揺さぶり、一歩一歩着実に、演劇界での評価を高めている団体だ。

今回の『青いプロペラ』は、2015年11月「らまのだ」旗揚げ公演として上演された。全編、劇作家・南出謙吾の出身地である石川県の方言が使用され、軽快な現代口語劇でありながら、ノスタルジーに満ちた故郷の原風景を、深い余韻とともに鮮やかに描き出している。決して広いとは言えない地域社会の中で、否応なく交じり合う人々の温かみと冷たさと、どこか滑稽で何気ない「平温」な日々を通して、抗いがたい時代の変遷を、絶妙なバランスで舞台上に立ち上げる。
またその緻密な作品世界を担う俳優たちは、劇団はえぎわに所属し、松尾スズキやケラリーノ・サンドロヴィッチ作品、最近では劇団☆新感線の『メタルマクベス』disc1にも出演した富川一人、宝塚歌劇団出身で数多くの舞台で活躍、初演にも出演した田中里衣、舞台『野球』に出演の記憶も新しい林田航平、映像や舞台で活躍中の福永マリカほか実力派の出演者が揃っている。加えて、今回はスチールパンバンド「STARS ON PAN」による生演奏が上演を彩る。この一見不思議なコラボレーションが、実際の上演でどのような劇的効果を生むのか、期待が集まる。

【あらすじ】
山あいの小さな町の老舗スーパー「マルエイ」は、隣町の大型ショッピングセンターの出店に揺れている。反対運動も繰り広げるも従業員たちに切迫した様子は無く、どこかその運命を受け入れているようにすら見える。だが、かつては、マルエイも、地元商店街に壊滅的な打撃を与え、ここに出店したのだ。
 
【コメント】
 劇作家・南出謙吾 
「らまのだ」は純粋なストレートプレイ。純粋なんです。舞台芸術の、演劇の表現手法は、繰り返され、多様化し、身体表現にポストドラマ、無言に反復にダンス、手法や才能に溢れ、感覚に豊かに訴えかけてくる。楽しくてスリリング、あるいは崇高。それらを羨み妬み横目で見つつ、我慢を重ねて磨き削った作品が「らまのだ」です。選んでいただけてとてもうれしい。蚊帳の外じゃなかった。メガネにかなった。
社会の腹立たしさや報われなさの中にうごめく、人の営みをただただ丁寧に拾う作業、作品を、あの集中力のある劇場で観てもらえる。おかしく痛々しい、温かみと冷たさの共存した世界を、いかがでしょうかと、お披露目できる。
『青いプロペラ』は故郷石川県を舞台にした石川弁の作品です。雪国の暮らしの息づかい、やたら鼻濁音の多い方言の味わい、そして「らまのだ」の素朴な手法を、手触りを、そっとなぞって撫でてみて欲しい。
こぶしを振り上げこうだ!どうだ!ではなく、いかがでしょうか、という想いなのです。
 
演出家 ・森田あや
「3年でシアタートラムに行く!」バカみたいに無謀な話ですが、「らまのだ」を始める時、劇作家南出と二人でこんな目標を立てました。夢を見ていました。今年の11月で旗揚げ公演からちょうど3年。まさかの有言実行です。
3年前。旗揚げ公演『青いプロペラ』を渋谷の倉庫を改装した客席数60に満たない会場で上演しました。当時のわたしは演出を手掛けるのも初めてで、最初で最後かもしれないつもりでエイヤー!と走ってみました。小さな空間にはお客様がぎゅうぎゅうで、そんな客席に私たちらまのだの出発を、私の演出としての出発を見届けてもらったように感じ、とてつもなく愛おしく感じました。そして、あの時の、あの感覚は、今も私を突き動かし、ここまで連れてきてくれました。
あの作品を、決して楽ではなかったあの創作過程も含めて、今、もう一度、創ってみる。そんな機会を頂きました。あれから少しばかり失敗や挫折、喜びや達成感を感じる経験を経て、ちょっとだけ演出として演劇と関わることを楽しみ始めたわたしは、ずっと欲しかったオモチャを手にした子供ようにワクワクしてます。特別な作品の再演が叶い、しかもその会場は私たちの憧れていた場所。シアタートラムでの上演は夢が叶ったと言うだけでは足りないくらいステキなことです。
私たちは決して派手ではないんです。巧みに騙したり、驚かせたり…ありません。私たちがこの3年間で信じて創ってきたものを、臆せずに、媚びずに、謙虚に、丁寧に紡ぎ出せたら。冷たくてあったかい。そんな曖昧で繊細な手触りが‘らまのだ’なんだと思います。
3年前、夢の中にあった場所で、私たちの原点の作品を創る日がやってきます。張り切ってまいります。

■プロフィール
南出謙吾○石川県出身。劇作家・演出家・俳優。大阪では劇団りゃんめんにゅーろんを主宰している。第15回・第18回 OMS 戯曲賞、第10回・第12回 AAF 戯曲賞、2008年名古屋市文化振興賞戯曲部門において、最終選考に選出。2015年、第21回日本劇作家協会新人戯曲賞で『ずぶ濡れの鳩』(現『青いプロペラ』)が最終選考選出、第2回希望の大地の戯曲北海道戯曲賞で『終わってないし』にて優秀賞を受賞。2016年、『触れただけ』にて第22回日本劇作家協会新人戯曲賞受賞。

森田あや○神奈川県出身。桐朋学園短期大学演劇科を中退。青年座研究所にて演劇を学ぶ。TPT『袴垂れはどこだ』(福田善行作/千葉哲也演出)、青年座スタジオ公演『雷鳴』 (梁石日原作/江原吉博・睫效5喊А森睫效1藹)、トラッシュマスターズ『砂の骨』 (中津留章仁脚本・演出)などに出演。日本演出者協会主催「若手演出家コンクール2016」にて優秀賞受賞。
 
〈公演情報〉
脚本◇南出謙吾
演出◇森田あや
出演◇富川一人(はえぎわ)  田中里衣 林田航平 福永マリカ
今泉舞 斉藤麻衣子  井上幸太郎 猪股俊明
●11/29〜12/2◎シアタートラム
〈料金〉一般3,500 円  高校生以下1,750 円 U24 1,750 円(全席指定・税込) ほか各種割引あり
〈一般発売日】  2018/9/30(日)
〈お問い合わせ〉世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515  (10:00〜19:00) 





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iakuが新作公演『逢いにいくの、雨だけど』を東京と大阪で上演!

逢いにいくの〜宣伝写真

大阪を中心に活動する劇作家・演出家の横山拓也が主宰する演劇ユニットiaku(いあく)が、11月に東京・三鷹市芸術文化センターで、12月に大阪・八尾プリズム 小ホールで、新作『逢いにいくの、雨だけど』を上演する。 

【ごあいさつ 横山拓也】
iaku として、三鷹市芸術文化センターでは「流れんな」(2014 年)と「エダニク」(2016 年)を上演させてもらいました。いずれも再演でした。iaku は『強度のある作品をつくって再演を繰り返す』という活動方針がありますが、今回 は新作で挑ませていただきます。そして過去2作品においては、他の方にお願いしてきた演出も、今回は私自身で行います。辿り着くところが何処なのかはわかりませんが、今、作品的に新たな境地に向かっているような気がしています。iaku のニュースタンダードになる作品を目指します。

【あらすじ】
恋愛、友人、家族の関係の中に発生した嘘やごまかしなどの罪の意識の重なりが歪める人間関係。そこに、突如起きた大きな事故が、彼らの間に妙なバランスをもたらしてしまった。事故の加害者と被害者という立場のはずが、いつしか、簡単な構図では語ることのできない状況に陥っていく。条件や時間では解決できない、複雑に絡まり合った心の問題が深く横たわり始めるのだった。

子ども同士が幼なじみで、家族ぐるみの付き合いのある、仲の良い二組の家族 。あるとき、不可抗力で、一方の子どもが、もう一方の子どもに大きなケガを負わせてしまい、人生に影響するような障碍を残す。この出来事以降、二組の家族は複雑な関係となり、疎遠となってしまい…。
2018 年冬、iaku の最新作は 「許す」を考察する。
 
〈公演情報〉
『逢いにいくの、雨だけど』
作・演出◇横山拓也
出演◇尾方宣久(MONO)、橋爪未萠里(劇団赤鬼)、近藤フク(ペンギンプルペイルパイルズ)、
納葉、松本亮、異儀田夏葉(KAKUTA)、川村紗也、猪俣三四郎(ナイロン 100℃)
●11/29~12/9◎東京・三鷹市芸術文化センター 星のホール
〈料金〉一般前売3,000円・当日3,500円 U-25前売2,000円・当日2,500円    高校生以下前売・当日共1000円(全席自由・税込)日時指定・整理番号付き 
●12/21~22◎八尾プリズム 小ホール(八尾市文化会館)
〈料金〉一般前売2,800円・当日3,000円 U-25 1,500円    高校生以下500円(全席自由・税込)日時指定・整理番号付き 
〈発売開始〉2018 年 10 月 6 日(土) 
〈東京公演お問い合わせ〉
三鷹市芸術文化センター 0422-47-5122(10時~19時/月曜休館)
ライトアイ 080-9759-2383(11時~19時)
〈大阪公演お問い合わせ〉
iaku 080-9759-2383(11時~19時)
〈劇団HP http://www.iaku.jp/ 






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古川健の新作で戦後73 年を描く『かのような私 -或いは斎藤平の一生-』 高橋正徳×亀田佳明 インタビュー

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文学座アトリエの会では「新しい台詞との出会い―戦後再考」をテーマに、近年演劇界で注目されている劇団チョコレートケーキの古川健の新作を、9月7日から上演中だ。(21日まで。そののち八尾、可児公演あり)
あさま山荘事件、大逆事件、ナチスなどシリアスな社会的な事象をモチーフとした人間ドラマを、鋭い目線で濃密に描く古川健の作品を、文学座の高橋正徳が演出。昨年11月・12 月に上演されて好評を博した水戸芸術館ACM 劇場プロデュース『斜交〜昭和40 年のクロスロード』に続いての、2人の強力タッグとなる。
 
【Story】
1948年(昭和23年)12月23日。皇太子(今上天皇)の誕生日であるこの日、東条英機をはじめとしたA級戦犯が処刑された。その同じ日に、東京の教育者一家・斎藤家に待望の第一子が誕生、平和な時代に生きて欲しいという思いを込めて平(たいら)と名付けられた。高度経済成長、学生運動、バブル、不況、震災・・・昭和、平成、そして未来を懸命に生きた男の一代記。

戦後73 年目となる今年――。戦後に生まれ昭和、平成そして未来へと移りゆく時代を生きる、斎藤平(さいとうたいら)。1人の“男の一生"の物語を、まもなく竣工70年を迎える文学座アトリエにて浮かび上がらせる。その公演の演出を手がける高橋正徳と、主人公の斎藤平を演じる亀田佳明に、稽古も終盤という時期に話を聞いた。
 
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亀田佳明 高橋正徳

とても普遍的な1人の人間の一生

──この作品は、古川さんに書いてほしいという高橋さんの希望で実現したそうですが、古川作品を演出するのは、昨年の『斜交』に続いて2度目になりますね。
高橋 僕は以前から古川さんの作品を演出してみたくて、劇団に何回か企画を出していたのですが、この企画が通ったあとに水戸芸術館の『斜交』の話がきまして、有り難いことに2作続けてご一緒できることになりました。今回の作品については古川さんに、アトリエの会の今年のテーマである「戦後再考」に添ったものを書いてもらえないかと。文学座には女性を主人公にした『女の一生』がありますから、男性を主人公にした戦後史で、昭和から平成、その先まで俯瞰して見据える作品をとお願いしました。
──物語はまさに日本の戦後史で、主人公の斎藤平が生まれた1948年12月23日から始まりますが、この日にはとても大きな意味がありますね。
高橋 12月23日は皇太子(今上天皇)の誕生日ですが、1948年12月23日は東条英機をはじめA級戦犯が処刑された日でもあるのです。また1948年生まれの斎藤平が20歳になる1968年、さらに40歳になる1988年、60歳になる2008年と、日本は大きく様変わりしていきます。そこから日本の戦後史が浮かび上がるというのが、今回の企画意図です。
──斎藤平を演じるのは亀田さんですが、主人公の人生にどのように取り組んでいますか?
亀田 僕は1978年生まれですから、まず生まれる前の30年間の話が出てくるわけです。それから70年以上にわたって1人の人物を演じるのは初めてで、現在39歳の僕からみるとこの先40年近くは未知の領域です。さらに、これだけ変化する時代を生きてきた斎藤平という人間の幅を、どのように意識して演じるか。そういうさまざまな要素を考えながら稽古しているところです。
高橋 ただ、亀田くんも僕も戦後史については文学座でも他のところでも芝居を作るうえで勉強してきていて、亀田くんが山口二矢を演じた『1960年のメロス』(2010年)という公演も一緒にやっていますし、そういう経験から歴史への理解は深まっていますので、あまり心配はないと思っています。
──斎藤平の一生を見ていくと、その時々の社会状況に無縁ではないのですが、その中心には巻き込まれずに生きてきた。そういう意味ではいわゆる一般の人たちの代表でもあるのかなと。
亀田 古川さんも「普通の人」だとおっしゃっています。ただ、斎藤平なりにその時代の出来事を真剣に受け止めながら生きてきたと思うんです。変化する時代の中で、自分を省みたり、迷ったりしながら。
──周辺の人たちも、戦後史のある部分を表現していますね。学生運動から組合闘争に入っていく人、事業で成功したもののバブルが弾けて失墜する人などが出てきます。
高橋 斎藤平自身も、学生運動に加わったけれど家族が出来たことで教師になり、その仕事を熱心にしている間に家庭にひずみが出てきて、子供も登校拒否になってしまう。そして60歳になったとき友人が自殺する。そういう人生の中で、その都度、自分を省みることになるわけです。
亀田 そういう意味ではすごく素直な人ですよね。20年前に自分が嫌だと思ったことを息子にしているんだと反省したり、60歳になったときにはすべてを受け入れる気持ちになっていたり。間違うこともいっぱいあるけど、すごく真っ直ぐな人だなと。そういう人間的な斎藤平の変化を、演じる側としては、そのまま素直に見せていければいいのかなと思っています。
高橋 この作品は斎藤平という男の一生ではあるのですが、ある意味では亀田佳明の一生かもしれないし、高橋正徳の一生かもしれない。とても普遍的な1人の人間の一生なんじゃないかと。そういう彼の姿は、おそらく観ている方に共感していただけるのではないかと思います。
  
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斎藤平を中心にした家族史でもある

──舞台上のセットも20年ごとに変わるそうですね。
亀田 最初は茶の間なんですが、それがリビングになって、ソファが置かれたり、テレビの形も20年ごとに変わっていきます。
高橋 居間の変化とともに家族の座る場所も変化していって、家長は最初は真ん中に座っていたのが、次第に位置が不安定になっていって、平成になったら父親が座るべきソファに高校生の子がゴロゴロしてたり(笑)。そういう家庭内での役割や立場の変化も見えてくるわけです。それから女性の立場の変化も夫婦像の中で描かれます。絵に描いたような家父長制の夫婦、同級生で友だちのような夫婦、さらに子連れバツイチとの結婚もあれば、同性婚も出てきます。最終的には、家族というよりコミュニティをどう作っていくかみたいな話にもなっていくわけです。そういう意味では、この作品は斎藤平を中心にした家族史でもあって、彼の祖父、父親や母親、彼の子供たちも出てきますから、観る方も、それぞれの世代の誰かに自分を重ねて観ていただける部分もあるかなと思います。
──平成が終わるこの年に、日本の戦後史、家族史を考えるこの作品は、まさにタイムリーですね。
高橋 元号というのは日本独特ですけど、それが変わることで、1人ひとりがいやでもこの30年を振り返ることになる。そういう機会になるなと思います。
──その年にお二人とも40歳という節目を迎えたわけですが、その感慨は?
亀田 僕の場合、この芝居のスパンで言えば、20年前は自分が演劇をやるなんて全く頭になかったんです。大学では学校の先生になろうと思っていたので、こうして役者になっている自分は思いがけないわけで。そして今、20年後は何になっているかと考えたら、たぶん違う世界に行っていることはないだろう。じゃあ、このあとの20年、演劇の世界でどれだけのことを出来るか、それを考えたいですね。
──俳優として20年間しっかりキャリアを積んできたと思いますが、そういう実感は?
亀田 いや、実感はないですね。むしろやり足りなかったという思いや後悔のほうが圧倒的で。ですから、これからはもっともっと意欲的になっていくだろうなと思います。そして演技をするということに、こだわりを強くしていかないといけないなと。同世代だけでなく上を見ても下を見ても、演劇だけでなく色々な世界で、力強い表現をしている人はいっぱいいますので、ああ、自分はまだまだ足りないなと。
──高橋さんはこの20年の手応えはいかがですか?
高橋 僕は文学座以外でも仕事をしていますが、ある程度はこの文学座という大きな船に乗っかって、その中で仕事をまかされて、その都度その都度がんばっていたら、なんか10年、20年経っていたという感覚なんです。ただこれからは、例えば10年スパンくらいで、具体的な目標は持っていたほうがいいだろうなと。シェイクスピアとかイプセンを何本やるとか井上ひさしさんの戯曲をやるとか、そういう目標がないと、気づいたら10年過ぎていたということになってしまうと思うので。

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対話が生まれることで豊かな稽古場になっている

──高橋さんは『白鯨』(2015年)で大きな成果をおさめましたが、その前後で意識の変化などありましたか?
高橋 『白鯨』のあたりから演出していて楽しくなったんです。自分のイメージを実現するためには、俳優とどんなふうにコミュニケーションが取ればいいか、どう伝えればスタッフが動きやすいか、そのための言葉を獲得したという感覚があります。そこからどんどんラクになってきて、楽しくなってきました。
──そういう点では、アトリエ公演や研究所の卒業公演など、色々な経験を積める場があるのは文学座の良いところですね。
高橋 場に恵まれるだけでなく、毎回人が違うというのも大きいです。文学座の先輩や後輩と一緒に作る、外の公演で色々な劇団や俳優の方に出会う、その中で色々な言葉にも出会ったことが、『白鯨』あたりからうまく発酵しはじめたのかもしれません。
──亀田さんから見て、高橋さんの演出の変化については?
亀田 僕は意外と一緒の作品が少なくて。
高橋 仲は良いんだけどね(笑)。なかなかタイミングが合わない。
亀田 よく声はかけてもらっていたんですけど、『1960年のメロス』のあともまたちょっと空いたりとか。でもいくつかの公演の経験で、高橋さんの演出は僕なりにある程度わかっていたつもりだったんですが、『坂の上の家』(2017年、ala Collection)の演出はかなり違っていたんです。すごく細かくて、こだわっていて、松田正隆さんの戯曲だったので当然なのですが、ちょっとした言葉に時間をかけて熟考する。とても新鮮で面白かったです。今回もすごく細かく、こだわるところはこだわって、ニュアンスやちょっとした間(マ)を、丁寧に考えながらやっているので、こういう作り方をしていけばお客さんに絶対伝わるはずだと思っています。
──戯曲の言葉を1つ1つ読み解くことで、演じる側にとっても台詞を発しやすくなるでしょうね。
亀田 文学座の俳優たちは、みんなそれなりに出来てしまう人が多いのですが、そこにブレーキをかけて、そこは本当にそうなのかと批評性をもって、こだわってやってくれるのは有り難いです。そうなると俳優もまた、台詞を自分の言葉として喋るとき、もう1つ責任をもって喋ろうとするので。
高橋 若いときは俳優たちがみんな上手いから、なんとなくこれでいいのかなと思ってやってた部分があったんです。今は、やっぱり細かいニュアンスを話し合おうと、会話をちゃんとしていこうと、演出としてはすごく当たり前のことに立ち返ってます(笑)。
亀田 そこで対話が生まれるんですよね。だからすごく豊かな稽古場になっています。

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変わっていっているもの、変わらないもの

──高橋さんは劇団では1期上ですが、亀田さんの役者としての成長や変化はどう感じていますか?
高橋 研修科に上がってきたときの亀ちゃんは、なんかのらりくらりしてて。
亀田 はは(笑)。
高橋 でもある時からプロ意識をすごく持つようになって、ガラリと変わったんです。たぶんやらなくちゃいけないと思った時期があったんでしょうね。20代とか30代前半は身体の利く時期なので、『アラビアンナイト』の地方公演などを多くやっていたと思うんですが、同じ公演を何回もやるということは、役者にとって色々なことを考える機会になるんです。そのあとの『くにこ』も、角野(卓造)さんと一緒に旅公演をしていたので、話を聞く機会も多かったのかなと。それに新国立劇場のシェイクスピアシリーズでも鍛えられたと思います。良い演出家、高瀬(久男)さんや鵜山(仁)さん、上村(聡史)さんとかと一緒の仕事が多いよね。
亀田 本当に恵まれてます。今、話していただいたように僕の役者としての何十%かは地方公演のおかげで、とくに『アラビアンナイト』と『くにこ』で、それを経験できたのは大きかったです。角野さんがおっしゃっていたのですが、地方によって劇場の大きさが毎日変わる中で、同じ芝居をどういうレベルでやればお客さんに届くか、それを肌で覚えていったそうです。だから若い時に旅公演をすると俳優として成長すると。
──亀田さんは、文学座を代表する二枚目俳優の1人だと思うのですが、上村さんとの作品ではエキセントリックだったり黒っぽい役もあって、色々な顔があるなと。
亀田 いや二枚目俳優だとは思ってないです(笑)。そうですね、どこか神経が立っている役が多かった気がします。逆に高橋さんの『坂の上の家』とかこの作品とかは、それとはまったく違う役で。
高橋 俺の中の亀ちゃん像は、そんなに尖ってるイメージじゃないからね(笑)。
──その『坂の上の家』の長兄の役ですが、淡々としていながら背負うものの重さを感じさせてくれました。高橋さんがこれからの亀田さんに期待するものは?
高橋 ある上手さもあるし、出てきたらシーンを責任を持って引き受ける俳優で、ではその先に何を求めるかと言えば、江守(徹)さんとか角野さんとか、いわゆる作品を引き受ける俳優になってほしいなと。たとえば鵜山さんが演出していても、角野さんの作品というのがあるんです。つまり座長になるということで、プレッシャーもかかるけど、そういう背負い方ができる俳優になってほしいし、なれると思っています。
──亀田さんは、演出家・高橋さんにはどんな期待がありますか?
亀田 今のような丁寧な作り方は、きっと成果に結びついていくと思うので、僕も含め、こういう作り方を続けていければと。僕自身もそれを忘れないようにしていきたいです。
──最後に改めて、『かのような私』を観る方にぜひ一言いただければ。
亀田 この作品は80年という長い時間を描いているので、その中にきっと、たとえば人だったり音楽だったり、あるシーンだったり、観ている方と重なるところがあると思います。そしてその時代やその時の自分を思い出していただきながら、感情移入していただければと思っています。
高橋 戦後73年という長いスパンの中で、変わっていっているもの、変わらないもの、それぞれ観る方の視点で違うと思いますが、それを発見していただけたら。そして家族なり、愛の形なり、価値観なりが、時代によって変化していっている、そこを伝えられたらと思っています。ぜひ楽しみにいらしてください。

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亀田佳明 高橋正徳

たかはしまさのり○東京都出身。2000年文学座附属演劇研究所入所。04年文学座アトリエの会『TERRA NOVA テラ ノヴァ』で文学座初演出。05年座員昇格。以降、川村毅、鐘下辰男、佃典彦、東憲司、青木豪など多くの現代作家の新作を演出。また地方劇団・公共団体・学校などでの演劇ワークショップの講師としても活躍中。11年文化庁新進芸術家海外研修制度により1年間イタリア・ローマに留学。近年の主な演出作品は、 『白鯨』、『越前竹人形』、ala Collection vol.10『坂の上の家』、水戸芸術館ACM 劇場プロデュース『斜交〜昭和40年のクロスロード』、テアトルエコー公演『カレンダー・ガールズ』、椿組『毒おんな』など。

かめだよしあき○東京都出身。2001年文学座研究所入所。04年『モンテ・クリスト伯』で初舞台。06年座員昇格。近年の主な舞台は『NASZA KLASA-ナシャ・クラサ-私たちは共に学んだ』、新国立劇場『るつぼ』、『くにこ』、『信じる機械-The Faith Machine-』、てがみ座『対岸の永遠』、『弁明』、新国立劇場『ヘンリー四世』、新国立劇場『マリアの首−幻に長崎を想う曲−』、ala Collection vol.10『坂の上の家』、世田谷パブリックシアター『岸リトラル』、新国立劇場『ヘンリー五世』など。

※この公演の舞台写真はこちら
http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52060451.html 
 
〈公演情報〉
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文学座9月アトリエの会
『かのような私 -或いは斎藤平の一生-』
作◇古川 健
演出◇高橋正徳
出演◇関 輝雄、大滝 寛、川辺邦弘、亀田佳明、萩原亮介、池田倫太朗、江頭一馬、川合耀祐、塩田朋子、梅村綾子、大野香織、田村真央
●9/7〜21◎信濃町・文学座アトリエ
〈料金〉前売4,300円 当日 4,600円 ユースチケット2,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケット専用ダイヤル 0120−481034
〈劇団HP〉http://www.bungakuza.com/
●9/24◎八尾市文化会館プリズムホール
●9/27・28◎可児市文化創造センター・小劇場


 

【取材・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】


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藤岡正明・皆本麻帆らでオリジナル・ミュージカル『いつか〜one fine day』来年4月に上演!

キャスト一覧

『グーテンバーグ!ザ・ミュージカル!』『In This House〜最後の夜、最初の朝〜』『ミュージカル深夜食堂』をプロデュースするconSept が、初となるオリジナル・ミュージカルを2019年4月、シアタートラムにて上演することが決まった。

この新作ミュージカル『いつか〜one fine day』は、韓国でコンスタントに人間ドラマを描き続ける映画監督イ・ユンギの最新作『One Day』(2017年/主演:キム・ナムギル、チョン・ウヒ)をベースに、ストレート・プレイやミュージカルのフィールドで説得力ある作品を創り続ける板垣恭一が脚本・作詞・演出を手がけ、新たな解釈でオリジナル台本に生まれ変わる予定。作曲・音楽監督は映像から舞台まで活躍の幅を拡げている新鋭・桑原まこが担当する。

主演は大作ミュージカル『ビリー・エリオット』や『タイタニック』だけでなく、近年は『欲望という名の電車』などストレートプレイでも評価の高い藤岡正明、そして大小様々な舞台をはじめテレビや CM、映画などでも活躍目覚ましい皆本麻帆が務める。共演には入来茉里、小林タカ鹿、佃井皆美、和田清香というジャンルを超えた個性豊かな実力派、さらに期待の若手、内海啓貴や荒田至法も加わり、全8名の出演者で上演する。

物語は妻を病気で亡くした保険調査員・テル(藤岡)と、事故で植物状態にある目の見えない女性・エミ(皆本)の交流を中心に、何を大事にして生きていけばいいか、登場人物それぞれに自分自身と向き合う物語を描いていく。

本作品は、2018年4月に東京芸術劇場シアターイーストで上演された『In This House〜最後の夜、最初の朝〜』に続くconSeptのMusical Dramaシリーズ第2弾で、人生の中で誰もが一度は向き合うことになる瞬間を、繊細に温かく切り取り、生演奏とともに届ける。

〈公演情報〉 
いつか_仮チラシ_0907
 
原作◇映画『One Day』
脚本・作詞・演出◇板垣恭一
作曲・音楽監督◇桑原まこ
出演◇藤岡正明 皆本麻帆
入来茉里 小林タカ鹿 内海啓貴 佃井皆美 和田清香 荒田至法
●2019年4月◎シアタートラム
〈公式サイト〉www.consept-s.com/itsuka





トム・プロジェクトプロデュース『男の純情』


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