稽古場見学、記者発表、インタビューなどから、近々公開される作品のおもしろさを探ります。

観劇予報は2019年2月20日に引っ越しました。
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「第26回読売演劇大賞」受賞者と受賞作品発表!

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パルコ・プロデュース「チルドレン」
 
読売新聞社が主催する「第26回読売演劇大賞」(2018年度)の受賞者と受賞作品が決定した。
この演劇賞は歌舞伎、能などの伝統演劇からミュージカル、商業演劇、新劇、小劇場演劇などまで、ジャンルを問わず、広く舞台芸術作品や出演者を顕彰し、日本の文化の一層の発展を願うもので、すでに1月上旬に選考委員によって、作品賞・男優賞・女優賞・演出家賞・スタッフ賞の5部門のノミネート作品と人が選出され発表されていた。
 
その各部門ノミネートの中から107人の投票委員(演劇評論家、劇場関係者、プロデューサー、新聞記者、雑誌記者など)の投票によって、最優秀作品賞・最優秀男優賞・最優秀女優賞・最優秀演出家賞・最優秀スタッフ賞が決定され、ノミネートに選ばれた作品と人物にはすべて優秀賞が贈られる。
さらに杉村春子賞(新人賞)と芸術栄誉賞を、投票委員の推薦の中から決定。以上の全部門の中から最高賞でグランプリとなる大賞が選出される。
「第26回読売演劇大賞」は2018年に上演された作品が対象となり、以下の作品と人が受賞した。

【第26回読売演劇大賞】

〈大賞・最優秀演出家賞〉
 栗山民也  パルコ「チルドレン」、こまつ座「母と暮せば」の演出 

〈最優秀作品賞〉
「百年の秘密」(ナイロン100℃)

〈最優秀男優賞〉
 岡本健一  世田谷パブリックシアター「岸 リトラル」父イスマイル役、新国立劇場「ヘンリー五世」キラ・ホリス役の演技

〈最優秀女優賞〉
 蒼井優  パルコ「アンチゴーヌ」アンチゴーヌ役、新国立劇場「スカイライト」キラ・ホリス役の演技

〈最優秀スタッフ賞〉
 上田大樹  ナイロン100℃「百年の秘密」、TBS・ヴィレッヂ・劇団☆新感線「メタルマクベス disc1〜3」の映像 

〈杉村春子賞〉
 松下洸平  こまつ座「母と暮せば」福原浩二役、ホリプロ「スリル・ミー」私役の演技

〈芸術栄誉賞〉
 木村光一

〈選考委員特別賞〉
「ザ・空気 ver.2〜誰も書いてはならぬ〜」(二兎社)

〈優秀作品賞〉
「夜、ナク、鳥」」(オフィスコットーネプロデュース)
「岸 リトラル」(世田谷パブリックシアター)
「遺産」 (劇団チョコレートケーキ)
  
〈優秀男優賞〉 
松尾貴史 (二兎社「ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ」)
松下洸平 (こまつ座「母と暮せば」、ホリプロ「スリル・ミー」)
山崎一 (こまつ座・世田谷パブリックシアター「シャンハイムーン」、こまつ座・「父と暮せば」)
横田栄司 (新国立劇場「ヘンリー五世」、世田谷パブリックシアター「The Silver Tassie 銀杯」)

〈優秀女優賞〉
犬山イヌコ (ナイロン100℃「百年の秘密」、KERA・MAP「修道女たち」)
草笛光子 (シーエイティープロデュース「新・6週間のダンスレッスン」) 
ソニン (東宝「1789 バスティーユの恋人たち」、東宝「マリー・アントワネット」)
藤山直美 (東宝「おもろい女」)

〈優秀演出家賞〉
ケラリーノ・サンドロヴィッチ (ナイロン100℃「百年の秘密」、KERA・MAP「修道女たち」)
瀬戸山美咲 (オフィスコットーネプロデュース「夜、ナク、鳥」、流山児★事務所「わたし、と戦争」)
永井愛 (二兎社「ザ・空気 ver.2〜誰も書いてはならぬ〜」)
野木萌葱 (パラドックス定数「731」、パラドックス定数「Nf3Nf6」)

〈優秀スタッフ賞〉
板橋駿谷 KAAT神奈川芸術劇場「オイディプスREXXX」の作詞・ラップ指導 
井上正弘 パルコ「チルドレン」、パルコ「豊饒の海」の音響
小笠原純 パルコ「チルドレン」の照明
朴勝哲  ホリプロ「スリル・ミー」のピアノ伴奏


受賞者には、正賞として彫刻家・佐藤忠良制作のブロンズ像「蒼穹」、副賞として大賞・最優秀スタッフ賞に200万円、他の最優秀賞並びに杉村春子賞、芸術栄誉賞、選考委員特別賞の獲得者には各100万円が贈られる。贈賞式は2月28日に東京・帝国ホテルにて行われる。




【舞台撮影/佐藤栄子】



音楽劇『ライムライト』


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小川絵梨子演出、林遣都らの出演で “禁断の愛”に墜ちる家族の葛藤を描いた『熱帯樹』来春シアタートラムで上演!

『熱帯樹』出演者五名写真(ヨコ)
林遣都 岡本玲 栗田桃子 
鶴見辰吾 中嶋朋子 


三島由紀夫ならではの流麗なセリフで綴られるギリシャ悲劇さながらのドラマチックなストーリー展開を、本年9月に歴代最年少で新国立劇場演劇芸術監督に就任するなど、いまや日本の演劇界を牽引する演出家の一人・小川絵梨子が 魅力的な5名のキャスト陣と共に現代に立ち上げる!

愛憎渦巻く5人の家族を演じるのは実力派の俳優陣。
権力者の父親を憎みながら母と妹の異常な愛に翻弄される息子・勇役を演じるのは『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(17年 演出:小川絵梨子)にも出演し、小川からの信頼も厚い林遣都。舞台『子どもの事情』(演出:三谷幸喜)や今秋放送のドラマ『リーガル V』など舞台・映像ともに幅広い出演が続く。
愛する兄に母を殺させようとする妹・郁子役を演じるのは TVや映画などを中心に活躍し、昨年には劇団た組。『壁蝨』で舞台初主演を務めた岡本玲 。
父親の従妹で4人の家族と共に暮らす風変わりな同居人・信子役には昨年の世田谷パブリックシアター『岸 リトラル』(演出:上村聡史)での熱演も記憶に新しい実力派・栗田桃子。
地位や名誉を手に入れながらも、息子と対立し妻の不貞を疑わぬ父・ 恵三郎役には年齢と共に魅力を増す鶴見辰吾 。今年9月には世田谷パブリックシアターで上演の話題作『チルドレン』(制作・パルコ、演出:栗山民也)に出演して注目を集めた。
そして、莫大な財産を狙い息子に夫を殺させることを企む勇の母・律子役には、舞台上で唯一無二の存在感を誇る中嶋朋子。栗田と共演した『岸 リトラル』では、鮮烈ながらも慈愛に満ちた演技で好評を博した。
 
【あらすじ】
1959年秋の日の午後から深夜にかけて。資産家の恵三郎は、己の財産を守ることにしか関心がなく、妻・律子を自分の人形のように支配している。律子は夫の前では従順だが、実は莫大な財産を狙い、息子の勇に夫を殺させることを企んでいた。その計画を知った娘の郁子は、愛する兄に母を殺させようとするが……。
いびつな愛に執着する律子と郁子、権力者の父を憎みながら母と妹に翻弄される勇、地位や名誉を手に入れはしたが息子と対立し妻の不貞を疑わぬ恵三郎、そしてそこに同居する恵三郎の従妹で風変わりな信子、それぞれの思いが交錯し……。

小川絵梨子宣材写真  (c)加藤孝
小川絵梨子 (c)加藤孝
 
【コメント】
 
小川絵梨子[演出]
以前から、三島由紀夫の戯曲には興味を持ちつつも、なかなか挑戦する機会がなかったので、今回この作品を劇場側からご提案頂いたことが、とても嬉しかったです。
『熱帯樹』の世界観は寓話的でもあり、五人の登場人物たちは誰もが寂しくて孤独なんですが、実は一人一人が物凄く逞しさや力強さに満ち溢れていて、そこがたまらなく面白く思え、この五人からなる家族という単位の小さな集合体に、今とても魅力を感じています。
本作が書かれたのは 1960 年ですから、既に半世紀以上も前なんですが、たとえ時代設定を現代に移し替えなかったとしても、今を生きる俳優の身体を通して上演することで、作品の世界観をリアルに表現することができるのではないかと考えています。
今回、俳優の皆さんは初めて創作を共にする方が多いのですが、唯一林遣都さんとは昨年の舞台でご一緒していて、私にとって大変信頼のおける俳優さんでもあります。この戯曲を上演するにあたって、前々からご一緒したいと願っていた俳優の皆さんと、どのように稽古場でチャレンジを続けていけるのか、今からとても楽しみです。

林遣都[息子・勇役]
前作に続き再度小川さんの演出を受けられることを大変嬉しく思っています。日本の歴史に残る素晴らしい作家である三島由紀夫さんの戯曲を演じる事は恐ろしくもありますが、それ以上に大きな学びがあると思っています。
人間の業や狂気に振り回されながら、共演者の皆さんと、濃厚な時間を過ごしたいと思っております。是非お越し下さい!

岡本玲[妹・郁子役]
「三島由紀夫の愛憎劇、小川絵梨子さんの演出、そして役者は 5 人だけ」。
演劇好きならこの一文を読んだだけで震えるような作品に、まさか自分が出られるなんて。出演が決まってから今までずっと、まるで夢の中にいるようです。この物語もどこか夢の中の出来事のように美しく甘く、刺々しく儚く、おぞましく厭わしい、愛憎劇。愛され方を知らない者は愛し方さえもわからず、歪んだ何かをこうも育ててしまうのかと恐ろしくなりました。作品を通してどんな自分の歪みに出会えるのか、どれだけ歪んだ愛の世界を愛せるのか、とても楽しみです。

栗田桃子[同居人・信子役]
私はとても口が悪い。言葉づかいが乱暴なのだ。意識して気をつけよう…と思っていないから、このところますます口の悪さに拍車がかかっている。
『熱帯樹」』に出てくる女性の言葉づかいはとても美しい。…かしら、とか…ですの、とか。一度も使ったことないわっ!!
この作品に出演させて頂けることをキッカケに、ワタクシもお上品で気高く柔らかい女性になれるかもしれないんでございますの…いえこの美しく甘美な世界についていくのに必死にしがみつくんでございますんですの…
演出の小川絵梨子さんとは初めてなので、私自身今からワクワク、とても楽しみです。

鶴見辰吾[父・恵三郎役]
家族、親子、兄弟。骨肉の愛憎劇は、身内である相手をよく知るからこそ深まる。
支配して自分の思い通りにしたいという欲求。
君臨する父権は、小さな家族の中だけでは収まらない。
家族は、夫婦は、世界を構成する最小の単位だ。
この諍いがある限り、世界は決して平和にはならないのだ。

中嶋朋子[母・律子役]
三島作品は、独特の美学が存在しています。その美の派生の仕方や、作品が湛えるエネルギーが、どこかギリシャ悲劇的だなぁと常々思っていました。日常の世界を描こうとも、決して我々の「日常」という観念には収まらない。収めようとせず、扱いきれない三島作品のエネルギーを、溢れ、こぼれさせると、なぜか、私たちが見つめるべき深淵に辿りつくのです。
今回立ち向かう「熱帯樹」はまさにそんな作品。
そして、作品を拝見するたび、ぜひご一緒したいと願っていた演出家、小川絵梨子さん。
三島の美しい言葉と熱を小川さんの素晴らしい感性と共に、身体中で体感し、お客様と共有できる事を堪能したいと思います。
 
〈公演情報〉 
『熱帯樹』
作◇三島由紀夫  
演出◇小川絵梨子 
出演◇林遣都 岡本玲 栗田桃子 鶴見辰吾 中嶋朋子
●2019年/2/17〜3/8◎シアタートラム
※地方公演あり
〈料金〉一般6,800円(全席指定・税込)
高校生以下・U24 など各種割引あり
※託児サービス、車椅子スペース取扱いあり
〈一般発売日〉12月16日(日)
〈お問い合わせ〉世田谷パブリックシアターチケットセンター03-5432-1515 (10〜19時 年末年始のぞく)

地人会新社第8回公演『金魚鉢のなかの少女』間もなく開幕! 堺小春・矢柴俊博・中嶋朋子 インタビュー

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国内外の上質な戯曲を取り上げて、毎回、注目の舞台を上演する地人会新社。その第8回公演として、カナダのニュージェネレーションを代表する人気劇作家、モーリス・パニッチが2002年に発表した『金魚鉢のなかの少女』を、10月6日から赤坂RED/THEAERで上演する。(12日まで)

【STORY】 
1962年秋、アメリカとソ連による一触即発の核戦争の危機、キューバ危機に世界は直面する。
主人公のアイリスは11歳、カナダの片田舎の海に面した小さな町に住んでいる。彼女にとっての危機は、キューバの危機より母が自分と父を置いて家を出て行こうとしている事だった。
アメリカ大統領がソ連に最後通告を送ったちょうどその頃、飼っていた金魚アマールが死ぬと、アイリスは浜辺に打ち上げられていた一人の身元不明の男を家に連れて来る。
男は一体誰なのか…アマールは生まれ変わって、家族を、そして世界を危機から救うのか?

家庭崩壊を阻止しようと孤軍奮闘する少女と、互いに一方通行の両親、正体不明の下宿人たちの間で繰り広げられるおかしな数日間の出来事。この作品で主人公アイリスに扮する堺小春、そして両親役の矢柴俊博と中嶋朋子に、稽古場で話を聞いた。

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中嶋朋子・堺小春・矢柴俊博 

一筋縄でいかない多様性のある物語

──この作品を最初に読んだときの印象から聞かせてください。
矢柴 設定が1960年代のカナダの田舎町で、時代のキーワードやキリスト教のキーワードとか色々散りばめられていて、最初はとっつきにくかったのですが、そこにとらわれずに読んでいくと意外と読みやすくて、家族の話だし演劇では一番扱うテーマかなと。ある閉じられた空間から飛び出したい人とか、そこに訪れた人によって家族が変化していく。そこに演劇の醍醐味がある気がしました。
 私は読んだ時からすごく好きでした。台本をいただいて読み始めたときは、今の私に馴染みのない言葉が沢山あって、どういうことなのかなと思いながら読み進めていったのですが、最後のシーンになったとき、あ、そういうことだったのかと。それを知ったうえでもう一度読んでみたら、すごく印象が変わりました。私が演じるアイリスの11歳のときの話なんですけど、彼女が大人になってその時の自分を振り返らずにはいられなかった想いがわかって、胸が苦しくなりました。
中嶋 最初に読んだときの印象と、稽古が始まって皆さんが読まれている感触と、全然違うものを感じましたので、お客様も色々なかたちで観ていただける作品なんだろうなと。アイリスに感情移入して、自分の過去として捉える方もいらっしゃると思いますし、他の登場人物に同調して観る方もいらっしゃると思います。すごいシンプルに家族の話であるようで、いやいや違うなという、一筋縄でいかない多様性もあって、戸惑いもしたんですけど、それだけ可能性があるんだと思ったらすごくワクワクしました。先ほど矢柴さんがおっしゃった翻訳劇の民族性の違いみたいなものは、いつも埋められないで苦労するんですが、この本はそれを一度置いて眺めてみるとすごく魅力的で、すごく不揃いな人間たちを、自分たちが愛着をもって演じられれば、お客様の中に色々なかたちで残る。そういう良い戯曲だなと。ですから今は毎日楽しく飛び込んでいってます。
──登場人物たちは意外とリアルで、たとえば父親とか下宿人のローズさんなどは身近にいそうな人たちですね。
矢柴 この父親はヒーローものとかテレビドラマの主役にはなれない残念さがありますよね(笑)。色々な趣味とか持っている父親って素敵ですけど、この父親は物理とか幾何学とかに詳しいんですけど、なんでも中途半端で(笑)、ちっちゃい嫉妬とかしたり(笑)。どこか僕自身の人生と重なる部分もあったりするので、久しぶりの舞台でたいへんな台本なんですが、すごく興味を惹かれています。

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どこか演劇のパロディのような

──妻のシルビアもどこか喜劇的な気がします。夫と別れようとして家を出るとき、階段で転んで骨折したり。
中嶋 (笑)。
矢柴 それに、骨折したのは手首だから、出ていこうと思ったら出て行けるのに、なぜかそのままいるんですよね。
──そういう関係がちょっと不可解でもあり、この戯曲ならではの面白さですね。
中嶋 この夫婦はなんかくだらないことでやりとりしているんですけど、ギリシャ劇っぽい部分もあるなと思ったりするんです。自分の意見を一生懸命しゃべってる討論劇みたいな面もあって、そこがパロディというかコメディの要素もあるのかなと。わーっと対峙してわーっと吐露するとか、やっていることはギリシャ悲劇と一緒で、シェイクスピアも独白劇で朗々と「ああなってこうなって」と語りますよね。そういう演劇のスタイルというものがすごく入っているなと。でもお互いに本質は全然しゃべれてないし、書かれているようでみんなの本心が書かれていないので、それを探って迷子になって、違う角度から見てみようと思ったとき、「これ演劇のパロディかな」と考えると、本人たちのやりたいこと、やれなかったことはここかなと探せたりするんです。
──俯瞰して見ると理解しやすい作品ということですか?
中嶋 それはこの作品だけでなく、ありふれた日常のように描かれている作品のほうが引き寄せるのが難しいんです。自分を見つめるのが難しいように。それでちょっとフィルターをかけて見ると、丁々発止しているシーンが「これってすごく悲しいシーンだな」と思えたり、逆に深刻な話をしているシーンが可笑しく見えたり、1回ずつ引いて見ないとわからない。でも矢柴さんはそういうのをパパッと掴むのがお得意で、矢柴さんが「こうなんじゃない?」っておっしゃったことに、私は「そうか!」って。広岡(由里子)さんもですけど、軽くおっしゃることに発見があるんです。
──矢柴さんは常にそういう視点を持っているのですか?
矢柴 いや、僕は心がない俳優なので(笑)。中嶋さんは詰将棋のように詰めていかれるんですよね、論理的にも感情的にも。このあいだ一緒に飲んだときに「台詞はゆっくりしか覚えられない」とおっしゃってましたが、僕はとりあえず台詞を入れて、心のない状態でしゃべって、「これを言うには心が必要なんだな」と、あとで気づくんです(笑)。まずはここに向かう、というのがあったほうがいいタイプなんだと思います。

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若い女性の輝きを刻んである台本

──堺さんは、アイリス役とどんなふうに取り組んでいますか?
 私はガッと殻に閉じこもってしまう部分があるのですが、たぶんアイリスはもっと自信はあるのかなと。ウソもつきますけど想像力も豊かで自分の世界観を強く持ってるんだなというのを、稽古が休みの日にちょっと俯瞰して見ることができて気づいたんです。いつも稽古中に皆さんが意見を交わしているのを見ながら、こういうやり方で役を掴んでいけばいいのかとすごく勉強になっているのですが、改めてそれで俯瞰で見たときに、もっと色々なやり方でやってみようと。私は頭がガチガチになりがちだけど、もっと柔軟な頭で役にダイブしていけたらと、皆さんの姿ですごく発見しています。
矢柴 これだけ若い女性の輝きを刻むような台本って、なかなかないと思うんですよ。30歳になったらやれない気がしますし、たぶん女優さんが人生で1回、出会うか出会わないかというすごい役だと思います。可哀想なだけの役ではなくて、全部をつかさどりながら、中にも入りながら、そして役者本人の資質も輝かせながら、その全部を物語に封じ込めていくような、これほど決定的な役はあるんだろうかという気がします。
 私が、今のこの年齢だからこそのアイリスへの見方と、もっと大人になって色々なことを経験してアイリスを見たときとは、たぶん全然違うと思うんです。だから今の私が感じているものや今の自分の感性を大事にしていかなくては、としみじみ感じながらやってます。
中嶋 小春ちゃんが、今しかできないことをやるというところにちゃんと立っている時点ですごいし、いいなあって思いますね。本読みから全部台詞が入っててびっくりしたのですが、それだけこの役はたいへんなんだと思います。詰めるところ、手放すところ、楽しむところ、色々なものをすごい勢いで飛び込んでやっていて、勢いだけではなくやろうとしているところもあって、そこは小春ちゃんの特性なんだろうなと、眩しく毎日見ています。

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3人でいるシーンは嬉しくて

──両親役のおふたりについて感じることは?
 アイリスは友だちもいないし、関われる人間がお父さんお母さんと下宿人しかいなくて、あとはへんてこりんな人物たちが台詞の中に出てきますけど(笑)、両親が世界の全てなんです。でも台詞にも出てくるんですが、両親は自分の世界に没入していて、だから「見て見て見て」というアイリスの気持ちが、稽古中に自分の中で高まってきて、「なぜ見てくれないの」みたいな気持ちになってます(笑)。アイリスってどちらにも似ているところがあるのかなと思っていて、お父さんの1つのことに固執して熱中するところはアイリスにもあって、お母さんとは同性というところでお互いの居方が独特のものがあるのですが、やっぱりお母さんが一番好きで、女の子だからお母さんに色々教えてほしいこともあって、存在がすごく大きいなと思います。ですから3人でいるシーンとか私は嬉しくて(笑)、2人がアイリスを挟んでケンカしていることもあるんですが、でも2人の顔が見えるだけで心がほっこりしたり、安心します。それだけに最後のほうになるとすごく揺れ動くものがあります。
──普段の中嶋さんや矢柴さんとのギャップや面白さなどは?
 シルビアは意外と本質的なことを言っているようで言わないですよね。今起きていることに興味があるのかないのかもよくわからない。でも中嶋さんは矢柴さんもおっしゃっていたように「中身が決まってないと台詞が出てこない」という方で、そこがすごいし、それはシルビアとのギャップかなと。昨日も「考えすぎ?」とかおっしゃっていましたけど、そこまで考えることは大切なんだと思いました。矢柴さんは面白くて、一緒に稽古していても素で笑いたくなっちゃいます(笑)。普段は観察力がすごく高いです。
矢柴 いや、そんなでもないからね(笑)。関係が役とかぶってるのは、アイリスは父親に色々な情報を流してくれるんですが、僕もよく出トチリするんです。自分の世界に入ってしまうので。そうすると「お父さんお父さん!」って(笑)。
 すぐまた出るのに、完全にはけてしまうから(笑)。
矢柴 この前も最後の一番大事なシーンでそれをやりそうになって(笑)。小春ちゃんはしっかりしてるんです。
──実際は楽しい親子なんですね。矢柴さんは中嶋さんと初共演ということですが。
矢柴 そうです。僕はテレビで『北の国から』を観てこういう世界に興味を持ったので、今こうしてご一緒しているのは不思議です。中嶋さんは芝居をしていてすごく冷静で、演劇のことをよく解っているなと。「野球が解っている選手」という表現がありますが、芝居が解っている。存在が演劇そのものですね。
中嶋 矢柴さんこそ、むちゃくちゃ軽やかかと思いきや、ぐーっと深いところに引っ張り込むエネルギーを発している方で、すごく面白くて目が離せないです(笑)。

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戯曲の完成度の高さを感じる傑作

──では最後にお客様へのアピールをいただければ。
 観る方の年齢によって、色々な感想が生まれる作品だと思いますし、観た方が誰に感情移入するのかというのはそれぞれあると思いますので、できるだけ色々な世代の方に観ていただきたいです。人生を振り帰る要素が沢山詰まっているし、観終わったあとに持って帰るものが沢山あると思います。
矢柴 台本を読んだときに、日本人のお客さんが知識的なギャップを超えたらすごく面白く思える本だろうなと思ったし、自分の友人たちとかが観にきてくれたとき、「楽しめたよ。観てよかった」と言ってくれる作品じゃないかと思っていたんですが、こうして実際に肉体化してみると、改めて傑作だなと思います。5人で作りあげていく時間に無駄がないんです。5人全員が、くだらない役割や重い役割、意味のある役割、すごく感情的な役割などを、それぞれ持つというところに戯曲の完成度の高さを感じますし、クライマックスに向けて一気に飛躍していく爆発力とか、相当の傑作だなと感じています。女優さんが出会うのは人生に1回と言いましたけど、僕ももしかしたら1回かもしれないなと。これほどまでの役割とこれほどまでにカタルシスを組み立てていく作品に加担させてもらえる経験は、そうないだろうと。うまくすれば非常に爆発力をもったシーンが沢山詰まった、おそるべき作品になる気がします。
中嶋 そう思います。だからむちゃくちゃ難しいんですけど。1回観て受けるもの、それは私たち次第というのはありますけど、そこで色々な要素を受け取って満足して帰っていただいたとしても、何回も観られる作品なんです。そのたびに「あれ?あれ?」って、人生のボタンを掛け替えていける。そういう作品だと思うので、ぜひ何回も観ていただきたいです。

プロフィール 
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さかいこはる○東京都出身。05年にミュージカル『アニー』オーディションに合格し芸能界デビュー。その後、学業に専念。2015年、活動を再開。主な出演作品は、映画『踊る大空港』『心が叫びたがってるんだ』『亜人』『曇天に笑う』『CHEN LIANG』、ドラマ『いつまでも白い羽根』、舞台『転校生』など。

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やしばとしひろ○埼玉県出身。早稲田大学内の演劇サークルで演技を始め、小劇場で活動した後、現在、映画・ドラマ・CMなどで活躍中。最近の主な出演作品は、ドラマ『僕とシッポと神楽坂』『駐在刑事』『まんぷく』『サバイバル・ウェディング』『指定弁護士』、映画『覚悟はいいかそこの女子。』『新宿パンチ』『先生!』『64』、舞台は朗読劇『陰陽師〜藤、恋せば 篇〜』など。

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なかじまともこ○東京都出身。1976年ドラマでデビュー。1981年に始まった『北の国から』で人気を博す。以後、映像と舞台で活躍中。最近の主な出演作品は、映画『妻よ薔薇のように(家族はつらいよ掘法戞慍搬欧呂弔蕕い茖押戞愴しい星』、舞台『岸 リトラル』リーディングドラマ『シスター』『ヘンリー五世』『愛のゆくえ』『BOAT』など。1990年ブルーリボン賞助演女優賞、2009年第44回 紀伊國屋演劇賞個人賞など受賞多数。

〈公演情報〉
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地人会新社第8回公演『金魚鉢のなかの少女』
作◇モーリス・パニッチ 
翻訳・演出◇田中壮太郎
出演◇堺小春 広岡由里子 古河耕史 矢柴俊博 中嶋朋子
●10/6〜14◎赤坂RED/THEATER
〈料金〉一般6,500円 25歳以下3,000円円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉J-Stage Navi 03-5912-0840  
 


【取材・文/榊原和子 撮影/友澤綾乃】



『光より前に 〜夜明けの走者たち〜』


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古川健の新作で戦後73 年を描く『かのような私 -或いは斎藤平の一生-』 高橋正徳×亀田佳明 インタビュー

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文学座アトリエの会では「新しい台詞との出会い―戦後再考」をテーマに、近年演劇界で注目されている劇団チョコレートケーキの古川健の新作を、9月7日から上演中だ。(21日まで。そののち八尾、可児公演あり)
あさま山荘事件、大逆事件、ナチスなどシリアスな社会的な事象をモチーフとした人間ドラマを、鋭い目線で濃密に描く古川健の作品を、文学座の高橋正徳が演出。昨年11月・12 月に上演されて好評を博した水戸芸術館ACM 劇場プロデュース『斜交〜昭和40 年のクロスロード』に続いての、2人の強力タッグとなる。
 
【Story】
1948年(昭和23年)12月23日。皇太子(今上天皇)の誕生日であるこの日、東条英機をはじめとしたA級戦犯が処刑された。その同じ日に、東京の教育者一家・斎藤家に待望の第一子が誕生、平和な時代に生きて欲しいという思いを込めて平(たいら)と名付けられた。高度経済成長、学生運動、バブル、不況、震災・・・昭和、平成、そして未来を懸命に生きた男の一代記。

戦後73 年目となる今年――。戦後に生まれ昭和、平成そして未来へと移りゆく時代を生きる、斎藤平(さいとうたいら)。1人の“男の一生"の物語を、まもなく竣工70年を迎える文学座アトリエにて浮かび上がらせる。その公演の演出を手がける高橋正徳と、主人公の斎藤平を演じる亀田佳明に、稽古も終盤という時期に話を聞いた。
 
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亀田佳明 高橋正徳

とても普遍的な1人の人間の一生

──この作品は、古川さんに書いてほしいという高橋さんの希望で実現したそうですが、古川作品を演出するのは、昨年の『斜交』に続いて2度目になりますね。
高橋 僕は以前から古川さんの作品を演出してみたくて、劇団に何回か企画を出していたのですが、この企画が通ったあとに水戸芸術館の『斜交』の話がきまして、有り難いことに2作続けてご一緒できることになりました。今回の作品については古川さんに、アトリエの会の今年のテーマである「戦後再考」に添ったものを書いてもらえないかと。文学座には女性を主人公にした『女の一生』がありますから、男性を主人公にした戦後史で、昭和から平成、その先まで俯瞰して見据える作品をとお願いしました。
──物語はまさに日本の戦後史で、主人公の斎藤平が生まれた1948年12月23日から始まりますが、この日にはとても大きな意味がありますね。
高橋 12月23日は皇太子(今上天皇)の誕生日ですが、1948年12月23日は東条英機をはじめA級戦犯が処刑された日でもあるのです。また1948年生まれの斎藤平が20歳になる1968年、さらに40歳になる1988年、60歳になる2008年と、日本は大きく様変わりしていきます。そこから日本の戦後史が浮かび上がるというのが、今回の企画意図です。
──斎藤平を演じるのは亀田さんですが、主人公の人生にどのように取り組んでいますか?
亀田 僕は1978年生まれですから、まず生まれる前の30年間の話が出てくるわけです。それから70年以上にわたって1人の人物を演じるのは初めてで、現在39歳の僕からみるとこの先40年近くは未知の領域です。さらに、これだけ変化する時代を生きてきた斎藤平という人間の幅を、どのように意識して演じるか。そういうさまざまな要素を考えながら稽古しているところです。
高橋 ただ、亀田くんも僕も戦後史については文学座でも他のところでも芝居を作るうえで勉強してきていて、亀田くんが山口二矢を演じた『1960年のメロス』(2010年)という公演も一緒にやっていますし、そういう経験から歴史への理解は深まっていますので、あまり心配はないと思っています。
──斎藤平の一生を見ていくと、その時々の社会状況に無縁ではないのですが、その中心には巻き込まれずに生きてきた。そういう意味ではいわゆる一般の人たちの代表でもあるのかなと。
亀田 古川さんも「普通の人」だとおっしゃっています。ただ、斎藤平なりにその時代の出来事を真剣に受け止めながら生きてきたと思うんです。変化する時代の中で、自分を省みたり、迷ったりしながら。
──周辺の人たちも、戦後史のある部分を表現していますね。学生運動から組合闘争に入っていく人、事業で成功したもののバブルが弾けて失墜する人などが出てきます。
高橋 斎藤平自身も、学生運動に加わったけれど家族が出来たことで教師になり、その仕事を熱心にしている間に家庭にひずみが出てきて、子供も登校拒否になってしまう。そして60歳になったとき友人が自殺する。そういう人生の中で、その都度、自分を省みることになるわけです。
亀田 そういう意味ではすごく素直な人ですよね。20年前に自分が嫌だと思ったことを息子にしているんだと反省したり、60歳になったときにはすべてを受け入れる気持ちになっていたり。間違うこともいっぱいあるけど、すごく真っ直ぐな人だなと。そういう人間的な斎藤平の変化を、演じる側としては、そのまま素直に見せていければいいのかなと思っています。
高橋 この作品は斎藤平という男の一生ではあるのですが、ある意味では亀田佳明の一生かもしれないし、高橋正徳の一生かもしれない。とても普遍的な1人の人間の一生なんじゃないかと。そういう彼の姿は、おそらく観ている方に共感していただけるのではないかと思います。
  
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斎藤平を中心にした家族史でもある

──舞台上のセットも20年ごとに変わるそうですね。
亀田 最初は茶の間なんですが、それがリビングになって、ソファが置かれたり、テレビの形も20年ごとに変わっていきます。
高橋 居間の変化とともに家族の座る場所も変化していって、家長は最初は真ん中に座っていたのが、次第に位置が不安定になっていって、平成になったら父親が座るべきソファに高校生の子がゴロゴロしてたり(笑)。そういう家庭内での役割や立場の変化も見えてくるわけです。それから女性の立場の変化も夫婦像の中で描かれます。絵に描いたような家父長制の夫婦、同級生で友だちのような夫婦、さらに子連れバツイチとの結婚もあれば、同性婚も出てきます。最終的には、家族というよりコミュニティをどう作っていくかみたいな話にもなっていくわけです。そういう意味では、この作品は斎藤平を中心にした家族史でもあって、彼の祖父、父親や母親、彼の子供たちも出てきますから、観る方も、それぞれの世代の誰かに自分を重ねて観ていただける部分もあるかなと思います。
──平成が終わるこの年に、日本の戦後史、家族史を考えるこの作品は、まさにタイムリーですね。
高橋 元号というのは日本独特ですけど、それが変わることで、1人ひとりがいやでもこの30年を振り返ることになる。そういう機会になるなと思います。
──その年にお二人とも40歳という節目を迎えたわけですが、その感慨は?
亀田 僕の場合、この芝居のスパンで言えば、20年前は自分が演劇をやるなんて全く頭になかったんです。大学では学校の先生になろうと思っていたので、こうして役者になっている自分は思いがけないわけで。そして今、20年後は何になっているかと考えたら、たぶん違う世界に行っていることはないだろう。じゃあ、このあとの20年、演劇の世界でどれだけのことを出来るか、それを考えたいですね。
──俳優として20年間しっかりキャリアを積んできたと思いますが、そういう実感は?
亀田 いや、実感はないですね。むしろやり足りなかったという思いや後悔のほうが圧倒的で。ですから、これからはもっともっと意欲的になっていくだろうなと思います。そして演技をするということに、こだわりを強くしていかないといけないなと。同世代だけでなく上を見ても下を見ても、演劇だけでなく色々な世界で、力強い表現をしている人はいっぱいいますので、ああ、自分はまだまだ足りないなと。
──高橋さんはこの20年の手応えはいかがですか?
高橋 僕は文学座以外でも仕事をしていますが、ある程度はこの文学座という大きな船に乗っかって、その中で仕事をまかされて、その都度その都度がんばっていたら、なんか10年、20年経っていたという感覚なんです。ただこれからは、例えば10年スパンくらいで、具体的な目標は持っていたほうがいいだろうなと。シェイクスピアとかイプセンを何本やるとか井上ひさしさんの戯曲をやるとか、そういう目標がないと、気づいたら10年過ぎていたということになってしまうと思うので。

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対話が生まれることで豊かな稽古場になっている

──高橋さんは『白鯨』(2015年)で大きな成果をおさめましたが、その前後で意識の変化などありましたか?
高橋 『白鯨』のあたりから演出していて楽しくなったんです。自分のイメージを実現するためには、俳優とどんなふうにコミュニケーションが取ればいいか、どう伝えればスタッフが動きやすいか、そのための言葉を獲得したという感覚があります。そこからどんどんラクになってきて、楽しくなってきました。
──そういう点では、アトリエ公演や研究所の卒業公演など、色々な経験を積める場があるのは文学座の良いところですね。
高橋 場に恵まれるだけでなく、毎回人が違うというのも大きいです。文学座の先輩や後輩と一緒に作る、外の公演で色々な劇団や俳優の方に出会う、その中で色々な言葉にも出会ったことが、『白鯨』あたりからうまく発酵しはじめたのかもしれません。
──亀田さんから見て、高橋さんの演出の変化については?
亀田 僕は意外と一緒の作品が少なくて。
高橋 仲は良いんだけどね(笑)。なかなかタイミングが合わない。
亀田 よく声はかけてもらっていたんですけど、『1960年のメロス』のあともまたちょっと空いたりとか。でもいくつかの公演の経験で、高橋さんの演出は僕なりにある程度わかっていたつもりだったんですが、『坂の上の家』(2017年、ala Collection)の演出はかなり違っていたんです。すごく細かくて、こだわっていて、松田正隆さんの戯曲だったので当然なのですが、ちょっとした言葉に時間をかけて熟考する。とても新鮮で面白かったです。今回もすごく細かく、こだわるところはこだわって、ニュアンスやちょっとした間(マ)を、丁寧に考えながらやっているので、こういう作り方をしていけばお客さんに絶対伝わるはずだと思っています。
──戯曲の言葉を1つ1つ読み解くことで、演じる側にとっても台詞を発しやすくなるでしょうね。
亀田 文学座の俳優たちは、みんなそれなりに出来てしまう人が多いのですが、そこにブレーキをかけて、そこは本当にそうなのかと批評性をもって、こだわってやってくれるのは有り難いです。そうなると俳優もまた、台詞を自分の言葉として喋るとき、もう1つ責任をもって喋ろうとするので。
高橋 若いときは俳優たちがみんな上手いから、なんとなくこれでいいのかなと思ってやってた部分があったんです。今は、やっぱり細かいニュアンスを話し合おうと、会話をちゃんとしていこうと、演出としてはすごく当たり前のことに立ち返ってます(笑)。
亀田 そこで対話が生まれるんですよね。だからすごく豊かな稽古場になっています。

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変わっていっているもの、変わらないもの

──高橋さんは劇団では1期上ですが、亀田さんの役者としての成長や変化はどう感じていますか?
高橋 研修科に上がってきたときの亀ちゃんは、なんかのらりくらりしてて。
亀田 はは(笑)。
高橋 でもある時からプロ意識をすごく持つようになって、ガラリと変わったんです。たぶんやらなくちゃいけないと思った時期があったんでしょうね。20代とか30代前半は身体の利く時期なので、『アラビアンナイト』の地方公演などを多くやっていたと思うんですが、同じ公演を何回もやるということは、役者にとって色々なことを考える機会になるんです。そのあとの『くにこ』も、角野(卓造)さんと一緒に旅公演をしていたので、話を聞く機会も多かったのかなと。それに新国立劇場のシェイクスピアシリーズでも鍛えられたと思います。良い演出家、高瀬(久男)さんや鵜山(仁)さん、上村(聡史)さんとかと一緒の仕事が多いよね。
亀田 本当に恵まれてます。今、話していただいたように僕の役者としての何十%かは地方公演のおかげで、とくに『アラビアンナイト』と『くにこ』で、それを経験できたのは大きかったです。角野さんがおっしゃっていたのですが、地方によって劇場の大きさが毎日変わる中で、同じ芝居をどういうレベルでやればお客さんに届くか、それを肌で覚えていったそうです。だから若い時に旅公演をすると俳優として成長すると。
──亀田さんは、文学座を代表する二枚目俳優の1人だと思うのですが、上村さんとの作品ではエキセントリックだったり黒っぽい役もあって、色々な顔があるなと。
亀田 いや二枚目俳優だとは思ってないです(笑)。そうですね、どこか神経が立っている役が多かった気がします。逆に高橋さんの『坂の上の家』とかこの作品とかは、それとはまったく違う役で。
高橋 俺の中の亀ちゃん像は、そんなに尖ってるイメージじゃないからね(笑)。
──その『坂の上の家』の長兄の役ですが、淡々としていながら背負うものの重さを感じさせてくれました。高橋さんがこれからの亀田さんに期待するものは?
高橋 ある上手さもあるし、出てきたらシーンを責任を持って引き受ける俳優で、ではその先に何を求めるかと言えば、江守(徹)さんとか角野さんとか、いわゆる作品を引き受ける俳優になってほしいなと。たとえば鵜山さんが演出していても、角野さんの作品というのがあるんです。つまり座長になるということで、プレッシャーもかかるけど、そういう背負い方ができる俳優になってほしいし、なれると思っています。
──亀田さんは、演出家・高橋さんにはどんな期待がありますか?
亀田 今のような丁寧な作り方は、きっと成果に結びついていくと思うので、僕も含め、こういう作り方を続けていければと。僕自身もそれを忘れないようにしていきたいです。
──最後に改めて、『かのような私』を観る方にぜひ一言いただければ。
亀田 この作品は80年という長い時間を描いているので、その中にきっと、たとえば人だったり音楽だったり、あるシーンだったり、観ている方と重なるところがあると思います。そしてその時代やその時の自分を思い出していただきながら、感情移入していただければと思っています。
高橋 戦後73年という長いスパンの中で、変わっていっているもの、変わらないもの、それぞれ観る方の視点で違うと思いますが、それを発見していただけたら。そして家族なり、愛の形なり、価値観なりが、時代によって変化していっている、そこを伝えられたらと思っています。ぜひ楽しみにいらしてください。

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亀田佳明 高橋正徳

たかはしまさのり○東京都出身。2000年文学座附属演劇研究所入所。04年文学座アトリエの会『TERRA NOVA テラ ノヴァ』で文学座初演出。05年座員昇格。以降、川村毅、鐘下辰男、佃典彦、東憲司、青木豪など多くの現代作家の新作を演出。また地方劇団・公共団体・学校などでの演劇ワークショップの講師としても活躍中。11年文化庁新進芸術家海外研修制度により1年間イタリア・ローマに留学。近年の主な演出作品は、 『白鯨』、『越前竹人形』、ala Collection vol.10『坂の上の家』、水戸芸術館ACM 劇場プロデュース『斜交〜昭和40年のクロスロード』、テアトルエコー公演『カレンダー・ガールズ』、椿組『毒おんな』など。

かめだよしあき○東京都出身。2001年文学座研究所入所。04年『モンテ・クリスト伯』で初舞台。06年座員昇格。近年の主な舞台は『NASZA KLASA-ナシャ・クラサ-私たちは共に学んだ』、新国立劇場『るつぼ』、『くにこ』、『信じる機械-The Faith Machine-』、てがみ座『対岸の永遠』、『弁明』、新国立劇場『ヘンリー四世』、新国立劇場『マリアの首−幻に長崎を想う曲−』、ala Collection vol.10『坂の上の家』、世田谷パブリックシアター『岸リトラル』、新国立劇場『ヘンリー五世』など。

※この公演の舞台写真はこちら
http://kangekiyoho.blog.jp/archives/52060451.html 
 
〈公演情報〉
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文学座9月アトリエの会
『かのような私 -或いは斎藤平の一生-』
作◇古川 健
演出◇高橋正徳
出演◇関 輝雄、大滝 寛、川辺邦弘、亀田佳明、萩原亮介、池田倫太朗、江頭一馬、川合耀祐、塩田朋子、梅村綾子、大野香織、田村真央
●9/7〜21◎信濃町・文学座アトリエ
〈料金〉前売4,300円 当日 4,600円 ユースチケット2,500円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉チケット専用ダイヤル 0120−481034
〈劇団HP〉http://www.bungakuza.com/
●9/24◎八尾市文化会館プリズムホール
●9/27・28◎可児市文化創造センター・小劇場


 

【取材・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】


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林遣都が小川絵梨子演出で三島由紀夫戯曲『熱帯樹』に挑む!  

『熱帯樹』出演者五名写真(ヨコ)
林遣都 岡本玲 栗田桃子
鶴見辰吾 中嶋朋子

世田谷パブリックシアターでは三島由紀夫作、小川絵梨子演出による『熱帯樹』を2019年2〜3月に上演する。出演者は林遣都、岡本玲、栗田桃子、鶴見辰吾、中嶋朋子、“禁断の愛”に墜ちる家族の葛藤を描いた戯曲だ。

権力者の父親を憎みながら母と妹の異常な愛に翻弄される息子・勇役を演じるのは『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(17 年/演出:小川絵梨子)にも出演し、小川からの信頼も厚い林遣都。愛する兄に母を殺させようとする妹・郁子役を演じるのはドラマや映画などを中心に活躍し、昨年には劇団た組。『壁蝨』で舞台初主演を務めた岡本玲。父親の妹で4人の家族と共に暮らす風変わりな叔母・信子役には昨年の世田谷パブリックシアター『岸 リトラル』(演出:上村聡史)で熱演をみせた実力派の栗田桃子。地位や名誉を手に入れながらも、息子と対立し妻の不貞を疑わぬ父・恵三郎役には年齢と共に魅力を増し、世田谷パブリックシアターで上演中の『チルドレン』(制作・パルコ、演出:栗山民也)にも出演している鶴見辰吾。そして、莫大な財産を狙い息子に夫を殺させることを企む勇の母・律子役には舞台上で唯一無二の存在感を誇る中嶋朋子。栗田と共演した『岸 リトラル』では、鮮烈ながらも慈愛に満ちた演技で好評を博した。
三島由紀夫ならではの流麗なセリフと、ギリシャ悲劇さながらのドラマチックなストーリー展開を、綿密なセリフ劇の演出に定評のある小川が、この魅力的な5名のキャスト陣といかに立ち上げていくだろうか。

【あらすじ】
1959年秋の日の午後から深夜にかけて。資産家の恵三郎は、己の財産を守ることにしか関心がなく、妻・律子を自分の人形のように支配している。律子は夫の前では従順だが、実は莫大な財産を狙い、息子の勇にを殺させることを企んでいた。その計画を知った娘の郁子は、愛する兄に母を殺させようとするが……。
いびつな愛に執着する律子と郁子、権力者の父を憎みながら母と妹に翻弄される勇、地位や名誉を手に入れはしたが息子と対立し妻の不貞を疑わぬ恵三郎、そしてそこに同居する恵三郎の妹で風変わりな信子、それぞれの思いが交錯し……。

コメント】
小川絵梨子宣材写真  (c)加藤孝
小川絵梨子[演出]
以前から、三島由紀夫の戯曲には興味を持ちつつも、なかなか挑戦する機会が無かったので、今回この作品を劇場側からご提案頂いたことが、とても嬉しかったです。
『熱帯樹』の世界観は寓話的でもあり、五人の登場人物たちは誰もが寂しくて孤独なんですが、実は一人一人が物凄く逞しさや力強さに満ち溢れていて、そこがたまらなく面白く思え、この五人からなる家族という単位の小さな集合体に、今とても魅力を感じています。
本作が書かれたのは 1960 年ですから、既に半世紀以上も前なんですが、たとえ時代設定を現代に移し替えなかったとしても、今を生きる俳優の身体を通して上演することで、作品の世界観をリアルに表現することができるのではないかと考えています。
今回、俳優の皆さんは初めて創作を共にする方が多いのですが、唯一林遣都さんとは昨年の舞台でご一緒していて、私にとって大変信頼のおける俳優さんでもあります。
この戯曲を上演するにあたって、前々からご一緒したいと願っていた俳優の皆さんと、どのように稽古場でチャレンジを続けていけるのか、今からとても楽しみです。(小川絵梨子談)
 
〈公演情報〉
世田谷パブリックシアター
『熱帯樹』
作◇三島由紀夫
演出◇小川絵梨子
出演◇林遣都 岡本玲 栗田桃子 鶴見辰吾 中嶋朋子
●2019年2月〜3月◎シアタートラム







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