
演歌にとどまらずポップスでもヒット曲を出す坂本冬美が歌手生活30周年を迎え、明治座で記念公演を上演中だ。公演は第一部「新版 女の花道」 第二部「オンステージ 艶歌(うた)の花道」 という二本立てで、坂本冬美を堪能できる約3時間となっている。(10月1日〜26日まで)
芝居「新版 女の花道」は長谷川一夫はじめ名だたる俳優が演じてきた「男の花道」の主人公・歌右衛門役を女性に変えて仕立てた作品で、坂本は平成10年にこの役を演じて以来再演を重ね持ち役となっている。


物語は大坂の人気役者・加賀屋歌右衛門の舞台の口上と弁天小僧菊之助役の美しい姿から始まる。念願の江戸進出を前にした歌右衛門は視力が衰えているのを隠していた。江戸への道中で遂に芝居が出来ないと悟り自ら命を絶とうとするが、すんでのところ医師の土生玄碩(勝野洋)に阻まれ手術をすることになる。舞台に命を懸ける歌右衛門と医術に懸ける玄碩の思いが熱く伝わってくる場面だ。
手術は成功し江戸で歌右衛門の芸は大評判となる。一方、礼金も受け取らずに去った玄碩は、若年寄・水野出羽守忠成(青山良彦)の屋敷で、その高潔な人柄ゆえ苦境に立っていた。彼を救えるのは歌右衛門しかいなかったが、その報は舞台上演真っ最中に届いたのだった。歌右衛門の決断は……。
男装も似合う坂本の劇中劇扮装や立ち回りなど見どころが多い。また、個性が際立つ共演人は、玄碩に恩義ある料理茶屋の女将・富美に葉山葉子、歌右衛門の後見役・関三十郎は高井清史(おりも政夫代役)、玄碩の下僕・嘉助に曾我廼家八十吉、歌右衛門を慕う13歳の歌吉には森山愛子という顔ぶれ。いずれも達者で、笑わせ、泣かせてくれる充実の舞台だ。
坂本は明治座の初座長公演から歳月を経て、女優としても格段の成長を遂げたことをわからせてくれた。

第二部は「オンステージ 艶歌(うた)の花道」と題したコンサートになる。
30年の集大成を届けたいというだけに、デビュー曲から新曲までファンが聴きたいヒット曲を押さえている。
幕開きは8人の鼓手が居並ぶ太鼓演奏のなか、坂本がせり上がり「あばれ太鼓」を歌うという豪華さ。キリッとした水色の着物に黒の帯で、作品について「新版なので新しいものをやらせていただくつもりで」と15年ぶりの明治座単独主演の意気込みを語り、「猪俣コーナー」として師・猪俣公章の楽曲「祝い酒」、「能登はいらんかいね」、「火の国の女」を歌い観客を惹きつけた。
その後は同じ事務所の森山愛子が坂本の持ち歌をカバーした「ぞっこん」と「待ったなしだよ人生は」を歌い舞台を明るくした。坂本は緑色のドレスに衣裳替えし、「また君に恋してる」で観客を魅了。MCから、カバー曲「石狩挽歌」、「大阪しぐれ」、「愛燦燦」を聴かせる。それぞれの曲が坂本の持ち味で自分のものにしてまろやかになった印象。
次は雪が降りしきる中に白の着物で登場し、新曲の「北の海峡」を披露。続けて「女は抱かれて鮎になる」、「夜桜お七」と盛り上がり、「風に立つ」を隠れた名曲と紹介して最後の曲とした。
坂本冬美の魅力が詰まったこの公演は、大劇場に相応しい演目で華やかな芝居が観られ、今や日本を代表する歌手の一人となった坂本の人気楽曲が次々と聴かれる。ファンでなくても存分に楽しめる作品だ。

【囲みインタビュー】
初日の終演後に囲みインタビューが行われ、坂本冬美が着物姿で取材陣の質問に答えた。
──15年ぶりお座長公演どうですか?
もう千秋楽のような気がします(笑) 無事に初日を迎えることが出来てほっとしていますね。
──先ず舞台のことからお聞かせください。
とにかく覚えなきゃいけないことが沢山あって。立ち回りがあって、長台詞があって、一番苦手な日舞があって(笑)。最後お扇子を落としそうになりましたけでも。次から次へと緊張感が襲ってきますので、気が休まる暇がないといいますか。
──久し振りの台詞でどんなところを練習しましたか?
ついつい早く言わなきゃと早口になっちゃいますので、そこを何とか抑えようと思って、いつものテンポの倍くらい遅くするような気持で台詞を言うようにしています。
──まだ初日ですもんね。
そう、もう疲れた!(笑)。
──公演時間が長いですよね
思ったよりね。まだ終わらないんだと思って。ドレスを着たくらいのところで、まだ歌がたくさんあるんだと思って、また気合い入れなきゃと。でも、気負わずにと思いながら、初日だからしようがないんですけど。まだ32回公演ありますのでペース配分を考えてやっていこうと思います。
──長いので注意していることはありますか?
終わったら一切喋らない。毎日マッサージなり体をほぐすことを考えて自分でマッサージしますし吸入はします。後はなるべく今日中に寝る。昨日も早く寝たら四時半に目が覚めて。年齢ですかね、早く目が起きちゃうの(笑)。
──年齢は30周年で30歳くらいですね?(笑)
そうですね。まだまだ諸先輩大勢いらっしゃいますので。五木先輩からパンフレットにメッセージをいただきましたが、「若手演歌歌手」とコメントをいただいております。この世界ではまだまだ若手でございます(笑)。
──『艶歌の花道』では(舞台効果の)雪がたくさん降りましたね。
あるもの全部降らしちゃいました。
──口に入ったりしないんですか?
よけて、口で息をしないで鼻で息をするようにしています。口を開いた時に入っちゃって、一回喉にピタッとくっついちゃったことがあって、「んんん」ってなっちゃうので。


──MCでおりも政夫さんのことに触れられていらっしゃいましたが、虫垂炎で降板なさる前の稽古場での様子はどうだったんですか?
前日まで一緒に稽古していて全然普通だったので本当にびっくりしました。舞台に戻れるように頑張ってリハビリなさっていると聞いています。ただ、立ち回りも長台詞もありますので、万全の体調で戻ってきてほしいです。おりもさんは永遠のアイドルですから、たくさんのファンの方がチケットを買ってくださっているんです。もちろん私たちも待っていますけれど、ファンの方たちのためにも、先ず療養していただいてバッチリの体調で戻ってきていただきたいと思います。
──健康になれば途中からでもご出演なるかもしれないですね。
もちろんです。おりもさん、待ってまーす!
──30年振り返っていかがでしたか?
いろんなことがありましたが、歌手としては幸せな30年間を歩かせていただいたと思っています。単独で座長公演というのは難しい時代ですし、私自身も体力にあまり自信がないので、もしかしたらこれが最後かもしれないという気持ちと、30年間の感謝の気持ちで、毎日32回務めさせていただきたいと思います。
──デビュー当時30年後の自分を想像されたことはありますか?
まったく。普通にお嫁にいって2、3人子どもがいる、そういう計算はありましたけれど。歌右衛門じゃないですけど、舞台一筋、歌一筋になってしまいました。
──どこでその計算が崩れたんでしょうか?
どこなんでしょうね。振り返ると、あの時かもしれないし、あの時かもしれないし。そんな数は多くないんですけど。
──歌のほうを選んだと。
結果的にそうなりますね。この年になると将来自分がしんどい時にふっと支えてくれる人が傍にいてくれたらというのはあるんです。だけどもう結婚したいということは言うなとなっちゃん(伍代夏子)から釘を刺されていますので。もう痛いと。結婚したくないわけじゃないけれど、この話題については封印させていただきます。歌右衛門のように歌一筋に頑張ります。
──座長というのは気づかいして大変でしょう?
ご一緒したことがある気心が知れた役者さんばかりですので、そんなに気をつかわないです。
──食事に行ったりは?
まったく。私はホテルに籠っています。ルームサービスと藤あや子さんのお弁当をいただいております(笑)。
──最後にPRをお願いします。
26日まで、あと32回ございます。ご近所の方お誘いのうえ、どうぞどうぞ明治座へお越しくださいませ。時々貸切もございますので、明治座さんのホームページでチェックしていただくとよろしいかと思います。お待ち申し上げております。
〈公演情報〉

明治座10月公演『坂本冬美特別公演』
第一部『新版 女の花道』
第二部『オンステージ 艶歌(うた)の花道』
原案◇小国英雄
作◇山中凰加
脚本◇横山一真
演出◇市川正
出演◇坂本冬美、勝野洋、葉山葉子、青山良彦、高井清史(おりも政夫代役)、曾我廼家八十吉、森山愛子
●10/1〜26◎明治座
〈料金〉 円 円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉明治座チケットセンター 03-3666-6666(10:00〜17:00)




















